部署内の勉強会で『サーベイ・フィードバック入門』を読みました
組織開発室では、チームや個人の強みをさらに強化するために、勉強会の時間を毎週設けています。最近、『サーベイ・フィードバック入門』という本を勉強会で読み切りましたので、本の内容や良かったところを紹介したいと思います。
書籍情報
対象読者
- 社内でエンゲージメント・サーベイを実施する人事部門の方
- 社内で実施されたエンゲージメント・サーベイの結果を元に組織の改善を行う方
組織の改善を行うことになるのは、人事部門のメンバーに限りません。クラスメソッドでも、部門ごとに組織改善の担当者をおいて、サーベイの結果を受けて様々な施策に取り組んでいただいています。そういった人事部門以外の方々にとっても、サーベイの結果を通じて組織と向き合う際に参考になるような内容となっています。
内容の紹介
タイトルにある「サーベイ・フィードバック」という語について、本書では以下のように述べられています。
「サーベイ・フィードバック」とは、組織で行われたサーベイ(組織調査)を通じて得られた「データ」を、現場のメンバーに自分たちの姿を映し出す「鏡」のように返して(フィードバックして)、それによってチームでの対話を生み出し、自分たちのチームの未来を決めてもらう技術です
(p.26 「サーベイ・フィードバックとはいったい何なのか?」より)
つまり、ただデータを収集してそれを見せるというだけではなく、
- 組織の姿を映し出すような形にデータを整えて提供する
- 対話を通じてチームのあり方について考えることを促す
といったところまでを含んだ活動が想定されているということになります。
この本の目次
はじめに
第1章 なぜサーベイ・フィードバックが必要なのか?
第2章 サーベイ・フィードバックの理論
第3章 効果的なサーベイ・フィードバックのプロセス:前編
第4章 効果的なサーベイ・フィードバックのプロセス:後編
第5章 サーベイ・フィードバックの盲点
第6章 サーベイ・フィードバックの企業実践事例
おわりに
第1章 なぜサーベイ・フィードバックが必要なのか?
サーベイ・フィードバックとは何か、その目的は何か、そして組織の変革を促すためには単なるデータ以外に何が必要であるかが述べられています。
第2章 サーベイ・フィードバックの理論
サーベイ・フィードバックの基本的なステップ、データが行動を変えるメカニズム、そしてサーベイ・フィードバックの機能について述べられています。
第3章・第4章 効果的なサーベイ・フィードバックのプロセス
サーベイをどのように設計・準備するか、そしてサーベイ・フィードバックを行うにあたってどのようなミーティングやアクションを設計・実施するかについて述べられています。
第5章 サーベイ・フィードバックの盲点
サーベイ・フィードバックにおけるアンチパターンによってチームに引き起こされる事態が「病」として提示され、それを避けるためのポイントについて述べられています。
第6章 サーベイ・フィードバックの企業実践事例
サーベイ・フィードバックを実践した3つの会社におけるケースが、インタビュー形式で紹介されています。
所感
どのようなデータを・どのように扱うと良いのかがわかる
エンゲージメント・サーベイによって得られたデータの取り扱いはもちろん、組織の経営や人事などに関わるデータと組み合わせた分析や、部門のマネージャーやリーダーが咀嚼する上でのデータの意味付けなど、様々な側面から見たデータの扱い方がわかりやすく示されています。より専門的には、データマネジメント等の資料をあたる必要がありそうですが、特にエンゲージメント・サーベイに関する入門的な知識としてよく網羅されています。
サーベイの結果に向き合うときの心構えがわかる
サーベイの結果の数字を見るとき、どうしても偏った見方や狭められた視野によって、問題点の決めつけや安易な解決策への固執が生まれがちです。しかし、同じ集計結果を見ていても、見る人によって感じ方や重要さが異なっている場合があります。
単に数字の変化を追いかけるだけでなく、自分のチーム全体がサーベイの結果をどう受け止めるのか、どう解釈するのかという部分の大切さが理解できます。
結果をふまえた対話に繋がっていることがわかる
サーベイは自分たちの組織・チームの良いところも良くないところも映し出すわけですから、自分のチームのあり方を考える良いきっかけになります。特に良くないところについては、普段からあまり口に出せずにいることだったり、忙殺されて見なかったことにしていたりと、なかなか課題が表に出てこない状況にありそうです。結局のところ、「腹を割って話す」のが大事だよねということになってきます。
ただ、腹を割って話そうと思っても、単に人間同士でそれをやると、言い合いになって拗れてしまうというような、良くないコミュニケーションになる懸念もあります。データの集計結果やその分析を中心に対話を行うことで、全員が同じ方向を向けるようになるというのは頷けるところです。「膝を交えて話し合うためのツールである」という視点は、チーム内の関係性の改善にも生きてきそうに思いました。
まとめ
『サーベイ・フィードバック入門』というタイトルではありますが、サーベイの設計からフィードバックの実践まで、理屈っぽくなりすぎずに幅広く柔らかく説明されている印象でした。サーベイの結果を見るときに、社内の人とこういうやり取りになりがちだよねという部分も丁寧に解きほぐされており、読者が良くないパターンに陥らずに実践できるよう構成されています。
すべての人がサーベイの仕組みをよく理解し、うまく利用できるようにするために、共有しておきたい内容がコンパクトにまとめられた良い本だと思いました。組織のサーベイがいまひとつしっくりこないと感じている方にとっても、実施の仕方をふりかえるのに役立ちそうです。