[レポート] PMスキル・評価制度を導入し、アウトカムを生み出すプロダクトマネジメント集団へ進化する道のりの共有 #pmconf2021

2021.11.08

この記事は公開されてから1年以上経過しています。情報が古い可能性がありますので、ご注意ください。

2021年10月26日(火)、プロダクトマネジメントに携わる人たちが共に学び、切磋琢磨するイベント『プロダクトマネージャーカンファレンス2021』がオンライン形式で開催されました。

当エントリでは、ブレイクアウトセッション『PMスキル・評価制度を導入し、アウトカムを生み出すプロダクトマネジメント集団へ進化する道のりの共有』の参加(視聴)レポートをお届けします。

目次

 

セッション概要

セッション概要は以下の通りです。

[タイトル]
PMスキル・評価制度を導入し、アウトカムを生み出すプロダクトマネジメント集団へ進化する道のりの共有

[登壇者]
・野口 大貴氏(Retty株式会社 / プロダクト部門執行役員VPoP)

[セッション概要]
Rettyがプロジェクトマネジメント一辺倒な組織から、アウトカムドリブンな開発ができるプロダクトマネジメントが根付いた組織に至るまでの成長の経過をお話します。

具体的な取り組みの一例を挙げると、私たちは力のあるプロダクトマネージャーを育てるために、PMのスキル定義や評価制度を導入しました。

この試みによって浮き彫りになった課題、チームに不足していたロードマップ作成、UXリサーチ、データ分析などのスキルをどの様に向上していったのか具体的な取り組みもご紹介します。

Rettyが組織としてユーザーさんと飲食店さんにアウトカムを届けるために日々悪戦苦闘してきたストーリーが、皆さんのプロダクト組織の「非連続な」成長の参考になれば幸いです。
(※以上、公式サイトより引用)

 

セッションレポート

 

はじめに

  • 本セッションでのTake Away(持ち帰っていって頂きたいもの)
    • PM組織設計を支えるマネジメント・経営層
    • 自身の成長やキャリアイメージの解像度を上げたい
    • 開発組織をもっと良くしたいあなた

 

組織改善に至るまでの歴史・経緯

  • 開発系企画職=プロダクトマネージャー・プランナー合計10名程の組織
  • 2019年まではプロダクトマネージャー不在の組織だった
    • 従来、「プランナー」という職種が開発企画・ディレクションを担当
    • Whyを考えられる仕組みと人が不足しており、一部を覗いた大半がプロジェクトマネージャー役割に終始
    • 職種名や役割の見直しの声は過去あったが何度か頓挫していた
  • 2019年頭:マネージャーをプロダクトマネージャーにしちゃう?
    • とりあえず、名前だけでも変えちゃえ!と提案(Manager → Product Manager)
      • 反対にあう「行動や体制が伴っていないのに名前だけ変えても意味が無いのでは?」(by VPoE)
    • 実のないプロダクトマネージャーを生み出していた恐れ
      • 当時は理想像も無ければWhyを考える時間も開発プロセスも無かった。
    • プロダクトマネージャー職種導入はOutputに過ぎない
      • 最終目的はアウトカム(Outcome)=ユーザー・クライアントに提供するプロダクト価値の向上

 

プロダクトマネジメント集団を目指して組織改善に着手

段階を踏んで組織改善を行うことに。以下の順番で進めていった。

1.開発プロセス・体制の変更

  • Large Scale Scrum(LeSS)の導入
    • 下記エントリを参照:
    • Less = 大規模スクラム。1つのプロダクトバックログを複数のスクラムチームで開発する
    • 開発体制Before/After
      • Before: プランナーはWhen・How中心の役割
      • After: 総勢64名、大規模スクラムに関わるのは40名
        • プロダクト部門はWhatとWhyに責任を持つ
        • エンジニアリング部門はHowに責任を持つ
        • プロダクトオーナーは全員でユーザーに価値を届けるプロダクトバックログを作る
    • Less導入を機に、チームが自走し、プランナーがよりWhyを求められるようになった

2.プロダクトマネージャー理想像・スキルの言語化

  • 自分たちの今を見つめ直し、理想の言語化に着手
  • 事業・組織フェイズを整理しながらディスカッション
  • 食を通じて世界中の人々をHappyに」:そのために「なんとかする」力が求められる
  • プロダクトマネージャーの理想を言語化
    • 理想像:Rettyの未来に向かって、突破できる人
  • 理想のプロダクトマネージャー像を踏まえ、プロダクトマネージャーの必要スキルを定義
    • 課題発見:
      • 課題を的確に発見し、周りを巻き込むことが出来る
      • 分析出身者が得意
    • 意思決定:
      • 課題を突破するための意思決定、メンバー習熟度では最難関
      • 担当領域プロダクトのゴール、ロードマップ、優先度を決めていく力
      • プロダクトマネージャーにとって重要だが、習熟の順番は後
    • 推進力:
      • 所謂「ディレクション能力」。プランナー・プロダクトマネージャーを恥まえた場合、このスキルから習熟していくのがスタンダード
      • 信頼を受けながら周りを巻き込み推進する
    • 最後の砦:
      • プロダクトを守る最後の砦。抜けがちだが、事業を進める上で肝要
      • リスク管理力
      • 障害のような有事の際の対応力
    • 英知:
      • 課題を的確に発見し、周りを巻き込むことが出来る
      • プロダクト開発における基本要素をひとまとめ
  • メンバーの特性に合わせて成長ロードマップを変えていく

3.評価組み込み・プロダクトマネージャーロール爆誕

  • スキル要素を整え、プロダクトマネージャー職種爆誕
  • 半年間の試験運用を経て評価制度に組み込み
    • エンジニア/デザイナー/セールス/プロダクトマネージャー/その他総合職(企画職全般)
  • プランナーメンバー評価に活用し、半期に1回スキル評価を実施
  • 人員が少なく不明瞭な領域に関しては、抽象的粒度に留める
  • 人数規模や組織課題によって評価制度の作り込みは異なる

4.アウトカム創出組織に進化するための打ち手

  • スキルや評価制度は導入するだけでは意味がない。それを踏まえていかに「プロダクト価値」を向上させるか。
  • 「ビルドトラップ本」の輪読会を行った
  • スプリントイベントへの「アウトカム」の組み込み
    • 行動習慣を変えるため。スプリントゴールで「アウトプット」と「アウトカム」の両方を明記するようにした。全社会議や四半期毎に良かった「アウトカム」の発表なども実施
  • より良いユーザーストーリーのために:課題発見力の強化
  • Google BigQuery Expert:元来分析チーム新卒向けだったBigQuery力向上プログラムをプランナー向けに開放
  • UXリサーチの組織展開:従来一部で行われていた「ユーザーインタビュー」を分析チーム主導でプロダクトマネージャーと協力して組織全体に展開

 

スキル・評価制度導入と組織改善施策によるアウトカム

  • ミドル〜ジュニアレベルのスキルがアップし、自走して「Why」から考えられるプロダクトマネージャー・プランナーを増やすことが出来た
  • プロダクトの理想・アウトカムを目指すプロダクトマネージャー組織へ:リリース物やアウトプットでなく、徐々に「アウトカム」を主眼に開発が出来るようになった
  • コロナ禍の変化に対応しながらプロダクト成果を創出

 

総括

  • 振り返り
    • 1.開発プロセス・体制の変更:まずは習慣・仕組みを変える
    • 2.プロダクトマネージャー理想像・スキルの言語化:言語化からの共通理解へ
    • 3.評価組み込み・プロダクトマネージャーロール爆誕:評価・目標に反映
    • 4.アウトカム創出組織に進化するための打ち手:整った基盤に対して施策を打つ
  • アウトカムを生み出すプロダクトマネジメント集団への道のりはまだ道半ば
  • 今後に向けてやっていきたいこと
    • 事業面:Rettyならではの体験の構築、ネット予約PMFなど
    • 開発プロセス面:プロダクトディスカバリーの強化
    • 組織面:育成強化

 

まとめ

という訳で、プロダクトマネージャーカンファレンス2021のセッション『PMスキル・評価制度を導入し、アウトカムを生み出すプロダクトマネジメント集団へ進化する道のりの共有』視聴レポートでした。

プロダクトマネージャーの定義から組織を踏まえた体制作りに至るまで、非常に参考となる指針が数多く散りばめられていたセッションでした。LeSS(大規模スクラム)についても非常に興味深いところではありますが、ここはまだ遠い将来の話かな...とも個人的には思った次第です(でも目指していきたいポイントではあると思う)