Route 53 で管理する独自ドメインをさくらインターネットのメールサービスで使ってみた

Route 53 で管理する独自ドメインをさくらインターネットのメールサービスで使ってみた

Route 53 で管理している独自ドメインを使いながら、さくらインターネットのメールサービスでメール運用する方法を実装・検証してみました。DNS設定から送受信確認まで、その手順と設定値をご紹介します。
2026.08.09

はじめに

テクニカルサポートの 片方 です。

Amazon Route 53 で独自ドメインを管理している場合でも、Amazon SES で送受信基盤を自前構築したり Google Workspace を契約したりせず、さくらインターネットのメールサービスをそのまま使いたいケースがあります。
Web サイトや DNS は AWS 側で管理しつつ、メールアドレスの作成やメールボックスの運用は使い慣れたさくらインターネットで行いたい、といった構成です。

今回、Route 53 で管理している独自ドメインでさくらインターネットのメールサービスを利用する機会があったため、実際に設定してみました。本ブログで扱う内容は以下です。

  • さくらインターネット側で独自ドメインとメールアドレスを作成する
  • Route 53 に MX レコードを設定し、受信メールをさくらインターネットへ配送する
  • SPF 用の TXT レコードを設定する
  • Web メールから外部メールアドレスとの送受信、および SPF の認証結果を確認する

なお、DKIM と DMARC は本ブログでは扱いません。本番運用では設定を推奨するため、末尾で補足します。

本ブログは、DNS の権威サーバーが Route 53 であり、対象ドメインの DNS レコードを Route 53 のパブリックホストゾーンで管理していることを前提とします。

構成

DNS は Route 53、メールボックスはさくらインターネットという分離構成です。

013

項目
独自ドメイン test-hp.click
DNS 管理 Route 53
メールサービス さくらのレンタルサーバ(さくらのメールボックス、さくらのビジネスメールでも同様)
作成するメールアドレス info@test-hp.click
MX レコードの値 10 <初期ドメイン>.sakura.ne.jp
SPF レコードの値 "v=spf1 a:<初期ドメイン>.sakura.ne.jp mx ~all"
TTL 300

実際の作業では、test-hp.click を自身のドメイン名に、<初期ドメイン> をさくらインターネットのサーバー情報で確認した値に読み替えてください。

前提条件

AWS 側

  • AWS アカウントを作成済みであること
  • Route 53 で独自ドメインを登録済みであること
  • 対象ドメインの「登録者連絡先メールアドレスの検証」が、Route 53 のコンソール上で検証済みになっていること
  • 対象ドメインのパブリックホストゾーンが存在し、DNS レコードを編集できること

さくらインターネット側

  • さくらインターネットの会員登録が完了していること
  • 以下のいずれかのメールサービスを契約済みであること
    • さくらのレンタルサーバ
    • さくらのメールボックス
    • さくらのビジネスメール
  • 対象サービスのコントロールパネルへログインできること

注意点

本ブログでは DNS の管理を Route 53 に集約するため、さくらインターネットのコントロールパネル上で案内されるネームサーバーの変更は行いません。メール配送や送信元ドメイン認証に必要な DNS レコードは、さくらインターネット側で案内される値を確認したうえで Route 53 のホストゾーンに設定します。

すでに対象ドメインで Web サイトや別のメールサービスを運用している場合、既存の MX レコードや TXT レコードを上書きすると、メール受信や外部サービスとの連携に影響する可能性があります。本番環境で設定する前に、既存の DNS レコードを確認し、必要に応じて控えを取ってから作業することをお勧めします。

実装してみた

作業の流れは以下のとおりです。

  1. さくらインターネットのサーバーコントロールパネルに独自ドメインを追加する
  2. 独自ドメインのメールアドレスを作成する
  3. サーバー情報から初期ドメイン(ホスト名)を控える
  4. Route 53 に MX レコードと TXT レコードを登録する
  5. Web メールで送受信と SPF の認証結果を確認する

さくらインターネット側で独自ドメインを追加する

Route 53 で取得したドメインは、さくらインターネットから見ると「他社で取得・管理しているドメイン」に該当します。ここで行うのは、ドメインをさくらインターネットへ移管する操作ではなく、さくらインターネットのメールサービスで test-hp.click を利用できるようにサーバーへドメインを追加する操作です。

サーバーコントロールパネルへログインし、[ドメイン/SSL]→[ドメイン新規追加]の順に選択します。ドメイン追加方法の選択画面で[他社で取得したドメインを移管せずに使う]の[追加]を選択し、Route 53 で管理しているドメイン名を入力します。

さくらのコントロールパネルのドメイン追加方法の選択画面
追加するドメイン名の入力画面

しばらく待ち、ドメイン名一覧に test-hp.click が表示されれば、さくらインターネット側へのドメイン追加は完了です。

ドメイン一覧に追加されたドメイン

ドメインを追加してから利用可能になるまでには、設定の反映に数時間程度かかる場合があります。

https://help.sakura.ad.jp/domain/2146/

メールアドレスを作成する

追加した独自ドメインで利用するメールアドレスを作成します。契約サービスやプランによってメニュー名は多少異なりますが、[メール]または[メールアドレス]に関連するメニューから作成できます。

今回は検証用として、以下のメールアドレスを作成しました。

info@test-hp.click

メールアドレスの作成画面
作成されたメールアドレスの一覧

この段階では、外部から info@test-hp.click 宛てにメールを送信しても受信できません。メールの配送先を示す MX レコードが Route 53 に登録されていないためです。

初期ドメイン(ホスト名)を確認する

Route 53 に登録する MX / SPF レコードで使用するため、さくらインターネットのサーバーコントロールパネルの[サーバー情報]を開き、FTP サーバー または ホスト名 として表示される値を控えます。

サーバー情報の画面

Route 53 に MX レコードを追加する

https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/Route53/latest/DeveloperGuide/rrsets-working-with.html

AWS マネジメントコンソールから Route 53 を開き、[ホストゾーン]から対象ドメインのパブリックホストゾーンを選択します。[レコードを作成]を選択し、以下の内容で設定します。

項目 設定値
レコード名 空欄(ドメイン apex)
レコードタイプ MX
10 <初期ドメイン>.sakura.ne.jp
TTL 300
ルーティングポリシー シンプルルーティング

値の先頭にある 10 は優先度(Preference)です。MX レコードが複数ある場合、数値が小さいホストから優先して配送されます。今回は 1 台のみのため任意の値で問題ありません。

Route 53 の MX レコード作成画面

Route 53 に SPF 用の TXT レコードを追加する

SPF は「このドメインからメールを送信してよいサーバー」を DNS で宣言する仕組みです。未設定の場合、受信側でなりすましメールと判定される可能性があります。

項目 設定値
レコード名 空欄(ドメイン apex)
レコードタイプ TXT
"v=spf1 a:<初期ドメイン>.sakura.ne.jp mx ~all"
TTL 300
ルーティングポリシー シンプルルーティング

Route 53 の TXT レコード作成画面

dig コマンドで反映を確認する

作成した DNS レコードを dig コマンドで確認します。

コマンド例
dig test-hp.click MX +short
dig test-hp.click TXT +short

以下のように出力されれば、DNS レコードが正しく反映されています。

10 <初期ドメイン>.sakura.ne.jp.
"v=spf1 a:<初期ドメイン>.sakura.ne.jp mx ~all"

dig コマンドの実行結果

これで、さくらインターネットのメールサーバーを利用するための Route 53 側の DNS 設定は完了です。

確認してみた

外部からの受信を確認する

外部のメールアドレス(Gmail)から info@test-hp.click 宛てにメールを送信し、さくらインターネットの Web メールで受信できることを確認しました。

Web メールでの受信結果

MX レコードが正しく反映され、外部からのメールがさくらインターネットのメールサーバーへ配送されています。

外部への送信と SPF の認証結果を確認する

続いて、さくらインターネットの Web メールから、先ほど送信元として利用した Gmail 宛てにメールを送信します。

Web メールでのメール作成画面
Gmail 側での受信結果

送信したメールが Gmail 側で受信できました。あわせて Gmail の[元のメッセージを表示]から、以下を確認します。

  • SPF: PASS(または spf=pass)と表示されているか
  • Return-Pathinfo@test-hp.click になっているか
  • Received ヘッダーがさくらインターネットのメールサーバーを経由しているか

spf=pass であれば、Route 53 に登録した SPF レコードが送信側の検証で正しく機能しています。

受信できない場合の切り分け

  • dig test-hp.click MX +short で MX レコードが返るか確認する(返らない場合は Route 53 側の設定漏れ、または TTL によるキャッシュ)
  • 権威サーバーへ直接問い合わせて確認する: dig @<ホストゾーンの NS> test-hp.click MX +short
  • さくらインターネット側でドメイン追加とメールアドレス作成が反映済みか、コントロールパネルで確認する
  • SPF レコードが複数存在していないか確認する(同一ドメインに v=spf1 の TXT レコードが 2 つ以上あると、SPF が permerror となります)

まとめ

Route 53 で管理している独自ドメインを利用して、さくらインターネットのメールサービスでメールアドレスを運用しました。ネームサーバーをさくらインターネットへ切り替える必要はなく、さくらインターネット側でドメインとメールアドレスを準備し、MX レコードと SPF 用の TXT レコードを Route 53 に登録することで構成できます。

なお、本ブログでは SPF のみを設定しました。Gmail や Yahoo! メールの送信者要件強化により、独自ドメインからの送信では DKIM と DMARC の設定が実質的に必須となっています。本番運用では、以下も併せて設定してください。

  • DKIM: さくらインターネット側で DKIM を有効化し、案内された TXT レコードを Route 53 に登録する
  • DMARC: _dmarc.<ドメイン名> に TXT レコードを登録する(例: "v=DMARC1; p=none; rua=mailto:dmarc@<ドメイン名>"

DMARC はまず p=none でレポートを収集し、認証状況を確認してから quarantinereject へ段階的に強化する運用が一般的です。

本ブログが、AWS を中心にインフラを運用しながらメール基盤としてさくらインターネットのサービスを利用したい場合の参考になれば幸いです。

参考資料

クラスメソッドオペレーションズ株式会社について

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