[レポート] D-6 エンジニアの思いつきをプロダクトにした話 〜SkyWayの9年間のHARD THINGS〜 – プロダクトマネージャーカンファレンス2022 #pmconf2022
2022年11月02日(水)、プロダクトマネジメントに携わる人たちが共に学び、切磋琢磨するイベント『プロダクトマネージャーカンファレンス2022』がオンライン形式で開催されました。
当エントリでは、ブレイクアウトセッション『エンジニアの思いつきをプロダクトにした話 〜SkyWayの9年間のHARD THINGS〜』の参加(視聴)レポートをお届けします。
目次
セッション概要
セッション概要は以下の通りです。
エンジニアの思いつきをプロダクトにした話 〜SkyWayの9年間のHARD THINGS〜
[登壇者]
・大津谷 亮祐氏(NTTコミュニケーションズ株式会社/SkyWay推進室長)
[セッション概要]
プロダクトアウトやシーズ志向は失敗の元であるかのように言われることがあります。確かに顧客にまったく向き合わずに成功するのは難しいでしょう。しかし、もしコア技術を持っているとしたら、それを活かして参入障壁の高いプロダクトを作りたくなるのではないでしょうか。
私は、日系大企業の典型とも言えるNTTコミュニケーションズのR&D部門でWebRTCというテクノロジーに出会い、いわば「エンジニアの思いつき」を基にして「SkyWay」というPaaSを立ち上げ、失敗を繰り返しながらなんとか成長させてきました。その過程で学んだ、テクノロジードリブンのプロダクトを成功させる方法についてお話します。
(※以上、公式サイトより引用)
セッションレポート
自己紹介
- シリアルイントレプレナー(社内連続起業家)
- SkyWayなど4プロダクトとPM&アジャイル人材育成を所掌
- SkyWay:ビデオ通話のSDK(WebRTC PaaS)
- 数十行のプログラムでアプリやWebサイトにビデオ・音声通話を追加できる
- 本日はエンジニアの「思いつき」をプロダクトとして成立させた9年間の学びを紹介
- テクノロジードリブンが悪いわけじゃない。悪いのはマーケットから背を向けたテクノロジードリブン
HARD THINGS(1). SkyWayのはじまり
- 社内のHTML5トップエンジニアから、WebRTCに関するライブラリを使ったサービス化の提案話が出た
- 技術とソリューションだけ決めて仮説検証もせず開発に着手し、半年後に無料のβ版としてリリース
- Howしか決めなかった
- 技術とソリューションしか決めなかった
- エンジニアの思いつきをプロダクトにしてしまった:その後どうなったか?
- Problem Solution Fitを達成:無料β版リリース後、開発者が順調に増加。顧客の課題を解決していないが、解決策を作れた(=一応Problem Solution Fit)
- 更にProduct Market Fitも達成:顧客がプロダクトのどこに価値を感じているかは分からないが、価値を感じ、対価を払いたがっている(=Product Market Fit)状態に
- しかし成長の限界も見えてきた
- エンジニアの思いつきで新機能を開発・リリース
- 新機能をリリースしても、必要性が低く使われないケースが発生
- 貴重な開発リソースを浪費し、メンバーの不安や不満も募る
- プロダクトマネージャーをアサイン
- 「なんちゃって」を解消し、プロダクトチームと開発チームを作成。それぞれにリードをアサイン
- プロダクトマネージャとやったこと
- (1).プロダクトの4階層のCore/Whyを定義:通話の歴史を振り返りながらミッションステートメントを考えた
- ミッションステートメント:「リアルタイムコミュニケーションを身近な技術に変え 世界中のソフトウェアエンジニアとともに世の中に革新を起こす」
- (2).リーンキャンバスを定義し現状を理解しようとした
- テクノロジードリブンによるプロダクトの作り方を発見
- (1).プロダクトの4階層のCore/Whyを定義:通話の歴史を振り返りながらミッションステートメントを考えた
- [学び] テクノロジードリブンのプロダクトの作り方
- 一般的なリーンキャンバスの使い方:1.顧客 2.課題 3.価値 4.ソリューション 9.圧倒的な優位性(ここではテクノロジーを当てはめている)
- 顧客視点でソリューションを考える
- テクノロジーが出てくるのは一番最後
- 1パターンだけでなく沢山書いて、その中でベストを選ぶ
- テクノロジードリブンの場合、まず「逆順」から
- 1.テクノロジーを活かすソリューションを考える
- 2.顧客の課題を解決出来るかを確かめる
- 3.リーンキャンバスができたら後は同じ:アンケート、ユーザーインタビュー、ユーザーテストなどの仮説検証等をしてから作り始めよう
HARD THINGS(2). SkyWayの事業化
- 事業化の「死の谷」:R&Dの技術の事業化は難しく、死の谷(デスバレー)と呼ばれる
- SkyWayの事業化にも時間が掛かった:PMFの達成後社内を行脚し事業化を相談したが断られ続けた
- 最大の理由:技術(WebRTC)が未成熟だった
- これはNTTに限らずどの企業にも起こり得る
- 一方で顧客の期待はどんどん高まる(有償サービスやミッションクリティカルなサービスに採用されていく)
- 諦めずに社内行脚を続け、4年後に無事に事業化
- 成功の秘訣:諦めなかったこと/「ちゃんと有償で使いたい」という顧客の声が社内の説得に役立った
- SkyWay以降のプロダクトはスムーズに事業化
- 不思議に思い、差分を探し続けてコツを発見
- [学び] 事業化の「死の谷」を越える4つのコツ
- [1].社内で信用・信頼されるようになる
- 事業化の実績があれば次もスムーズに事業化可能
- [2].社内プロモーションに力を入れる
- プロトタイプは社内公開し使ってもらう
- [3].プロトタイプ段階から相談を始める
- 完成してから売り込みに行くのではなく、プロトタイプの段階から相談し、一緒にプロダクトを作る
- [4].顧客の声を使う
- 社員がプロダクトの良さを語るよりも、顧客の「有償で使いたい」という声の方が説得力がある
- バーニングニーズを解決し、PMFを達成し、ファーストユーザーがついている、一定の売上が見込めるとなると断る理由がない
- [1].社内で信用・信頼されるようになる
HARD THINGS(3). SkyWay最大のリスク
- SkyWayが抱えていた外部リスク
- WebRTC対応ブラウザのシェアは僅か30%だった
- 能動的に「外部リスク」に関わった
- WebRTCの標準化に参加
- 日本にWebRTCのコミュニティを作った
- 結果「賭け」に勝った
- WebRTC対応ブラウザのシェアを95%にまで拡大
- [学び] コントロールできないリスクと向き合う方法
- いつ応用できるのか?
- 規制緩和が必要な市場に参入する時
- 規制強化で市場が吹き飛ぶかもしれない時
- プラットフォームの動向に左右される時
- SkyWayは能動的にリスクに向き合った
- 業界団体を作る
- イベントを開催してPRする
- ユーザー会を作る
- 権威団体にロビイングする
- いつ応用できるのか?
まとめ
という訳で、プロダクトマネージャーカンファレンス2022のセッション『エンジニアの思いつきをプロダクトにした話 〜SkyWayの9年間のHARD THINGS〜』の視聴レポートでした。