
クラスメソッド データアナリティクス通信(AWSデータ分析編) – 2025年11月号
クラウド事業本部コンサルティング部の石川です。Amazon QuickSightがリブランディングされ、AI機能を強化した「Amazon Quick Suite」として新たに登場しました。また、AWS GlueやAmazon SageMaker、Amazon OpenSearch Serviceなどの幅広いサービスでも機能追加やAPI更新が続々と発表されています。最新アップデート情報とその概要やポイントをご紹介します。
Amazon Quick Suite
2025/10/09 - Introducing Amazon Quick Suite: your agentic AI-powered workspace
AWSがエージェント型AIワークスペース Amazon Quick Suite を発表しました。この新サービスは、社内外の多様なデータ(DB、ドキュメント、サードパーティアプリ等)を横断的に検索・分析し、洞察を得るだけでなく、Jiraのチケット作成や請求書処理といった具体的なアクションやタスク自動化までを実行します。
実態としては、Amazon QuickSight がリブランディングされ「Amazon Quick Suite」になり、上記のAI 機能が追加されてサービスです。
Amazon QuickSight
新機能・アップデート
2025/10/13 - Amazon QuickSight expands font customization for visuals
Amazon QuickSightに新機能「ActionConnector」と「Flow」が追加され、外部サービス連携やワークフロー自動化が可能になりました。また、Google Drive、SharePoint、QBusinessなどデータソースが大幅に拡張されました。QuickSightは単なるデータの可視化ツールから、ダッシュボードを起点に業務アクションを実行できるプラットフォームへと進化しました。
2025/10/23 - Amazon Quick Sight announces the general availability of a new data preparation experience
Amazon QuickSightの新しいデータプリパレーション機能がGAになり、GUI操作でコード不要の高度なデータ変換(テーブル結合、集計等)が可能になりました。ビジネスユーザーや分析担当者が、SQL等を使わずに迅速にデータ準備を完了でき、分析にかかる工数を削減できます。
APIの変更点
2025/10/09 - Amazon QuickSight - 13 new18 updated api methods
Amazon Quick Suiteに関連する新しいリソースであるActionConnectorとFlowのサポートが追加されました。その他のアップデートには、データソースオプションの拡張、ブランドカスタマイズの強化、管理者が制限できる新機能などが含まれています。
Amazon SageMaker Unified Studio
新機能・アップデート
2025/10/24 - Amazon SageMaker Unified Studio supports Amazon Athena workgroups
Amazon Athena ワークグループへの接続をサポートしました。データエンジニアやアナリストは、SageMaker Studio内から直接、Athenaワークグループに定義された既存の設定(クエリのアクセス制御やコスト管理など)を再利用してSQLクエリを実行できるようになりました。AthenaワークグループをSQL分析コンピューティングとして再利用できるため、設定の時間を節約できます。また、Athena側で設定されたデータ使用制限やコスト管理、チームやプロジェクトごとのクエリ使用状況の追跡といったガバナンスを、SageMakerからの利用時も維持できます。
Amazon DataZone
APIの変更点
2025/10/14 - Amazon DataZone - 4 updated api methods
スコープ付きおよびtrustedIdentityPropagation対応の接続の作成をサポートします。
2025/10/24 - Amazon DataZone - 4 updated api methods
DataZone での MLflow 接続作成のサポートが追加されました。
AWS Glue
新機能・アップデート
2025/10/03 - AWS Glue adds write operations for SAP OData, Adobe Marketo Engage, Salesforce Marketing Cloud, and HubSpot connectors
SAP OData、Marketo、Salesforce Marketing Cloud、HubSpotコネクタの書き込み操作に対応しました。GlueのETLジョブからこれらのSaaSアプリケーションへ直接データの書き込み(作成・更新)が可能になりました。
APIの変更点
2025/10/06 - AWS Glue - 2 updated api methods
GetDataQualityResult と PublishDataQualityResult API の DataQualityRuleResult のラベル付けを追加しました。
2025/10/10 - AWS Glue - 2 updated api methods
GetTable/GetTables リクエストに AuditContext を追加しました。
2025/10/30 - AWS Glue - 3 updated api methods
AWS Glue で Trusted Identity Propagation が有効になっているインタラクティブセッションを実行している顧客向けに、ユーザーバックグラウンドセッションを有効にする機能が追加されました。
Amazon OpenSearch Service
新機能・アップデート
2025/10/03 - Amazon OpenSearch Ingestion now supports batch AI inference
Amazon OpenSearch Ingestionが、バッチAI推論をサポートしました。OpenSearch Ingestionパイプライン内で、大規模データセットをオフラインで効率的に処理(ベクトル埋め込み生成など)できるようになりました。従来はストリーミング(リアルタイム)推論のみでしたが、バッチ処理が可能になったことで、大規模データを扱う際のパフォーマンスが向上、コスト効率も改善しました。
2025/10/17 - Amazon OpenSearch Service now supports Graviton4 based (c8g,m8g,r8g and r8gd) instances
Amazon OpenSearch Serviceが、Graviton4ベースの新インスタンス(C8g, M8g, R8gなど)をサポートしました。Graviton3世代と比較して最大30%パフォーマンスが向上し、価格性能が大幅に改善されます。これにより、特に大規模な検索やインデックス作成といった要求の厳しいワークロードにおいて、コストを最適化しつつ、より高いスループットと低レイテンシの実現が期待できます。
Amazon EMR
APIの変更点
2025/10/21 - Amazon EMR - 1 updated api methods
InstanceFleetState の便利な列挙型に RECONFIGURING を追加しました。
2025/10/30 - EMR Serverless - 3 updated api methods
EMR サーバーレス アプリケーションで Trusted Identity Propagation が有効になっているインタラクティブ セッションを実行している顧客向けに、ユーザー バックグラウンド セッションを有効にする機能が追加されました。
Amazon Kinesis
APIの変更点
2025/10/27 - Amazon Kinesis - 1 new2 updated api methods
最大10MiBのレコードサイズのサポートを追加し、ストリームレコードのサイズ制限を変更するための新しいUpdateMaxRecordSize APIを導入しました。既存のCreateStream APIとDescribeStreamSummary APIに、それぞれリクエストペイロードとレスポンスペイロードのレコードサイズパラメータを追加しました。
AWS Clean Rooms
新機能・アップデート
2025/10/02 - AWS Clean Rooms now supports data access budgets
データアクセスバジェット機能が追加されました。データオーナーは、コラボレーターがデータを分析できる回数に上限(期間ごと、またはライフタイム)を設定できるようになりました。バジェット(上限)に達すると分析が停止されるため、機密データの過度な利用を防ぎ、プライバシー管理を強化できます。
APIの変更点
2025/10/01 - AWS Clean Rooms ML - 2 updated api methods
コラボレーション内の ML ジョブに入力チャネルを何回使用できるかを表示するためのデータ アクセス バジェットが導入されました。
2025/10/01 - AWS Clean Rooms Service - 11 updated api methods
コラボレーション内のクエリとジョブにテーブルを何回使用できるかを制御するためのデータ アクセス バジェットが導入されています。
2025/10/03 - AWS Clean Rooms Service - 6 updated api methods
リージョン間のデータ ソースの読み取りと、許可リストに登録されたリージョンへの結果配信のサポートが追加されました。
2025/10/30 - AWS Clean Rooms Service - 3 updated api methods
SQL パフォーマンスを最適化するための高度な Spark 構成のサポートが追加されました。
Amazon S3 Tables
新機能・アップデート
2025/10/22 - Amazon S3 now generates AWS CloudTrail events for S3 Tables maintenance operations
Amazon S3 Tablesのメンテナンス操作(コンパクションやスナップショットの有効期限切れ)が、AWS CloudTrailイベントとして記録されるようになりました。
データ関連のMCP
新機能・アップデート
2025/10/22 - Accelerating development with the AWS Data Processing MCP Server and Agent
AWS Data Processing MCP Server and Agentがオープンソースで提供されました。AIアシスタントがAWSの分析環境(Glue, EMR, Athena等)を文脈に応じて理解できるようにするものです。
最大のメリットは、自然言語(会話)によってデータパイプラインの構築、監視、分析が可能になる点です。従来必要だった複雑なAPI操作やサービス間の手動連携が不要になり、開発速度が飛躍的に向上します。
最後に
Amazon Quick Suiteは、単なる可視化や分析にとどまらず、AI活用による業務自動化や高度なデータ準備機能の充実で大きく進化しました。もうすぐ、re:Inventが開催されますが、Amazon Quick Suiteを除き、今年は例年に比べてアナリティクス系サービスの事前発表が少ないです。re:Inventでは新サービスやアップデートをお届けしたいです。
なお、私事ですが、目黒のAWS Loft Startup Loft Tokyoで開催されたイベント 『実践 Apache Iceberg』徹底解説 - 著者と共に学ぶ Iceberg の最新情報にて、書籍『実践 Apache Iceberg』の歩き方というタイトルで登壇させていただきました 。







