Cloudflare の Clef に書類の種類を分類させてみた

Cloudflare の Clef に書類の種類を分類させてみた

Cloudflare Workers AI の新しいマルチモーダルモデル「Clef」を使って、画像だけで請求書や見積書などの書類を自動分類できるか検証してみました。OCR を挟まずに28枚の架空書類を7種類に分けた結果と、確信度を使った誤分類の見分け方について紹介します。
2026.10.04

こんにちは、けーまです。

届いた書類を請求書・見積書・注文書のように仕分けるとき、テキストしか受け取れない decision model(TypeSafe の Jevなど)では、先に OCR で文字を取り出す必要がありました。
2026年10月1日に Cloudflare Workers AI で公開された Clef は画像を入力として受け取れるため、OCR を挟まずに画像だけで分類できるかもしれません。

そこで、日本語と英語の架空の書類28枚を Clef に渡して7種類に分類させ、正解率と確信度を確かめてみました。

1. 検証の条件

項目 内容
モデル clef(27B)、clef-flash(9B)
入力 書類画像1枚(PNG、1240×1754)。書類のテキストは渡さない
書類 架空の28枚。スキャンの傾き・かすれ・手書きは含まない
質問 choice 1問。選択肢は7種類と other の8個
呼び出し方 REST API で1画像1リクエスト、各モデル1回ずつ

choice は、選んだ選択肢・選択肢ごとの確率・確信度(confidence)を返す質問の型です(Changelog: Introducing Clef | Cloudflare Docs)。

確率と確信度は、別の値です。

  • 確率:書類がその種類である見込み。8個の選択肢の合計が1になり、最も高い種類が回答として選ばれます

  • 確信度:その回答をどれだけ迷わずに選べたかの度合い(0〜1)

例えば今回の検証では、ある発注書に対して請求書が 0.435、見積書が 0.3625 と2つの種類の確率がほぼ並び、回答は請求書になったものの、確信度は 0.2384 まで下がりました。
確信度の計算方法は Cloudflare のドキュメントに記載されていないため、本記事では返ってきた値をそのまま使っています。
回答を自動で処理するか人の確認に回すかは、この迷いの度合いがわかる確信度で判断します。

リクエストは次の形です(criteria は8個のうち2個だけ載せています)。

{
  "model": "clef",
  "images": ["data:image/png;base64,..."],
  // state: 判断の前提(添付画像はビジネス書類の1ページ。何の書類か判定せよ)
  "state": "The attached image is one page of a business document. Decide what kind of document it is.",
  "questions": {
    "doc_type": {
      "type": "choice", // 選択肢から1つ選ぶ
      // instructions: 判定の指示(画像に写っているビジネス書類の種類はどれか)
      "instructions": "Which kind of business document is shown in the image?",
      "criteria": {
        // invoice(請求書):提供済みの商品・サービスの支払いを請求する書類(請求額・支払期日あり)
        "invoice": "Invoice / bill: the seller requests payment for goods or services already provided, with an amount due and a payment deadline.",
        // quotation(見積書):発注前に価格を提案する書類(通常は有効期限あり)
        "quotation": "Quotation / estimate: the seller proposes prices before an order is placed, usually with a validity period."
      }
    }
  }
}

2. データ

種類は請求書・見積書・領収書・納品書・注文書・契約書・履歴書の7つです。
各種類について日本語だけの書類と英語だけの書類を2枚ずつ用意し、2枚目には次のような紛らわしい要素を入れました。

  • タイトルが無い、小さい、または別名(Estimate、Packing Slip、発注書、職務経歴書)

  • 本文で別の書類に言及する(請求書の本文に見積書番号、見積書の注意書きに注文書と請求書)

  • 業務書類の用語が並ぶ履歴書(請求書や注文書を扱った職務経験)

タイトルなしの英語の請求書
紛らわしさを入れた例。タイトルが無く、本文で見積書(quotation)の番号に言及している

3. 結果

28枚の特徴と、各モデルの回答、その回答の確率、確信度は次のとおりです(誤りを太字にしています)。

Clef の choice 型は、選んだ回答に加えて「確率」と「確信度(confidence)」の2つの数値を返します。「確率」は全選択肢の合計が 1.0 となる予測確率のうち、選ばれた回答に割り当てられた値です。一方の「確信度」は、モデル自身がその判断にどれだけ自信を持っているかを示す 0〜1 の値です。

正解 言語 書類の特徴 clef の回答 確率 確信度 clef-flash の回答 確率 確信度
請求書 日本語 標準(タイトル「請求書」あり) 請求書 0.974 0.9416 請求書 0.9497 0.8884
請求書 日本語 タイトルなし。本文で見積書番号に言及 請求書 0.9769 0.948 請求書 0.9751 0.9439
請求書 英語 標準(タイトル「INVOICE」あり) 請求書 0.981 0.957 請求書 0.9611 0.9131
請求書 英語 タイトルなし。本文で受諾済みの見積書(quotation)番号に言及 請求書 0.9832 0.9619 請求書 0.9727 0.9386
見積書 日本語 標準(タイトル「御見積書」あり) 見積書 0.9671 0.9265 見積書 0.9599 0.9105
見積書 日本語 タイトルが右上に小さく「お見積り」だけ。注文書と請求書に言及 見積書 0.9405 0.8698 請求書 0.7331 0.5175
見積書 英語 標準(タイトル「QUOTATION」あり) 見積書 0.9782 0.9507 見積書 0.974 0.9416
見積書 英語 タイトルが別名の「Estimate」。「This is not an invoice」と書き、purchase order にも言及 見積書 0.975 0.9437 見積書 0.9571 0.9044
領収書 日本語 標準(タイトル「領収書」あり、但し書き・収入印紙欄) 領収書 0.9608 0.9126 領収書 0.9046 0.7957
領収書 日本語 タイトルなしの POS レシート(お預り・お釣り) 領収書 0.9822 0.9597 領収書 0.9603 0.9115
領収書 英語 標準(タイトル「RECEIPT」あり、PAID IN FULL) 領収書 0.9871 0.9707 領収書 0.9775 0.9491
領収書 英語 タイトルが別名の「Payment Confirmation」。表に請求書番号と請求額が載る 領収書 0.9862 0.9687 領収書 0.9557 0.9017
納品書 日本語 標準(タイトル「納品書」あり、受領印欄) 納品書 0.9288 0.8453 納品書 0.9441 0.8766
納品書 日本語 タイトルが小さい「納品書(控)」。注文書番号に言及、金額欄なし 納品書 0.9746 0.9429 納品書 0.9706 0.9338
納品書 英語 標準(タイトル「DELIVERY NOTE」あり、受領署名欄) 納品書 0.9824 0.9601 納品書 0.9733 0.9399
納品書 英語 タイトルが別名の「Packing Slip」。顧客の PO 番号に言及、金額欄なし 納品書 0.9797 0.9542 納品書 0.9443 0.8768
注文書 日本語 標準(タイトル「注文書」あり) 注文書 0.9599 0.9106 注文書 0.9685 0.9293
注文書 日本語 タイトル「発注書」。見積書・納品書・請求書の3つに言及 請求書 0.435 0.2384 注文書 0.975 0.9436
注文書 英語 標準(タイトル「PURCHASE ORDER」あり) 注文書 0.9817 0.9586 注文書 0.9761 0.9461
注文書 英語 タイトルなし。「Please supply the following items」と承認者欄だけ 注文書 0.9781 0.9506 注文書 0.9768 0.9477
契約書 日本語 標準(秘密保持契約書) 契約書 0.9822 0.9597 契約書 0.9628 0.9167
契約書 日本語 業務委託契約書。報酬条項で見積書・請求書に言及 契約書 0.9798 0.9543 契約書 0.9555 0.9009
契約書 英語 標準(NON-DISCLOSURE AGREEMENT) 契約書 0.9852 0.9666 契約書 0.9548 0.8993
契約書 英語 Master Services Agreement。条項見出しに Purchase Orders と Invoices and Payment 契約書 0.9858 0.9679 契約書 0.9728 0.9388
履歴書 日本語 標準(JIS 様式に近い「履歴書」、写真欄) 履歴書 0.9566 0.9036 履歴書 0.9647 0.9211
履歴書 日本語 「履歴書」ではなく「職務経歴書」。本文に見積書・注文書・請求書の語が並ぶ 履歴書 0.9542 0.8985 履歴書 0.9488 0.8865
履歴書 英語 小さく「RESUME」。本文に invoices・purchase orders・receipts の語が並ぶ 履歴書 0.9774 0.949 履歴書 0.9714 0.9358
履歴書 英語 タイトルなし。氏名と見出しだけの研究者 CV(論文名に invoices を含む) 履歴書 0.958 0.9065 履歴書 0.9624 0.916

3.1 正解率

条件 clef clef-flash
全体 27 / 28 27 / 28
日本語 13 / 14 13 / 14
英語 14 / 14 14 / 14
標準の書類(1枚目) 14 / 14 14 / 14
紛らわしさを入れた書類(2枚目) 13 / 14 13 / 14

clef と clef-flash は、どちらも28枚中27枚を正しく分類でき、英語と標準的な書類はすべて正解でした。
外したのはどちらも日本語の紛らわしい書類1枚ずつで、両方のモデルが同じ書類を外すことはありませんでした。

3.2 誤分類した書類

モデル 書類(正解) 回答とその確率 正解の種類に付いた確率 確信度
clef 発注書(注文書) 請求書 0.435 注文書 0.066 0.2384
clef-flash 見積書(見積書) 請求書 0.7331 見積書 0.199 0.5175

clef が請求書と答えた発注書
clef が請求書と答えた発注書。見積書・納品書・請求書の3つに本文で言及している

clef-flash が請求書と答えた見積書
clef-flash が請求書と答えた見積書。タイトルは右上に小さい「お見積り」だけ

clef は発注書を請求書(確率 0.435)と見積書(確率 0.3625)の間で迷っており、本文に書かれた別の書類名に引っ張られたと考えられます。
clef-flash は、タイトルが小さい見積書を請求書と回答してしまいましたが、同じ画像を clef は正しく見積書と答えています。

どちらの誤分類も確信度は正解した書類より明らかに低く、次の節で述べるしきい値でしっかり拾えました。

3.3 確信度の分かれ方

項目 clef clef-flash
正解した27枚の確信度(最小 / 中央値) 0.8453 / 0.9506 0.7957 / 0.9167
誤った1枚の確信度 0.2384 0.5175
しきい値 0.8 未満で人に回す枚数 1 2
しきい値 0.8 以上で誤りが残る枚数 0 0

確信度は、56件の回答すべてで、回答の確率よりも低い数値が出ました。
しきい値を 0.8 に設定すると、clef は誤りの1枚だけを、clef-flash は誤りの1枚と正解の1枚を人に回す形になり、自動処理を通した書類に誤りは残りません。
確信度 0.8 未満だけを人が確認する運用にすれば、今回の28枚では誤分類をすべて拾える想定になります。

3.4 時間と費用

時間は日本からの REST API 呼び出しの往復実測値で、換算レートは1ドル150円です。

モデル 往復時間(中央値) 入力トークン(1枚) 費用(28枚)
clef 0.976秒(976ms) 1,367 $0.0092(約1.38円)
clef-flash 0.3535秒(354ms) 1,367 $0.0034(約0.52円)

clef-flash は clef の約3分の1の時間で応答が返り、費用も約4割に抑えられました。

4. まとめ

今回の28枚で試した限り、Clef は OCR を挟まずに画像だけで書類の種類を分類でき、外した書類も確信度の低さで見分けられました。

使い分けとしては、人手での確認に回す枚数を減らしたいなら clef、1枚あたりの処理時間を短くしたいなら clef-flash が向いています。

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