【レポート】 『アサルトリリィ Last Bullet』「イノチ感じる」キャラを魅力的に見せるための思考スタンスと Spineを中心とした実装アプローチ #CEDEC2021 #classmethod_game
こんにちは!ゲームソリューション部の岡本です。
2021年08月24日から08月26日の間に開催されているCEDEC2021に参加していました。
参加したセッション『アサルトリリィ Last Bullet』「イノチ感じる」キャラを魅力的に見せるための思考スタンスと Spineを中心とした実装アプローチについてレポートします。
セッション概要
- スピーカー
- 武井 俊文 氏 株式会社ポケラボ クリエイティブ部 アートディレクター
- 資料
- CEDiLにて配布
本プロジェクトは、メディアミックスによる舞台・アニメ・ドールなど多岐に渡る展開が大きな魅力となっています。
その中の一つであるゲーム制作において、アニメやゲームオリジナルキャラクターの魅力をいかにしてユーザーに届けるか、どのような思考スタンスでキャラクターの魅力を表現し、グラフィック素材のクオリティと量産の両立を図っていったか、Spineやunityを軸にした仕様設計周りの工夫や量産手法の実例と共に、クリエイティブの裏側を紹介させて頂きます。
セッション詳細
自己紹介
アサルトリリィ Last Bullettとは
- 公式
- ポケラボ、ブシロード、TBS、シャフトによる大型メディアミックスプロジェクトの一つであるゲームアプリ
- アクションドールとフィギュアのハイブリッドコンテンツ「アサルトリリィ」を軸にノベル、部隊、アニメ化等各媒体へ展開中
- 以降、略称「ラスバレ」で記述
ラスバレの素材作りで大切にしていること
- CCRとは?
- Concept(コンセプト)
- Connect(コネクト)
- Reality(リアリティ)
- Concept(コンセプト)
- ユーザを惹きつける要素
- フックとなるコントラストのあるビジュアルで関心を持ってもらう
- 多くのメディアミックスが行われているラスバレではコンセプトの言語化/共通認識化が大事
- 社内では儚くも美しく戦う少女達のキャッチコピーに集約
- コンセプトを女子高生✕巨大な武器✕世界の荒廃感としてチーム内で共有
- 間口をマスメディア向けに広く設けるため、敢えて本作のもう一つの特徴である女の子同士の関係性はコンセプトでは出していない
- プロモーションイメージの統一
- ×:ロゴやキャッチコピーがコンセプトである武器に被っており、奥行表現の邪魔に
- 〇:明朝や淡い色で表示することでイラストの持つ主要イメージを壊さないように
- Connect(コネクト)
- ユーザーを定着させる要素
- エモい関係性・シチュエーションでハマってもらう
- 女の子同士の関係性が重要なファクター
- 特定のペアを絡ませた一部のメモリア(イベントカード)をカップリングメモリアとして排出
- エモい、尊いといった推せるユーザ感情を目指している
- 特に誰が、誰に対して、どういう感情を持ち、何をしているかを明確にする事を重要視している
-
対比
-
バトルと日常を強く対比
-
より日常描写がエモく、尊くなるようにしている
-
-
関係性を立ち絵で表現
-
キーパーソン(主人公)は特定のキャラを向かないように
-
向かい合う、後ろを向き合うといった立ち絵で感情(好意・喧嘩中等)も表現できる
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- Reality(リアリティ)
- ユーザーに想像させる要素
- キャラがアプリ内に存在している、という現実性
-
イラストを動かす事は必須だった
-
空気感/時間軸を発生させる事で、ユーザはその奥の物語を想像/妄想し易くなる
-
関係性/状況の捉え方が明確になり、感情移入しやすくなる
-
-
バトル画面も、2Dでありながらポストエフェクトやリアルな落ち影、エフェクトの環境への影響など可能な限り3Dの要素を取り入れている
-
クリティカルアクションでは大きなカメラワークで世界を広く魅せるため、背景の作画は通常よりも大分広く描いている
- 「CCR=何に拘るか」
- 情報量が多く、完成ビジュアルが明確でないという開発スタート時点において「何に拘り、何を優先するか」を明確にすることで、ユーザに何を伝え届けるべきかの共通認識をプロジェクト全体で共有できる
- ラスバレにおいてはこのシンプル化した認識統一が非常に重要だった
キャラの魅力を届けるためにした4つの選択
- 拘りを届けるためにどうQCDを適切に配分したか
- Choice.01 大部分の設計に2Dを、アニメーションにはSpineを選択
-
- ラスバレではキャラ同士の絡みや、繊細な表情を描写したメモリアイラストを中心商材とする方針だった
- キャラクターへの没入感を大事にしたかった
- 中心商材となるメモリアから全ての画面遷移で、ユーザがキャラクターイメージを崩さないように描写は全て2Dへ
- 課題:武器の表現への課題
- CHARMは原作のフィギュア化にも耐えうるように現実の整合性を重視して作られている
- 変形ギミックの良さは3Dの方が出せる
- 原作のドールファンの期待に2Dで答えられるか
- また仕様上、全ての武器を全てのキャラで使えるようにする必要があった
- 売りであるメモリア内にもCHARMを描写しないといけない。
- 細かなディティールや整合性/変形をどう表現するか。極端な制作工数の増加懸念があった
- CHARMは原作のフィギュア化にも耐えうるように現実の整合性を重視して作られている
- Choice.02:変形武器を活かすための選択
-
- キャラクター部分を2D、武器を3Dと組み合わせた形へ選択。
- Spineモーションと3Dモーションを別軸で持たせることが可能に
- 3Dモデル化する事で詳細画面で立体的な変形をユーザに見せることが可能に
- 3Dモデルを作ってあることを利用し、社内や社外で使えるCHARM viewerを開発
- 3Dモデルをイラストのアタリに使う事で正確なパース、ディティール描写を実現し監修コストを極端に減らすことに成功
- アプリ内アニメの作画資料にも使われている
- キャラクター部分を2D、武器を3Dと組み合わせた形へ選択。
- Choice.03 メモリアアニメーションには自社システムを選択
- 当初はアニメーションにはSpineやLive2D等の利用を検討
- これ等を利用した従来の工程ではイラスト制作と同等のコストが掛かってしまう
- メモリアの月間想定排出数もかなり多かった=チェックする監修者のコストも考えると、現実的な開発コストに収まらなかった
- 低コストでリッチに見せるシネマグラフ的演出に着目
- 動かす部分を目を引く場所に絞り、動かす部分を数値で管理するを検討
- 当初はアニメーションにはSpineやLive2D等の利用を検討
-
- メモリアWAVEシステムを開発
- 数値化、簡略化、半システム化を実現
- これにより、誰でも、短期で、高クオリティアニメーションを量産できるように
- メモリアWAVEシステムを開発
- Choice.04 Spineを使ったアドベンチャーパートを選択
- キャラクターモーションは全てSpineで作成
- アドベンチャーでの表現はどんどん進化している。運用コストとの兼ね合いが肝心。
- 制作人員が限られている中で、運用工数/人員リソースの設計が非常に重要だった。
- Live2Dと比較検証し、教育・導入コストを鑑みてSpineを利用した自社ツールを選択。
- キャラ同士の関係性を大事にする(壊させない)ため、ユーザはキャラに関係させない。所謂神視点となっている。
- そのためキャラクター→ユーザに対する動的な制御は不要
- 「汎用性」「追加が可能な仕組み」の2点を最重要とし制作のシンプル化を徹底。
- 表情の基本は喜怒哀"驚”パーツで構成
- 瞬き・リップシンクはランダム自動制御
- 規則的な動きを開始し、作成者によるクオリティ差、ヒューマンエラーのリスクを回避
- 視線制御はオミット
- Spineでの導入難度と、実装コストから
- 素体共通化による衣装差し替えコストの最適化を最優先
- キャラクターモーションは全てSpineで作成
最後に
Ask the Speaker
- メモリア作成への実際の人員投入はどれくらいでしょうか?
- 投入数一人でほぼやっています。
- 大体月間15~20枚程度を一人で作成しています。
- 実装数とクオリティのバランスはどう決めていますか?
- 一概には言えませんが、実装当初は多く作成しました。
- 最初にリリースした際のキャラ数が多く(19キャラ)枚数を減らしてしまうと、お気に入りのキャラの実装までに時間が掛かってしまう=ユーザ離れを懸念しました。
- メモリアを作成されている方にはどういうスキルが求められましたか?
-
Viewerや自動化はテクニカルアーティストが担当しています。テクニカルアーティストは素材、ツール作成担当です。
-
Spineやブレンド等はエンジニアが絡んでいます。
-
メモリア作りは、Spineやブレンドは使わずほぼアニメータ一人で完結しています。
- 全てのアニメーションの仕組み作りは私が、メモリアは一人の方が、その方が空いている時間でアドベンチャーパート作りもしています。
-
- ちびキャラのモーション作りも大変だったのではないでしょうか。
- ちびキャラモーションは最初に180モーション作成し、ユニークモーションが増えるたびにちょこちょこ増やしています。 そのため、リリースまでは忙しいが、運用に入るとちびキャラモーションはほぼ流用出来ています。
- GvG負荷対策として、一つのバイナリに180モーション全部を入れています。
- ちびキャラモーションは頭身が同じため、モーションを流用出来ています。
感想
- ディレクション、マネジメントの面が素晴らしいセッションでした。
- プロジェクトにおけるコンセプトの共通認識を持たせることや、「何に拘り、何を優先するか」を明確にする手法はゲーム開発に限らず、色々なプロジェクトで活用出来るものだと思います。
ポケラボさんではアサルトリリィラストバレット関連のセッションを他にも3つ開催されていました。他3つのセッションもレポートしていますので興味があれば是非見てみて下さい。
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