#Starlink を試してわかった視界や配線周りの細かい要件

#Starlink を試してわかった視界や配線周りの細かい要件

Clock Icon2022.10.19

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ども、大瀧です。

先週から東日本でのサービス提供が始まったStarlinkは、イーロン・マスク氏率いるSpaceX社が提供する衛星インターネット接続サービスで、ウクライナに鶴の一声で提供されたことが話題になりました。国土が広大で高速な光回線網が行き渡らない米国では、新規契約を制限するほどの人気ぶりです。一方の日本では光回線が安価に提供されているため今すぐ爆発的に普及する様相ではありませんが、光回線サービスの提供が物理的に難しい山間部や海洋、航空機などでの利用が見込まれます。

使ってみた様子は代表の横田がレポート記事を公開していますので、そちらをご覧ください。

本ブログでは実際に試してみてわかってきた利用のための制約、特に衛星通信の特徴である設置場所の視界要件と機材の配線周りについて解説します。

円形アンテナ

StarlinkのWebサイトでは第二世代のアンテナであるRectangular(角形)アンテナに説明が切り替わっていますが、日本では現時点で標準レジデンシャルプランを注文すると、旧世代のCircular(円形)アンテナが届きます

2022/11/12追記 最近角形アンテナに切り替わったという情報がTwitterで見受けられました。注文画面に出てくるようなので、これから注文される方はご確認ください。

Starlinkに問い合わせたら、日本も新型のスクエアアンテナに変わったらしいです pic.twitter.com/k5ZeSYn9Z0

— Hedgehog (@Tesla_Hedgehog) November 11, 2022

角形と円形の違いについては以下の記事が詳しいです。

注意が必要なのは、Starlinkの機材はアンテナをはじめルーターなど一式がStarlinkキットとしてセットで提供される点です。アンテナ単体や市販のルーターなどを別のキットの機材と混ぜて利用することはできません *1

円形アンテナのStarlinkキットの場合、ネットワーク機器に明るくない方にとっては電源コードの取り回しに戸惑うことでしょう。アンテナとルーターへの給電はPoE(Power over Ethernet)という技術でPoEインジェクターからLANケーブル経由で行われます。そのためAC電源はPoEインジェクターにのみ接続すればOKです。この辺りは、ユーザーが混乱しないようケーブル類がすべて結線された状態で梱包されていることに関心する一方、ケーブルタイなどでまとめられることはなく長いStarlinkケーブルがオーガナイザーの中にバラバラっと収められていたのはUSっぽい割り切りだなと思いました。

アンテナとPoEインジェクタを接続するLANケーブルはStarlinkケーブルと呼ばれ、円形キットの場合アンテナに直付けされた状態で届きます(上記比較記事で"Cables: 100 ft (30 m) attached power over ethernet cable"と書いてある部分で30mあります)。このため、アンテナ取り付け時に長いケーブルをびろーんと垂らしながら作業しないといけないのが地味に大変です。あとはケーブル破損時に取り替えができないのと、30m以上は延ばせない制約となります(角形にはより長い別売りの代替ケーブルがあります)。また、ケーブルはSTPのようでLANケーブルにしては太く曲がりにくいです。窓のサッシの隙間から、というのは難しくどうやって戸外にケーブルを出すかが設置時の壁になります。StarlinkのWebサイトでは壁に穴を開けて通すためのキットを販売しているくらいです。

ちなみに、円形アンテナというとBS/CSアンテナのような凹んだパラボラアンテナを連想しますが、Starlinkアンテナは素子を敷き詰めて並べたフェイズドアレイアンテナなので、窪みやフィード(アームとその先についている受信部)の無い平らな形状です。電子回路の塊なので、ずっしり重たいです。

(ヨドバシアキバが映り込むくらい平らです)

申し込み時にどちらかを選択するような手順はないので、円形アンテナが届いた方はそれを受け入れるしかなさそうです。

視界要件は切断頻度・時間に比例する感覚

Starlinkの導入で最も重要なのが、天頂からやや北向きに天頂角50度ほど良好な視界の確保があります。Starlinkのスマホアプリで以下が見られます。

  • スマホのカメラとセンサーを利用した事前の視界チェック
  • 過去数時間の実績ベースでの視界チェック結果
  • 過去7時間の切断と切断可能性発生の履歴
  • 過去データからの切断頻度予測

かなり充実している印象ですが、それだけクリティカルな要因とも取れますね。周期や断時間はその状況に依りますが、建物や樹木のような定常的に視界の一部を遮蔽する物があると数分間隔で数秒の断になります。

感覚としては、一部に遮蔽物があるとWeb会議などリアルタイム通信では気がつくレベルの動画、音声の欠損になります。Webページの閲覧やWebアプリ、スマホアプリの利用は連続した通信を行うわけではないのでときどきクリック/タップの反応が無いとか鈍いといった見え方になります。Youtubeなどのオンデマンド動画配信もバッファリングやプリロードによってほとんど支障なく視聴できました。これは、Starlinkのスループットがかなり高速で帯域に余裕があるからこそですね(今後ユーザー数が増えてきたら様子が変わるかもしれません)。

視界中の遮蔽の割合が大きくなると接続不能の頻度が上がり、例えば自分の試した環境では数分おきに数秒の切断があります。原理としては非公式有志によって公開されているStarlinkシミュレータ(例えばhttps://starlink.sx/)がイメージしやすいです。たくさんのStarlink衛星が低軌道上を周回し、アンテナの圏内に常に数個の衛星が数十秒で入れ替わり立ち替わり現れては消えを繰り返します。そのうち遮蔽される箇所を通過した衛星の通信が失敗するので、高頻度短時間の断が繰り返されるわけです。

まとめ

  • 現時点で日本で注文すると円形アンテナのStarlinkキットが届く
  • ケーブルはアンテナに直付けで太いので取り回しに注意
  • 視界要件がシビアで、分単位の切断頻度と秒単位の切断時間に比例する感覚

もしかしたら今後数秒間の断に耐えられるような設計のパケット通信方式で、「Starlinkの通信に強い」と謳うWebサービスが出てくるかもしれないですね :P

脚注

  1. StarlinkルーターのWi-Fiや有線LANポートの配下に一般的なネットワーク機器構成を追加できますが、Starlinkより割り当てられるIPアドレスに対してポートフォワードできないなどStarlinkルーターの制約に注意します。

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