Amazon Q in Connectセルフサービスで自動ヒアリングした内容をエージェントワークスペースに表示させてみた
はじめに
Amazon Connect エージェントワークスペースに Amazon Q in Connect セルフサービスで自動ヒアリングした内容を表示させる方法をご紹介します。
従来、コントロールパネル(CCP)でコンタクト属性を表示させるには、標準機能では実現できませんでした。以下のブログで紹介されているように、Amazon Connect Streams を使ってカスタマイズし、画面も新規で作成する必要がありました。
しかし、Connect のステップバイステップ機能を利用することで、エージェントワークスペースに情報を表示させることが Connect 標準機能のみで実現できるため、その方法をご紹介します。
以前のブログでは、Amazon Q in Connect セルフサービスのカスタムツールを活用し、エージェントにつなげる前に用件をヒアリングさせる方法をご紹介しました。
上記のブログでは、Q in Connect セルフサービスで自動ヒアリング後、エージェントとの通話前に以下のコンタクト属性が既に保存されている状況です。
- 顧客の問い合わせ内容(inquiry)
- 顧客の問い合わせ内容の要約(summary)
今回は、上記のセルフサービス機能を前提とし、上記 2 点に加えて発信者番号(telephoneNumber)の計 3 項目を、通話時にエージェントにスクリーンポップとして表示してみます。
これにより、エージェントは問い合わせ開始時に必要なコンテキストを即座に把握でき、迅速な問題解決が可能になります。
セルフサービスのボットの作成方法は、上記のブログをご参照ください。
ビュー作成
エージェントワークスペースに情報を表示させるためのビューでは、AttributeBar を 3 つ利用します。
それぞれ以下の設定を行います。
- ID:AttributeBar_telephoneNumber
- Label
- 電話番号
- Value(これは動的です)
- $.Attributes.telephoneNumber
- Copyable
- true
- Label
- ID:AttributeBar_summary
- Label
- 要約
- Value(これは動的です)
- $.Attributes.summary
- Copyable
- true
- Label
- ID:AttributeBar_inquiry
- Label
- お問い合わせ内容
- Value(これは動的です)
- $.Attributes.inquiry
- Copyable
- true
- true
- Label
Connectフロー
Connect フローでは、ステップバイステップのビューを表示するフローと、電話を受けるフローの 2 つを作成します。
ビューを表示するフロー
ビューを表示するフローはシンプルな構成です。
[ビューを表示]では以下の設定にします。
- 表示:先ほど作成したビュー
- バージョン:$LATEST
- タイムアウト:60秒
- 入力:以下の通り(未処理のJSON)
{
"AttributeBar_inquiry": {
"Attributes": [
{
"Label": "お問い合わせ内容(原文)",
"Value": "$.Attributes.inquiry",
"Copyable": true
}
]
},
"AttributeBar_summary": {
"Attributes": [
{
"Label": "要約",
"Value": "$.Attributes.summary",
"Copyable": true
}
]
},
"AttributeBar_telephoneNumber": {
"Attributes": [
{
"Label": "電話番号",
"Value": "$.Attributes.telephoneNumber",
"Copyable": true
}
]
}
}
自作のビューは「カスタマーマネージドビュー」、作成済みのビューは「AWS マネージドビュー」と呼ばれます。
AWS ドキュメントに記載されているとおり、それぞれ入力内容の形式が異なります。
Connectインスタンス作成時にデフォルトで作成されるAWSマネージドビュー一覧
Customer Managed View
{"Attributes": [{"Label": "SomeLabel", "Value": "123"}]}
AWS Managed View
[{"Label": "SomeLabel, "Value": "123"}]
https://d3irlmavjxd3d8.cloudfront.net/?path=/story/aws-managed-views-common-configuration--page
今回はカスタマーマネージドビューを使用するため、AttributeBar には Attributes キーを含めて記載します。
{
"Attributes": [
{
"Label": "お問い合わせ内容(原文)",
"Value": "$.Attributes.inquiry",
"Copyable": true
}
]
}
Detail などの AWS マネージドビューを利用する場合は、Attributes キーは不要です。
[{
"Label": "お問い合わせ内容(原文)",
"Value": "$.Attributes.inquiry",
"Copyable": true
}]
電話を受けるフロー
電話を受けるフローは以下の構成です。
このフローは、前回の Q in Connect セルフサービスのカスタムツールを利用したブログのフローをベースにしています。
お問い合わせ内容の summary や inquiry、電話番号の telephoneNumber をコンタクト属性に設定後、「イベントフローの設定」ブロックを使用します。
フローで「DefaultFlowForAgentUI」イベントフックを設定することで、どのフローをいつ表示するかを動的に決定できます。
以下の設定を行います。
- イベントフックの選択:エージェント UI のデフォルトフロー
- フローの選択:先ほど作成したビューフロー
試してみる
実際に動作確認を行いました。
顧客が電話をかけてセルフサービスがお問い合わせ内容をヒアリングした後、エージェントにキューが転送されます。エージェントワークスペースでは通話開始前に電話番号、お問い合わせの原文と要約が表示されることを確認できました。
通話中も同じ情報を継続して確認できます。
通話終了後のアフターコールワーク中も情報は表示されたままです。
アフターコールワーク終了後は、これらの情報は表示されなくなります。
まとめ
本記事では、Amazon Connect のステップバイステップ機能を活用して、エージェントワークスペースに顧客情報を表示する方法を紹介しました。従来は Amazon Connect Streams を使ったカスタマイズが必要でしたが、今回の方法では Connect 標準機能のみで実装できます。
主なポイントは以下のとおりです。
- AttributeBar を使用したカスタムビューの作成
- ビューを表示するためのシンプルなフローの設定
- イベントフックを使用した通話開始時の自動ビュー表示
この実装により、エージェントは通話開始時から顧客の問い合わせ内容や要約、電話番号といった重要情報を即座に確認できるようになります。これによって初期対応の質が向上し、顧客満足度の向上につながります。
また、通話中やアフターコールワーク中も情報が継続して表示されるため、エージェントは常に必要なコンテキストを参照しながら対応できます。
Amazon Connect のステップバイステップ機能は、このような情報表示だけでなく、さまざまなユースケースに応用可能です。エージェント体験の向上と業務効率化のために、ぜひ活用してみてください。
参考