ライオンがIoTハブラシ開発で実現させた「お客様の声を反映したアジャイル開発」とは #devio_showcase

ライオン株式会社ヘルス&ホームケア事業本部オーラルケア事業部ブランドマネジャーの横手弘宣氏による技術セッション。クラスメソッドが技術支援したライオンのアプリ連動型IoTハブラシ「クリニカKid’s はみがきのおけいこ」の開発を振り返ります。

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2,000社以上の支援実績から厳選した先端事例をオンラインで紹介する「Developers.IO 2020 Showcase」が全6日間29セッションで開催されました。本レポートではIoT製品のアジャイル開発の事例としてライオンのアプリ連動型IoTハブラシ「クリニカKid’s はみがきのおけいこ」の開発事例をご紹介します。

親にとって物理的にも心理的にも負担感が大きく、子育てにおける1つの大きな課題になっているのが子どものハミガキです。クリニカKid’s はみがきのおけいこは、子どもが進んで歯みがき習慣を身につけ、一人一人に合った形でハミガキをサポートできます。開発においては、クラスメソッドがパートナーして参加し、ユーザーテストを繰り返し、お客様の生の声を取り入れる、アジャイルでのスピーディーな開発を推進しました。

「創業129年のライオンが、子どもの歯みがき嫌いの“あたりまえ”をかえる。アジャイル開発で実現した、子どもの自主性を育むIoTハブラシの事例紹介」と題し、ライオン株式会社ヘルス&ホームケア事業本部オーラルケア事業部ブランドマネジャーの横手弘宣氏により行われたセッションについてレポートします。

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負担を減らすIoTバブラシ

1891年に創業したライオン株式会社は、1896年に日本で初めて粉ハミガキを開発し、販売を開始。オーラルケアに関しての高い技術力を持ち、国内No.1メーカーとして、人々の健康で快適な毎日と、よりよい生活習慣作りに貢献しています。ライオン株式会社のオーラルケア製品のメジャーブランドの1つとして「クリニカ」があります。クリニカは、製品として単純に虫歯予防を行うだけではなく、予防歯科という概念を世の中に広げる活動も積極的におこなっています。   「セルフケアのモチベーションを高め、いわゆる治療ではなく、予防の水準を高める。予防歯科を実践する方が増えれば、様々な製品を使う方が増え、お客様のクオリティオブライフが向上する。日本をもっと予防で先進国にしていくのが、我々のブランドのミッションであると考えています。」と横手氏は語ります。

子どものオーラルケアの水準を上げていくためのマーケティング活動を行う中で、3歳から6歳の子どもは、歯磨きを嫌がって自分でちゃんとやるという習慣が定着していない、子どものハミガキの負担を軽減したいという親は、実に9割近くもいることがわかってきました。この課題を解決し、子ども一人一人の生活やオーラルケアのリテラシーの実態に合わせ、習慣化までをサポートしていく新たな製品として開発されたのが「クリニカKid’s はみがきのおけいこ」です。

横手氏は「我々のようなメーカーが、このような製品の開発するのは非常に難しい。アイデアは出るが形にしていくのが大きな問題でした。一番こだわったのは、ただIoTをスピーディーに開発するのではなく、お客様がちゃんと使い続けることができる製品や体験を作っていくというところです。それを外部のパートナーと作りあげたというのが今回の大きな特徴です。」と、開発について振り返りました。

プロトタイプ体験により見えてきた課題

プロジェクトは大きく3つのフェーズに分かれています。1つめが、製品サービスをどう設計したか。2つめが、開発の初期段階どう動いたか。3つめが、ローンチに向けて最後にどういうプロジェクトの進め方をしたか。

「たった1枚の体験ストーリーボードから企画がスタートしています。直ぐに考えとしては出来ました。ただ、これをどうやって現実のものにしていくか。妄想レベルを、どう具体化できるかが最初の悩みでした。そこで我々が最初に行ったことは、自分たちだけで考えることを捨てることでした。」と、第1フェーズの製品サービス設計について、横手氏は語ります。

開発は、アイデアをプロトタイプでお客様に体験してもらうことで、課題を全て可視化することから始まりました。具体的には、デジタル化もしていないようなモックを作って、隣の部屋にいる親子に対して、女性社員が声でアナウンスしながらIoTハブラシを疑似体験してもらうものでした。この調査から、何を作らなければならないのか、要件の定義が見えてきます。   「親子の一対一の関係性に、第三者の存在を作ることによって、一緒になって第三者に向き合う構図を作る。これがハミガキを続けるうえで一番大きなポイントであるとわかりました。いい体験を継続させるために、子どもが自分でやりたいと言える。親がそれを手伝うという関係になる。その結果、子どもの成長を親子で喜びあうことが出来る。そのような、体験を作るべきである。」と、横手氏は調査の結果を語ります。

ウォーターフォールからアジャイルへ

横手氏は見えてきた課題、仮説に対し、実際に開発を進める2つめのフェーズについてこのように語ります。   「当社は、我々がアイデアを作って、研究所のシーズを見ながら、生産対応、品質管理を視野に入れつつ開発を行う。いわゆるウォーターフォール型の製品開発がメインでした。「クリニカKid’s はみがきのおけいこ」のような製品を開発するには、我々の今までの知見が逆に弱みになります。これを補うために、我々のプロジェクトメンバーの中に、AWSやIoT製品のアジャイル開発を得意とするクラスメソッドさんに入っていただきました。我々のプロジェクトメンバーだけで動かすのではなく、我々から委託してオーダーするという関係でもない。一緒になって問題を解決する、アジャイル開発というものを採択したというのが我々の大きな特徴になります」

実際の開発では、社内、社外のメンバーも常にデジタルツールを駆使して意見を交わし、同じ課題に向き合いながら結果を出していきます。プロジェクトマネージャーがタスクを管理し、素早く意思決定を行いながら開発を進め、具体性のあるものが直ちに出来上がっていきました。

「デバイスの形状のみならず、どういうファームウェアを設計すべきなのか。子どもが続けたくなるアプリケーションにするため、どういう画面を、どのタイミングで提示するのがいいのかなど。当社のプロジェクトメンバーとフラットになりながら、議論、そして会話。そういったことをしながら開発することができました。この製品開発のやりかたが、我々に与えた影響というのが非常に大きくあります。」と、横手氏は開発の様子を語りました。

製品開発は3つの視点でバランスをとる

横手氏は3つめのローンチに向けて最後のプロジェクトの進め方という点について、このように語りました。

「ローンチといったところで、私のような立場の人間が一番会社から問われるは、将来のビジネス構想になります。我々の事業として、どのような構想を描いていくのか。さらには、その構想に対してどういうステップを踏んで、どのように成長していくのか。そのような戦略シナリオというのが、最終段階の前には必要になってきます。戦略シナリオというのは、これまでのビジネスモデルと違う場合もあります。我々だけで考えるのではなく、常に経営と議論を繰り返しながら、事業として目指すイメージを共有してきました」

また、横手氏は、今回の開発について「新しいものを作る時のやり方としては、お客様にとって何が必要なのかというところと、我々のビジネスがどう成長していくべきなのか。そして、それをどう実現していくのか。その3つの視点でバランスをとっていくことの重要性を改めて実感した」とも語っています。

「クリニカKid’s はみがきのおけいこ」は、実際にローンチに至るまで、147人の母親と、2人の専門家の協力を得て開発が進められました。8割近い子どもが、3カ月以上飽きることなくほぼ毎日使い続け、ハブラシだけを使って磨く場合よりも、約2倍も歯垢除去力が上がっているとのデータも出ています。 横手氏は「我々としては、この製品を一人でも多くのハミガキや育児で悩むお母さまに知っていただき、使っていただければ幸いです」とセッションを締めくくりました。

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