
【セッションレポート】自動化だけでは守りきれない —— グローバルゲーム運用における品質保証とアンチチートの最前線 #CEDEC2026
はじめに
CEDEC2026 で聴講したセッションのレポートです。Tencent Cloud のゲームソリューションが、グローバルに展開するゲームの品質保証とチート対策にどう使われているかが紹介されました。
セッションの概要は次の通りです。
- タイトル: 自動化だけでは守りきれない —— グローバルゲーム運用における品質保証とアンチチートの最前線
- 登壇者: 梁 梓龍 氏 (Tencent Japan GK ソリューションアーキテクト)
- 日時: 2026 年 7 月 23 日 10:00 から 10:25
- 会場: 第 12 会場

ゲーム運用が抱える二つのリスク
セッションの導入では、ゲームの開発と運用が抱えるリスクが二つ挙げられました。一つは品質のリスクです。バージョンアップのたびに新たなテストが必要になり、人手には限界があるため、テスト工数がボトルネックになります。品質と速度のジレンマが常につきまといます。もう一つは公平性のリスク、すなわちチートです。データの改ざんが不正を招き、コミュニティの信頼を損ない、ゲームの寿命そのものを脅かします。
この二つに対して、テスト自動化の WeTest Acorn と、チート対策の ACE (Anti-Cheat-Expert) という二本柱が紹介されました。
AI エージェント駆動のテスト自動化
前半は、WeTest Acorn による AI エージェント駆動のテスト自動化です。
従来のテスト自動化には、スクリプト型と視覚モデル型がありました。スクリプト型は精度が高い一方、作成のハードルが高く拡張性に乏しいという弱点があります。視覚モデル型はソースコードが不要で汎用的ですが、認識精度に課題が残ります。Acorn は、これらの限界を複数の専門エージェントの協調で乗り越えようとするものです。
計画、探索、実行、判定といった役割ごとのエージェントが連携し、実行結果を認識しては次の行動を決めるループを回します。単一のエージェントでは弱い部分を、役割分担によって補い合う設計です。テストケースは自然言語での記述やドキュメントから自動生成でき、テスト設計の手間を減らせます。デモでは、Unreal Engine のサンプルプロジェクト Lyra を対象に、不具合をリアルタイムに検出する様子が示されました。

チート対策 ACE
後半は、チート対策ソリューション ACE です。
はじめに、チート手法が三つのレベルに整理されました。レベル 1 は一般的な手法で、メモリの改ざんやスピードハックなど、開発が容易で汎用性が高いものです。レベル 2 は高度な手法で、セキュリティ対策そのものを回避しようとします。レベル 3 はカスタム手法で、特定のゲームに特化して作り込まれ、開発コストが高いぶん検出も困難です。オートエイムやワールドハックなど、FPS のようにチートの影響が大きいジャンルで使われます。

これらに対して、ACE は用途に応じた複数のソリューションを提供します。アプリの逆コンパイルやデバッグへの耐性を高める強化、通信データの暗号化や改ざん検出、カスタムチートへの個別対応などです。ゲームの更新後すぐに検出ロジックを配信できる仕組みや、不正なアカウントを検出して対処する仕組みも紹介されました。Honor of Kings や PUBG Mobile など、数多くのタイトルでの採用実績が語られました。

感想
テストとチート対策という、どちらも人手だけでは追いつかない領域を AI とクラウドで支えるという方向性が印象的でした。特にテスト自動化を単一の AI ではなく複数エージェントの協調で組み立てる考え方は、これからのゲーム QA の一つの形になりそうだと感じました。








