RCOにおける機械学習と次世代量子情報処理技術「量子アニーリング」レポート
はじめに
先日 1/15 (金)、グラントウキョウ サウスタワーでリクルートコミュニケーションズ様主催の量子アニーリングについての勉強会が開かれました!
量子アニーリングとはなんぞやについては東京工業大学の西森教授のページに詳しいです。
本記事はそのレポートになります。
RCOにおける機械学習 (リクルートコミュニケーションズ 高柳 慎一 氏)
リクルートの提供価値
- 意思決定・マッチング・レコメンド
- 紙からWebへのシフト、メディア事業の売上の半分以上がWeb
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リクルートコミュニケーションズは機能会社
RCOにおける機械学習
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広告配信の自動最適化
- データインフラ系
- バックグラウンドエンジニア系
- アドホック分析系
- サービスによってはGCPも活用している
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グループで自発的にやっていること
- 機械学習大会
- 論文輪読会
機械学習のコアと事の経緯
→ 某社の会合に呼ばれる
→ 某同僚をそこに送り込む
→ 某同僚、田中先生と知り合う
→ 共同研究になる
- 機械学習に現れる最適化問題
- Gradient Boosting
- Support Vector Machine
- 組合せ最適化問題を解く方法として量子アニーリングを考える
- ノーフリーランチの定理もある(万能な最適化計算は存在しない)
次世代量子情報処理技術「量子アニーリング」が拓く新時代 (早稲田大学高等研究所 助教 田中 宗 氏)
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イントロダクション
- 量子アニーリングは学際領域、いろいろな分野の知見を融合して初めて意味がある
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量子アニーリングは何に使えるか、何か、なぜ量子アニーリングか
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最適化問題応用例
- 工場プラント・シフト計画
- 集積回路設計
- 医用画像読影技術
- FinTech
- 二択問題
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問題が増えるにしたがってベストを見つけるのは非常に難しくなる
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巡回セールスマン問題
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組み合わせ最適化問題 離散変数を引数とする実数関数が最小値を取る条件を見つける
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量子アニーリングとは
- 自己組織化(プログラミング不要、問題を与えれば自然に答えが出力)
- 統計力学理論(組み合わせ最適化問題に於いて膨大なデータ処理の理論基盤)
- 量子並列性(大量の情報を一度に並列処理可能)
自己組織化
- 自然現象は計算→システムの振る舞いが運動方程式の答えになっている
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最小作用の原理
- 力学:作用と呼ばれる関数の最小値を取る軌道
- 波動光学:フェルマーの原理
- 自然現象から着想を得て、計算の飛躍的発展を狙う
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ナチュラルコンピューティング
- 粘菌コンピュータ
- DNAコンピュータ
- 自然界のシステムを用いてベストな答えを探しだす。
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アニーリングは合金における熱効果、安定状態へのシフトを示す
統計力学理論
- イジングモデル
- 磁石の磁性を記述したモデル
- 解をアルゴリズミックに解くのは困難
- 自然科学的なアプローチで解くと簡単
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イジングモデルの基底状態ソルバー開発が重要
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イジングモデル専用機は日本にふたつ
- CMOSアニーリング(日立)
- コヒーレントイジングマシン
- ナチュラルコンピューティングを使うための共通部分
- シミュレーテッドアニーリングへ
量子並列性
- 熱効果によるゆらぎ→熱アニーリング
- 量子効果によるゆらぎ→量子アニーリング
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量子効果を反映させた物理系ダイナミクスをシミュレーション
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量子アニーリングの方がより良い解を得られる
なぜ量子アニーリングか?
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D-Wave
- シミュレーテッド量子アニーリングとくらべてある種の最適化問題に対するパフォーマンスが一億倍
- 電力効率はいい
- 購入企業
- NASA
- Lockheed Martin
- 海外の量子デバイス開発等に対する国家プロジェクト
- アメリカ
- オランダ
- オーストラリア
- 中国
- D-waveが得意とする組み合わせ最適化問題での競争
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QMCの傾きとD-waveのカーブの傾きがほぼ同じ
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組合せ爆発の指数関数爆発を超えるという意味だったがやや期待はずれ
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D-Waveの解いた問題は巡回セールスマン問題では30+都市程度に相当
量子アニーリングが拓く未来
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多様な使いみちがある技術へ
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無意識に使っている技術へ
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応用、デバイス、ソフトウェア
感想
機械学習の手法であるハミルトニアンモンテカルロ法(HMC)や制限付きボルツマンマシン(RBM)には解析力学や統計力学といった物理の概念が転用されているという事実があります。
本勉強会も機械学習によく見られる最適化問題と量子アニーリングの関連性に言及したものになりました。
私事で恐縮ですが、自分も学部のころに物理実験系の超電導分野の研究室にいたころがあり、そちらで勉強したSQUID等がスライドに出てきたのがとても新鮮でした。
一見関連性の無いように見える理論分野からいかにして将来のデータ分析への応用がなされるかについて、新しく確認することができ、改めて基礎研究の重要性について認識させられる会となりました!