ちょっと話題の記事

3大パブリッククラウドのクラウド導入ベストプラクティスを読んでみた

3大パブリッククラウド、AWS/GCP/Azure のクラウド導入ベストプラクティスを読み込んでみます。 切り口、視点、視線は違えど根本は同じだろうなという期待を持って読み込んでいきます。
2019.07.03

この記事は公開されてから1年以上経過しています。情報が古い可能性がありますので、ご注意ください。

こんにちは。
ご機嫌いかがでしょうか。
"No human labor is no human error" が大好きな吉井 亮です。

2019年7月1日をもってクラスメソッド入社1周年となりました。
入社前から想像していた通り、非常に刺激的な会社でした。
1年間いろいろな経験をさせてもらいましたし、これからもそうだと思います。

1周年を記念して少し変わったエントリでお送りします。
3大パブリッククラウド、AWS/GCP/Azure のクラウド導入ベストプラクティスを読み込んでみます。
切り口、視点、視線は違えど根本は同じだろうなという期待を持って読み込んでいきます。

クラウド導入を成功させるために

クラウド導入によりビジネスの価値を向上させることが何より大切であり
人、プロセス、ガバナンス、運用、テクノロジーの全てが揃って実現できるものです。

これからクラウド導入を検討する際には以下を考慮します。

  • ビジネスとテクニカルの両面から As-is、To-be、Gap を理解する
  • クラウド導入を推進していく”クラウドファースト組織”を作る
  • 組織にアサインされた従業員は自らの範囲に責任を持つ
  • クラウド成熟度を計測する基準を作成する
  • クラウドファースト組織を教育するための学習プログラムを用意する
  • 繰り返し実行可能なプロセスを作成する
  • プロセスを実行しクラウドへの実装を行う
  • クラウド成熟度に合わせて運用プロセスやガバナンスを更新していく
  • クラウドネイティブの自動化ツールをフル活用してオペレーション間接費を削減する

クラウド導入が目的ではなく、ビジネス価値の向上が本来の目的になるようにプロセスと組織を変革していく必要があります。


これ以降で各クラウドベンダーが提供しているフレームワークをサマってみました。

AWS

AWS Cloud Adoption Framework です。
どういった考え方で書かれているかが解る文章を要約から抜粋します。

AWS Cloud Adoption Framework (AWS CAF)は、
クラウド導入が組織の働きをどのように変革するかを理解しやすくし、
スキルとプロセスのギャップをわかりやすくする枠組みを提供します。
AWS CAFを組織に適用することで、一連の作業が定義された実行可能な計画をもたらしてくれます。
それは、クラウド導入への道筋を導くものです。
このフレームワークは、クラウド導入の旅を世界中で支援してきた我々の経験とベストプラクティスから導き出されています。

6つのパースペクティブ

AWS CAF では6つの重点分野:パースペクティブに分類してガイダンスをしています。

それぞれのパースペクティブの簡単な説明は以下です。

パースペクティブ 説明
ビジネス ステークホルダーが、クラウドへの移行に合わせてビジネスバリューを最適化していくのに必要なスキルや組織プロセスへといかに更新すべきかを解説。
ピープル ステークホルダーが、労働力を最適化し、適材適所でコンピテンシーを発揮できるようなスキルや組織プロセスへといかに更新すべきかを解説。
ガバナンス ステークホルダーが、クラウド上でのビジネスガバナンスを実現し、クラウド投資を管理測定してビジネス成果を評価できるようにするために必要なスキルと組織プロセスへといかに更新すべきかを解説。
プラットフォーム ステークホルダーが、クラウドのソリューションやサービスを導入し最適化するために必要なスキルと組織プロセスへといかに更新すべきかを解説。
セキュリティ ステークホルダーが、組織のセキュリティコントロール要求、レジリエンシー(回復力)、コンプライアンス要求と整合のとれたクラウド上のアーキテクチャを実現するために必要となるスキルと組織プロセスへといかに更新すべきかを解説。
オペレーション ステークホルダーが、クラウド移行中もシステムの健全性と信頼性を確保し、その後もアジャイルで継続的なクラウドコンピューティングのベストプラクティスを利用して運用するのに必要なスキルと組織プロセスへといかに更新すべきかを解説。

成功の鍵

現状、目標、そのギャップを理解することが必要あり、
これを知ることでクラウドでの成功を可能にするゴールと一連の作業を定義することが出来ます。

ステークホルダーを関連するパースペクティブに参加させ、
作業間の相互依存を明確にし、コレボレーションを最適化します。
ステークホルダーは関連したパースペクティブを自分のものとして扱う責任感と積極性を持ちます。

パースペクティブとケイパビリティ

各パースペクティブには複数のケイパビリティが定義されており
ステークホルダーが何に責任を持つべきかが示されています。
各ケイパビリティの説明は割愛させて頂きました。

ビジネス

  • IT ファイナンス
  • IT 戦略
  • 利益の実現
  • ビジネスリスクマネジメント

ピープル

  • リソースマネジメント
  • インセンティブマネジメント
  • キャリアマネジメント
  • トレーニングマネジメント
  • 組織変革マネジメント

ガバナンス

  • ポートフォリオマネジメント
  • プログラム・プロジェクトマネジメント
  • ビジネスパフォーマンス測定
  • ライセンスマネジメント

プラットフォーム

  • コンピュートマネジメント
  • ネットワークプロビジョニング
  • ストレージプロビジョニング
  • データベースプロビジョニング
  • システム&ソリューションアーキテクチャ
  • アプリケーション開発

セキュリティ

  • ID 管理&アクセス管理
  • ディテクティブコントロール
  • インフラストラクチャセキュリティ
  • データ保護
  • インシデント対応

オペレーション

  • サービス管理
  • アプリケーションパフォーマンス管理
  • 資産管理
  • リリース管理/変更管理
  • レポート&分析
  • ビジネス継続性/災害対策
  • IT サービスカタログ

小まとめ AWS

ビジネスとテクニカルの両面から各ステークホルダーの役割に対して
ギャップを明確にし、ステークホルダーがギャップを埋める活動を支援することが
このフレームワークを活用する意義だということが読みれました。

GCP

Google Cloud アダプションフレームワークです。
エグゼクティブサマリーとテクニカルディープダイブに分かれています。
エグゼクティブサマリーで概念を、テクニカルディープダイブで詳細を説明しています。

基本的な考え方だと思われる箇所を抜粋します。

Google Cloud アダプションフレームワークは、クラウド化へのジャーニーの中で、
お客様の現状を的確に評価し、将来あるべき姿に向けて必要な実施項目を提供することで、
人・プロセス・テクノロジーに関わる課題に、お客様が取り組むことができるように体系化したものです。

組織のクラウドへの準備状況の確認、ギャップの評価、
新しいコンピテンシーの開発に、このフレームワークが利用できます。

4つのテーマ

真のクラウドファーストの組織を作り上げるために
4つのテーマに秀でる必要があります。
4つのテーマによって、クラウド化に備える基盤が定義付けられます。
4つのテーマの簡単な説明は以下です。

テーマ 説明
教育 テクニカルチームと IT スタッフをスキルアップさせるための、適所に配された学習プログラムの質と規模。
主導 IT チームが、経営者層の委任による手助けを受けてクラウドへの移行を実行する範囲と、各チームが職務横断的かつ自発的に協力する度合い。
スケール オペレーション間接費を削減し、手動のプロセスとポリシーを自動化するためのクラウドネイティブサービスを使用する範囲。
セキュア マルチレイヤーで ID 中心のセキュリティ モデルで、不正かつ不適切なアクセスからサービスを保護するための能力。他の3つのテーマの成熟度合いにも依存する。

3つのフェーズ

テーマの実践状況は3つのフェーズの何れかで分類されます。
フェーズの簡単な説明は以下です。

フェーズ 説明
戦術 (Tactical) 個々のワークロードは実施されているが、未来を築き上げる戦略を伴った、すべてのワークロードを包括する一貫したプランは無い状態。
戦略 (Strategic) 個々のワークロードが、より広いビジョンによって統制されている。将来のニーズと拡張に目を向けてワークロードが設計、開発されている。
変換 (Transformational) クラウドのオペレーションが円滑に機能していて、クラウド内の機能から獲得されたデータの統合と分析に注目が向けられつつある。

クラウド成熟度の計測基準

テクニカルディープダイプで計測基準が定義されており、
それによってクラウド成熟度を計測します。
下の図は成熟度が深まると何が起こるのかを示しています。

方向性の確認

エピックを導入して方向性、つまりクラウドジャーニーの到達点への道筋を計画します。
エピックを人、テクノロジー、プロセスの相関関連図で見てみます。
エピックを一部しか実行できない場合は、色がついた部分を重点的に見ていきます。

大まかなプロセス

  1. 現状のクラウド成熟度を評価
  2. クラウド適用でどのレベルを目指すのかを社内で検討
  3. クラウド アダプション プログラムを計画
  4. 正しいワークロードの決定

小まとめ GCP

おそらく Google の各サービスの開発で培ってきた知見の集まりだと勝手に思います。
人、テクノロジー。プロセスという観点が徹底しています。
面白かったのは、”Google にお任せください” や ”TAM が支援します” などの文言が出てきて
やはり自信をもってフレームワークを提供しているということは感じました。

Azure

Azure 向けの Microsoft Cloud 導入フレームワークです。
パブリックプレビュー段階のようです。
はじめに から抜粋します。

クラウドは、企業によるテクノロジ リソースの調達と利用の方法を根本的に変えます。
従来は、インフラストラクチャからソフトウェアまで、あらゆる側面のテクノロジの所有権と責任が企業にあることが前提になっていました。
クラウドにより、企業は必要な場合にのみリソースをプロビジョニングして使用することができます。
設計の選択という点で、クラウドは多大な柔軟性をもたらしますが、企業が求めているのは、一貫性のある実証済みのクラウドテクノロジ導入手法です。
Azure 向けの Microsoft Cloud 導入フレームワークはこのニーズを満たし、クラウド導入全体の意思決定の指針として役立ちます。

動機

クラウド移行により多くのビジネス成果を実現できる可能性があります。
動機を明確に伝達し、ビジネスを推進して、成功を測定することは、
賢明な意思決定を行うための重要です。
次の表は、この対話を促進する動機を分類したものです。

重要なビジネスイベント 移行の動機 イノベーションの動機
データセンターの閉鎖 コスト削減 新しい技術機能に対する準備
合併、買収、売却 ベンダーまたは技術的な複雑さの減少 新しい技術機能の構築
資本支出の削減 内部運用の最適化 市場需要に合わせたスケーリング
ミッションクリティカルなテクノロジのサポートの終了 ビジネスの機敏性の向上 地理的需要に合わせたスケーリング
規制コンプライアンスの変更への対応 新しい技術機能に対する準備 カスタマー エクスペリエンス/エンゲージメントの向上
新しいデータ主権要件への対応 市場需要に合わせたスケーリング 製品またはサービスの変革
中断の削減と IT の安定性の向上 地理的需要に合わせたスケーリング 新しい製品またはサービスによる市場の活性化

重要なビジネスイベントへの対応を最優先する場合、計画と並行して早期に実装に取り掛かることが重要です。
このアプローチをとる場合、プロセスを反復し進化させる成長思考と積極席が必要です。

移行の動機を優先させる場合は、戦略と計画が重要です。
この場合でも、最初のワークロードを実装します。
チームはクラウドに関連する学習曲線を理解して計画を立てることができるようになります。

イノベーションの動機が最優先である場合は、ポートフォリオのバランスを取り、追加投資を早めに判断します。

動機を認識したうえですべての関係者を準備することにより、より賢明な意思決定を下すことができます。

移行のアプローチ

「クラウド戦略と計画」と「クラウドの実装」の2つの手法で構成されています。

クラウドの実装

目標達成のためにデジタル資産の移行および最新化をするための反復的なプロセスです。
各反復の間に、戦略と計画に合わせてワークロードが移行または最新化されます。
最大の成果を出すには、IT とビジネスの両方で、実装作業の指針となる明確な戦略と計画を揃えておくことが勧められています。

クラウド戦略と計画

移行の明確な戦略と計画を確立するために、ビジネス成果、優先順位、および制約を調整することに焦点を置いた手法です。

上の図の簡単な説明は以下です。

プロセス 説明
Plan 技術的な実装とビジネス目標を合致させ、成功を測定および調整する。
Ready ビジネス、文化、人材、および環境を整える。
Migrate テスト済みのプロセスに従って「クラウドの実装」を繰り返し実行する。
Operate クラウドファーストの運用ツールを使用してクラウド運用を行えるようにする。
Govern クラウド利用に合わせてポリシーを調整しリスクを軽減させる。
Change Management and Oversight 反復的なアプローチによって激しい変化に対応、学習し、成功を収める

小まとめ Azure

ビジネスアプリケーションを多く持つ Microsoft らしく
ビジネスにフォーカスをおいたフレームワークになっていると感じました。
ビジネス上の成功をクラウドで実現するために、という説明が丁寧に書かれています。

参考

三社三様で読み応えがありました。(全ページ読んでいませんが)
詳細を知りたい方は各フレームワークを参照ください。

AWS クラウド導入フレームワーク
Google Cloud 導入フレームワーク
Azure 向けの Microsoft Cloud 導入フレームワーク

おまけ

私のいかした同期社員が1周年のエントリを登録しています。
ぜひご参照ください。
リモートマネージャを1年やった振り返りと新しい肩書きについて
インテグ部だより 2019夏
Raspberry Piを使って無線ヘッドホンを複数入力から同時に出力出来るようにする
[Microsoftアカウント]と[職場または学校アカウント]の違い
「技術を得る」事と「コミュ力を高める」事の相関性について

以上、吉井 亮 がお届けしました。