[レポート] MDS311: FOXでのライブテレビ配信のクラウドへの移行 #reinvent
はじめに
清水です。AWS re:Invent2019のセッションMDS311「Migrating live television distribution to the cloud, featuring FOX」の聴講レポートとなります。
セッションの概要は下記になります。
FOX is moving its live television distribution pipeline across all platforms to AWS. In this session, attendees learn how FOX uses AWS to create, distribute, and monetize live television at scale—and how AWS helps FOX pioneer the future of news, sports, and entertainment in the digital era.
スピーカーは下記のお二人です。
- Evan Statton - Principal Architect, M&E, Amazon Web Services
- Alastair Hamilton - SVP Distribution Engineering, FOX Corporation
セッションスライドはこちらのURLで、またセッション動画は下記で公開されています。
レポート
まずはEvan Stattonさんからです。FOXについての紹介映像を流し、続いテレビの歴史を振り返ります。
01/テレビの簡単な歴史
- 誰がテレビを発明したか
- テレビは多くの人達によって発明された
- フィロ・テイラー・ファーンズワース、完全電子式テレビの発明
- カール・フェルディナント・ブラウン、ブラウン管(CRT)の発明
- ジョン・ロジー・ベアード、メカニカルテレビの父
- テレビは多くの人達によって発明された
- 電子式テレビの歴史
- 1927年
- フィロ・テイラー・ファーンズワーズが電子式テレビの発明
- 1939年
- 国際博覧会でテレビの展示
- 1953年
- アメリカでカレーテレビはじまる
- 1969年
- ニール・アームストロングの月面歩行を6億人がテレビで視聴
- 1990年代
- デジタル化、HDフォーマットへ
- 2000年代
- AWSがはじまったのが2006年
- このころからWebでのHDライブストリーミング視聴などもはじまる
- 2017年
- AWSがAWS Media Servicesをローンチ
- 2019年
- テレビの歴史とAWSの歴史がむすびつく
- FOXはライブワークフローをクラウドにマイグレーションしようとしている
- テレビの歴史とAWSの歴史がむすびつく
- 1927年
- 今日のテレビ市場
- $3,172億
- 2017年のグローバルテレビ放送のマーケット
- 29.6%
- 北アメリカのマーケットシェア($939億)
- 22.5%
- アメリカ合衆国のマーケットシェア($713億)
- $3,172億
02/テレビ放送はどのように動いているか
- テレビ配信のパイプライン
- スポーツなどのライブTV制作、ニュースなどのスタジオ制作、そして広告を集約
- 地元のFOX関連会社などの放送関連会社、ケーブルTV局のようなMVPD(マルチ・ビデオ・プログラミング・ディストリビューター)、HuluのようなdMVPD(digital MVPD)などから配信
- 放送局は何をするのか?
- ライブテレビ
- スポーツやニュース
- チャンネルプレイアウト
- ドラマやドキュメンタリー
- MVPDsへの配信
- リニア配信
- インターネット経由の配信
- OTT配信
- ライブテレビ
- 放送局は何を心配しているか?
- レイテンシ(遅延)
- 信頼性
- ビデオ品質
- コスト
- フレキシビリティ
- 新しいハードウェア、ビデオコーデック、コンテナフォーマットなどへの対応
- この点、クラウドは最適
03/FOXのHEVCへのトランスフォーメーション
ここからAlastair Hamiltonさんに代わり、FOXのHEVCへのトランスフォーメーションから紹介です。
- FOXの歴史
- 1923年
- オーストラリアで創業した新聞社News Limitedがルーツ
- 1949年
- キース・マードックがNews Limitedの少数株主となる
- 1952年
- キース・ルパート・マードックがNews Limitedを引き継ぐ
- 1973年
- San Antonio Express-Newsを買収(アメリカで初の買収)
- 1979年
- News Corporationを設立
- 1984年
- News Corporationが20世紀フォックス(20th Century FOX)を買収。映画事業
- 1985年
- Metromediaを買収。放送事業
- 1986年
- FOX Broadcasting Companyを設立。テレビ放送ネットワーク
- 1996年
- FOX News Channel設立
- 2003年
- News Corporationが株の1/3を購入
- 2013年
- 21st Century FOXを設立。メディア事業
- 2019年
- DisneyがFOX filmとケーブル資産を買収しFOX Corporationが設立
- 1923年
- 今日のFOXは誰か?
- たくさんのチャンネル、放送局
- FOX Network
- FOX Sports
- Big Ten Network
- FOX News
- FOX Business
- FOX Soccer
- FOX Sports Racing
- 120万アセットがクラウドに保存されている
- 年間60,000時間のコンテンツ
- 年間16,000時間のライブイベント
- たくさんのチャンネル、放送局
- ライブ放送チャンネル
- どのように映像制作され放送されるか、実際の様子を、NFL、サンフランシスコのスタジアムで撮影した映像をもとに紹介
- カメラマンスタッフ、カメラ、ドリー、フットボール用のマイクなど映像制作機材
- スタジアム内のアクセスポイント、カメラはここに接続されている
- 映像制作用の中継車。ディレクターやアシスタントディレクター、TD。スイッチャーやEVSなども
- 中継車の外にはケーブルがずらりと。ファイバーインターフェースはスタジアムにつながる
- 映像はロサンゼルスの放送局内に送られる
- 試合前のショーやハーフタイムショーは放送局内のスタジオで映像制作
- プロダクションコントロールルーム、巨大なスイッチャがあり、ここで映像切替
- 放送局内ネットワークルーム。たくさんのコンピュータハードウェア。これらのラックがクラウドのクラウド移行を計画
- 放送局の外には衛生と接続する機材も
- どのように映像制作され放送されるか、実際の様子を、NFL、サンフランシスコのスタジアムで撮影した映像をもとに紹介
04/テレビ配信の再発明
- コーデックタイムライン
- 1990年代
- Video: MPEG-2
- デジタルテレビやDVDのの標準コーデックとして
- 最新の4Kなどには向かない場合も多い
- Video: MPEG-2
- 1991年
- Audio: AC-3
- 1993年
- Audio: MP3
- 1997年
- Audio: AAC
- 2000年代
- Video: MPEG-4
- MPEG-2の2倍効率的(半分の帯域で同じ品質)
- 現在、放送業界のの90%以上がMPEG-4を使用
- Video: MPEG-4
- 2003年
- Video: VC-1
- 2009年
- Video: ATSC-1
- アメリカで現在利用されている標準的なデジタルテレビ規格
- ビデオエンコーディングフォーマットはMPEG-2、オーディオはAC-3
- Video: ATSC-1
- 2013年
- Video: HEVC
- MPEG-4の2倍効率的。MPEG-2と比べれば1/4のビットレートで同じ品質
- エンコードの複雑さはMPEG-2の10倍。膨大な計算リソースの利用できるクラウドの出番。
- Video: VP-9
- Video: HEVC
- 2015年
- Audio: MPEG-H
- Audio: AC-4
- 2017年
- Video: ATSC-3
- アメリカでの次世代のデジタルテレビ規格。現在テストフェーズ。4Kなど対応
- Video: ATSC-3
- 2018年
- Video: AV1
- 2020年
- Video: VVC
- 1990年代
- エンコーディング技術の進化
- 2007年
- 1つのラックユニットで1つの(シングル)チャネル
- MPEG-2, 720
- 複数チャネルに対応するなら、たくさんのラックユニットが必要
- 2016年
- 4つのHEVCエンコード
- HP DL380 Gen9ラック
- 2018年
- AWS Elemental Liveエンコーダ
- 8つのHEVC、4k Ultra HDを1ラックで処理可能
- 2019年
- AWS Elemental MediaLive
- クラウド環境、膨大なコンピューティングリソース
- 複数の4kチャネルに24/7で対応
- 2007年
- STATMUX技術の進化
- 2007年
- 専用ハードウェア
- 2019年
- AWS Elemental MediaLiveのStatmux機能
- 先週(2019/11/26)発表された最新機能
- Evan StattonさんがAWSマネジメントコンソール画面を用いてデモ
- これまで導入に月単位でかかっていた時間が、数分で導入可能に
- AWS Elemental MediaLiveのStatmux機能
- 2007年
- IRD技術の進化
- 衛生からの映像受信機器
- 2007年
- 1つの単一チャネルのみの対応
- 2018年
- Software Defined
- ソフトウェア更新で新機能追加が容易
- 12チャンネル
- 4Kデコードなどにも対応
- Software Defined
- FOXのHEVCとWSへのマイグレーション
- FOXから放送関連会社やMVPD、dMVPDへ配信する箇所をAWSにマイグレーションすることを計画
- フェーズ1: 2020/02
- 多くのハードウエアはまだロサンゼルスなどの放送局内に、オンプレミスある
- オンプレのAWS Elemental Liveエンコーダから80MbpsのメザニンストリームでAWSに映像を伝送
- 16のフィードをDirect Connect経由でAWSに送信
- PoC初期段階ではインターネット経由でZixiを使用した
- AWSではUS Westの2つのAvailability Zoneを利用。また冗長化のためUS Eastの2つのAvailability Zoneも利用
- AWS Elemental MediaLiveのStatmux機能を用いてオンプレミスに映像を配信
- オンプレミス側機器で処理をして、実際に配信
- プレイアウト、暗号化はオンプレミス
- エンコードをクラウド
- フェーズ2: 2020/10
- プレイアウト、エンコードをクラウドで
- 暗号化はオンプレミス
ここからEvan Stattonさんに戻ります。
- 電子式テレビの歴史
- 2020年
- AWSとFOXが協力し、FOXが主要なネットワークでははじめてのクラウドベースのテレビ放送を行うことになる
- 2020年
- Live statmuxのデモ
- FOXでも使用予定のAWS Elemental MediaLive Statmuxについてのデモンストレーション
- FOXでも使用予定のAWS Elemental MediaLive Statmuxについてのデモンストレーション
05/テレビ制作の未来
- 今日紹介したマイグレーション計画はFOXからの配信部分だけだが、将来的には他の部分のクラウドへのマイグレーションも検討可能
- 明日のライブプロダクション
- プロダクションコントロールルームのオンデマンド化
- スタジアムなどからのすべてのカメラフィードをクラウドに伝送
感想
re:Invent2019からだいぶ時間が経ってしまいましたが、アメリカのテレビネットワークのひとつであるFOXのAWS移行についてのセッションについてレポートをまとめてみました。これまでのいわゆる「インターネット向けライブ配信」ですと、設備自体はオンプレにあり配信に必要な部分のみがクラウドで処理される、というものであったかと思います。今回のAWSとFOXの移行計画ではこのようなインターネット向け配信部分のみではなく、テレビ放送向けの設備自体をクラウドに移行する計画です。課題も多いかとは思うのですが非常におもしろそうですね!セッション内容もテレビ放送ベースの話が多く、個人的には知らない用語など多かったなぁという印象です。またアメリカのテレビ放送やFOXについても知らないことが多く、こちらも興味深かったです。(こんな背景もあり、セッション自体はre:Invent2019現地で聴講していたのですがその場ではレポートにまとめられず、この度セッション動画やスライドもあわせて確認してレポートにまとめたしだいです。そのため、レポート中のスライドについては写真とスライドPDFからの引用とが混ざっています。)
AWSとFOXの協力体制については、以下のAWS Media Blogのエントリでも紹介されていました。今後が楽しみですね!