#tableau #data17 [レポート] 2日目キーノート – Tableau Conference On Tour 2017 Tokyo
先日2017/04/18(火)〜2017/04/19(水)の2日間に渡り、ウェスティンホテル東京@恵比寿にて行われたカンファレンスイベント 『Tableau Conference 2017 On Tour Tokyo』。
当エントリでは、イベント2日目(2017/04/19)に実施された2つのキーノートセッション
- キーノート: ビジュアル分析の言語
- キーノート: 知性と感情に訴えるデータビジュアライゼーション
の内容をご紹介します。
目次
2日目キーノート1: ビジュアル分析の言語
セッション概要
Speaker: Jock Mackinlay レベル: 初心者 タイプ: キーノート 場所: ギャラクシールーム CDE
セッション内容
講演者であるJock氏の経歴については、下記サイトを参照下さい。
彼は1970年代から銀行でシステムアナリストを経験した後、スタンフォード大学およびPARC(ゼロックスパロアルト研究所)で、データの可視化(Data Visualization)の研究関わられており、その際の経験談を語られました。
データ可視化の基礎理論
これは、実際にデータを可視化する理論の検証を行っている様子です。 この頃(1980年代)はコンピュータはあったもののGUIが強力ではなかったので、穴の空いたブロックを並べて、データをグラフに変換していました。 ちなみになぜブロックに穴が空いていたかというと、行単位でのソート処理を行う際に、穴に棒を通すことで行データ単位でのデータ(ブロック)移動を行うためでした。 講演では、実際にブロックに棒を串刺しにして動かしている様子が紹介されました。
こちらのデータを可視化する理論については講演の中で幾つか抜粋されましたが、Tableau Researchのページから実際の論文をpdf形式で参照することができます。
次に、PARC時代に行われていた研究の一つに、データ構造を当時最先端の画像能力を使って、3D形式のツリー構造(Cone Trees)で表現する事に取り組まれていたそうです。 こちらも当時の論文をpdf形式で参照することができます。
データの可視化から、分析の理想的なサイクルへ
まとめとして、彼が長年取り組んでいるデータの可視化技術で、以下の理想的なサイクルを紹介していました。
- タスク(実業務)
- データの取得
- ビジュアルマッピングの選択
- データの表示
- 有益な情報の獲得
- 行動(共有)
- (最初へ戻る)
2日目キーノート2: 知性と感情に訴えるデータビジュアライゼーション
セッション概要
Speaker: Ben Jones レベル: 初心者 タイプ: キーノート 場所: ギャラクシールーム CDE
セッション内容
講演者のBen氏はTableau社のマーケティングディレクターとして活躍される一方で、ワシントン大学でも教鞭を取られている方です。
Tableau Public: 知性と感情に訴える
Tableau Publicには、多くのViz(ビジュアライズされた情報)が日々登録されています。 例えば、日本で起きている盗難事件の一覧 (実際のTableau Public上のVizはこちら)
また、ポケモンの強さをビジュアライズしたものもあります。 (Tableau Publicでの参照はこちら)
データビジュアライゼーションはサイエンスかアートか?
このように、様々なVizがTableau Publicはじめ世の中に存在していますが、このビジュアライズされた情報は、果たしてサイエンスなのでしょうか、それともアートなのでしょうか?
データのビジュアライゼーションの目的は、情報を伝えることにありますが、そこにアートとしての要素を加えると、「驚きを伝える」ことができるようになります。 逆に、アートにも何がしかの情報が含まれています。
これから、ビジュアライゼーションが持つ3つの役割
- ジャーナリストのように考える
- アーティストのように表現する
- 小説家のようにつながる
について考えます。
ジャーナリストのように考える:見出しで引き付ける
東京都内のラーメン店の分布図です。(Tableau Publicではこちら) この図ではタイトルをラーメン店の「分布」などではなく、「激戦区」としていることで、読み手に「戦い」「競争」をイメージさせています。
ジャーナリストのように考える:読み手に誤解を与えないように
1880年にデータのビジュアライズについて書かれた"Graphic methods for presenting facts"という本があります。 (実際の書籍はこちら)などで参照できます
この書籍の中で、データを可視化する際のポイントが詳しく説明されています。
- 左:自国における5種類のゴミの比較図
- 蛸と図の関連性がない
- 遠近法のせいで量と大きさが正しく表現できていない
- 右:主要国における登録船舶の比較
- 船の絵で船舶に関係するものとすぐにわかる
- 棒グラフを用いているので大小比較がしやすい
他にも、分かりやすいビジュアルとそうでないものの比較として、アメリカにおける旅客量の変化を表した図を示します。 旅客者数を大きさでなく数で表現することで、左右比較して分かりやすさは一目瞭然となります。
アーティストのように表現する
データのビジュアライゼーションには、「覚えやすさ」と「説明しやすさ」の2軸があります。色を使う方が覚えやすい反面、説明しにくいという欠点があります。
覚えやすく、かつ分かりやすい図を作るためには、印象的な絵を使う方法があります。 例えば、下図のグラフは、年代毎の不平等さの遷移を表したものですが、これでは印象が強くありません。
そこで、全体にお札の絵を重ねることで、お金に関するVizだということを強く印象づけることができます。 (実際のVizはこちら)
下図は、人気アニメ"ザ シンプソンズ"の「主人公として扱われた話数」のグラフを表していますが、
グラフに登場人物の絵を添えることで、より分かりやすいデータになります。 (実際のVizはこちら)
アーティストのように表現する:視覚的メタファーを使う
視覚的メタファー(隠喩)を使うテクニックがあります。 下図は、地層のイメージ。
バブルチャートは、バクテリアのコロニーのような印象を持ちます。
有名な作家に、エドガー・アラン・ポーがいます。
彼の著作のグラフですが、ここから彼らしさを感じることはできません。 しかし、これを反転させ、グラフを赤に染めると・・・
滴る血のイメージになり、恐怖小説を代表とするポーらしいVizになりました。 (実際のVizはこちら)
他にも、オバマがゴルフをしている事について言及したツイートの数を円の大きさにして、
円をゴルフボールにすることで、ゴルフに関係あるVizだということが一目瞭然になります。
その他には、シカゴにおける落書き(Graffiti)の発生場所と通報件数を示した図です。 シカゴはミシガン湖に面しているので、その領域が表示上空白になるということと、落書きの発生が放射状に広がっている事をうまく利用して、
落書きの発生場所自体をスプレーしているように見せかけて、うまくメタファーとして表現しています。 (実際のVizはこちら)
小説家のようにつながる
"Go Big or Go Home"という言葉があります。
これは、アメリカの神話学者、ジョーゼフ・キャンベルが著書"千の顔を持つ英雄"で表した言葉です。
その言葉の通り、と言う訳ではないですが、2012年10月14日に、オーストリアのスカイダイバー、フェリックス・バウムガートナーが高度39000mからのスカイダイビングを行いました。 約9分間のダイビングだったのですが、その間に最高落下速度は音速を超える時速1342kmを記録しました。全く想像がつかない話です。
どの位凄いのかは、バーチャートにするとわかります。ほぼ宇宙からダイブしたことがわかります。
また、速度についても比較してみます。一番速いのはコンコルド(マッハ3)ですが、その次に位置しています。 弾丸よりも速く、トルネードの3倍の速さだということがわかります。
小説家のようにつながる:ストーリーポイントを使う
情報が多く、1つの画面に収めるのが難しい場合は、ストーリーを作ることでわかりやすく伝えることができるようになります。 例えば下図は、日本におけるインフルエンザの流行状況から、注意すべきポイントを表した図です。近年の傾向では、1年の内4〜6週目(1〜2月)に流行のピークがありますが、各年によりピークは異なる傾向があることを示しています。
次の視点は場所です。インフルエンザがどこで流行しているかを示しています。
更に年齢別の感染リスクを表した図です。子供の方が高い感染リスクを持つことが示されています。
また、地域の特性を表した図も示しています。地域特性をクラスタリングし、年少人口は低いが、年少人口密度が高いために感染リスクが高い地域を示し、注意を喚起しています。
このように、何が起こっているかを1つ1つ確認することで、状況を正確に把握することができるようになります。
セッションまとめ
今までに伝えたことは全て「テクニック」です。これは意識すれば身につけることができます。きっと、図だけの退屈なVizから開放されることでしょう。
どのように相手の心に影響するVizを作れるか、そのハートに触れるVizが作れる事を願っています。
まとめ
Tableau Conference 2017 On Tour Tokyoの2日目におけるキーノート2つのレポートでした。
2セッションを通じて、Tableauという製品がいかに長い時間を掛けて、深い研究、洞察を重ねて作られてきたかがよく理解できました。 ユーザーである私達は、その製品に込められた思想を踏まえた上で、より感情に訴えるVizを作成する事を心掛ける必要があると思いました。 今後のTableau製品が、ユーザーにとってより使いやすく、より価値の高い分析の助けとなっていくことを引き続き期待したいと思います。