デジタルツインを理解するために4つの要素で整理してみました
こんにちは、製造ビジネステクノロジー部の熊膳です。当エントリは クラスメソッド発 製造業 Advent Calendar 2024の16日目のエントリです。
私が所属する製造ビジネステクノロジー部は、「クラウドとリアルの融合により製造業の新しい可能性を切り開く」を掲げて日々活動しています。当エントリでは、このクラウドとリアルの融合の一つの形である「デジタルツイン」について、個人的につらつら考えてみたという内容になります。私自身専門家ではないので、こういうものかなという分類をしながら、どのようなメリットや使い所があるのかなっていうのを探っていこうと思います。
本エントリとは直接関係しませんが、DevelopersIOにはデジタルツインをテーマにしたブログも多数あります、参考まで。
デジタルツインとは?
デジタルツイン、聞いたことあると思います。
総務庁のページには、以下のページに説明があります。
デジタルツインとは
現実空間を仮想空間に再現する従来からある概念として「デジタルツイン」がある。
デジタルツイン(Digital Twin)とは、現実世界から集めたデータを基にデジタルな仮想空間上に双子(ツイン)を構築し、様々なシミュレーションを行う技術である。
for Kidsのページもありますね。
インターネットに接続(せつぞく)した機器などを活用して現実(げんじつ)空間の情報(じょうほう)を取得し、サイバー空間内に現実空間の環境(きょう)を再現(さいげん)することを、デジタルツインと呼(よ)びます。
AWSのブログにもデジタルツインの記事がありました。
デジタルツイン(DT)は、個々の物理システムの生きたデジタル表現であり、データで動的に更新されて、物理システムの実際の構造、状態、および動作を模倣し、ビジネスの成果を促進します。
厳密な定義はおいておいて、以下の要素のことだと思えば良さそうです。
- 現実にあるものをデジタル上に再現する
- リアルタイムに反映
- シミュレーションできる
- 双方向
全項目必須だとかなり範囲狭くなるので。1番目が必須条件なのかなと思いました(それって単なるデジタル化のような気もしますが)。また、アートとしてのデジタルツインは含めないことにします。
どういうときに役に立ちそうか?
現実世界をデジタル上に再現するというデジタルツインって、一体どんなときに役に立つのでしょうか。何を解決できるんでしょうか。上記の要素で考えてみます。あくまで私見です。
現実をデジタル上に再現する
まずはベースの「現実をデジタル上に再現する」です。言い換えると現実のコピーをデジタル上に作るです。
再現性の程度はあるにせよ、現実を可視化する方法としてこのパターンは多くありますよね。
例えば、以下の例を挙げることができます。
- デジタル地図(例:Google Map)
- 建物、工場、不動産などの3Dモデル(例:Matterport)
- ドローンによる地形データ
- 3Dスキャナー
特徴やメリットはこんな感じでしょうか。
- 場所の制約がない。どこにいてもアクセスできる。
- 不動産、工場見学
- 設備配置の可視化
- 災害時など直接観察しにくい対象へのアクセス
- 物理的な制約がない。対象の観察、分析が可能。
- 物理的に計測器が入りにくい箇所の測定
- 拡大、縮小、回転など観測に適したサイズ、向きにすることが可能
- 複数の対象を並べて比較
- デジタルによる付加価値を追加できる。説明、注釈など。
- スキャンしたデータへのラベル付与
- 地図に付加情報付与
- メモ書き
とにかくデジタル化することで、デジタルの恩恵を受けることができるのは大きいです。デジタルツインのスタート地点です。これだけでも恩恵を受ける分野は多そうです。
リアルタイムに反映
次は「リアルタイムに反映」です。反映させるものとしては現実のデータそのものや情報が考えられます。
例としては、
- センサーの値をデジタル上に反映させる
- 温度、湿度、照度、圧力、振動、音、水位、、、
- 鍵が開いている
- イベントを可視化する
- 正常に動作している
- 異常が発生している
- 状態が更新された
- 他のデータを重ねて情報を付与する
- 人の動線
- 渋滞が発生している
- 在庫がなくなっている
- 手術時の身体状況
人間もしくはプログラムが、デジタル上で様々な判断をするために、現実の情報をリアルタイムに反映し、それを活用するという使い方になります。デジタルツインぽくなってきましたね。リアルタイムに反映することで、現状把握と即時対応が可能になります。
気になるのは、データを単にグラフや表として表示するダッシュボードと何が違うのかという点です。目的としては近いものがありますが、あえてデジタルツインという形に意味があると考えると、「人間にとって理解しやすい」ということかなと思います。現実と双子という特性上、状況自体の解釈は不要なので、事象にのみフォーカスすればよいためです。一方、表やグラフは解釈が必要なため、ロジカルに判断する必要がある場合に向いていると考えます。このへんケースバイケースなんだろうなとは思いますが、一旦こう考えておきます。
シミュレーションできる
続いて「シミュレーションできる」です。個人的にはこれがデジタルツインの真髄なのかなって思ってます。
製造業を含め現実世界でいろいろなことを試すには、コストも時間もかかります。これを先にデジタル上でシミュレーションやPoCを実施し、あらかじめ試すというのはかなり魅力的です。
- 最適化
- 設備配置と生産効率
- 人と搬送車
- 生産計画
- 仕掛品・在庫
- エネルギー・CO2排出量
- 予知保全
- 稼働と消耗
- 故障
- 災害予測
- 教育
- 保守作業
- 仮想実習
どれだけデジタル側が現実に近いのかによって精度問題は出てきますが、精度にあまりかかわらない部分に関しては活用できますし、精度も織り込み済みで予測立てる材料には有効だと思います。
精度という点では、シミュレーションの精度も重要な要素です。この部分に関しては生成AIがうまく活用できるのではないかと考えています。人の動きなど以前はゲームエンジンなどを利用しないとできなかった部分も、生成AIを使うことで効率よくシミュレーションできそうです。
このシミュレーションできるデジタルツインというのは、現時点でそれほど多く実現できていないのかなぁと考えています。昨年、今年といろいろな製造系展示会に参加しましたが、デジタルツインのキーワードはあるものの、デジタルで試すというものはそれほど多くありませんでした。ということは、逆にチャンスですね。クラスメソッドのようにデジタル側を得意としている会社は、このデジタル上でシミュレーションし現実世界に反映させる部分において、もっとグイグイやっていかないといけないなと思います。
双方向
最後に「双方向」です。現実世界→デジタルだけでなく、デジタル→現実世界です。デジタル上で操作したものが現実に再現するというのは、なかなか夢があります。
双方向に関しては、上記の3つの観点のある意味裏返しになるのかなって思ってます。
- デジタルのアウトプットを現実側に反映する
- リアルタイム
- シミュレーション結果を元に反映
現実世界のものがデジタル上に再現され、デジタル側が得意な処理、分析、シミュレーションなどを実施し、それをまた現実世界に反映する。そしてその結果をまたデジタル側に再現し、、、、とぐるぐる回るイメージです。ここまでくると、どちらが正でも副でもなく、まさにツインとなる気がしてます。
おわりに
「クラウドとリアルの融合」というキーワードから、デジタルツインについて以下の4つに分類して考えてみました。
- 現実にあるものをデジタル上に再現する
- リアルタイムに反映
- シミュレーションできる
- 双方向
考えれば考えるほど、デジタルツインは重要なコンセプトだと思います。デジタルが現実を加速するというのは、むちゃくちゃ夢があるし魅力的です。ここぜひやっていきたいです。
もちろん一気に理想的なものを作るのはまだまだ解決しないといけない要素があります。デジタルツインを実現するためには、現場側だけでも、デジタル側だけでも成り立たず、両方を理解していく必要があるので、難易度高いです。ただやれることはいっぱいあるので、我々の出番かなって思ってます。
まとめにならないまとめですが、デジタルツインに関して興味を持つ人が増えるきっかけになればと思います。