[終了予告] Amazon Elastic Transcoderが2025年11月にサービス終了することがアナウンスされました
はじめに
清水です。AWSのファイルベースの動画変換サービスの1つであるAmazon Elastic Transcoder、そのサポート終了予告が2024/11/12にAWS for M&E Blogでアナウンスされました。サポート終了はおよそ1年後の2025/11/13です。
弊社しばたがまとめている、「AWSサービスのサポート終了アナウンスまとめ」でもすでに取り上げられていますね。
同じタイミングでのサポート終了がアナウンスされているAWS Elemental MediaStoreと同じく、基本的には後継・代替となるサービスがAWSにあるため、そちらへの移行が推奨されているというかたちです。Elastic Transcoderでいえば、同じくファイルベースの動画変換サービスであるAWS Elemental MediaConvertが移行先の代替サービスとなります。
Amazon Elastic Transcoderは2013/01にリリースされたサービスです。AWSの中でも割と昔からあったサービスかと思います。最近は、動画変換についての機能アップデートはMediaConvertで行われていたためアップデートなどは少なかったかと思いますが、各所にAWSの歴史、ではないですが昔の面影が見え隠れしているサービスかと思います。
本エントリではそんなElastic Transcoderを懐かしみながら、代替サービスとなるMediaConvertへの移行などについてもまとめてみたいと思います。
Amazon Elastic Transcoderのサービス終了予告について改めて確認する
まずはAmazon Elastic Transcoderのサービス終了予告について、冒頭で示したAWS for M&E Blogのアナウンス以外の告知を確認してみます。
Elastic Transcoder公式ページを確認
まずはElastic Transcoderの公式ページ「Media Transcoding - Amazon Elastic Transcoder - AWS」です。冒頭に以下の記載がありますね。「see the migration blog post.」のリンク先は2018年にポストされたAWS for M&E Blogエントリ、「How to migrate workflows from Amazon Elastic Transcoder to AWS Elemental MediaConvert | AWS for M&E Blog」です。
On November 13, 2025, AWS will discontinue support for Amazon Elastic Transcoder. After November 13, 2025, you will no longer be able to access the Amazon Elastic Transcoder console or Amazon Elastic Transcoder resources. For more information, see the migration blog post.
引用元: Media Transcoding - Amazon Elastic Transcoder - AWS
ところでこのAmazno Elastic Transcoderの公式ページ、冒頭部分の次の箇所(上記スクリーンショットで赤枠で囲った箇所の下の部分)では「Save costs and get more features with AWS Elemental MediaConvert」とElastic Transcoderの後継サービスであるAWS Elemental MediaConvertの利点などの案内があります。そしてその下に「Amazon Elastic Transcoder is media transcoding in the cloud.」と、Elastic Transcoder自体の説明が続きますね。
Elastic Transocderの公式ページ、数年前には冒頭にこのMediaConvertを案内する内容が表示されていた認識です。詳細を確認すべくInternet Archive Wayback Machineで確認したことろ、2018年6月の段階でMediaConvertについての案内の記載がはじまっていたことが確認できました。MediaConvertのリリースが2017年11月なので、そのおよそ半年後には後継サービスへの案内自体ははじまっていた、ということになりますね。
そして、このMediaConvertの案内の下に記載されているElastic Transcoderの自体の説明、「media transcoding in the cloud .」に個人的には歴史を感じました。この文言はElastic Transcoderリリースの2013年1月からあったようです。2024年の現在であれば、AWSのサービスならば(一部を除いて)"in the cloud"である、というのは言うまでもなくわかりきったことであるかと思います。しかし2013年の当時は、Cloudという考え方自体がまだ一般的ではなく目新しいものということもあり、「Cloudで実行される」という点を強調していたのかな、などと思いました。
さて、そんなことを言いはじめると、このElastic Transcoderの公式ページ、デザインも以前のままであり、これ自体にも懐かしを感じますよね。
AWS Management Consoleを確認
そんな懐かしさを感じさせるElastic Transcoderの公式ページの次は、AWSマネジメントコンソールのElastic Transcoderのページを確認してみます。公式ページ同様、こちらも冒頭に「End of support notice」と通知が記載されています。
なおこちらの冒頭の表示、2023年7月ごろには公式ページと同じく、MediaConvertの利点などの案内が記載されていました。ちょうどX(旧Twitter)にポスト(旧ツイート)していたスクリーンショットがあるので提示します。
ところでこのElastic Transcoderのマネジメントコンソール、以下のリリース時の弊社横田のブログエントリを確認してみるとわかるのですが、ヘッダやフッダ部分以外は2013年のリリース時から変わっていません!
昔のAWSマネジメントコンソール、こんなデザインだったなぁ、などと懐かしみながら、JobsやPresetsの項目に遷移してみます。Presetsの項目に遷移する際、一瞬だけ表示されたこのLoading表示も懐かしいですよね。
さて、私ひとりで懐かしがっているわけですが、これらスクリーンショットを確認しているのは、これまでにElastic Transcoderを利用したことがあったAWSアカウントです。試しに、これまでElastic Transcoderを利用したことのないAWSアカウントでElastic Transcoderのマネジメントコンソールページを開いていみます。以下のように、どこかのわんこが「このアカウントではElastic Transcoderにアクセスできない」ことを教えてくれます。
このメッセージからは、すでに新規顧客(これまでElastic Transcoderを利用したことがないAWSアカウントなど)のElastic Transcoderの利用は停止されているようです。公式な告知はなかったかと思いますが、公式ブログによるサポート終了のアナウンスでは「 If you are an active customer of Elastic Transcoder, you can use Elastic Transcoder as normal until November 13, 2025, when support for the service will end. (Elastic Transcoderを ご利用中のお客様 は、2025年11月13日のサポート終了まで、通常通りElastic Transcoderをご利用いただけます。)」と記載されています。逆にいえば、利用していないAWSアカウントではElastic Transcoderの利用が制限されている、とも取れるかと思います。
(ところで、個人的にここ最近のElastic TranscoderといえばアニメーションGIFということで、わんこのアニメーションGIFが見れる当時のアップデートブログが印象に残っているのですが、今回の「This account does not have access to the Elastic Transcoder service」のお知らせにわんこが出てきたのは偶然でしょうか。)
Elastic Transcoderの利用実績のないAWSアカウントでの挙動について、AWS CLIでも確認してみましょう。AWS CloudShell経由でaws elastictranscoder list-presets
コマンドを実行してみました。こちらも実行エラーとともに、マネジメントコンソールと同様のメッセージが表示されました。
[cloudshell-user@ip-10-134-5-151 ~]$ aws --version
aws-cli/2.20.0 Python/3.12.6 Linux/6.1.112-124.190.amzn2023.x86_64 exec-env/CloudShell exe/x86_64.amzn.2023
[cloudshell-user@ip-10-134-5-151 ~]$ aws elastictranscoder list-presets
An error occurred (ValidationException) when calling the ListPresets operation: AWS is discontinuing support for Amazon Elastic Transcoder and is no longer open to new customers. For more information about transitioning to AWS Elemental MediaConvert, see https://aws.amazon.com/blogs/media/how-to-migrate-workflows-from-amazon-elastic-transcoder-to-aws-elemental-mediaconvert/
Elastic Transcoder Developer Guideを確認
Elastic Transcoderのドキュメント、Amazon Elastic Transcoder Developer Guideについても確認してみます。以下のスクリーンショットのように、各ページの冒頭に公式ページやマネジメントコンソールと同様の案内が掲示されています。(最後のブログポストへの案内文だけ少し異なる文体となっていますが、リンク先は同じです。)Document HistoryにはNovember 12, 2024付けでEnd of support noticeについて変更が行われた旨が記載されています。
End of support notice: On November 13, 2025, AWS will discontinue support for Amazon Elastic Transcoder. After November 13, 2025, you will no longer be able to access the Elastic Transcoder console or Elastic Transcoder resources.
For more information about transitioning to AWS Elemental MediaConvert, visit this blog post.
引用元: Document History - Amazon Elastic Transcoder
Elastic Transcoderとともに当時のAWSを懐かしむ
Elastic Transcoderの公式ページやAWSマネジメントコンソール、そしてDeveloper Guideそれぞれのサービス終了予告について確認してきました。ところどころで、わりと昔からあるAWSサービスならではのデザインなど、懐かしい要素がありましたね。個人的に、ここ最近はElastic Transcoderに触れていなかったこともあるので、本章では改めて公式ページやAWS Management Consoleを確認して、当時を懐かしむ要素をチェックしていきたいと思います。
リリース時のAWSサービスはおよそ23個
Elastic Transcoder公式ページを改めて確認します。ページを先頭から少し下にスクロールすると、「Getting Started with Amazon Elastic Transcoder (5:28)」とElastic Transcoderの紹介動画が掲示されています。動画自体はYouTubeに投稿されているもののようで、以下がリンク先となっていました。
YouTubeのページで確認する限り、動画の公開日は2013/03/06です。10年以上前ですね。
動画をみていくと、途中(2:28ごろ)でAWSマネジメントコンソールの画面が表示されます。2024年現在と比べると、サービス一覧がだいぶスッキリしていますよね。そのサービス数、なんと23個。あくまでAWSマネジメントコンソール上の一覧で、例えばAmazon SimpleDBはここに含まれていません。これをこの段階での正確なAWSサービス数とは言い切れないかと思いますが、とはいえ、当時のサービス数のおおよその目安にはなるはずです。
引用元: Media Transcoding - Amazon Elastic Transcoder - AWS
Elastic Transcoder Management Consoleから垣間見える当時のS3
続いてはAWSマネジメントコンソールでElastic Transcoderのページを開きます。[Create New Pipeline]ボタンからPipelineの作成ページへと進んでみましょう。
「Configuration for Amazon S3 Bucket for Transcoded Files and Playlists」の項目では、Elastic Transcoderが変換した動画ファイルを出力するS3バケットについての設定を行います。バケット名のほか、Storage Classの項目が確認できますね。ただし、ここで選択できるStorage ClassはStandard
と、2024年の現在は非推奨であるReduced Redundancy
の2種類のみです。
このReduced Redundancy
、S3の料金ページやS3ストレージクラスのページなどに記載がなく、なんだったっけ?となりそうですが、低冗長化ストレージ(Reduced Redundancy Storage (RRS))オプションのことですね。
S3スタンダードの料金がS3低冗長化ストレージを下回り、低冗長化S3自体が非推奨となったのが2016年12月のことでした。
- 2016年12月1日からAmazon S3が値下げされます | DevelopersIO
- AWS Solutions Architect ブログ: S3の値下げと、低冗長化ストレージからの移行について
これ以前は、S3で低冗長化ストレージオプションを使用することで、冗長性を犠牲にしながらもコストを抑えるということが可能でした。Elastic Transcoderで変換した動画ファイルについては、変換前のオリジナルデータを保存しておけば再度生成可能であるため、低冗長化ストレージオプションとの相性が良かったわけですね。そんなことから、Pipelineの設定でストレージクラスの選択ができていたいのかと思います。
さて、マネジメントコンソールで、続く[+Add Permission]のリンクをクリックしてみましょう。今度はGrantee typeとAccessという項目が出てきました。Grantee typeではAmazon S3 Group
、AWS Account-Email Address
、そしてAWS Account-Canonical User ID
の3種からいずれかを選択可能です。いずれかを選ぶとGranteeという項目が現れます。Grantee typeにAmazon S3 Group
を選択した場合はGranteeでAll Users
、Authenticated Users
、そしてLog Delivery
から選択が可能、それ以外のGrantee Typeでは任意の値を入力可能となります。Accessではスクリーンショットのとおり、Open/Download
、View Permission
、Edit Permission
、Full Control
からチェックボックスで選択するかたちです。
これらのS3のアクセス権ですが、2021年12月には無効化が可能になり、最近ではめっきり触れることも少なくなった(と個人的に感じる)Access control list (ACL)による設定ですね。
S3のアクセス権設定、2024年の現在であればBucket Policyで行うのがベストプラクティスです。では、なぜElastic TranscoderのマネジメントコンソールにはACLの設定項目があるのでしょうか。もしや2013年のElastic Transcoderリリース時にはBucket Policyがなかったのでは?と思い、少し調べてみたのですが、2012年の段階ではBucket Policy、ACLともにS3の機能として実装されていたようです。(20120319 aws meister-reloaded-s3 | PPT)これらの使い分けなどについては詳細を確認しきれなかったのですが、S3をWeb公開用に使用する、といったシンプルなアクセスコントロールではACLを使用する想定だったのかもしれません。そしてその用途とマッチしたことから、Elastic TranscoderでもACLの設定がPipeline設定で行われるようになっていたのかな、などと推測しています。
サーバーレスアーキテクチャの題材としてのElastic Transcoder
Elastic Transcoderについては、個人的にサーバーレスアーキテクチャの題材としてよく使われていた印象も強いです。AWS re:Invent 2014で発表され、先日生誕10周年を迎えたAWS Lambda、そのユースケースの1つとして、S3にオブジェクトがアップロードされた際にキックされ別処理を起動する、とういものがあります。このLambdaでElastic TranscoderのJobを起動する処理を行うことで、S3へアップロードすれば自動的に動画変換まで行う、という仕組みをサーバレスで実現するわけですね。
私も以前、海外のブログで紹介されていたこのようなアーキテクチャをやってみたことを思い出しました。
また書籍「AWSによるサーバーレスアーキテクチャ」でもLambdaの連携先として登場しています。日本語の書籍でElastic Transcoderが登場したのは、こちらが初めてだったのではないでしょうか。
実質的な最後のアップデートはClip Stitching
Elastic Transcoderとともに当時のAWSについて、少し懐かしんでみました。個人的にはクラスメソッドジョインエントリの次、実質最初のブログエントリがElastic Transcoderだったので、このサービス終了については感慨深いものがあります。(もう丸9年前のブロブエントリ、懐かしいです。)
上記のブログエントリが2015年11月、以降Elastic Transcoderのアップデートは可能な限りブログにしてきました。アップデートとして実質最後になったのは、Clip Stitchingという入力動画の結合機能の追加でした。2016年11月のアップデートでしたね。
(Developer GuideのDocument Historyには、このあと2019年2月にも「Cross-Regional Warnings」という機能追加があったと記載されていますが、あくまで警告の追加のみ、実質的なアップデートとしてはClip Stitchingが最後と判断しています。)
この後、およそ1年後の2017年11月に後継サービスとなるAWS Elemental MediaConvertが発表されたわけですが、以降はMediaConvertのほうに機能追加が行われ、Elastic Transcoderのアップデートはなかった、ということになります。
Amazon Elastic TranscoderからAWS Elemental MediaConvertへの移行を検討する
Elastic Transcoderのサービス終了に伴い、その移行先としては(従来からの案内どおりですが)AWS Elemental MediaConvertが挙げられています。
MediaConvertは2017年11月にリリースされた動画変換サービスです。その概要やElastic Transcoderとの違いなどについて確認してみましょう。
MediaConvertの基本的な使い方
基本的な使い方はElastic Transcoderと同等といえるかと考えます。具体的には、入力となるファイルはElastic Transcoderと同様にAmazon S3に配置しておきます。出力形式をPresetで指定して、実際の動画変換はJobを作成することで行います。変換後の動画がAmazon S3に出力される点もElastic Transcoderと同じです。
とはいえ、異なる点もあります。Elastic TranscoderでJobの管理に使用していたPipelineについては、MediaConvertではQueueが該当します。ただし、Queueは特定のS3バケットに関連付けられてはいません。入出力用のS3バケットはJobを作成する際に指定します。
また出力形式はPresetで指定するとう点はElastic TranscoderとMediaConvertで同じですが、同じPresetがそのまま利用できる、というわけではありません。ただし、以下のようなPreset Convertが提供されています。(Python 2.7環境が必要、という点が少し気になるところではありますが。)Preset移行の際の参考にするとよいかと思います。
- How-To-Converting-Amazon-Elastic-Transcoder-Presets-to-AWS-Elemental-MediaConvert.pdf
- GitHub - aws-samples/amazon-vod-preset-convert: Python script that allows users to convert Amazon ElasticTranscoder presets to AWS Elemental MediaConvert presets.
MediaConvertでサポートされている入出力形式について
サポートされている入出力、それぞれの形式についても注意しましょう。Elastic Transcoderでサポートされている主要な形式の多くは、MediaConvertでもサポートされている認識です。またMediaConvertへ移行することで、これまでElastic Transcoderではサポートされていなかった最新のコーデックやフォーマットへの変換も可能になります。圧縮効率の高いコーデックを使うことで、データ保管の容量や動画配信の際のCDNデータ転送量を削減できる、といった効果もありますので、こちらも検討してみるとよいかと考えます。
なおMediaConvertリリース時のタイミングでは、Elastic TranscoderではサポートされているけどMediaConvertではサポートされていない入出力形式、というのもいくつかあった認識です。これらの多くはMediaConvertのアップデートでサポートされるようになりました。最近まで、この「Elastic TranscoderでサポートしていてMediaConvertではサポートしていない 出力 形式」で残っていたものは、アニメーションGIFとFLACの音声出力だった認識です。以下ブログエントリは、あくまで 入力 形式をサポートしたときのアップデート内容ですが、該当する出力形式について本文中で少し触れているため、参考として掲示しておきます。
このMediaConvertで未サポートだった出力形式であるアニメーションGIFとFLACオーディオについて改めて確認したところ、FLACオーディオ出力についてはいつの間にかaudio-only outputsのsupported formatsに加わっていました。
(Whats' New at AWSへのポストなどはなかった認識です。MediaConvertのUser Guide、Document historyを確認しても該当アップデートは確認できず、正確にいつごろサポートしたかははっきりしません。)
そのため、「Elastic TranscoderがサポートしていてMediaConvertではサポートしていない」出力形式について、残っているのはアニメーションGIFだけ というのが私の認識です。Elastic Transcoderのサポート終了がアナウンスされ、また(どうやら)新規利用者を限定している現状を踏まえると、MediaConvertでのアニメーションGIF出力のサポートが切に望まれます。
MediaConvertでサポートされている機能について
またMediaConvertリリース当時は変換時の動画の回転処理など、Elastic TranscoderではサポートされているけどMediaConvertではサポートされていない 機能 もいくつかあったかと思います。ですが、これらも多くはMediaConvertのアップデートでサポートされるようになりました。例として挙げた動画の回転処理は2019年2月のアップデートでサポートされましたね。
そのほか、MediaConvertの割と最近(といっても1年前の2023年11月)のアップデートで入力映像と出力映像のアスペクト比や解像度が異なる際の挙動も強化されElastic Transcoderと同等になりました。
単純な(アスペクト比や解像度などが変わらない)変換ではない場合、やはりElastic TranscoderとMediaConvertの機能比較といったことは必要になるかと思いますが、以前はMediaConvertでできなかったことの多くが、2024年の現在ではアップデートによりサポートされています。Elastic Transcoderのサポート終了まで1年ありますので、まずはMediaConvertで実現できるかの確認をしていきましょう。
MediaConvertの料金について
料金についてはMediaConvertもElastic Transcoderと同じく、使ったぶん(出力した時間)に応じて課金がなされる従量課金制です。コーデックや出力解像度などが同じであれば、基本的にはMediaConvertのほうが安価になる認識です。さらにMediaConvertでは1年間の契約を前提としたリザーブド料金体系も準備されています。また先日のアップデートでボリュウムディスカウントも適用されるようになりました。
なおMediaConvertの場合、出力する解像度のほか、使用するコーデックやベーシック階層とプロフェッショナル階層にわかれる出力設定などによって料金が異なる点に注意しましょう。
その他のMediaConvert移行の際の留意点など
Elastic TranscoderからMediaConvertへの移行について、サポートされている入出力形式や機能、そしてMediaConvertの料金体系といったことを確認してきました。
その他、おそらくですが動画変換の際に内部的に使用しているライブラリといったようなものは、Elastic TranscoderとMediaConvertで異なっている認識です。そのため、例えば出力のコーデックや解像度などパラメータをあわせても、出力される動画の画質が異なる、といったこともありうるかもしれません。移行の際には変換された動画を実際に視聴して確認する、ということも行いましょう。
また2つのサービスでJob完了時の通知方法が異なる点も押さえておきましょう。Elastic TranscoderはSNSと連携させて通知を行いました。MediaConvertではCloudWatch Eventsと連携してJob Statusの変更を通知することができます。CloudWatch EventsからSNSのほか、SQSやLambdaなどにも連携可能です。これよりも通知を起点として自動化できる範囲が多くなることが期待できます。
Elastic Transcoderは古くからあるサービスです。先ほどマネジメントコンソールのPipeline設定の画面で、S3のACLを指定する箇所がある、というスクリーンショットを提示しました。従来からElastic Transcoderを利用してる環境では、S3のアクセス管理にもACLを利用している、という場合もあるかもしれません。2024年現在では、S3のACLは無効にすることが推奨されています。この機会にACLからバケットポリシーでのアクセス管理に移行する、というった作業をもあわせて実施するとよいかと思います。
まとめ
およそ1年後の2025年11月にサポート終了を迎えることがアナウンスされたAmazon Elastic Transcoderについて、公式ページやAWS Management Consoleなどで終了予告を確認しつつ、数年前のAWSの雰囲気を懐かしんでみました。またElastic Transcoderの後継サービスであるAWS Elemental MediaConvertについて、その概要や移行の際の注意点などを確認してみました。
Elastic Transcoderについては、2017年11月のMediaConvertのリリース後、実質的なアップデートが止まった状況でした。個人的には昔から慣れ親しんだサービスの1つであり、アップデートはなくてもサービスが存続してくれると嬉しいなぁ、と思っていました。2024年7月の一部サービスを対象としたサービス終了予告に含まれておらず安堵していましたが、今回同じタイミングでサービス終了が予告されたAWS Elemental MediaStoreと同様、後継・代替サービスがあるものということでサポート終了という判断となったのかと思います。
大変残念で寂しく思いますが、サービス終了までおよそ1年、MediaConvertへの移行が済んでいない環境では確実に移行を進めていきましょう。