【re:Invent参加ブログ①】AIエージェントが変える製薬営業の常識

【re:Invent参加ブログ①】AIエージェントが変える製薬営業の常識

2025.12.02

クラウド事業本部運用イノベーション部の いそま です。

re:Inventセッション「AI and HCP Engagement: Powering Smarter Life Sciences Field Operations(AIと医療従事者のエンゲージメント:よりスマートなライフサイエンス現場業務の実現)」に参加しました!

本セッションの主役は、「医薬品営業担当者」です。
医薬品を医療関係者(病院など)に販売する際、医薬品の営業担当者が抱える問題に焦点を当てています。

目次

先に結論

AWS AIエージェントを活用することで、医薬品営業担当者の業務効率を劇的に改善することができます。
医薬品営業担当者がお客様先へ訪問後、従来10〜15分かかっていた情報入力作業を数分に短縮することで、営業担当者はお客様(医療関係者)との関係構築により多くの時間を割くことができます。

セッション概要

タイトル

AI and HCP Engagement: Powering Smarter Life Sciences Field Operations
(AIと医療従事者のエンゲージメント:よりスマートなライフサイエンス現場業務の実現)

概要

このセッションでは、AWSのAIサービスを使って医療関係者とのやり取りを改善する方法が紹介されました。
AIを使用することで医薬品営業担当者の仕事をどう変えるのか、具体的な仕組みと実際の導入事例が紹介されました。

医薬品営業担当者が抱える課題

  1. 医療従事者へのアクセス困難
    医療関係者は忙しく、営業担当者と実際に対話する時間を確保することが非常に困難になっていること(平均的な面談時間はわずか5〜10分程度)

  2. 複雑化する医薬品情報
    医薬品の種類や治療法が急速に進化しており、営業担当者が全ての情報を把握することが期待されてること(競合製品の情報、副作用報告、患者層データなど、把握すべき情報は膨大)

  3. データの分散
    必要な情報が複数のシステムに分散しており、営業担当者は以下のような様々なツールを駆使する必要があること

  • CRMシステム:医療従事者の基本情報、訪問履歴
  • マーケティングデータベース:キャンペーン情報、競合動向
  • 文書管理システム:製品情報、処方情報
  • 分析ツール:患者層データ、市場シェア情報
  1. 事前準備と事後処理の負担
    医療従事者との面談前に複数システムから情報収集し、面談後には10〜15分かけて訪問記録を入力する必要があること

    → ✅ これにより本来の営業活動に割ける時間が大幅に削減されてる(本セッションのメイン課題)

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AIエージェントによる解決策

<< 従来のアプローチの方法 >>

従来は条件分岐による推奨システムが使用されていました

  • 整理されたデータのみを利用
  • 柔軟性に欠ける
  • 透明性が低い
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AIエージェントの利点

  1. マルチシステム統合
    複数のシステムからデータを取得し、統一されたインターフェースで情報提供が可能

  2. リアルタイムインサイト
    営業担当者が医療従事者と対話している最中にもリアルタイムで関連情報を提供できる

  3. 透明性のある意思決定
    推奨内容の根拠、使用されたデータソース、推論プロセスが明確化される

  4. 動的パーソナライゼーション
    大規模言語モデル(LLM)を活用し、複雑なパーソナライゼーションモデルを構築することなく、個別最適化された応答を生成できる

  5. マルチモーダル処理
    テキスト、画像などの複数のデータ形式を同時に処理できる

AIエージェントの仕組み

AIエージェントは以下のように動作します。

  1. ユーザーからの質問を受け取る
  2. 設定された全てのツール(API、ナレッジベース、ガードレール)を特定
  3. 言語モデルと連携して処理を実行
  4. 回答を生成してユーザーに返す

主な機能

  • 医師情報の取得(特定の疾患領域での専門性など)
  • キャンペーン情報の確認
  • CRMシステムからのアカウント詳細取得
  • 競合情報の分析
  • 患者層データの確認
  • 副作用報告の確認
  • 業界トレンド情報の提供

リアルタイムと非同期処理

  • リアルタイム:ユーザーが質問すると即座に回答を生成
  • 非同期(バッチ処理): 毎晩、全ての担当アカウントを分析し翌朝には推奨アクションが準備されている

システムアーキテクチャ

  • Amazon Bedrock: AIエージェントのコア機能、知識ベース、プロンプト管理
  • Amazon Transcribe: 音声認識(ボイスインタラクション用)
  • AWS Lambda: オーケストレーション層
  • Amazon S3: ドキュメントストレージ
  • Amazon Redshift: データウェアハウス
  • Amazon Amplify: Web/モバイルアプリケーション開発
  • Amazon Lex: 会話型AIインターフェース
  • Amazon Connect: 音声による対話機能

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アーキテクチャの特徴

データレイヤー

複数のデータソースから情報を統合

  • CRMシステム(Salesforce、Veevaなど)
  • ドキュメント管理システム
  • データウェアハウス
  • 外部データソース

オーケストレーション層

Lambdaを使用してデータを取得・準備し、エージェント間の連携を実現する

アプリケーション層

  • Web/モバイルアプリケーション(Amplifyで構築)
  • 音声インタラクション機能
  • マルチプラットフォーム対応

セキュリティ・コンプライアンス

  • Amazon Bedrock Guardrails (出力フィルタリング)
    • PHI(個人健康情報)の検出と除外
    • 不適切なコンテンツのブロック
    • 約95%の精度でコンテンツフィルタリング
  • 暗号化通信
  • ユーザー管理と認証

実装事例と効果

❗️ 実装例

  • 音声による訪問記録入力
  • あるグローバル製薬企業向けに構築されたソリューション

プロセス

  1. 医療従事者との面談終了後
  2. 営業担当者が音声エージェントに訪問内容を口述
  3. システムが自動的に情報を処理
  4. CRMシステム(SalesforceやVeevaなど)に自動入力

効果

入力時間が大幅に短縮することで、営業担当者がより多くの時間を顧客対応に充てることができるようになった。

訪問後の情報入力時間
従来 10~15分
導入後 5分程度

セキュリティ強化手法

  1. レッドチームテスト

    エージェントの振る舞いを分析し、ベンチマークを設定する
  2. 暗号化署名

    エージェント間、エージェントとツール間のメッセージに暗号化署名を実装し、改ざんを防止
  3. 強化学習

    ユーザーフィードバックに基づき、リアルタイムでエージェントの振る舞いを改善

まとめ

AWSのAI技術をフルに活用することで、製薬業界の営業活動を劇的に変革することができます。

主なメリット

  • 業務効率化: 情報入力時間を80%以上削減
  • データ統合: 分散した情報を一元的にアクセス可能に
  • リアルタイム支援: 面談中にも即座に情報提供
  • 透明性: 推奨理由が明確で信頼性が高い
  • コンプライアンス: ガードレールによる規制準拠の確保

技術的ポイント

  • Amazon Bedrockを中核としたマネージドAIサービスの活用
  • マルチモーダル対応(音声・テキスト・画像)
  • スケーラブルなアーキテクチャ設計
  • セキュリティとコンプライアンスの両立

医療従事者との貴重な面談時間を最大限に活用し、より強固な関係構築とビジネス成長を実現できるソリューションです。

感想

母が医療関係者ということもあり、医療×ITのセッションを探していたところ本セッション辿り着きました!
セッションは日本語訳なしのフルフルEnglishでしたが、nottaで何とか乗り切りました…。

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