[レポート] アプリケーションのSaaS化を加速させる(EUC307) #reinvent

AWS re:Invent 2022 の「Accelerating SaaS conversion of applications」(EUC307) のセッションレポートです
2023.04.18

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たぬき( @tanuki_tzp )です。

本記事は、AWS re:Invent 2022 のセッションレポートとなります。

セッションについて

概要

  • タイトル

Accelerating SaaS conversion of applications
訳: アプリケーションのSaaS化を加速させる

  • レベル

本セッションのレベルは、300 の上級者向けです。
セッションで紹介されているソリューションやサービス等に対して、ある程度精通している必要があります。

  • セッション概要

Successful organizations strive to expedite application time to market while controlling costs. Unfortunately, refactoring legacy Windows and Linux applications to SaaS can be expensive and time consuming—especially when large numbers of complex applications are involved. In this session, explore how AWS end user computing services can help expedite application “SaaSification” through our cloud-based VDI offerings. Learn about use cases where Amazon AppStream 2.0 can be used to enable highly secure web-based delivery of legacy applications without refactoring or dependencies related to endpoint compatibility and application installation. Learn how Amazon WorkSpaces can help optimize subscription-based application delivery and much more.

日本語訳

成功している組織は、コストを抑えながら、アプリケーションの市場投入までの時間を短縮することに努めています。
残念ながら、従来の Windows および Linux アプリケーションを SaaS にリファクタリングすることは、特に多数の複雑なアプリケーションが関係する場合に、費用と時間がかかる可能性があります。
このセッションでは、AWS エンドユーザーコンピューティングサービスが、クラウドベースの VDI サービスを通じてアプリケーションの「SaaS 化」を促進する方法を探ります。
Amazon AppStream 2.0 を使用して、エンドポイントの互換性やアプリケーションのインストールに関連するリファクタリングや依存関係なしに、レガシーなアプリケーションを安全性の高いウェブベースの配信を可能にするユースケースについて学びます。
Amazon WorkSpaces がサブスクリプションベースのアプリケーション配信の最適化などにどのように役立つかをご覧ください。

  • 関係する AWS サービス
    • Amazon WorkSpaces
    • Amazon WorkSpaces Web
    • Amazon AppStream 2.0
  • スピーカー
    • Gurinder Raju, GM, WorkSpaces & AppStream, Amazon Accelerating SaaS conversion of applications
    • Sascha Gering, Director, Exxeta AG
    • Adam Frisby, Co-Founder, Sine Wave Entertainment

登壇順に記載させていただきました。

セッション動画

セッション内容

アジェンダ

  • SaaS の動向
  • Amazon AppStream 2.0 の概要
  • SaaS の変換手順
  • リソース

SaaS の動向

Forrester 社の調査結果によると、

  • 顧客の 81% が SaaS アプリケーションを望んでいる
  • 顧客の 83% が SaaS のオンライントレーニングやトライアルを望んでいる

という結果が出ています。

83% の顧客は SaaS バージョンのアプリケーションがない場合、アプリケーション自体を顧客が試すことさえしない可能性があります。
SaaS アプリケーションが利用できないことにより、アプリケーションを採用する可能性のあるすべての顧客からの選択肢を排除することになります。

実際に、顧客が何を求め、企業が対応して来たかを見てみましょう。
過去 10 年間の顧客の動向を調べました。
顧客は、従来のビジネスモデルから、マイクロサービスを求め、アプリケーションをよりモデラーにするよう、変革するようになりました。

  • 従来のビジネスモデル
    • モノリシック
    • オンプレミス
    • 多額の先行投資
    • 永続的なライセンスモデル
  • 最新のビジネスモデル
    • 従量課金制のサブスクリプションモデル
    • パブリッククラウド
    • AWS へのアプリケーション移行

レガシーアプリケーションだけがこのような動きをしているわけではなく、新規のアプリケーションにも当てはめることができます。
最新のビジネスモデルに移行することは、収益化までのスピードをあげ、利益を増やすことに対して重要です。

実際に IDC Worldwide Software as a Service and Cloud Software Forecast によると、IT 意思決定者に 19 の異なるカテゴリのソフトウェア・アプリケーションに対して SaaS の利用調査をしたところ、 80% が既に SaaS 製品を利用しているか、早い時期に SaaS を採用しようとしています。
これは、一部のカテゴリのアプリケーションに限った話ではなく、普遍的で、世の中の傾向が「SaaS化」に向かっています。
IDC は、2026年までに SaaS・クラウドソフトウェア分野の売上高が約 2.5 倍になると予測しています。

この傾向に対し、アプリケーションを提供する企業は以下の3つのことが重要です。

  • アプリケーションを書き換えなしで従来通り使用できるようにすること
  • インストール不要でファイアウォールがなく、ローカルデバイスの性能の制約なしにエンドユーザーに到達すること
  • ソリューションがカスタマイズできるモジュール式であること

Amazon AppStream 2.0 の概要

AppStream では、アプリケーションのネイティブバージョンを AWS にインストールします。
アプリケーションは必要なデータとともに 1 つの適切なパッケージに収められ、AppStream により、安全なピクセルストリームを介して Web ブラウザ経由でエンドユーザーに配信されます。

アプリケーションを SaaS 化するために、AppStream を使用すると下記の利点があります。

  • リライトやリファクタリングは不要
  • アプリケーションのスケーリング可能
  • リージョンが選択可能
  • 複数種のインスタンスタイプに対応
  • ブランドロゴの適用が可能
  • フルマネージドパッケージでの従量課金制
  • 単純な管理タスク

より深く AppStream の概要を知るのに、AWS 再入門ブログリレーの記事が役立つかもしれません。

最適なリージョンからの配信

北米、ヨーロッパ、アジアから合計 13 の地域から配信できます。
データソブリンのニーズに対応する際。デプロイ先のリージョンを選択する指標になっています。
また、投資した地域のハブを選択した場合、その戦略に従うことができます。
さらに、顧客の多くは最適な体験を提供するため、アプリケーションの利用地域に最も近い地域を選択しています。

費用

サービスの価格設定には 2 つの要素があります。

  • ストリーミング コスト(インフラストラクチャ コスト)
    • アプリケーションが 1 つのパッケージで必要とするインフラコスト
    • 従量課金制
  • ライセンス料
    • 教育のユースケースに対して多額の補助金が必要
    • 事前にライセンスを保持している場合は追加料金なしで移植可能

顧客

実際に AppStream を使用した SaaS 化を成功させた顧客一覧です。

SaaS の変換手順

Exxeta について

スピーカーを交代し、Sascha Gering 氏の所属する会社 Exxeta の紹介です。

スローガンは"Hightech with a heartbeat."

  • 従業員数約 1200 人
  • 本社はドイツ
  • ヨーロッパの企業のイノベーションと DX を推進
    • 新しいアプリケーションを提供、または、ゼロから構築
    • 既存のアプリケーションは拡張、または、リファクタリング
  • クラウドからアプリケーションを配信する

Exxeta のコア産業は下記です。

  • 自動車会社
  • 金融
  • エネルギーと公益事業

コア産業に対して、Exxeta は、24時間いつでもアプリケーションを利用できるようにしています。これは、顧客にとって重要です。

SaaSの推進力とメリット

Sascha Gering 氏は以前、エネルギー関係の会社で働いており、アプリケーションのクラウドへの適応が緩やかだったため、クラウドでアプリケーションを使うことは考えていませんでした。
最終的にエネルギー系の企業もクラウドへ進むことになりました。

SaaSジャーニー

実際に顧客の一つを例にあげ、システムをオンプレミスからクラウドへ移行した際の軌跡をご紹介いただいています。

6 つのうち、3 つの Web ベースのアプリケーションの移行は簡単に済んだものの、残り 3 つのアプリケーションはデスクトップアプリケーションで、顧客の要望は、デスクトップアプリケーションもクラウド移行することでした。
AWS に何か方法がないか尋ねたところ、AppStream を紹介されました。
AppStream を試したところ、3 カ月でデスクトップアプリケーションをクラウド移行し、ブラウザベースのアプリケーションとして利用できるようになりました。

AppStream はソリューション全体をクラウド移行する可能性を提供しました。

Amazon AppStream 2.0 による価値

  • 管理の簡素化
  • パフォーマンスの向上
  • 環境に依存しないスケール
  • マーケットへの参入速度

SaaS化のステップ(前編)

Step 1 : フリートの種類を選ぶ

  • 常時接続 (Always-On)
  • オンデマンド フリート (On-Demand)
    • 使用パターンが予測でき、固定
  • Elastic フリート (Elastic)
    • 使用パターンが予測できない

Step 2 : 乗せるアプリケーション (OS) を選ぶ

パッケージ化のベースを選びます。

  • Windows
  • Linux

今後利用できる OS は拡張予定です。

Step 3 : フリートインスタンスを選ぶ

アプリケーションに必要な要件にあったインスタンスタイプを選びます。

Sine Wave Entertainment について

スピーカーを交代し、Adam Frisby 氏の所属する会社 Sine Wave Entertainment の紹介です。

Sine Wave は AppStream を使用して、誰もがメタバース (仮想空間) を利用できる方法を紹介します。

  • 2006年設立
  • メタバース(3D仮想空間)の会社
  • 従業員数 60 人
  • 拠点はロンドン
  • 2009年からブラウザベースのメタバース空間を提供している

3D インターネット アプリケーション用のプラットフォームを開発しており、実際に利用している状態です。
多数の顧客が利用している状態ですが、従業員の PC に 3D アプリケーションをインストールし、利用できるようにしようとすると、企業側の IT 部門と問題が起きることがあります。

メタバースには下記のような利点があります。

  • 物理的にそこにいなくても、相手が現実世界と同じようにそこに存在するのと同じ社会的信頼を形成
  • シミュレートが困難、または、再現に費用や時間がかかる環境のシミュレートが容易に可能
  • オンラインイベントのように全体で同じ会話グループに属することなく、個人の意思で会話したいグループに参加することが可能

セッションで紹介されていたデモ動画は、実際に顧客のソリューションの一つです。
Jordan River Waterkeepers — Breakroom Metaverse

これは、Sine Wave が提供する B2B プラットフォームの Breakroom で稼働しています。

Breakroom は AWS を通して、非常にスケーラブルな SaaS ソリューションとして提供されています。

アプリケーションの課題

  • ファイアウォールと IT
    • ファイアウォールの Port を開くことや、従業員の PC にソフトウェアをインストールするまでに時間がかかる
  • グラフィックカード
    • 3D レンダリングするためにはグラフィックカードが PC に搭載されていることが必要
  • アクセシビリティ
    • 500 人がアプリケーションを PC にインストールし、問題なく実行してもらうことは難しい

これらの課題は AppStream を使用することにより、Web 上で配信できるようになったことで解消されます。
それに加え、下記のメリットがあります。

  • 高いサービス継続性 (99.5%) とアクセシビリティ
  • ストリーミングサービスを必要な規模で提供できる

SaaS化のステップ(後編)

Step 4 : カスタマイズ

エンドユーザーとブランドを結びつける体験をブランドにするようにすることが重要です。

AppStreamが提供するカスタマイズの一例は下記です。

  • AppStream は使用したい ID および認証メカニズムについて、多くの選択肢を提供
  • エンドユーザーの設定した内容を永続的に保存し、別のセッションに移植可能
  • エンドユーザーが保存したファイルを S3 や G ドライブ、OneDrive 等に保存し、次回のログイン時に取り出すことが可能
  • セッションの開始・終了時にコードをフックし、コードカスタマイズした動きをさせることが可能
  • TCP/UDP の選択
  • アプリケーションロゴの埋め込み

Step 5 : 起動

AppStream を起動できるリージョンは 13 箇所あります。

Step 6 : スケールと管理

AppStream のスケールと管理のサービスは多数あります。
そして、そのサービスは AWS の他のサービスと統合されています。

AWS Partner Network

AppStream を使用した、SaaS 推進のエキスパートとして、あげられているのは下記の企業です。

リソース

無料で試せるサンプルアプリケーションと、AppStream を始めるためのドキュメントの一覧が紹介されました。

まとめ

AppStream 自体は触ったことがなかったのですが、デモ動画等の実際のユースケースを交えたセッションはイメージが湧きやすく、また、どのように AppStream が活用できるかについて、詳しくなれたと思います。
実際に紹介されていたサンプルコード等を使用して AppStream を触ってみて、AppStream が提供するユーザー体験について感じてみたいと思います。