【レポート】これからの「動画」の話をしよう – 最新活用事例から見るメディア領域の進化と未来(AWS-48) #AWSSummit
みなさんこんにちは、杉金です。
今回は 2023 年 4 月 20 - 21 日にわたって開催された AWS Summit Tokyo 2023 のセッションレポートです。
セッション視聴
AWS Summit Tokyoの登録を行うことでオンデマンドで視聴可能です。(現地参加された方は改めての登録は不要です)
登録済みの場合、以下から直接遷移できます。
https://jpsummit.awsevents.com/public/session/view/553
セッション概要
あらゆるインダストリーの中でも、メディア領域の変化は日進月歩です。ここ数年の間で、スポーツイベントやライブコンサートをはじめ、様々な興行が地上波放送と遜色ない品質でインターネット上で大規模に配信されるようになりました。それを支えるために、増え続けるアセットの納品管理やトランスコードをはじめとする一連のワークフローはスケーラブルで高速に処理されています。さらにアセットのメタデータや視聴データを適切に管理・分析することで、新たな付加価値を生み出すことも可能です。また動画コンテンツの制作環境は世界中のどこからでもアクセス可能になっています。多くのお客様がこのような変革をクラウド上で実現されています。本セッションでは、 “動画” というテーマを軸に最新活用事例やトレンドをご紹介します。 インターネットメディア/エンタメ/スタートアップ/放送など、様々な事業領域におけるデジタルシフト及び新しいビジネスやサービスを具体化するアイデアになれば幸いです。
スピーカー
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術総括本部 インターネットメディアソリューショングループ ソリューションアーキテクト 小久保 駿 氏
レポート
Agenda
- AWSから見た動画配信のトレンド
- AWSメディアワークロードと最新活用事例
- まとめ
AWSから見た動画配信のトレンド
- SVODサービスの離脱者増加
- SVODストリーミング視聴者はコロナ禍で急増したが停滞
- サブスクリプション加入者の離脱が増加
- サブスクリプション収益と新規加入のコストが見合わない
- 離脱対策のためにコンテンツやサービスの差別化が必要
- 広告付きプランの採用
- コスト意識の高い視聴者に向けた広告付きチャンネルが採用
- 広告付きSVODやFAST(Free Ad Supported TV)
- AVOD:広告動画配信
- SVOD:定額制動画配信
- FAST:無料の広告付きストリーミングTV
- 広告付きでも視聴されるコンテンツの多角化が重要
- スポーツコンテンツへの投資の継続
- 大手事業者たちがメジャースポーツイベントの権利獲得に継続投資
- 配信ならではのファンエンゲージメント施策
- マルチアングル、マルチコメンタリー
- スタッツ情報の活用
- スタジアムと家での双方向での楽しみ
- ベッティング
- Eコマース連携
- より映像を楽しんでもらう、投票機能、ゲーミフィケーション
- 動画配信事業のトレンドから見るチャレンジ
- 単純な視聴以外の体験やコンテンツを差別化する機能
- 視聴体験の向上
- ユーザーの継続利用につながる魅力的なサービスやコンテンツ
- サービスモデルの最適化
- 上記両方がユーザー体験向上につながる
- 動画配信事業の継続的な成長
- 成長につながる関係性を図示
- ユーザー体験(User Experience)
- ユーザーの獲得と定着(Traffic)
- ユーザーとコンテンツの洞察(User & Content Insights)
- 視聴体験(Viweing Experience)、サービスモデルの最適化(Optimization)
* 1→2→3→4→1になるようなサイクルの図 * ユーザー体験のための具体的な機能例 * 視聴体験の向上 * メタデータに代表されるものを提供 * サービスモデルの最適化 * よりユーザーが利用しやすい選択肢を提供 * コンテンツをどのように提供する、内容についての戦略を考える等 * メディア業界のAWSソリューション全体像 * AWSソリューションの全体像を図示 * コンテンツ制作から放送・配信まで 1. コンテンツ制作 2. メディアサプライチェーン&アーカイブ 3. Direct-to-Consumer&ストリーミング 4. 放送 5. データ活用&分析 * 今回は2,3,5について情報提供する
AWSメディアワークロードと最新活用事例
- D2C&ストリーミング
- ユーザーに直接コンテンツを提供するビジネスアプローチ
- ユーザー体験に直接的に影響するワークロード
- ストリーミング
- 動画の品質、大規模に提供
- インタラクティブな体験UI/UX
- レコメンデーション、パーソナライズ、的確なコンテンツを届ける、検索できる
- カタログ/メタデータ
- 映像以外の情報を提供する
- マネタイズ
- 様々なビジネスモデルを用意する
- インテリジェントオペレーション
- 各機能を安定して運用するための機能
- 実例を紹介していく
- ストリーミング
- Abema事例
- FIFAワールドカップカタール2022でも利用されている
- 放送品質や冗長化の柔軟性
- 最新コーデックに追従するにもコストがかかる
- AWSのメディアサービスを活用して柔軟に対応できる配信システムを提供
- マルチCDN戦略で高い安定性
- etc
- ユーザーデータ、メタデータ
- Sports Statsを用いたファンエンゲージメント
- 自転車競技の例
- 各種センサーデータをAWS上に蓄積しリアルタイムに活用
- 自転車競技のファンに対するエンゲージメントの強化
- Fomula 1 F1TV事例
- 基本的な映像体験に加えて視聴体験を向上させる仕組みが必要
- メタデータを画面に表示
- 複数言語や字幕の提供
- etc
- メタデータとして燃料レベルなどをペイロードとして生成、映像のフレームに合わせて表示
- それによって視聴体験向上に繋げる
- メディアサプライチェーンとは
- ワークフローをオーケストレーションするメディアワークロードの中心
- サプライチェーンを中心とした相互関係の図
- コンテンツ制作
- 放送
- D2C&ストリーミング
- データ活用&分析
- 素材から画面に至るまでの要素を図示
- 素材
- 権利
- インジェスト
- アセット管理
- QC
- メタデータの拡充&管理
- トランスコード
- 編集
- ローカライズ
- DRM
- フィンガープリント,ウォーターマーク
- パッケージ
- 配信
- アーカイブ
- 画面
- 素材から画面に表示するだけでも複雑な要素がある
- 複雑な要素が含まれる中、これらをクラウドで最適化している例を紹介
- A+E Networks事例
- 一連のワークフローをAWSに移行
- 元からあったライブラリをデジタイズ化することにも取り込んでいる
- S3の図
- In(Ingest)からOut(Distribute)までAWSアカウントをまたいでAmazon S3を一貫して利用
- サプライチェーンを自動化しスケールさせるためにはメタデータが原動力
- AWS(S3)を介した相互接続により大規模なアセット転送を効率化できる可能性
- 配信者が別の事業者であってもAWSで接続することで更に効率化できそうというフィードバックがあった
- AbemaTV事例
- 課題
- コンテンツ運用が拠点と人に依存していた
- 年々増え続ける動画素材の処理に、システムの拡張性が追従できていなかった
- ソリューション
- マネージドサービスを積極的に活用した"Cloud MAM"を構築したことで、業務運用の省力化とアセットの高品質化、拡張性を同時に実現
- VDI を利用してセキュアにリモートからのオペレーションを実現
- データ活用&分析
- メディアに関する様々なメタデータ
- 基本情報
- 接続情報
- 管理
- コンテンツ内容
- ユーザーインタラクション
- コンテンツの内容
- シーン、オブジェクト/人物、統計情報、言語...etc
- コンテンツ内容に関する情報を活用したユーザー体験向上の事例を紹介
- 管理
- 保存場所、編集指示/履歴、アセットリレーション、権利...etc
- コンテンツ管理のためのメタデータによるワークフローオーケストレーション効率化の事例を紹介
- メタデータの入力省力化や拡充を実現するテクノロジーやサービスの活用
- データ活用&分析 | メタデータの拡充
- Ingest
- ペタバイト単位の画像と動画アセット
- Store
- どこからでも保存される形が最適
- Analyze
- MLを活用できる
- Augment
- 人による検証とML対応
- サードパーティのデータセットでメタデータを補完
- Deliver
- 最終的に視聴者に届ける
- その中でいくつか例を挙げる
- Analyze
- Amazon Rekognition
- 機械学習を用いた画像と動画分析のサービス
- 写っている映像からオブジェクトを認識している
- 様々なユースケースに対応
- コンテンツの健全性(モデレーション)にも対応
- モデル更新による精度改善
- AnalyzeとしてMLサービスを活用することでメタデータを拡充できる
- Augment
- AWS Data Exchange
- 様々なサードパーティデータをサブスクという形で利用できる
- この中から動画に関連するものを挙げる
- 外部データの取得 - IMDB
- コールドスタートを補完する形で活用できる
- Media2Cloud on AWS
- 動画アセットと関連するメタデータを取り込むためのサーバレスソリューション
- Ingestしたデータのメタデータを拡充、迅速かつシームレスに利用できる
- シンプルなユーザーインタフェース
- メディアデータのプレビューも可能
- AI サービスを利用したメタデータ生成
- 文字起こしや文字認識、ラベル検出など
- 高度な検索機能
- Animalと検索するとワンちゃんとネコちゃんが出てくる
- 分類と検出結果の統計情報
- 全体を俯瞰して見るページがある
まとめ
- 動画配信事業の継続的な成長
- ビジネスを継続的に成長できるループを作れる
- 実現するために
- AWSソリューション全体像の画像を再掲
- 動画配信事業をこれからも成長させるために
- ワークロード
- メディアサプライチェーン&アーカイブ
- Direct-to-Consumer&ストリーミング
- データ活用&分析
- 成長させるために
- Sport Statsによるファンエンゲージメント
- メタデータによる新たな視聴体験
- クラウドベースのサプライチェーン最適化
- AL/MLを用いたメタデータ拡充
- これらがユーザー体験の向上を実現
所感
動画配信のシステム構築や運用に携わった経験はないのですが、興味があって今回のセッションを受講しました。動画配信は扱うファイルサイズが大きいにも関わらず、複雑で多くのワークフローを経て視聴者に届けられていることが分かりました。私はボクシング観戦が好きなのですが、最初の方にあったスポーツイベントの権利獲得は競争の激しさにあるあるを感じています。ユーザー体験を向上させるために、マルチアングルであったり、パンチ数や有効打数などを画面に表示する工夫はいち視聴者として知ってはいましたが、実現するためのバックボーンとしての仕組みや、最適化させるためにAWSのマネージドサービスやソリューションを活用できるということを今回のセッションを通じて学べました。せっかく学びとして得たので、いずれどこかで活用してみたいですね。