[レポート] Looker StudioからLookerへの移行で『スタディサプリ』の事業支援とガバナンス強化の両方を改善 #GoogleCloudDay
2023年05月23日(火)〜25日(木)の3日間に渡って行われている『Google Cloud Day ’23 Tour』。
当エントリでは、23日に行われたセッション「Looker Studio から Looker への移行で『スタディサプリ』の事業支援とガバナンス強化の両方を改善」の内容をレポートします。
セッション概要
当セッションの概要情報は以下の通りです。
Looker Studio から Looker への移行で『スタディサプリ』の事業支援とガバナンス強化の両方を改善
登壇者:
林田 祐輝氏(株式会社リクルート)
プロダクト統括本部 プロダクト開発統括室 データ推進室 販促領域データソリューション4ユニット(まなび) まなびデータソリューション部 まなびD3Mグループ グループマネージャー
セッション概要:
リクルートのまなび事業で展開しているコーチング サービスにおいて、コーチング業務のためのモニタリング環境を Looker Studio で提供していました。
当環境は、ユーザー管理などの運用面、利用促進のためのアクセス性などで課題があり、よりガバナンスが強く、活用しやすいモニタリング環境へと進化するべく、Looker への移行を行いました。
その導入・移行に向けて、POC から本格導入までの流れをお話しします。
セッションレポート
はじめに
- 自己紹介
- 本日お話ししたいこと
- Lookerへの移行について
- 無料版のLooker Studioを使っていたが、幾つかの課題がありそれらを解消するため、また活用の幅を広げるためにLookerへの移行を決断
- PoCを通しての振り返り
- Looker StudioからLookerへの移行はPoCを経る形となった
- Lookerへの移行について
事業紹介
- 『スタディサプリ』について
- 小学生から高校生・大人まで幅広い年齢の人が学べるオンライン学習サービス
- コーチングサービスの概要
- 合格特訓コース
- 個別指導コース
- コーチ/生徒/リクルートの連携
- コーチに対してLookerダッシュボードを提供している。ダッシュボードではチャット業務の結果を集計したものや、受け持った生徒の課題進捗状況などを見れるようになっている
プロジェクト概要
- 目的
- レポートのUXを高め、アクセス数を増やす
- Lookerを使うことで運用開発の両面での効率化を図る
- 背景
- アクセス履歴が取得出来ないため、利用状況を定量的に観測出来ていなかった
- 追加のダッシュボード開発に関する想定(管理が複雑になるのでは?)
- Looker vs Looker Studio
- 以下の3点に課題あり。以下に記載した内容から、有償版(Looker)にしたとしても一定の成果が見込めると判断
- コンテンツ管理
- 複数ダッシュボードを持った時の導線
- ユーザーによって見える範囲を制御
- LookerであればHTMLを使ったトップページ、ボードを使って1つの画面から複数のダッシュボードを行き来させるのは実現出来そうと判断
- データアクセスの制御については ユーザー属性を使ってLookMLに対してフィルタを掛けることで対応可能
- アカウント管理
- 数百名単位で在籍しているコーチに対して効率の良いアカウント管理を出来るか、が論点
- 運良く、コーチのアカウントについてはgoogleアカウントを払い出す形になっていたのでここをうまく活用した(LookerアカウントにSAMLログインする形を採った)
- アクセス履歴
- Lookerではユーザーのアクティビティを確認出来るメタデータが用意されている
- アクセス履歴の外部エクスポートも容易。BigQueryにこのアクセス履歴を溜めることによって、Slack通知を使ったアクセス催促機能の実装に繋がった
- コンテンツ管理
- 以下の3点に課題あり。以下に記載した内容から、有償版(Looker)にしたとしても一定の成果が見込めると判断
本番運用の振り返り
- PoCプロジェクトのタイムライン:期間はおよそ半年
- 要件定義
- 開発
- リリース
- 検証期間
- 効果測定
- 要件定義・開発のポイント
- アクセス性を高めるという狙いがあったので、より視覚的に分かりやすいデザインへと変更した
- Looker Studioでは表のみだったが、Lookerでは指標毎にグラフを追加
- コーチ全体の平均とコーチ個人の数値比較を出来るようにした
- その他以下のポイントに関しても改善を行った
- アクセス履歴:ログを使った管理者向けのダッシュボードを作成
- UX面の改良:PC/モバイルに応じてレイアウトを出し分ける、Slack通知機能の活用
- アカウント+権限管理:Googleアカウントでのログイン、ユーザー属性を使ったフィルター
- アクセス性を高めるという狙いがあったので、より視覚的に分かりやすいデザインへと変更した
- リリース〜検証期間まで
- 導入フォロー:説明会の実施、資料を用いて使い方やLooker Studioとの違いを説明
- 運用:Weekly Access Userを指標としてコーチのアクセス率を確認
- 効果検証
- 定量調査:事業への影響、コーチ業務への影響の2つの観点から調査
- 事業影響は「課金率の相関関係」を確認:検証期間(約15週)において、利用週数が多いほど、緩やかではあるが課金率が高いことを確認
- コーチの業務行動にも良い影響を及ぼしていることが分かった
- 定性調査:コーチに向けたアンケートの実施、各種ヒアリング(満足度、業務活用度、不満点)
- アンケートからの満足度:98.1%のコーチが満足と回答、UIの変更が好意的だった
- 定量調査:事業への影響、コーチ業務への影響の2つの観点から調査
- 本番運用の振り返り:
- 定量面:
- 事業指標である「課金継続率」に一定の相関関係があること、アクセス数をKPIにすることでどれくらい効果があるか、を確認出来た
- 今後、ダッシュボードのUXを上げていくことでよりアクセス数を高めていくというところを目標に置いて追加開発とセットで証明した
- 定性面:
- 前述のように「コンテンツ管理」「アクセス履歴」「アカウント管理」の面で課題を解決出来た
- アクセス履歴とSlack連携を組み合わせた「アクセスを促す施策」も実施出来た
- 将来性
- 追加のダッシュボード開発を柔軟に出来る土台作りが出来た
- Lookerの「埋め込み分析(Embed Analytics)」を活用したUXの更なる改善の将来性
- 定量面:
- 本番導入を通しての振り返り
- 良かったところ
- 単純移行ではなく、グラフやUX、わかり易さを追求した改善が出来た
- 課題点・将来に向けて
- グラフを追加したことにより、画面の描画スピードがLooker Studioの頃より悪化してしまった
- アラートの効果測定等、施策に対してのPDCAまで手が回らなかった
- コーチの業務アプリへのEmbed Analyticsを実現していきたい
- 良かったところ
総括
- Lookerへの移行:
- Looker Studio(旧:データポータル)からLookerへの移行を行った
- コストと引き換えにガバナンスや活用最大化等のメリットを得ることが出来た
- Looker Studioだとアクセス管理、コンテンツ管理、アカウント管理の面で難しい面があった
- 大量ユーザー向けにダッシュボード運用をする場合はLookerの方が効率が良い
- PoCを通しての振り返り
- PoCを経て本番導入を行うことが出来た
- 導入に際してはPoCの効果測定を実施し、定性・定量・将来性を踏まえた検討を行った
- 利用頻度と課金率への影響を分析し、利用頻度を上げることをKPIにした
- 満足度高く、予定していた課題解決が出来た
まとめ
という訳で、『Google Cloud Day ’23 Tour』のセッション「Looker Studio から Looker への移行で『スタディサプリ』の事業支援とガバナンス強化の両方を改善」の聴講レポートでした。
今回登壇頂いたリクルート様の様に、「データの可視化」というアクションにおいては、取り組み易さや始め易さの観点から「Looker Studio → Looker」という流れを経ていくケースも大いに有り得るパターンだと考えています。そんなケースに直面したユーザーにとっては、今回のセッションは非常に参考になるのではないでしょうか。