製造業のシステム開発になぜデザイナーが必要なのか?

製造業のシステム開発になぜデザイナーが必要なのか?

製造業向けシステム開発に、実はデザイナーが関わっています。見た目を整えるだけでなく、対話を通じて現場の「当たり前」や本当の課題を引き出し、使われる仕組みづくりにどう貢献しているのかを紹介します。
2025.12.16

この記事はクラスメソッド発 製造業 Advent Calendar 2025 16日目のエントリーです。
昨日はshuntakaさんの「製造系のAIエージェント作る!Turso使ってみたい!」でした。明日はハマコーこと濱田孝治さんです!

製造ビジネステクノロジー部にはデザイナーが在籍しています。製造業界に特化したシステム開発の事業部にデザイナーが在籍しているの? と思われるかもしれません。
今回の記事では、デザイナーがどんな活動をしているのか、そしてそれがどんなメリットにつながるのかをお伝えできればと思います。

デザイナーって“絵”を描く人?

業界に限らず、デザイナーという職種について、「キレイな見た目」いわゆる“絵”を描く人と認識されることがあります。確かにGUIをはじめとする「目に見えるもの」をアウトプットすることが多いため、その認識は一つの側面ではあります。

しかしその「キレイな見た目」は、“生まれ持ったセンス”ではなく、多くの場合は対話を通じて導き出された結果からつくり出されています。

対話とは

対話を通じて、と書きましたが、どのような機会があるでしょうか?

我々の部署ではアジャイル開発でスクラムを選択することが多く、デイリーなど同期的に話せる機会が多くあります。スクラムではない案件でも、できる限り、短時間でも同期的に話せる時間を設定するようにしています。
また非同期コミュニケーションでは、チャットを活用しています。

少なくとも製造ビジネステクノロジー部では、ウェブディレクターのような職種はありません。近しい職種だとプロダクトマネージャーですが、一緒にアサインされたとしても、必要な対話はデザイナーが自ら行っています。

またお客さまから提供される資料も、重要な対話のアイテムです。さまざまな思いが込められており、リアルタイムなやり取りはできませんが、じっくりと観察することで見える景色もあります。

そしてそれぞれの機会で、さまざまなことをヒアリングしていきます。業界や業務の知識については我々も知る努力はしているものの、やはりもっとも詳しいのはお客さまですので、業界では当たり前のことや的外れなことを聞いてしまうこともあります。これは少しでもヒントがないかという思いからの行動なのです。

今では、大抵のことは生成AIが教えてくれるようになりました。

しかしその答えは学習対象の大小に左右されるため、ニッチな内容だとポン出しで解決できるかというと少々難しいことが多いです。抽象化して問うということもできますが、じゃあその抽象化する元は何? となるわけです。

ここまで読んで、「あれ? 意外と普通では?」と思われたかもしれません。まったくその通りで、特別なことは何もありません。

情報整理

対話から得られた情報をもとに、整理していきます。
情報といっても、GUIの要素になるものもあったり、ビジネスレイヤーに近しいものもあったりとさまざまです。対話中にさらに深掘りしながら整理することもありますし、非同期で腰を据えて何らかのアウトプットを作成しながら整理する場合もあります。

対話や情報整理の中で大切なことは、なぜそれが必要なのか、何を達成したいのか、どういった経緯でそうなっているのかを常に意識することです。
つまり、多くの場合、つくりたい仕組みが、本当に解決したかった問題や課題を解決できるのかを常に念頭に置いています。

システム開発が主な業務ですが、システムの外で解決できるアプローチがないかも考えることがあります。

そして、必要があれば対話のフェーズに戻り、情報の精度を高めていきます。

デザイナーが関わるメリットとは

デザイナーが対話と情報整理に関わることで、いくつかのメリットが生まれます。

ひとつは、言語化されていない前提や暗黙の業務ルールを引き出せること。製造業の現場では「当たり前すぎて説明されない」ことが多く、それが要件の抜け漏れにつながりがちです。対話を重ねることで、そうした隠れた情報を要件として明確にできます。

もうひとつは、本質的な課題を見つけやすくなること。「このシステムがほしい」という要望の背景には、本当に解決したい問題があります。それを問い直すことで、より適切なアプローチが見つかることもあります。

また、情報を整理・可視化することで、お客さまと開発チームの認識のズレを早い段階で発見できます。後になって「思っていたのと違う」となるリスクを減らせます。

手前味噌ではありますが、私は次の事例で帳票の電子化を担当しています。
この案件では単なる帳票の電子化にとどまらず、現場できちんと使ってもらえるように帳票を再設計しました。

結び

製造業の現場には、長年の経験から生まれた業務の流れや、言葉にしにくい判断基準が数多く存在します。それらをシステムに落とし込むには、まず丁寧に聴き、整理するプロセスが欠かせません。

私たちは対話を通じて、お客さまの「当たり前」を理解することから始めます。隠れた前提を引き出し、本質的な課題を見つけ、認識のズレを早期に解消する。製造ビジネステクノロジー部にデザイナーがいるのは、そのためです。

私たちはお客さまのプロジェクトの成功をお手伝いしたいですし、私たちとやって良かったといっていただきたいと思っています。
ぜひ対話から始めてみませんか?

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