
NotebookLMでユーザーインタビューを価値マップ化する
ユーザーインタビューを実施した後、情報をまとめるのって時間がかかりますよね。
Google NotebookLMを使えば、効率的にユーザーインタビューから必要な情報を抽出したり、価値マップを作成できます。
なぜユーザーインタビューを価値マップにするのか?
ユーザーインタビュー(発話録)は、ユーザーの行動や思考、感情を理解するための有効な手段です。
しかし、ユーザーインタビューで得られた言葉をそのまま鵜呑みにしてしまうと、表面的なニーズや要望に留まり本質的な課題や価値にたどり着くことはできません。
KA法(本質的価値抽出法)は、ユーザーの発話を意味ごとに分解しその背後にある意図や価値観を段階的に抽象化していく手法です。
具体的な意見を抽象化することによって、複数のユーザーに共通する価値観や動機を見つけ出し、サービス設計の判断軸として活用できるようになります。
例えば「アイスコーヒーが好き」という発言の奥には、「リフレッシュしたい」「さっぱりしたものが飲みたい」といった気持ちがあるかもしれません。
こうした背景を抽象化することで、他のユーザーの「炭酸水が好き」「ミントティーを飲む」といった発言ともつながり、「リフレッシュしたい」という共通の価値が見えてきます。
そのため、インタビュー結果を価値マップとして構造化することで「本質的な価値」を明らかにすることができます。
1.ユーザーインタビューを録音する
音声データ取得のため、Google Meetで録画・録音をしながらユーザーインタビューを行いました。
音声データがあればGoogle Meetでなくても問題ありません。
2.NotebookLMに音声データをアップロードする
次にNotebookLMにログインし、
「ソース」に音声データ(例:m4a)をアップロードします。
データをアップロードすることはもちろん、ソースの「検索」からWebサイトの情報を参照することもできます。
3.KA法の情報を読み込ませ、KA法の構造で出力する
KA法の基本的な情報を読み込ませ、ユーザーインタビューの内容をKA法の形式で整理してもらいます。
KA法では、以下のような構造で情報を整理します。
- 【出来事】(Action):ユーザーが実際に行った行動や体験した出来事
- 【心の声】(Attitude):その行動の背景にある気持ちや考え、動機
- 【価 値】(Value):その行動や気持ちから導き出される、ユーザーが本当に求めている価値
ユーザーの表面的な行動や発言だけでなく、その奥にある「本質的なニーズ」や「価値観」を明らかにすることで、よりユーザー中心のサービスやプロダクトの設計が可能になります。
NotebookLMに以下のプロンプトを入力します。
ユーザーインタビュー結果をKA法(本質的価値抽出法)にしてください。
結果は以下の例のように、ひとつのユーザー心理に対して1セットで出力してください。
A(インタビュイーのアルファベット頭文字)1(Aさんの1番目のふせんの意)
【出来事】 天気が悪くなると、とりあえず大型複合施設に行く
【心の声】 雨の日は外で遊べないし、子供も退屈するから、どこか安心して過ごせる場所がほしい
【価 値】 天候に左右されず、家族で快適に過ごせる場所があること
・出来事は必ず動詞でお願いします。
・あなたの意見や推測ではなく、必ずインタビュイーの発話から出力してください。
・インタビュイーの本名や家族の名前はアルファベット頭文字表記にしてください。
上記のプロンプトとソースを参照して出力された結果がこちらです。
ユーザーインタビュー5人分の音声データを78件のまとまりで出力してもらいました。
4.Mermaid形式で出力して、価値マップを作成する
最後に、KA法で整理された情報を価値マップとして抽象的な構造図にするため、
NotebookLMにMermaid記法(Mermaid.js)で出力してもらいます。
NotebookLMに以下のプロンプトを入力します。
KA法の結果を「価値マップ」の構造(Fact → Meaning → Value)に従って、
Mermaid記法(mindmap)で出力してください。
【要件】
・最上位ノードを価値マップ(root)とします。
・価値マップの直下に「抽象的な価値(Value)」を配置してください。
・その下に「Meaning(意味)」、さらにその下に「Fact(事実)」を階層的に配置してください。
・ラベルの末尾に(Value)(Meaning)(Fact)を明記してください。
・[]()は全角にするなど、Mermaidの構文エラーが出ないように、mindmap構文に準拠してください。
上記のプロンプトでうまくいかない場合は、KA法の結果と上記のプロンプトをChatGPTで実行してみてください。
出力結果をMermaidに貼り付けます。
すると以下のような価値マップが出力されます。
これで本質的な価値を視覚化することができました。
価値マップはペルソナやカスタマージャーニーを作成する際の判断軸が明確になり、ユーザーが本当に求めている価値に基づいて課題の優先順位をつけられるため、UX改善に役立てることができます。
まとめ
- Google Meetでユーザーインタビューを実施し録音データを取得する
- NotebookLMにソース(音声データ)を読み込ませ、KA法で出力する
- Mermaid記法で価値マップ(抽象化)を作成して「本質的な価値」を視覚化する
NotebookLMを活用することで、UX設計のスピードを大幅に向上させることができます。
ユーザーインタビューで得た印象と出力結果に相違がないか確認しながら判断し、分析作業の効率化に役立てています。
UX設計では「温かみのある手作業」と「効率的な自動化」は使い分けていきたいと考えています。
参考
このブログで書かれている手法は、日本ウェブデザイン株式会社 羽山祥樹さんの「ユーザーインタビューからその後どうするの? 発話録からKA法(本質的価値抽出法)でインサイトを見つけよう!」という記事を参考にしています。
とても勉強になりました!ありがとうございます。
謝辞:ユーザーインタビューなどUX設計の調査・進行についてはniraさんにご協力いただきました。ありがとうございます!