【iOS 27】赤ちゃんのミルクとおむつを話すだけで、育児記録アプリの下書きにできないか

【iOS 27】赤ちゃんのミルクとおむつを話すだけで、育児記録アプリの下書きにできないか

育児の記録入力が大変という声をよく聞きます。iPhoneの中だけで動くAIを使って、話すだけで授乳やおむつの記録を自動で項目分けできる設計を考えてみました。
2026.09.26

こんにちは。リテールアプリ共創部で事業企画を担当しているかめだです。

赤ちゃんを育てている方から聞くのは、「便利だけど、入力が大変」という声です。

母子手帳アプリ「母子モ」は2020年11月に全国47都道府県下の自治体への導入を達成し、現在は400以上の自治体で使われています。2023年9月には、明治が育児記録アプリ「赤ちゃんノート」を発表しました。身長・体重、授乳、食事、便、睡眠などを記録できます。育児の記録をスマホに残すこと自体は、すでに多くの保護者にとって珍しい行為ではありません。

新生児期は、母乳だけなら1日8〜12回、ミルクだけなら1日8回の授乳が目安とされ、おむつ替えも1日10〜12回にのぼります。ベビー用品の大手チェーンやメーカーの会員アプリ、育児記録アプリを使う保護者は、そのたびにアプリの画面を開き、種類を選び、量や時刻を打ちます。赤ちゃんを抱いていて片手しか空かないことも多い作業で、こんな感じで一日に何度も手を止めるのは、地味に大変なんだろうなと感じます。

本記事は活用シーンの仮説で、実装・実証はこれからです。エンジニアではない私が、どこまでAIモデルに任せられるかを考えてみました。

子どもの健康の記録を、なぜクラウドのAIに渡したくないのか?

子どもの健康に関する記録は、家庭の外に出したくない情報です。ミルクの量、便の様子、体温、吐き戻しの有無は、赤ちゃんの体調そのものを表します。

では、話した内容をそのままクラウドのAIサーバーに送る設計だと、声も、文字になった内容も、一度は家庭の外に出ることになります。「ちょっと吐いた」「熱が37度8分あった」といった内容を、企業のクラウドサーバーに送ってよいかは、多くの保護者にとって迷う話です。なので、この記事では、声も、文字になった内容も、端末の外に出さない設計を考えます。

話した内容は、どうやって記録の項目に分かれるのか?

声を文字にすること自体は、これまでもiPhoneの中でできました。日本語の音声認識は端末の中だけで文字にできます。変わったのは、文字になった内容を、ミルクやおむつ、睡眠といった記録の項目に、その場で振り分けられるところです。

Apple Intelligence でアプリづくりは何が変わるのか(AFM 3 の全体像) にあるように、iPhoneの中で動くAIモデルは、あらかじめ決めた項目の値を、話し言葉から抜き出す設計にできます。「さっきミルク160飲んで、ちょっと吐いた。おむつはおしっこだけ」と保護者が話すと、AIモデルはこの一文を3つの出来事に分けます。ミルク(160ml・さっき)、吐き戻し、おむつ(おしっこあり・うんちなし)の3件です。

決まった言葉で抜き出すルールと違って、AIモデルは言い換えを読めます。「160いった」「ねんねした」「しっこだけ」といった、保護者がふだん使う言い方からも、同じ出来事を抜き出せます。ここがルールにはない強みです。

一方で、量や体温の数字、おしっことうんちの有無は、AIモデルではなくルールで決めます。というのも、数字と有無は決まった形の情報で、言い換えを読む力までは要らないからです。「さっき」「朝7時」のような時の言い方もルールで読み取り、それが何時何分にあたるかの計算はアプリが行います。

1件の記録は、どこで区切るのか?

一つの発話に複数の出来事が混じることは、育児記録ではよくあります。ミルクをあげて、その直後に吐き戻し、続けておむつを替える、という具合です。この記事の設計では、1件の記録の単位を、授乳、おむつ、体温、離乳食、吐き戻し、睡眠の開始・終了のように、あらかじめ決めた種類ごとに区切ります。

なので、AIモデルが抜き出した出来事は、その一節に本当に書かれているかを、もう一度確かめる流れにしました。「ミルクをあげようと思った」のような、まだ起きていないことを記録の下書きに混ぜないためです。話していない出来事は作らせません。

量やおむつの有無は、AIモデルが決めるのか?

決めません。飲んだ量、体温の数字、おしっことうんちの有無はルールで決めます。時の言い方もルールで読み取り、時刻の計算はアプリが行います。AIモデルが決めるのは、どこで出来事が切れるか、それぞれが何の出来事かまでです。

AIモデルにどこまで判断を任せるかは、正直ここが一番悩みました!医療の判断はさせません。「吐いたのが心配か」をAIモデルに答えさせることはせず、記録するだけにとどめます。心配かどうかの判断は保護者や小児科に委ねます。

保護者は何を見て確定するのか?

では、AIモデルが作った下書きは、出来事ごとに項目が分かれた状態で、画面に並べて保護者に見せます。

確認の手間を減らすために、一括で全件を確定するボタンも一度検討してみました。ただ、AIモデルの下書きをそのまま信じてしまう流れになりかねないと考え直し、確定するのは保護者で、項目ごとに直すか確定するかを選ぶ形にしました。一括で全件を確定するボタンは置きません。

対応端末・費用などの共通の前提は、iPhoneの中でAIが動くと、どの業界の何が変わるのか(Apple Intelligence 業界別活用マップ) の「どの業務にも共通する前提」にまとめています。

まず、ミルクの記録だけで試す

なので、最初は授乳(ミルク)の記録だけに絞って試します。おむつや体温、吐き戻しは対象に含めず、話した内容がミルクの量と時刻に振り分けられ、保護者が確認して確定する、という手順だけに絞ります。

継続するかどうかの基準は、試す前に決めておきます。

見るもの 広げる 直してもう一度試す 見送る(いまの入力に戻す)
保護者が下書きを直した割合 下がっていく 横ばい 上がる、または特定の項目でほぼ毎回直す
記録1件あたりの総作業時間(話す・確認・直すを含む) これまでの手入力より短い 同じくらい これまでの手入力より長い
話していない出来事が下書きに含まれた件数 0件 まれに残るが原因を特定できる 繰り返し起きる
対応端末の比率(iPhone 15 Pro/Pro Max・iPhone 16以降) 十分にそろっている 少ないが入れ替えの見込みがある 少なく、入れ替えの見込みがない

この表は試す前に埋めておきます。結果を見てから基準を決めると、結果に合わせた基準になってしまいます。

用意するものは、対応端末(iPhone 15 Pro/Pro Max か iPhone 16以降)がそろい、Apple Intelligenceをオンにできる家庭、ミルクの記録を話すお手本数十件、そして保護者が確認して確定する画面です。試作は自社の開発部門か開発会社に、話す、下書きにする、保護者が確認して確定する、という最小の画面を作ってもらうところから始めます。

よくある質問

双子など、赤ちゃんが複数いる家庭でも使えますか?

その設計は今回の範囲に含めていません。誰の記録かを分ける仕組みは、別に用意する必要があると考えています。

声が周囲の音でうまく認識できないときはどうなりますか?

音声認識がうまくいかなければ、AIモデルに渡す文字も得られないため、下書きは作られません。その場合は、これまでどおり手で入力する手順に戻ります。

保育園に見せる記録の様式に、そのまま使えますか?

様式の変換までは今回の範囲に含めていません。保育園ごとに書式が違うため、別に確認が必要だと考えています。

参考

自社の会員アプリの育児記録機能を見直すなら、まずはこの設計を叩き台にしてみてください!

では、おつかめ!

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