[アップデート] Amazon WorkSpacesのOfficeアプリケーションの管理方法が新しくなりました

[アップデート] Amazon WorkSpacesのOfficeアプリケーションの管理方法が新しくなりました

Clock Icon2023.10.09

この記事は公開されてから1年以上経過しています。情報が古い可能性がありますので、ご注意ください。

しばたです。

先日AWSより以下のアナウンスがあり、Amazon WorkSpacesにおけるMicorosoft Officeアプリケーションの管理方法が新しい形に拡張された旨が発表されました。

https://aws.amazon.com/about-aws/whats-new/2023/10/amazon-workspaces-services-microsoft-apps/

どういうことか?

従来Amazon WorkSpacesではMicrosoft Office 2016および2019を「Officeインストール済みイメージ」の形で利用可能でした。
今回新たにMicrosoft Office LTSC 2021およびMicrosoft Visio LTSC 2021、Microsoft Project 2021が利用可能となったのですが、これらのアプリケーションはイメージに含まれる形ではなく「オンデマンドで各WorkSpaceに追加インストールする」新しい方式になりました。

これにより各WorkSpaceの設定に新しい「アプリケーション」欄が増えインストール済みアプリケーションを個別に管理できる様になっています。

なお従来のOffice 2016および2019インストール済みイメージは引き続き提供されますが、古いバージョンのOfficeは新しいアプリケーション管理においてはアンインストールのみ可能です。
既存のWorkSpace環境にインストール済みのOfficeをアップグレードしたい場合は「古いバージョンのOfficeをアンインストール→新しいバージョンのOfficeをインストール」の手順を踏む必要があります。

費用面

今回の更新に合わせて価格表も刷新されています。

正確な内容は上記リンクから確認頂きたいですが、Officeアプリケーションに関する部分だけ抜粋すると以下の通りです。(2023年10月9日現在の東京リージョン-オンデマンド価格)

ソフトウェア 追加費用 (USD/月) 備考
Microsoft Office 2016 plus applications bundle 15.00 Trend Micro Worry-Free Business Security Services含む
Microsoft Office 2019 plus applications bundle 14.75
【NEW!】 Microsoft Office LTSC Professional Plus 2021 21.43 Pro
【NEW!】 Microsoft Office LTSC Standard 2021 15.70 Standard
【NEW!】 Microsoft Visio LTSC Professional 2021 19.35 Pro
【NEW!】 Microsoft Visio LTSC Standard 2021 8.77 Standard
【NEW!】 Microsoft Project Professional 2021 38.01 Pro
【NEW!】 Microsoft Project Standard 2021 22.63 Standard

バージョン対応表

アプリケーションを後付けでインストール可能になった+OfficeだけでなくVisioやProjectと対象アプリケーションが増えたこともあり、環境面での制約が少し複雑になりました。

OS毎におけるインストール可能アプリケーションは下表の通りです。

OS Office 2016 (32-bit) Office 2019 (64-bit) Office LTSC 2021 (64-bit) Project 2021 (64-bit) Visio 2021 (64-bit)
Windows Server 2016 アンインストールのみ可 - (利用不可) - (利用不可) - (利用不可) - (利用不可)
Windows Server 2019 - (利用不可) アンインストールのみ可 利用可能 利用可能 利用可能
Windows 10 (BYOL) アンインストールのみ可 アンインストールのみ可 利用可能 利用可能 利用可能
Windows 11 (BYOL) アンインストールのみ可 アンインストールのみ可 利用可能 利用可能 利用可能

最初に触れた通り従来のOffice 2016およびOffice 2019はアンインストールのみ可能です。
一度アンインストールしてしまうと再インストール不可ですのでご注意ください。
また、Windows Server 2016環境は新しいバージョンのアプリケーションが利用できず、これは単純にアプリケーションのシステム要件上非サポートのOSであることが原因の様です。

そしてOS毎の対応以外に以下の制限がありますのでご注意ください。

  • インストールするアプリケーションのエディションは統一する必要があります
    • たとえばOffice 2021 Professional + Visio Standard 2021 といった組み合わせは使用できません (インストール前チェックで弾かれる)
  • インストールするアプリケーションのバージョンは統一する必要があります
    • たとえばOffice 2019 Professional + Visio Professional 2021 といった組み合わせは使用できません (インストール前チェックで弾かれる)
  • Office 2021, Visio 2021, Project 2021はValue, Graphics, GraphicsProバンドルではサポートされません
    • サポートされない種別の場合は追加可能アプリケーションにリストアップされない
  • Office 2016をアンインストールすると同時にTrend Micro Worry-Free Business Securityもアンインストールされます
    • 新しいTrend Micro製品を使用したい場合は個別に購入しインストールする必要あり
  • スナップショットからイメージを復元する際に、タイミングによって「実環境にアプリケーションがインストールされていないが、管理上アプリケーションはインストール済み扱いされる」という状態になることがあります
    • この場合は手動でアプリケーションのアンインストールと再インストールを行う必要あり
    • この場合でもアプリケーションインストール済みの体で課金が続いてしまう

その他の詳細は以下のドキュメントで確認してください。

試してみた

ここからは実際に動作確認した結果を共有します。

私の検証用AWSアカウントの東京リージョンにWorkSpaces環境を用意し、そこに新規にWorkSpaceインスタンスを作成して検証しています。
VPCやディレクトリ環境などの構築手順は割愛しますが、WorkSpaceインスタンスはインターネットアクセス可能にしておく必要があります。

アプリケーションのインストール

まずはOfficeアプリケーションの無いStandardクラスのWindows Server 2019 WorkSpace環境を用意します。

このWorkSpaceの詳細設定に新しく「アプリケーション」欄が増えており、初期状態では何もインストールされていません。

ここで「アプリケーション管理」をクリックすると設定画面に遷移します。
画面上部が現在インストール済みのアプリケーションで、画面下部から追加するアプリケーションを選ぶことができます。

追加したいアプリケーションを選択し「関連付け」をクリックすると画面上部にリストアップされ「インストールのデプロイ待ち」状態になります。

複数アプリケーション追加する際はこの手順を繰り返します。

今回は「Office LTSC Professoinal 2021」と「Visio LTSC Professional 2021」を追加してみます。
下図の状態で「アプリケーションのデプロイ」をクリックすると実際にアプリケーションのインストールを行います。

インストール前に確認ダイアログが表示されるので、ここで「確認 (confirmではない)」を入力して「アプリケーションのデプロイ」をクリックします。

これで実際にアプリケーションのインストールが開始されます。

この時点でWorkSpace環境には接続不可になり、順次アプリケーションのインストールを繰り返していきます。

全アプリケーションのインストールが完了するとWorkSpace環境は停止します。
インストールには思ったより時間がかかり、ざっくり

  • 実際にアプリケーションのインストールが開始され始めるまでの時間 : 約10分程度
  • Office LTSC Professoinal 2021のインストールにかかった時間 : 約20分程度
  • Visio LTSC Professional 2021のインストールにかかった時間 : 約15分程度

と合計45分程度かかりました。

WorkSpaceを起動して接続するとちゃんと両アプリケーションがインストール済みでした。

ちなみに最初に接続した際にVisioだけライセンス未アクティベーション状態でしたが、再起動したら認証済みになりました。

アプリケーションのアンインストール

続けてアプリケーションをアンインストールするときは逆の手順を行います。

アンインストールしたいアプリケーションを選択して「関連付け解除」をクリックすると「アンインストールのデプロイ待ち」状態になるので、この状態で「アプリケーションのデプロイ」をクリックします。

インストール時と同様に確認ダイアログを確認してやるとアンインストール処理が開始されます。
この時もセッションは切断されます。

しばらく待てばアンインストールが完了します。

従来のOfficeバンドルの場合 (Windows Server 2016)

従来のOfficeインストール済みイメージを使った環境ではアプリケーションのアンインストールのみ可能です。
Windows Server 2016 (Office 2016)環境だと下図の様に現在のアプリケーションにOffice 2016があり、追加可能なアプリケーションが一切ない状態になります。

このため一度アンインストールしてしまうと二度と再インストールできません。
また、一度「アンインストールのデプロイ待ち」状態にしてしまうとこの状態を取り消せなくなるのでご注意ください。

「キャンセル」ボタンをクリックすればアンインストール処理自体は回避できますがステータスを元に戻せません。
いちおう実害は無いものの不安が残り続けることになります...

また、原因は不明ですがアンインストール処理に2時間近くかかりました。
(追記 : 原因はTrend Micro Worry-Free Business Securityだった模様)

従来のOfficeバンドルの場合 (Windows Server 2019)

Windows Server 2019 (Office 2019)環境だと下図の様に現在のアプリケーションにOffice 2019があり、追加可能なアプリケーションリストアップされる状態になります。
ただし、追加アプリケーションをインストールするには一度Office 2019をアンインストールする必要があります。

Windows Server 2016と同様にこちらも一度「アンインストールのデプロイ待ち」状態にしてしまうと取り消せないのでご注意ください。

なお、アンインストール処理は10分程度で完了しました。

補足1 : アプリケーションのインストール時にエラーになった場合

本記事を書くにあたり最初にWorkSpaceインスタンスがインターネットアクセスできない状態で検証したのですが、この場合アプリケーションのインストールに失敗します。

アプリケーションのインストールに必要な内部モジュールはAWS管理ネットワークからダウンロードしているのですが、どうも各アプリケーションのインストールおよびライセンス認証は通常のオンラインインストールを行っている様で、このため利用者側ネットワークからのインターネットアクセスを必要としエラーになっている様です。

アプリケーションのインストールに関わるログは「C:\Program Files\Amazon\WorkspacesConfig\Logs\」配下に保存されていました。
AppMgmtFramework」の名称を含むログを調べると詳細を確認できます。

ただ、具体的なインストール処理については一時ディレクトリ配下で行われ処理後に関連ファイルが一括削除されるため全ての情報を取得することはできませんでした。これはアプリケーションのインストール時にライセンスキー情報を使う[1]ためその痕跡を残さないための処置でしょう。
なお、インストール方法自体は一般的なOfficeのサイレントインストールでした。

補足2 : カスタムイメージを作る場合

新しいアプリケーション管理方法が増えたことにより、独自のアプリケーションをインストールした状態ではカスタムイメージを作ることができなくなりました。(従来のOffice 2016およびOffice 2019は例外)

今回の様にアプリケーションがインストール済みのWorkSpace環境から新たにカスタムイメージを作ろうとすると以下のエラーとなります。

オペレーションはサポートされていません。選択した WorkSpace で 1 つ以上のボリュームが暗号化されている、マネージド型アプリケーションが含まれている、またはオペレーティングシステムがサポートされなくなっている可能性があります。イメージを作成するには、暗号化されているボリュームがない、またはマネージド型サプリケーションがない WorkSpace、またはサポートされているオペレーティングシステムがある WorkSpace を選択してください。

仕組みを考えると理解できる制約ではあるのですが、多数のWorkSpace環境がある組織視点で見ると正直つらい仕様でしょう。
現時点における大規模環境向けの展開方法としては、

  • Office無しカスタムイメージを展開した後、AWS CLI等でアプリケーションのインストールを自動化する
  • LTSC版Officeでは無くMicrosoft 365 Apps for enterpriseをBYOLしてカスタムイメージを作る

のどちらかを選ぶことになりそうです。

補足3 : AWS CLIでの操作例

AWS CLIではVer.1.29.61およびVer.2.13.25以降で新しいアプリケーション管理に対応しています。

アプリケーションのインストールは、はじめにaws workspaces associate-workspace-applicationコマンドで対象WorkSpaceに対してアプリケーションの紐づけを行い、

# Office 2021 LTSC Professional : wsa-hpgj744f0 を紐づける例
# これで インストールのデプロイ待ち (PENDING_INSTALL_DEPLOYMENT) 状態になる
aws workspaces associate-workspace-application --workspace-id ws-xxxxxxxx --application-id wsa-hpgj744f0

その後aws workspaces deploy-workspace-applicationsコマンドでインストールを実施します。

# デプロイ待ち状態から インストール待ち (PENDING_INSTALL) へ状態移行させる
aws workspaces deploy-workspace-applications --workspace-id ws-xxxxxxxx

このコマンドは非同期処理です。
適宜インストール中の状態をaws workspaces describe-workspace-associationsコマンドで取得して「インストール済み (COMPLETED)」になるのを確認してください。

# --associated-resource-typesの指定は必須
aws workspaces describe-workspace-associations --workspace-id ws-xxxxxxxx --associated-resource-types APPLICATION

# アプリケーション wsa-hpgj744f0 のインストール状態だけ取得したい場合はこんな感じ
# ※--filter パラメーターが無いので --queryパラメーターのJMESPathで頑張ってやる
aws workspaces describe-workspace-associations --workspace-id ws-xxxxxxxx --associated-resource-types APPLICATION --query 'Associations[?AssociatedResourceId == `wsa-hpgj744f0`].State | [0]' --output text

ちなみに各アプリケーションの情報を取得するにはaws workspaces describe-applicationsコマンドを使います。

# --owner パラメーターは大文字で AMAZON 指定にする (小文字指定だとダメ)
aws workspaces describe-applications --license-type LICENSED --owner AMAZON

補足4 : Microsoft 365 Apps for enterpriseとの違い

以前紹介したMicrosoft 365 Apps for enterpriseアプリケーションのBYOLと今回の更新は似て非なるものです。

https://dev.classmethod.jp/articles/amazon-workspaces-supports-microsoft-365-apps-for-enterprise-byol/

Microsoft 365 Apps for enterpriseで提供されるOfficeアプリケーションはサブスクリプション版であり、利用者の契約しているライセンスをBYOLする形でWorkSpaces環境に導入します。
BYOLなのでAWSで管理する「アプリケーション」には含まれません。

今回のOffice LTSC 2021等は買い切り版でありAWSのSPLAにより提供されるものです。
このためAWS側で管理する必要があり今回の様な形での提供となっています。

最後に

以上となります。

一通りの機能を試した所感として率直なところまだ粗さが残っていると感じました。

機能としては正常に動作するもののマネジメントコンソールのUI上怪しい挙動がまだあり、処理速度やエラーメッセージの表示等ももう少し改善してほしいと感じます。[2]
将来的には洗練されていくと思いますが、現時点において既存環境のアプリケーションを更新する際は事前検証を念入りにしておくと良いでしょう。

脚注
  1. キーが記載された設定ファイルを使う ↩︎

  2. 明らかにおかしいところはAWSへフィードバックする予定です ↩︎

Share this article

facebook logohatena logotwitter logo

© Classmethod, Inc. All rights reserved.