Amazon SESで専用IP(標準)を利用するまでの流れ
こんにちは、まるとです。
最近個人で、Amazon SESにおいて専用IP(標準)が必要になったシーンがあったので、専用IPを割り当ててもらい、実際に送信するまでの流れを説明します。
専用IPとは
(標準)の記載で「おや?」と思う方もいらっしゃると思うので、専用IPの種類についてお話しできればと思います。
メール送信において、専用IPを利用するケースとしては以下のようなケースが挙げられます。
- 共有IPの場合、他ユーザの利用状況により、IPアドレスがブラックリストに乗ることにより受信拒否されるリスクを避けたい
- 送信元IPに基づいて、受信側で何かしらの制御をしたい(ホワイトリストへの追加など)
これらの要件に合致させるために専用IPを利用するとして、AWSには2種類の専用IPがあります。
専用IP(標準)
一言で説明するならば、自分専用に不変かつ固定のIPアドレスを割り当ててもらう形となります。よくある専用IPと同じ考え方です。
一度割り当てるとのIPアドレスの変動は発生しないため、先ほどのユースケースで言うと後者のように送信元IPに基づいて、ホワイトリストなどの制御を行いたい時に利用します。
専用IP(マネージド)
こちらはちょっと特殊なものとなります。
他のユーザとIPアドレスを共有しない点では標準型と同じですが、メールの送信パターンにより自動で割り当てられるIPの数が変動するものとなります。
先ほどのユースケースだと、他のユーザとIPアドレスが共有されないため前者の要件は満たすことができます。
一方で、メールの送信パターンによりIPの追加・削除が自動で行われるため、送信元IPアドレスを恒久的に固定することができません。
「送信元IPに基づいて、受信側で何かしらの制御をしたい」という要件を満たしたい場合は、専用IP(標準)を利用することになります。
料金について
標準の場合は、1IPにつき固定で24.95 USD/月発生します。
マネージドの場合、1アカウントあたりの料金で15 USD/月の基本料金に加え、メール送信数による従量課金となります。
本ブログ執筆時点ですが、マネージドの場合、従量課金の部分は以下となっていました。
| 送信数 | 料金 |
|---|---|
| 0〜1,000万件/月 | 0.08 USD/1000件 |
| 1,000万〜5,000万件/月 | 0.04 USD/1000件 |
| 5,000万〜1億件 | 0.02 USD/1000件 |
| 1億件以降 | 要お問い合わせ |
専用IP(標準)を利用するまでの流れ
- AWS サポートに専用IP(標準)の割り当て申請
- 申請承認後、アカウントにIPアドレスの割り当て
- Amazon SES 設定セットの作成
- 標準 IP プールの作成、設定セットに割り当て
- 設定セットをIDに割り当て
それでは実際にやってみます。
1. AWS サポートに専用IP(標準)の割り当て申請
専用IP(標準)を割り当ててもらうには、AWSサポートに問い合わせが必要となります。
問い合わせの前に、Amazon SESのIDで一つ以上ドメインの検証が完了している必要があります。

ドメインの検証が完了している場合は、AWSサポートに問い合わせを行います。
問い合わせの際は、以下の項目を選択します。
問い合わせ種別: アカウントと請求
サービス: Service Quotas
カテゴリー: Amazon SES
緊急度: 一般的な質問

追加情報では以下を選択、入力していきます。
サービス: SES 送信制限
リージョン: Amazon SESで利用したいリージョン
Quota Title: Desired Dedicated IP
Value: 必要なIPの数
説明: 筆者は専用IPの利用目的、バウンスへの対策、料金発生に同意する旨を記載

諸々入力したら、「お問い合わせ」を選択してサポートチケットを作成します。
必要に応じてサポートエージェントから追加情報を求められる場合があるため、返信をしていきます。
今回、筆者はおおよそ2日ほどで専用IPが割り当てられたので、ある程度時間に余裕を持って申請するようにします。
2. 申請承認後、アカウントにIPアドレスの割り当て
申請が承認され、サポートチケットがクローズされると、Amazon SESコンソールで割り当てられた専用IPが確認できるようになります。
サイドバー 設定 > 専用 IPから標準 IP プールタブを選択すると、割り当てられたIPアドレスを確認できます。

3. Amazon SES 設定セットの作成
IPアドレスが割り当てられていることを確認したら、専用IPを利用してメールが送信できるように設定を行なっていきます。
まず、設定セットの作成を行います。
サイドバーの 設定 > 設定セットを選択し、オレンジ色のボタンセットの作成を選択します。

任意の設定セット名を入力し、下にあるセットの作成を選択します。

4. 標準 IP プールの作成、設定セットに割り当て
設定セットの作成が完了したら、標準 IP プールを作成し、設定セットに割り当てます。
サイドバーの 設定 > 専用IPを選択し、オレンジ色のボタン標準 IP プールの作成を選択します。

続いて、以下の設定を行い、プールの作成を行います。
スケーリングモード: 標準(セルフマネージド)
IP プール名: 任意の名前
専用 IP アドレス: 割り当てられたIPを選択
設定セット: 前の手順で作成した設定セットを選択

5. 設定セットをIDに割り当て
ここまでで、設定セットに専用IPを利用するように設定したため、最後に設定セットをIDに割り当てます。
サイドバーの 設定 > IDを選択し、検証済みIDのドメインを選択します。

続いて、設定セットタブから、デフォルト設定セット内の編集を選択します。

先ほど作成した設定セットを選択して、変更を保存します。

これで準備完了です。
メール送信してみる
設定自体はこれで完了ですが、せっかくなのでテストメールを送信してみます。
オレンジ色のボタンテスト E メールの送信を選択します。

以下の設定でメールを送信します。
E メール形式: フォーマット済み
From-address: 任意のアドレス
シナリオ: カスタム
カスタム受信者: 送信先メールアドレス
件名: 任意の件名
本文: 任意の本文
設定セット: 紐づけた設定セットをデフォルトにしている場合は選択不要

テストメール送信後、専用IPから送信されていることを確認します。
筆者は送信元アドレスやSPF/DKIM/DMARCなどが簡単に確認できるGmailを送信先アドレスに設定しました。
SPFのIPやメールヘッダのReceivedでも確認できますが、今回割り当てられた専用IPから送信されていることが確認できます。


終わりに
今回はAmazon SESで専用IP(標準)の申請、専用IPを利用したメール送信を行ってみました。
結構簡単な手続きで専用IPアドレスの割り当てが行うことができました。
ユースケースなどにより標準orマネージドを選択する形になりますが、今回は一般的な標準の手続きの流れを少しでもお伝えできれば幸いです。






