AWS Media Servicesの2023年を振り返ってみる
はじめに
清水です。2023年もあとわずかとなりました。ここ数年、大晦日のこのタイミングでAWS Media Servicesにまつわる1年間のアップデートを振り返るブログエントリをまとめてきました。私の中で年末の恒例行事となりつつあるので、今年も例年にもれずまとめてみたいと思います!形式としては昨年2022年と同じく、What’s New at AWSのページからMedia Servicesにカテゴライズされる各サービスでフィルタしたものをそのリンクとともにまとめる形式です。
過去のエントリ(2022年〜2018年の振り返り)については以下をご参照ください。
- AWS Media Servicesの2022年を振り返ってみる | DevelopersIO
- AWS Media Servicesの2021年を振り返ってみる | DevelopersIO
- AWS Media Servicesの2020年を振り返ってみる | DevelopersIO
- AWS Media Servicesの2019年を振り返ってみる | DevelopersIO
- AWS Media Servicesの2018年を振り返ってみる | DevelopersIO
AWS Elemental MediaConnect
- Amazon EventBridgeでのイベント通知のサポートが拡大されました
- オンプレミスとの接続のためのMediaConnect Gatewayが発表されました
- SRTフェイルオーバーがサポートされました
- アジアパシフィック(大阪)、カナダ(中部),アフリカ(ケープタウン)リージョンで利用可能になりました
- 1秒間隔のCloudWatchメトリクス発行をサポートしました
- 新たなCloudWatchメトリクスが追加されました
- アジアパシフィック(ハイデラバード)、アジアパシフィック(メルボルン)、中東(UAE)リージョンで利用可能になりました
MediaConnectのアップデートは7件でした。EventBridgeやCloudWatchとの連携強化、また新たに6つのリージョンで利用可能になるなど着実にアップデートされていますね。またオンプレミス側で利用するかたちになるMediaConnect Gatewayの発表も大きなトピックだったかと思います。
AWS Elemental MediaConvert
- FLACオーディオとアニメーションGIFを入力ソースとしてサポートしました
- 新しいカラーフォーマットがサポートされ、またカラー処理機能が強化されました
- Media metricsが利用可能になりました
- メザニンビデオ形式のビデオパススルーをサポートしました
- HEVCおよびAVC用の帯域削減フィルタがリリースされました
- アジアパシフィック(大阪)、オーストラリア(メルボルン)リージョンで利用可能になりました
- ビデオソースの置き換え(Video overlays)がサポートされました
MediaConvertのアップデートも7件でした。入力ソースやカラーフォマットなどサポートの拡充、2つの利用可能なリージョンの追加など着実なアップデートをしつつ、Media metricsやVideo overlaysなど活用の幅が広がるアップデートもありましたね。
AWS Elemental MediaLive
- POISシグナルコンディションが追加されSCTE-35メッセージに対して信号調整が可能になりました
- 映像に対するタイムコードの焼付をサポートしました
- Dolby E オーディオのデコーディングをサポートしました
- AWS Elemental Link UHDがDolby DigitalとDolby Digital Plusをサポートしました
- 入力映像のサムネイル画像表示をサポートしました
- 1秒間隔のCloudWatchメトリクス発行をサポートしました
- カナダ(中部)とアジアパシフィック(大阪)リージョンで利用可能になりました
- AWS Elemental LinkとMediaLiveでKLVメタデータをサポートしました
- AWS Elemental Link UHDがMediaConnectと連携可能になりました
- Output個別の画像オーバーレイをサポートしました
- カスタムトーンマッピングによる色空間変換をサポートしました
MediaLiveのアップデートは11件でした。MediaLiveも2つの利用可能なリージョンの追加やCloudWatch連携の強化など、着実な機能追加をしています。特に入力映像のサムネイル表示やタイムコード焼き付けなど、よりMediaLiveの利便性が高まるアップデートも多くありました。Elemental LinkについてもMediaLiveのアップデートとしてまとめていますが、なによりLink UHDがMediaConnectと連携可能になったのは大きなアップデートだと思います。
AWS Elemental MediaPackage
- Low-Latency HLSをサポート(MediaPackage v2をリリース)
- カナダ(中部)リージョンで利用可能になりました
- マニフェスト設定オプションの拡張
- アジアパシフィック(大阪)リージョンで利用可能になりました
- アジアパシフィック(メルボルン)リージョンで利用可能になりました
MediaPackageのアップデートは5件でした。初夏に突如として発表されたMediaPakcage v2が大きなトピックかと思います。LL-HLSサポートとしてWhat's New at AWSには投稿されていましたが、ポリシー利用によるセキュリティ面などMediaPackage v1より多くの点で機能強化がなされていると思います。新たに3つのリージョンでも利用可能になった点もうれしいですね。
AWS Elemental MediaStore
MediaStoreについては、「What’s New at AWSのページからMedia Servicesにカテゴライズされる各サービスでフィルタしたもの」という条件でのアップデート情報は0件でした。
しかしMediaStore関連のアップデートとして、2023/02/09にCloudFront OACのMediaStore Originのサポートがありました。
こちらはCloudFrontのアップデートとして扱われているようで、What’s New at AWSのページで「Networking & Content Delivery」のカテゴリでフィルタすると確認できます。(このことから、本エントリではMediaStoreのアップデートしては扱わずにCloudFrontのアップデートとしておきます。)
MediaStoreについては、2022年、2021年とWhat's New at AWSへ投稿されたアップデートはなく、2020年が最後のアップデートでした。
最近ではMediaStoreのマネジメントコンソールを開くと、以下のようにS3もしくはMediaPackageの利用を促されるという状況です。(筆者は20203年7月にこの事象に気が付きました。2023年になってからこの案内の表示がはじまったのかなと思っています。)ライブストリーミングのオリジンとしてはS3もしくはMediaPackageの使用をまず検討するようにしましょう。
AWS Elemental MediaTailor
- アフリカ(ケープタウン)、アジアパシフィック(ムンバイ)、アメリカ東部(オハイオ)リージョンで利用可能になりました
- Channel Assemblyでタイムラインログをサポートしました
- Channel Assemblyで迅速なスケジュール更新をサポート
- クエリパラメータのパススルーをサポート
- クライアントサイドのオーバレイ広告の配信をサポート
- ビデオマニフェストでのクリエイティブ広告IDシグナリングをサポート
- Channel Assemblyでアラートカテゴリを導入
- Channel Assemblyでキュー広告タグをサポート
- ノンリニアオーバーレイ広告をセッション単位で制御できるようになりました
- Channel Assemblyで広告ブレークの検出をサポート
- ヨーロッパ(パリ)、ヨーロッパ(ストックホルム)、カナダ(中部)、アジアパシフィック(ソウル)、アジアパシフィック(大阪)、アジアパシフィック(メルボルン)、南米(サンパウロ)リージョンで利用可能に
- Channel Assemblyでタイムシフト機能をサポート
MediaTailorのアップデートは12件でした。うち6件は仮想リニアライブストリームを作成するChannel Assembly機能についてのアップデートです。また新たに合計10の利用可能なリージョンが増えるアップデートがなされました。
Amazon Interactive Video Service
- ライブストリームでのMultiple hostsをサポート
- Multiple hostsでライブストリームのモニタリングをサポート
- 品質とコストのバランスが最適化されたAdvance Channel Typeが利用可能に
- S3への自動録画でrenditionフィルタリングと高頻度サムネイルをサポート
- Real-Time Streamingを発表(Multiple hostsの機能強化)
- Low-Latency Streamingのライブ動画出力料金を値下げ
- Low-Latency StreamingでAWSマネジメントコンソールからのストリーミングをサポート
- Real-Time Streamingで音声のみの料金体系を発表
- サーバサイドCompsitionのサポート
Amazon IVSでは9件のアップデートがありました。Multiple hosts機能がリリースされReal-Time Streamingと称するようになり、また従来までのストリーミング方式はLow-Latency Streamingと称するようになった点が大きなアップデートです。もともとIVSはその名の通りインタラクティブな体験を重視していましたが、昨年2022年のStream Chatのリリースなどと合わせて、必要とされている機能を順に取り入れ成長しているという印象です。Low-Latency Streamingの値下げもAWSらしくてうれしいですよね。
Amazon Kinesis Video Streams
- Amazon Chime SDKがAmazon Kinesis Video StreamsへのWebRTCオーディオ送信をサポート
Kinesis Video Streamsでは1件のアップデートがありました。昨年2022年もMediaLiveとIVSでChime SDK連携のアップデートがありましたが、こういったAWSサービス間連携のアップデートもうれしですよね。
Amazon Nimble Studio
Amazon Nimble Studioについては2023年のWhat’s New at AWSでのアップデート情報はありませんでした。個人的には少し意外だったこともあり、What’s New at AWSに掲載されていなくてもDocumentベースのアップデートならあるのでは?と、以下ページから確認してみました。
従来まではAdministrator GuideとArtist Guideという2種類のドキュメントにまとめられていた認識ですが、これが新たにAdministrator GuideとFile Transfer Guideとなっています。どちらもDocument Historyページを確認すると2023年に新設されたことが確認できます。そして従来までのNimble Studioの機能としてはClassic Guideにまとめられており、こちらは2024年6月をもって勇退となるようです。
AWS Thinkbox
- AWS Thinkbox Deadline 10.2の最新リリースを発表
- AWS Thinkbox Deadline 10.3のリリースを発表
- AWS Thinkbox Dealine 10.3.1のリリースを発表
最後に、2022年まではまとめていなかったAWS Thinkboxについてのアップデートについても確認しておきましょう。(2023年からWhat’s New at AWSにも掲載されるようになっているようです、AWS Media Servicesの1つにカテゴライズされていますしね。)AWS ThinkboxについてはレンダリングファームマネージャーであるDeadlineの最新リリースで3件のアップデートがありました。
まとめ
What’s New at AWS – Cloud Innovation & NewsにMedia Servicesのカテゴリでポストされた内容をベースに、2023年のAWS Media Servicesのアップデート情報をまとめてみました。独自集計となりますが合計55個のアップデート情報が確認できました。ちなみに2022年を再確認してみたところ25個のアップデートということだったので、倍以上のアップデート数ということになりますね!すごい。
なお本エントリはあくまでもWhat’s New at AWSの投稿をベースにしていますので、ドキュメント上でひっそりと(?)行われたアップデートなども多くあるかと思います。それも踏まえると今年も本当にたくさんのAWS Media Servicesのアップデートがありましたね。
個人的には、各サービスのCloudWatch連携の強化やMediaLiveの入力映像サムネイルの表示といった、細かいけれど着実に機能強化するアップデートが多かった印象です。またMediaPackage v2やIVS Real-Time Streamingのように大きなアップデートもありました。(まさか!? AWS Media Servicesにも"v2"と称するアップデートが来るとは!)そして、アップデート情報のなかで新規リージョンのサポートについては、普段であれば個人的に(あまり関わりのないリージョンが多く)流してしまうことが多いのですが、2023年はAWS Elemnetalなサービスの多くで大阪リージョン対応がなされました。2023年11月の段階でMediaStore以外はAWS Elementalなサービスが大阪リージョンでも利用可能となっています。
この実質的に大阪リージョンでもAWSを使った動画配信構成がフルスペックで実装可能な状態になっている点、個人的には今年2023年のアップデートのなかで最も大きなトピックの1つです。日本国内のリージョンだけでのマルチリージョンな動画配信構成など、活用の幅がより広がっていると思います。
来年2024年も、AWS Media Servicesでどのようなアップデートがされていくか楽しみですね。ワクワクしながら過ごしつつ、しっかりとアップデート情報をキャッチアップしていきたいと思います!