
AWS User Notifications の通知パターンについてまとめてみた
はじめに
AWS Organizations 配下のマルチアカウント環境で AWS Health の通知を運用していると、「同じイベントの通知が各アカウントから飛んできてノイズになる」「メールが多すぎて見られていない」という悩みが出てきます。
AWS User Notifications には 集約(Aggregation) と 重複排除(Deduplication) という仕組みがありますが、これらは「AWS管理通知」と「ユーザー設定通知」で意味も挙動も異なります。本記事では、この2つの通知タイプの挙動を、マルチアカウント構成での具体例を交えて整理します。
この記事でわかること
- AWS User Notifications の2つの通知タイプ(AWS管理通知 / ユーザー設定通知)の違い
- AWS Health の「アカウント固有イベント」と「パブリックイベント」の違い
- AWS管理通知の集約・重複排除の仕様と条件
- ユーザー設定通知の集約の仕様
- マルチアカウント(Organizations)での宛先の決まり方と通知の飛び方
前提知識:2つの軸を分けて考える
AWS User Notifications を理解するには、混同しやすい2つの軸を分けて考えるのがポイントです。
- 軸1:通知の「仕組み」 … AWS管理通知 / ユーザー設定通知
- 軸2:Healthイベントの「種類」 … アカウント固有イベント / パブリックイベント
軸1:通知の仕組み
| 項目 | AWS管理通知 | ユーザー設定通知 |
|---|---|---|
| 設定方法 | デフォルトで有効(無効化不可) | 手動で作成 |
| アカウント内リソース | 作成されない | EventBridgeマネージドルールが作成される |
| 対象サービス | AWS Health のみ | EventBridge対応サービス全般 |
| 対象Healthイベント | アカウント固有のみ(4カテゴリ) | アカウント固有・パブリック両方 |
| 宛先の決め方 | アカウント連絡先に自動配信 | 設定作成時に配信チャネルを指定 |
| 集約 | 同一イベントを組織横断でまとめる | 時間枠内のイベントをまとめる |
| 集約のカスタマイズ | 不可(時間枠固定) | 可能(5分/12時間/なし) |
| 重複排除 | あり(同一メールアドレス時のみ) | なし |
| マルチアカウント | 全アカウント対象(選択不可) | OU単位/組織全体を指定可能 |
軸2:Healthイベントの種類
| 種類 | 説明 | eventScopeCode |
|---|---|---|
| アカウント固有イベント | 自分のアカウント・リソースに影響する個別イベント(例:EC2メンテ、証明書ローテーション) | ACCOUNT_SPECIFIC |
| パブリックイベント | 特定アカウントに紐づかないサービス/リージョン全体の情報(例:リージョン障害) | PUBLIC |
事前作業:User Notifications への信頼されたアクセスの有効化
AWS管理通知の集約・重複排除、およびユーザー設定通知の OU 単位/組織全体の通知設定を利用するには、AWS Organizations で AWS User Notifications への信頼されたアクセス(Trusted Access) を有効化する必要があります。
有効化手順は以下のとおりです。
- 管理アカウントで AWS マネジメントコンソールにサインインし、User Notifications コンソールを開く

- ナビゲーションペインで「組織設定」を選択

- 「信頼されたアクセスを有効にする」を選択

必要に応じて、同じ画面の「委任管理者」から委任管理者アカウントを登録できます(最大5アカウント)。委任管理者は管理アカウントと同様に、組織横断の集約通知の受信や通知設定の作成が可能です。
補足:宛先の決まり方の違い
- AWS管理通知:アカウント連絡先(ルート / 代替連絡先)への配信がベース。カテゴリ(Security等)ごとに、「どの連絡先タイプをオンにするか」を設定する。さらに必要に応じて、追加の「配信チャネル(Slackや任意メール等)」をカテゴリ単位で紐づけることができる。
- ユーザー設定通知:通知設定を作るときに、イベントの条件(ルール)と一緒に配信チャネル(メール / Slack等のチャットツール / モバイル)を明示指定する(※アカウント連絡先のオン/オフという概念はなし)。
AWS管理通知の集約
集約の意味
組織内の複数アカウントで 同じイベント(同一 Communication ID) が発生したとき、管理アカウント/委任管理者が「1通の集約通知」にまとめて受け取る 機能です。その1通に、影響を受けた全アカウントの情報が含まれます。

4カテゴリと集約ウィンドウ(固定・変更不可)
AWS管理通知が扱うのは Health の アカウント固有イベントのみ で、目的別に4カテゴリに分類されます。集約の時間枠はカテゴリごとに固定です。
| カテゴリ | 内容 | 集約ウィンドウ |
|---|---|---|
| Account-Specific Issues | issue カテゴリの障害・問題イベント(可用性に影響しうる進行中の問題) | 1分以内 |
| Security | セキュリティ関連 | 10分以内 |
| Health Operations | 運用関連 | 10分以内 |
| Billing Notification | 請求関連 | 10分以内 |
集約の仕様まとめ
- 集約キーは Communication ID。IDが違えば同じカテゴリでも別通知。
- 集約されるのは 管理/委任管理者が受け取る分だけ。各メンバーは自分の分の個別通知を受け取る。
- 前提として信頼されたアクセスの有効化が必要(前述の事前作業を参照)
- 集約のオン/オフや時間枠のカスタマイズは不可。
AWS管理通知の重複排除
重複排除の意味
管理(委任管理者)とメンバーが同じアカウント連絡先メールを使用している場合、メンバー側の個別メールを抑制し、管理側の集約通知のみを送信する機能です。
重複排除が機能する条件
- 通知先が アカウント連絡先メールアドレス(ルートユーザー / 代替連絡先)であること
- 管理(委任管理者)とメンバーで 同じメールアドレス を使用(プラスアドレス
ops+xxx@も同一扱い)
重複排除が機能しないケース
- メンバーアカウント同士だけで同じメールアドレスを共有
- 同一アカウント内で複数の連絡先タイプに同じメールアドレスを設定
- 配信チャネル(Slack等のチャットツール / 通知センター等) 経由(配信チャネルは常に送信され、重複排除の対象外)
ケーススタディ:連絡先が混在する場合
前提:管理アカウントの宛先アドレスとメンバーアカウントAの宛先アドレスが同一、メンバーアカウントBは別。同じイベントがA・B両方で発生。

- メンバーアカウントAの分は重複排除される(管理アカウントとメールアドレス共有のため)
- メンバーアカウントBの分は重複排除されない(メールアドレスが異なるため)
ユーザー設定通知の集約
集約の意味
同一通知設定内で、時間枠内に発生した複数イベントを1通にまとめる 機能です。AWS管理通知と異なり、イベントの種類(Communication ID)が違ってもまとめられます。
| 設定 | 説明 |
|---|---|
| 5分以内(推奨) | 5分間隔でまとめて送信 |
| 12時間以内 | 12時間間隔でまとめて送信 |
| 集約しない | イベントごとに即時送信 |
「集約」の意味の違い(比較)
| 項目 | AWS管理通知 | ユーザー設定通知 |
|---|---|---|
| 集約の意味 | 同じイベントの集約 | 時間枠内のイベント集約 |
| 集約対象 | 同一 Communication ID のみ | 同一通知設定内(異なるイベントも可) |
| 集約時間 | サブカテゴリごとに固定(1分/10分) | カスタマイズ可能(5分/12時間/なし) |
| 重複排除 | あり(メールのみ) | なし |
宛先を複数メールにした場合の挙動
1つの通知設定に2つのメールアドレスを登録すると、両方に同じ通知が同じ数だけ届きます(重複排除・分割はされない)。通知数は「イベントが何アカウント分発生するか × 集約設定」で決まります。
| イベント種類 | 集約なし | 集約あり(5分等) |
|---|---|---|
| アカウント固有(1アカウントのみ) | 各メール 1通 | 各メール 1通 |
| アカウント固有(同一イベントが2アカウント) | 各メール 2通 | 各メール 1通 |
| パブリック(2アカウントに配信) | 各メール 2通 | 各メール 1通 |
関連クォータ(参考)
| 項目 | デフォルト |
|---|---|
| 通知設定数 / アカウント | 50 |
| 同一サービスの通知設定数 | 20 |
| サービス&イベント種別ごとの通知設定数 | 10 |
| 通知設定あたりのイベントルール | 10 |
| 通知設定あたりのチャネル数 | 50 |
| アカウントあたりのメール連絡先 | 500 |
いずれも調整不可(上限緩和申請の対象外)です。
詳細は公式ドキュメントをご参照ください。
まとめ
- AWS User Notifications には AWS管理通知 と ユーザー設定通知 があり、集約・重複排除の意味が異なる。
- AWS管理通知:同一イベントを組織横断で集約(時間枠固定)。同一連絡先メールなら重複排除が効く(配信チャネルは対象外)。
- ユーザー設定通知:時間枠内のイベントを集約(カスタマイズ可)。重複排除はないが、配信元を1設定に集約すれば重複を避けられる。
- 宛先の決まり方(自動配信 / 明示指定)と集約の意味の違いを理解して設計することが重要。









