AIコーディングを始めてみて変化したことしなかったこと

AIコーディングを始めてみて変化したことしなかったこと

2025.12.25

こちらはクリスマスに1年を振り返ったポエムです。AIコーディングで仕事がどう変わったか、半年間の実体験をまとめました。


こんにちは。サービス開発室の武田です。

あまり1年の振り返りっていうことはやってこなかったのですが、個人的に仕事の進め方が大きく変わった1年でしたので、振り返っておこうと思った次第です。

ことの発端は2025年6月18日のこと。横田さんの一声から始まりました。あらかじめ断っておくと、「AI活用」自体はもっと前から発信していましたし、実際に使っていこう、ノウハウを共有していこうということは何度も言われていました。そういう環境は整えられつつありましたし、実際にドキュメント作成や推敲などで使っていました。これは「AIエージェント」試用開始の一声であり、私自身のAIコーディングを始めるきっかけとなったものでした。

ai-coding-what-changed-2025_1.png

AIの動向に詳しい人は、もちろんこれ以前から試していたでしょうし、人によっては「ちょっと遅い」と感じる方もいるかもしれません。実際にネット上では「こんなプロンプトを与えただけで3Dモデルのなんとかができた!」とか「一切コード書かずにブロック崩し動きました!」とかよく目にしました。もちろんそれらはすごいことですし、そういう喧伝は一定の効果はあるのでしょう。しかし私には、Ruby on Railsのscaffoldを見せられるのと大差ありませんでした。誤解しないでほしいのですが、それが悪いと言っているのではなく、私には響かなかったという話です(RoRが登場した当時はscaffoldすげぇ!と感動しました)。動いたものはどうやって機能追加していくのか、そういったコードベースになっているのか、運用保守は可能なのか。そういった観点がまったく見えなかったので、どこか一歩引いてそれらを見ていました。

※補足:scaffoldはゴールではなくて、(名前の通り)スタートラインですよね。それを「こんなことができる!すごいでしょ!」といわれても、ちょっと引いてしまうよねという感覚です。すごいのは確かなんですけど。

さて、実際に使い始めてみた感想ですが、「すごい!」の一言でした。人間では不可能な速度でコードを書いていき、内容も前後の流れを汲み取っており、「まじかーこれもう自分で書く必要ないか?」と思ったものです(その幻想はすぐぶち壊されるわけですが)。私は業務でいくつかのシステムを担当しているため、それぞれのシステムで実際に使ってみて、ひとしきり感動していました。

さてその2日後である、2025年6月20日のこと。横田さんからこんなメッセージがありました。

ai-coding-what-changed-2025_2.png

まったく使用料金とか気にしていなかった 私は、料金の確認方法も知らなかったので、教えてもらい見てみました。結果はたった2日で$80.76という数字でした。月換算したら$1211ですね。なかなかの数字です。これはまずいということで、その日のうちにMaxの$100プランに移行しました。なお後日これでも足りないということが判明し、$200プランへ移行しています。多い日は1日で$250くらいの使用量になることもあるため、十分使っていると言えるのではないでしょうか。

ゼロベースで作ってみる

既存のプロジェクトでAIコーディングを導入し慣れていく中で、そろそろゼロから何か作ってみようということで作ったのがjt-cliというツールでした。ダウンロード数は特段伸びていませんが、自分では使っています。JSONataいいよ、JSONata。

https://dev.classmethod.jp/articles/made-oss-jt-poweredby-claude-code/

これをきっかけに社内でも「Claude Code結構使ってる人」という認知がされていったような気がします。ありがとうございます。

登壇の機会

クラスメソッドとしてもAI活用は積極的に進めている施策のひとつです。Anthropic社と提携しより加速していこうというフェーズになりました。

https://classmethod.jp/news/20250725-anthropic/

そしてクラスメソッド主催のウェビナーが企画されました。初級編、実践編、応用編、特別編の4本立てで、特別編で登壇させていただきました。依頼が来た当初はここまで大きな企画ではなかったはずで、いつの間にか規模や申込者数も増えており、しかも最後ということで結構プレッシャーも感じていました(笑)。

こちらのウェビナーはおかげさまでご好評をいただき、再演も決定したようですので、興味がある方はぜひ申し込んでください。AIの世界は進化がとても早いので、今は一部状況が変わっている可能性もありますが、大筋では問題ないはずです。

https://classmethod.jp/seminar/260128-claude-code-webinar/

またその後、クラスメソッド主催のオフラインイベント、DevelopersIO 2025 TOKYOでも登壇の機会をいただきました。こちらもご好評いただき、懇親会でもたくさんの方と会話できました。

https://dev.classmethod.jp/articles/developersio-2025-tokyo-practice-claude-code-materials/

変化したこととしなかったこと

AIコーディングを導入してから、私の仕事の進め方は大きく変わりました。「コードを書く」時間は大幅に減り、設計やレビューに割く時間が増えました。これまではある程度ざっくり設計や指針を決め、書きながら細部を詰めるという進め方が多かったです。AIでも書かせながら方針を考えるということはあるのですが、なにぶん速度が速いので手戻りの量が相対的に大きくなってしまう傾向があります。そのため仕様をAIと壁打ちしながら詰め、できあがったものをAIでコーディングするというように変わっていきました。現在では仕様駆動開発と呼ばれているものですね。即興的にAIに任せるバイブコーディングの対義語のように扱われていますが、個人的にはそれぞれをいい塩梅で使っていくのがよいと思っています。もちろんしっかり検討したはずなのに、実装してみたら「やっぱりこうした方がいい」という手戻りはあります。ただ手戻りがあってもAIは文句をいわずやってくれるのでとても助かります。

またコードレビューも大きく変わりました。自分でコードを書く場合は理解しながら書いていくため、どちらかといえば仕様の考慮漏れがないか、コードのバグがないかという観点が強かったです。一方AIが生成したコードは量が多く、自分が思っていた方向性と合っているか認識合わせをしながら読む必要があります。そのためコードレビューでの指摘事項が増え、コードの意図の確認など、レビューにかかる時間が増えたように感じます。ただ、AIが生成したコードを読むことで、新しい視点やアプローチを学ぶこともできました。これは非常に有益な経験でした。

テストコードですが、最近はほぼ書いていません。TDDなどソフトウェア開発の方法論は知っているものの、実践がいまいちできていなかったなという方は、ぜひAIコーディングで試してみてください。

では反対に、変わっていないことはなんでしょうか。それは「ビジネスでの問題発見」であり、「コンテキストの理解」であり、そして「責任」です。私はソフトウェアエンジニアという立場で働いています。そのため主にビジネス上の問題をソフトウェアで解決することを考えています。そのため課題の本質を思考し、何を作れば解決できるのか、というのは今のところAIではありません。将来的にはAIがそういったことも解決する日が来ると考えています。

また社会というのは、自分一人ではなく多くの関係者、ステークホルダーがいます。解決すべき課題があった時、自分一人の視点ではなく別の角度からの視点も必要ですし、それぞれの立場でのコンテキストがあるはずです。その「落とし所」を探るのは今のところ人間です。

そして、AIは大量のコードを生成できますが、その責任は取ってくれません。最後には人間がしっかりと責任を取る必要があります。

終わりに

AIコーディングが勢いを増し、日々生成されるコードの量は膨大になっているでしょう。コードを書く時間が減ったとしても、それでエンジニアの価値がなくなるわけではありません。ただし「書く」より「読む」ことのほうが重要性は上がっているでしょう。読めないとコードのミスも気づけませんし、「AIが正しいと言ったから正しい」では意味がありません。

またこれまで以上に「決断を下す機会」や「責任を取る機会」が増え、それをしんどいと感じる人もいるでしょう。ですが、それを楽しめるメンタルモデルを作れれば、今後も続くであろうAIコーディングの時代を生き残れるのではないかと考えています。

AIコーディングを使いこなすことで、エンジニアとしての価値を高めていけると信じています。来年も引き続きAIコーディングを活用し、よりよいソフトウェア開発を目指していきましょう。

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