Amazon FSx for Lustre 容量サイジング不要の従量課金型の階層化ストレージクラス Intelligent-Tiering が追加されました
Amazon FSx for Lustre に Intelligent-Tiering ストレージクラスが追加されました。ディスクサイズは使用量に応じた従量課金で、3 層ストレージクラスを持ちアクセス頻度の少ないファイルは自動的に安いストレージクラスへ移動してくれます。本記事では新ストレージクラスの特徴と、料金体系について紹介します。
今までと何が違うのか
従来の FSx for Lustre では、Lustre のストレージに大容量データを保存するには高いコストと、最大保存容量のサイジングが必要でした。
その問題を解消するために S3 とシームレスに連携可能となる機能追加が 2021 年に入りました。データの保存先には S3 を利用することで、安価に大容量データを保存でき、読み書きは Lustre ストレージを利用することで高速なアクセスを提供します。
今回追加された Intelligent-Tiering では、すべてのデータを Lustre ストレージ内で管理します。容量制限はなく、保存容量に対する従量課金と、アクセス頻度に応じた階層化ストレージにより低コストを実現しています。S3 との連携設定や容量のサイジングが不要になり、運用管理が簡素化されました。
引き続き、FSx for Lustre + S3 構成も利用できます。
Intelligent-Tiering ストレージクラスの特徴
今回、Persistent デプロイタイプに新たなストレージクラスが追加されました。
図解
新しい要素は 3 つあります。図解してみました。
ディスクサイズの自動調整
ファイルシステムの最大容量が自動的に拡張、縮小します。 実際に保存するデータ量のみに対しての従量課金です。 ファイルサイズの課金に関しては、EFS と同じ課金体系ですね。
通常の Persistent デプロイタイプの SSD ストレージクラスは一定容量のプロビジョニングが必要です。データを保存していようが、いまいがプロビジョニングした容量で固定の料金でした。平たく言えば EBS の課金体系です。
階層型のストレージ
3 つのアクセス層でデータを自動管理します。 新規データは高頻度アクセス層へ保存され、30 日間未アクセスのデータは低頻度アクセス層へ、90 日間未アクセスのデータはアーカイブ層へ自動移行されます。アクセス時には高頻度アクセス層へ移動され、パフォーマンスとコストの最適化を両立しています。
SSD 読み取りキャッシュ
頻繁にアクセスされるデータは読み取り専用の SSD キャッシュに保存し、ミリ秒未満のレイテンシーを実現します。キャッシュ利用時は、キャッシュサイズを事前にプロビジョニングが必要です。 キャッシュミス時は自動階層化ストレージからデータを取得します。キャッシュなし構成も設定可能です。
このハイブリッド構成で、従来の FSx for Lustre と同等のパフォーマンスを提供しつつ、ストレージコストの節約を実現したとのことです。
補足
Intelligent-Tiering の場合は、S3 との連携はできませんでした。Lustre ストレージのみを利用したシンプルな構成しか取れません。
料金体系の詳細
Intelligent-Tiering では、以下の要素に基づいて料金が発生します。課金要素が多くてなかなか複雑です。
- ストレージ料金: ファイルシステムに保存するデータ量(GB/月)
- リクエスト料金: データの書き込み時、または SSD 読み取りキャッシュ内にないデータの読み取り時(操作毎)
- スループットキャパシティ料金: プロビジョニングする合計スループットキャパシティ(MBps/月)
- メタデータ IOPS 料金: 指定した IOPS/月
- SSD 読み取りキャッシュ料金: データのための SSD 読み取りキャッシュサイズ(GB/月)
東京リージョン価格(2026/6/16)
固定料金について
SSD 読み取りキャッシュサイズと、スループットキャパシティはプロビジョニングにした値の固定料金です。
今回の検証においてはストレージ代は安価に済んでもそこそこ高くつきました。
スループットキャパシティは最低の 4,000MB/秒指定です。SSD 読み取りキャッシュは自動にすると、すスループットキャパシティ 4,000MB に対応するのは、20TB の読み取りキャッシュサイズでした。カスタムにして最低の 32GiB 指定だと安く検証できますが、実運用だとやはりそれなりにコストはかかりそうです。
まとめ
Amazon FSx for Lustre の Intelligent-Tiering は、従来の固定容量プロビジョニングから従量課金となり、3 層の自動階層化ストレージによりコストを節約できます。
主なメリットは以下の通りです。
- 容量のサイジング不要: 実際の保存した使用量に対する従量課金で、容量のサイジングが不要
- 自動コスト最適化: アクセス頻度に応じて自動的に安価な層へデータを移行
- 高性能維持: 読み取り SSD キャッシュによりミリ秒未満のレイテンシーを実現
- シンプルな運用: S3 連携設定が不要で、Lustre ストレージ内で完結
ただし、リクエスト毎の課金が新たに追加されているため、アクセス頻度の高いワークロードでは従来モデルより料金が高くなる可能性があります。また、SSD キャッシュとスループットキャパシティは固定料金のため、実運用では一定のコストが発生します。
おわりに
オンプレミスの Lustre ストレージをそのまま AWS へ移行し、変わらぬ運用するなら今回の階層型のストレージでコストパフォーマンスが良いといった説明ができる所感です。個人的には低コストな S3 をデータレイクとして、FSx for Lustre 経由で高速アクセスできるのはクラウドならではの魅力的な構成だと思っているので、ケーズバイケースで検討してみます。