
アパレル セレクトショップの顧客体験を最適化するアプリ企画 - 企画合宿の成果レポート
はじめに
この記事は、企画合宿をしたい方や、新規事業のアイデア検証プロセスに興味がある方に向けた内容です。
マッハチームの中でもLINEに携わっているメンバーで、アパレル業界向けのアプリ企画創出に向けた企画合宿を実施しました。企画から合宿終了まで1週間強という短期間でしたが、しっかり成果が出せたので、その目的・実施内容・学びを記録として残しておきたいと思います。
1. 目的:「これいけるんじゃない?」という手応えを掴む
本合宿の目的は、シンプルです。
アセット企画をチーム全員で考え抜き、「自分たちが解決したい課題」を顧客視点と開発者目線を組み合わせて提案すること。
以下の3点を掲げてチームで実施しました。
- チーム全員でフラットにアイデアを出し合い、一人では思いつかない発想を引き出す
- 出てきたアイデアの中から、「これは有望だ」と思える仮説を見つけて形にする
- 実際に手を動かして作ってみることで、頭の中だけじゃない実感を得る
合宿終了時のゴール
「この企画、チームみんなで進めたいよね」と言える企画案と、その可能性を感じられる試作ができている状態。
2. 実施内容:課題を言語化して、具現化する2日間
1日目:見つける - 顧客体験の全体像を明らかにする
ワークショップ「セレクトショップの顧客体験マッピング」
目的
ファッション小売業、特に複数ブランドを扱う「セレクトショップ」における顧客体験の全体像を明らかにすること。
セレクトショップとは、複数の独立したブランド商品を自社の視点で厳選し、統一されたコンセプトで販売する小売業態です。単一ブランド店とは異なり、「店員の目利き」が顧客体験に大きく影響します。
顧客がブランドを知って、店舗やオンラインで商品を購入し、ファンになっていくまでの流れ(=カスタマージャーニー)を可視化しながら、そこにアプリが介入できるUXポイントを洗い出します。
想定する顧客・シーン
今回扱うセレクトショップの顧客には、以下の特徴があります。
- トレンド感度が高く、自分のスタイルにこだわりがある
- 店舗スタッフとの関係性や世界観への共感を重視する
- オンライン(EC/SNS)とオフライン(店舗)の両方で購買行動をとる
- ブランド横断で購買/情報収集を行うケースも多い
進め方
- チームでマップを埋める
- 顧客行動:何をしているか?
- 顧客感情・期待:どう感じ、何を求めているか?
- ブランド施策:店舗や企業がどんな働きかけをしているか?
-
アプリ介入ポイントを洗い出す
-
全体共有
ワークショップの成果:カスタマージャーニーマップ

ワークの結果、顧客の購買行動における7つの重要なタッチポイント(顧客との接点)が可視化されました。
- 認知フェーズ - Instagram、メルマガ、SNSを通じたブランド認知
- 来店動機フェーズ - セール告知、限定商品情報による来店促進
- 来店・接客フェーズ - スタッフによる提案、試着室での体験
- 商品選定・試着フェーズ - サイズチェック、商品の比較検討、スタイリング提案
- 会員登録・購入フェーズ - アプリでの購入、ポイント獲得
- 翌日フォローアップ - 返品対応、購入後のアフターフォロー
- 再来店フェーズ - リテンション施策、リピート購買
各フェーズにおいて、顧客の行動、感情・期待、ブランド側の施策が整理され、アプリが介入可能なポイントが明確になりました。
ワークのアウトプット
- 顧客体験マップ
- フェーズごとに発見した課題
- 店舗での商品選定時の判断が難しい
- スタッフの提案負荷が高い
- オンライン・オフラインの情報の一元化がされていない
- 再来店のきっかけが限定的
ポイント:このワークを通じて、「顧客の頭の中」と「企業の提供側」の視点の両方を可視化することが重要です。ギャップが見つかった部分こそが、アプリの出番です。
2日目:作る - 仮説を形に
1日目で明確になった課題と介入ポイントをベースに、「これは有望だ」と判断されたアイデアについて、10個のコンセプトをイメージ化しました。
厳選した16個のアイデアコンセプト


アイデア評価プロセス
ここで重要なのは、アイデアを「ふわふわ」のままにしないことです。チーム全員が4人各自で、5段階で評価を実施しました。
- 顧客価値:顧客にとって本当に価値があるか?
- 実現可能性:技術的に実装できるか?
- 再利用性:他の業界でも応用できるか?
- 特化度:この業界に特化したアイデアか?
3. 成果:2つの有望アイデアが浮上
評価結果から、特に評点が高く、実現可能性の高い2つのアイデアが浮上しました。
① 「店員さんが気張らずに今日のスタイルをアップできるサポートUX」
平均評点:2.55/5
背景と課題
セレクトショップのスタッフは、SNSやブログに自身でコーディネートをアップします。しかし、写真撮影・編集・投稿という一連の作業は、スタッフの知識や経験に依存するため、過大な負荷がかかっているという仮説を立てました。
コンセプト
スタッフのコーディネート撮影・投稿プロセスをアプリにより支援することで、顧客体験向上とスタッフの負担軽減を同時実現するアイデア。
期待される効果
- スタッフの心理的負担を減らしながら、より質の高い提案が可能に
- 顧客は「プロのスタイリング」を受けたような体験を獲得
② 「顧客が迷っている瞬間を検知して、スタッフに通知するUX」
平均評点:2.2/5
背景と課題
店舗スタッフが「いつ声をかけるか」のタイミングは経験で判断しており、タイミングを外すと購買機会を逃してしまいます。
コンセプト
店舗内に設置したカメラとAIを組み合わせることで、顧客が迷っている瞬間を自動検知し、スタッフに通知する仕組み。
顧客のニーズを「察する」ことは、セレクトショップの最大の価値です。テクノロジーがスタッフの「察する力」を強化するイメージです。
期待される効果
- 顧客が迷っているタイミングを正確に把握
- スタッフが適切なタイミングで声がけできることで、接客の質向上
- 購買転換率の向上が期待できる
4. 次の行動
今回の企画合宿で得られた仮説は、あくまで「机上の空論」です。次のステップは検証です。
- 両アイデアの詳細設計と追加検証
- ターゲット顧客・スタッフへのインタビュー実施(定性調査)
- チームでの定期的なレビュー会
5. 個人的な気づき:アイデアを高速で具現化することの重要性
今回の企画合宿を通じて、重要な学びがありました。
新規事業の検証では、アイデアをいかに素早く形にできるかが肝だということです。
多くの企画はホワイトボードやスライド上で満足されがちですが、「良さそう」に見えても実際に形にしなければ、本当に価値があるのかは分かりません。つまり、アウトプットすることで初めて、いけるものとそうでないものの手応えが得られます。
今回は、課題の言語化からコンセプトの具体化までをスピーディに行い、カスタマージャーニーマップで顧客の行動・感情・期待を整理し、「これならいける」という視点で評価する、そして実際に試作する——このプロセスを何度も短期間で回すことで、曖昧なアイデアが実行可能な企画へと昇華されていくのを実感しました。
今後進めたいステップは以下のとおりです:
- 定性・定量調査の実施 - ターゲット顧客やアパレル企業の従業員へのインタビューを通じて、仮説の検証を進める
- 業務への接続 - 各提案を仮提案書にまとめ、マッハチームXで順次投稿していく
- 反復検証 - 企業からのフィードバックを得ながら、仮説をさらに深掘りし、必要に応じてピボットする
このプロセスを通じて、「この企画、本当にいけるかも」という感触が、より確実な実行力へと変わっていくはずです。
6. まとめ
企画合宿は、単なるアイデア出しの場ではなく、「チーム全体で課題を深掘りし、検証を繰り返すプロセス」の実践そのものでした。
今回の合宿を通じて、ふわふわとしたアイデアから「いける」という感触を得ることができました。
この合宿の最大の成果は、チーム全員が「これなら一緒に進めたい」という手応えを掴めたこと。
次のフェーズでは、より詳細な検証を進め、市場での反応を確認していきます。顧客視点と開発者目線を大事にしながら、一歩ずつ前に進めていきます。
おつかめ!







