UXって何だろう?⑤ 〜「私」と「ユーザー」のズレをなくす、ユーザーリサーチ〜

UXって何だろう?⑤ 〜「私」と「ユーザー」のズレをなくす、ユーザーリサーチ〜

UXデザインの土台となる「ユーザーリサーチ」について整理します。作り手の思い込みと実際のユーザーのズレをなくすために「事実」を集めることがリサーチの本質です。定量・定性の2つのアプローチの違いや、予算や時間がなくても今日から始められる身近なリサーチ方法もご紹介します。
2026.04.03

前回の第4回の記事では、システムには「一次ユーザー(直接操作する人)」や「間接ユーザー(出力を受け取る人)」など、さまざまな人が関わっているとお話ししました。

「なるほど、私たちが考えるべきユーザーはこういう人たちなんだな」と見えてきたところで、次に行うべきなのがHCD(人間中心設計)サイクルのステップ①、「利用状況の把握(調査)」です。

今回は、UXデザインの土台となる「ユーザーリサーチ」について、なぜ必要なのか、そしてどのような種類があるのかを整理していきます。

1. なぜリサーチが必要なのか?

第1回の記事「UIとUXの違い」で、「私(作り手)≠ユーザー(使い手)」というお話をしました。システムを作る開発者やデザイナーは、そのサービスについて熟知していますが、初めて使うユーザーは何も知りません。

ここで恐ろしいのが、作り手が会議室に集まって「私たちのユーザーは、きっとこういう風に使うはずだ」と想像だけで話を進めてしまうことです。作り手の想像(思い込み)だけで画面を作ってしまうと、実際にリリースした時に「全然使われない」「思っていたのと違うところでつまずいている」という悲劇が起こります。

番外編「「理想のお客さん」と「実際のお客さん」は違う」では、美容サロンのオーナーが「うちのお客さんはきっとこういう人だ」と思い込んでペルソナを作ってしまった事例をご紹介しました。あの失敗の根本にあったのも、リサーチをせずに想像だけで進めてしまったことでした。

この「作り手の想像」と「実際のユーザーの姿」のズレをなくすために、現場の「事実」を集める活動。それがユーザーリサーチです。

ux5_per

2. リサーチの2つのアプローチ(定量と定性)

「リサーチ」といっても、その方法は目的によってさまざまです。大きく分けると、以下の2つのアプローチがあります。

① 定量リサーチ(数字で「何が」起きているかを知る)

多くのデータを集め、全体的な傾向を数値で把握するための調査です。

● アクセス解析(Google Analyticsなど)
● A/Bテスト
● アンケート調査 など

👉️ わかること:「トップページから70%の人が離脱している」「AのボタンよりBのボタンの方がクリック率が高い」といった事実がわかります。

② 定性リサーチ(言葉や行動で「なぜ」起きているかを知る)

数字には現れない、ユーザーの心理や行動の文脈(コンテキスト)を深く理解するための調査です。

● ユーザーインタビュー
● ユーザビリティテスト(実際に操作している様子を観察する) など

👉️ わかること: 「なぜそのページで離脱したのか(文字が小さくて読めなかった、専門用語がわからなかった等)」という、数字の裏にある理由がわかります。

UXデザインにおいては、定量データで「問題の場所」を見つけ、定性データで「問題の原因」を探る、といったように両方を組み合わせて使うのが理想的です。

ux5_ab

3. まずはここから始めてみる

「インタビューやアクセス解析なんて、今のプロジェクトでは予算も時間もなくて無理だ…」といった状況もよくあります。

でも大丈夫です。リサーチは本格的な調査でなくても始められます。 身近なところにも「事実」は転がっています。

SNSやレビューを検索する

自社のサービス名や、競合のアプリ名で検索してみます。ユーザーがどんな不満を抱えているか、どんな言葉を使っているかがリアルにわかります。

カスタマーサポートの問い合わせ履歴を見る

「どこでつまずいたか」の事実が詰まった宝の山です。

営業担当や現場のスタッフに話を聞く

BtoBシステムなどで直接ユーザーに会えない場合、日常的に顧客と接しているメンバーにヒアリングするだけでも、自分たちの「想像」を「事実」に近づけることができます。

社内でユーザーに近い人に話を聞く

医療や不動産など、ユーザーが限定されている場合、同じような経験のある人に話を聞くことも有効なケースがあります。

大掛かりな準備がなくても、「想像」を「事実」に少しずつ近づけていくことがリサーチの第一歩だと考えます。

ux5_emo

4. おわりに

以上のような方法で事実を集めることができたら、次はその事実を整理して「私たちのターゲットは具体的にどんな人物像なのか」をチームで共通認識として定義するステップに進みます。

ユーザーリサーチの目的は、立派なレポートを作ることではありません。「自分たちの思い込みを捨てて、事実を受け入れること」だと考えます。そういった試みの一つ一つが、良い体験へと繋がっていくと信じています。

参考

・翔泳社「はじめてのUXリサーチ ユーザーとともに価値あるサービスを作り続けるために

・Nielsen Norman Group:Quantitative vs. Qualitative Usability Testing

・HCDサイクルについては「UXって何だろう?③ 〜ユーザーを中心に回し続ける「HCDサイクル」〜」をご参照ください

この記事をシェアする

関連記事