[新機能]Zendeskの生成AIによる問い合わせ内容要約、回答ブラッシュアップ機能を試してみた
2023年10月現在、ZendeskではEAP(早期アクセスプログラム)として、問い合わせ内容の要約や回答文のブラッシュアップを自動的に行える機能を公開しています。
AIを活用したチケットコメントの要約と洗練化(EAP) – Zendeskヘルプ
この機能は、ChatGPTで有名なOpenAIのEnterprise GPTという生成AIの能力を活用しており、日本語含む様々な言語に対応しています。
なお、現在は早期アクセスのため申請することで無料で利用できますが、正式提供になった後はAdvanced AIアドオンの導入が必要と以下のページで告知されています。
Overview of OpenAI within Zendesk Services – Zendesk help
Advanced AIアドオンについては、以下の記事で簡単に機能の一部を解説しています。
検証
機能の概要
この機能は、エージェントの生産性を高めつつ、高品位なカスタマーサービスを提供することを目的にしています。
具体的には、以下のような機能があると公式ヘルプで紹介されています。
- 要約機能:チケットに追加されたコメントを要約することで、エージェントがすばやく問題を理解でき、カスタマーへの返信がより早くなります。
- 洗練化機能:エージェントが作成したコメントの内容を、次のような方法で自動的にブラッシュアップします。
- 詳しくする:エージェントのコメントに言葉を追加して内容を詳しくします。
- もっとフレンドリーに:エージェントのコメントを会話のような口調に変えます。
- もっとフォーマルに:エージェントのコメントをフォーマルな口調に変えます
AIを活用したチケットコメントの要約と洗練化(EAP) – Zendeskヘルプ
これらの機能について、1つずつ検証していきます。
問い合わせ文章の要約
ユーザーから送られてきた問い合わせ内容を要約する機能を試してみます。
検証に使う問い合わせの文章として、ChatGPTを使って以下の文章を生成しました。要約機能の能力を確かめるため、あえて冗長な文章を出力するよう指示しています。
私はあなたの素晴らしいサービスの一つである◯◯について、ある特定の質問があるために、あなたにコンタクトを取ります。 私は適切な手順に従ってアカウントを作成しようとしていますが、私が持っている知識と情報だけではそれが達成できないようです。 私が遭遇したものは、知識不足から来るたむろに暗い不理解の霧で、それが私の足元をふさぎ、進行を阻止しています。 私は進行方向を見失い、正しいパスを見つける明確な洞察や指示が必要です。 私の主な問題は、この困難な旅で直面した最初の障害、つまりアカウント作成の具体的な方法です。 具体的な問題を列挙すると、アカウント作成画面にはどこから遷移できるのか、ユーザーネームやパスワードの要件は何なのかです。 あなたのサービスが提供する全ての恩恵を受けるために、そしてそれによって私の生活がどのように改善されるのかを見るためには、これらの問いに明確な答えが必要です。 あなたの役割は、顧客がサービスを最大限に活用できるように導くことであり、私たちはあなたの専門的なアドバイスを必要としています。 私たちはトラブルシューティングの匠または定規作りの巨匠にわたしを導くナビゲーターを必要としています。 この問題を解決し、得意とするアカウント作成を円滑に実行するためにあなたの力が必要です。 到達すべき目的地への道のりを明確に示し、行き詰まりから助けてください。 あなたの貴重な時間をこのメッセージの読解に割くことに感謝します。 来るべきあなたからのご回答を心待ちにしています。あなたたちのような有能で献身的な専門家がいることは、私たち全てにとって大いなる安堵感を感じさせます。 あなたの助けとサポートで、私はこの困難を乗り越える自信が湧いてきます。
文章量の多さの割に余計な前置きや抽象的な表現が多く、何が言いたいのかを簡単に理解できない文章になっています。
実際に、この文章を使ってZendeskのチケットを作成し、要約機能を使った結果が以下の画像です。生成AI機能を有効化していると、チケット詳細画面の右側にあるインテリジェンスパネルで要約結果を確認できます。
700字程度あった文章が、130字ほどに圧縮されました。内容としても、文章内の要点のみを拾って整理してくれています。元が英語向けのサービスのためか、どうしても機械翻訳のような冗長さはありますが、それでも問い合わせ内容を素早く正確に理解する助けには十分なっています。
なお、この要約機能はチケット内の全てのパブリックコメントが対象となっており、エージェントの回答やそれを踏まえたエンドユーザーからの追加の問い合わせでチケットが更新されると、それらの内容も合わせて改めて要約してくれます。文字数として、チケット全体で12,000文字までなら対応可能とのことです。
回答文のブラッシュアップ
先ほどはエンドユーザーからの問い合わせ内容が対象でしたが、今度は受け手であるエージェントの回答文が対象となる機能で、入力された回答文について、詳細(長文)化、フレンドリー化、フォーマル化することが可能です。
ブラッシュアップ対象となる以下の回答文を用意しました。内容としては、先ほどの問い合わせ内容への回答となっており、ブラッシュアップの結果が分かりやすいように、要点のみを素っ気なく書いた文章になっています。
アカウント作成画面には、サービスウェブサイトのメインページでヘッダーにある「アカウント作成」リンクを探してクリックで遷移可能。 アカウント作成には、メールアドレスとパスワードの入力が必要。メールアドレスについては、既に登録済のものを再度登録できない。 パスワードについては、大文字と小文字、数字、特殊文字が含まれる8文字以上の文字列を設定する必要がある。
なお、回答文のブラッシュアップ機能は、以下の画像のようにコメント入力欄に元の文章を入力し、専用のボタンからどのようにブラッシュアップするか選択することで実行可能です。
詳細(長文)化
元のシンプルな文章から、ユーザーへの回答文らしい丁寧な文章になりました。
また、必要に応じて箇条書きが使用され、要点が掴みやすいように工夫されています。
フレンドリー化
詳細化と比較すると、文章の末尾が「よ」や「ね」で終わるようになっていたり、要所要所で感嘆符が使われていたりと、全体的にかなり砕けた雰囲気の文章になりました。
あまり日本の一般的なサポートサービスでこういった文体が使われるイメージはありませんが、ユーザーと近い距離間で接したい場合に使用できそうです。
フォーマル化
詳細化よりも更に丁寧な言い回しになっています。
今回の検証結果を見た限りでは、詳細(長文)化とそれ以外で文章量に違いはあまりなく、文章の丁寧度が以下のように違っているように感じます。
フォーマル化 > 詳細(長文)化 > フレンドリー化
まとめ
Zendeskの問い合わせ内容要約、回答ブラッシュアップ機能について検証しました。
要約機能は問い合わせ内容を理解するスピードを上げるのに役立ちますし、ブラッシュアップ機能は短い文章からでもそれらしい文章を生成できるのが便利と思いました。
なお、この機能は2023年10月現在時点ではまだ早期アクセス段階のため、利用の上で様々な問題が発生したり、今後の早期アクセス終了後に機能の廃止・変更が入る可能性もあるためご注意ください。