「backlog-exporterとAIの連携による業務効率化」というタイトルで社内登壇しました!
参考
backlog-exporter の作ってみたブログ
登壇内容
はじめに
リテールアプリ共創部の部会で発表した「backlog-exporter との連携による量の効率化」の Backlog と AI を組み合わせた業務効率化の手法について解説します。
自身が所属するチームでの課題を背景に、Backlog のデータをローカルにエクスポートするツール「backlog-exporter」を開発し、さらにAI と連携させることで、情報検索、オンボーディング、ドキュメント作成などの業務効率化を実現しました。この記事では、その取り組みについて紹介します。
プロジェクトの課題
私のチームでは、Backlog で東京の案件を管理する中で、以下のような課題を抱えていました:
- 情報検索に時間がかかり、効率が悪い
- 例:「〇〇」というアプリに関する情報を検索する際に、多数の検索結果がヒットし、必要な情報を見つけ出すのに苦労
- オンボーディングに多くの工数が必要
- システムの複雑さから、新メンバーがキャッチアップするのに時間がかかる
- 過去の知見を活かした見積もりが困難
- 情報統合が手作業で非効率
- 知識が属人化しやすい
- プロジェクト間の知見共有が不足
backlog-exporter とは
backlog-exporter は、Backlog の課題や Wiki などのデータをローカルに保存するための CLI(コマンドラインインターフェース)ツールです。npm パッケージとして公開されており、簡単にインストールして実行できます。
主な特徴
- 一度のコマンドで Backlog の全データをエクスポート可能
- 課題(issue)、Wiki、またはその両方をエクスポート可能
コマンド例
- 課題のみをエクスポート:
$ npx backlog-exporter@latest issue --domain example.backlog.jp --projectIdOrKey PROJECT1 --apiKey あなたのAPIキー
- Wiki のみをエクスポート:
$ npx backlog-exporter@latest wiki --domain example.backlog.jp --projectIdOrKey PROJECT1 --apiKey あなたのAPIキー
- 課題と Wiki を一括でエクスポート:
$ npx backlog-exporter@latest all --domain example.backlog.jp --projectIdOrKey PROJECT1 --apiKey あなたのAPIキー
- エクスポートされたデータは Markdown 形式で保存
- 更新コマンドで Backlog の最新情報を簡単に同期
AI による課題解決:Backlog RAG の実現
backlog-exporter 自体には AI の機能はありませんが、エクスポートした Backlog のデータを AI に読み込ませることで、Backlog の RAG(Retrieval-Augmented Generation)を実現し、私のチームの業務効率化に大きく貢献しています。実際に、以下のような効果を実感しています。
AI ツールとの連携
- GitHub Copilot
- Cursor
これらのツールを活用し、エクスポートしたMarkdown ファイルを AI に読み込ませることで、以下のような効果を得ることができました:
- プロジェクト固有の情報に基づいた自然言語での質問応答
- 自然言語でのやり取りによる容易な情報アクセス
推奨ディレクトリ構造
/
├── backlog-data
│ ├── backlog-project1
│ │ ├── issue
│ │ │ ├── 課題1.md
│ │ │ └── 課題2.md
│ │ └── wiki
│ │ ├── wiki1.md
│ │ └── wiki2.md
│ └── backlog-project2
│ ├── issue
│ └── wiki
└── githubリポジトリ1
具体的な活用シーン
1. オンボーディングの効率化
課題と解決方法
新メンバーは通常、以下のような課題に直面します:
- プロジェクトに関する知識不足
- 情報収集に多大な時間が必要
- 先輩社員への度重なる質問
オンボーディングの効率化手法
-
質問応答による迅速な情報取得
- 自然言語での質問が可能
- プロジェクト固有の情報を踏まえた回答
- 例:「〇〇とは何か?」「このアプリの目的は?」
-
関連情報の自動提示
- 関連ドキュメントへのリンク
- 先輩社員の負担軽減
- 自律的な学習の促進
-
実務での活用例
- 別チームの調査タスクでの活用
- Cursor との連携による効率化
- 抽象的な質問から技術的な質問まで対応
効果
- 通常 6 時間 → 2 時間程度に短縮
- 例:「〇〇 について教えて」という質問で、〇〇の概要、主な機能、システム構成などを AI が説明
2. ドキュメント作成支援
議事録、報告書、API 仕様書などのドキュメント作成を効率化できます。
課題と解決方法
効率化の仕組み
ドキュメント作成の効率化手法
-
既存情報を活用した効率的な作成
- 過去の設計書の学習
- プロジェクトのスタイル理解
- フォーマットの自動適用
-
レビュー工数の削減
- AI による高品質な初稿作成
- 最小限の人間によるレビュー
- 修正時間の大幅削減
-
多様なドキュメント対応
- API 設計書
- 議事録・報告書
- 技術仕様書
- PDM など他職種での活用
効果
- API 設計書作成:6 時間 → 1.5 時間に短縮(レビュー・修正含む)
- 約 4 倍の効率化を実現
3. Backlog 更新確認
更新確認の課題と解決方法
課題 | 解決方法 |
---|---|
通知の見落とし | AI による自動集約 |
更新内容の把握に時間がかかる | 要約機能の活用 |
過去の更新確認が困難 | 期間指定での一括確認 |
更新確認の効率化手法
-
更新情報の自動集約と要約
- 課題・Wiki の更新を自動集約
- 更新者・内容の要約
- 重要情報の優先表示
-
実際の Backlog ページへの容易なアクセス
- 更新情報へのリンク提供
- 詳細情報への即時アクセス
- 正確な情報の確認
-
プロンプトによる柔軟な対応
- 期間指定
- 情報種類の選択
- カスタマイズ可能な出力形式
活用例
- 「昨日からの Backlog の課題や Wiki の更新をまとめて」というプロンプトで更新内容を確認
- 更新者、関連リンクなども AI が提示
4. その他の活用シーン
ナレッジ検索の高度化
- 過去の課題や Wiki の情報を AI が解析
- 関連するコンテキストを理解した上での検索
- 複数の情報源を統合した回答の提供
プロジェクト横断分析
プロジェクト分析の効果
- プロジェクト間の共通の課題や成功事例の特定
- 知識の共有促進
- 組織全体の知見の向上
- プロジェクト運営の改善
タスク見積もり支援
- タスク実績データの AI による学習
- 新規タスクの見積もり精度向上
- タスクの内容、担当者、過去の類似タスクを考慮した現実的な見積もり
ドキュメントからソースコード探索
仕様確認の効率化
- 質問応答形式での仕様確認
- 関連する仕様情報の提示
- 複雑な仕様全体の把握をサポート
コードレビュー支援
技術スタック
技術 | 採用理由 |
---|---|
TypeScript | 開発者が慣れている言語 |
oclif | TypeScript 製の CLI フレームワーク。機能が豊富で GitHub Actions との連携も容易 |
Cursor | AI に最適化されたエディタ。AI によるコード生成を活用 |
npm | Node.js のパッケージマネージャー。誰でもすぐに利用可能 |