チームで毎週OSTをやってみた。そこから見えてきた価値。

CX事業本部 Delivery部 デリバリーマネジメントチーム(DMT)の週次定例「DMT定例」にて、継続的にOST(Open Space Technology)を実施してきました。 OSTを継続実施する中で起きていたことを、対話型組織開発/日常と非日常/ダブルループ学習などの観点でふりかえります。
2023.06.29

CX事業本部で、組織開発/ワークショップデザイナーとして活動している長南です。

CX事業本部 Delivery部 デリバリーマネジメントチーム(DMT)の週次定例「DMT定例」にて、継続的にOST(Open Space Technology)を実施してきました。

OSTを継続実施する中で起きていたことを、対話型組織開発/日常と非日常/ダブルループ学習などの観点でふりかえります。

※OST(Open Space Technology)は、大人数のグループが特定の問題や課題について効果的に議論し、アイデアを共有するための会議方式を指します。OSTの重要な特徴は、参加者が自主的に会議の議題を設定し、自由にディスカッションに参加または離脱することができる点です。これにより、参加者が自己組織化することで、個々の興味や関心に基づいて議論が進行します。(ジピッてます)

読み手の想定

  • DMTのメンバーで、DMT定例で起きてきたことをふりかえりたい人
  • 定例会主催者で、定例会で起きていることをふりかえりたい人
  • 定例会主催者で、定例会のアップデートをしたい人
  • 組織開発(OD)実践者で、対話型組織開発に取り組みたい人

DMT(デリバリーマネジメントチーム)とは?

CX事業本部では、お客様のアウトカムのために、お客様とサービスの協創に取り組んでいます。

Delivery部は、サービスの協創に必要な機能を職種チームという形で持ちます。

DMTは、各職種チームの中でプロジェクトマネジメントやスクラム支援を担っています。メンバーは、プロジェクトマネージャーやスクラムマスターなど、15名ほど。

Delivery部とDMTは、2023年1月の体制変更で生まれた組織です。

参考:CX事業本部Delivery部の「デリバリーマネジメントチーム」についてご紹介

なぜ週次定例で毎週OSTをやることになったのか?

今年2月某日に高尾山の麓にて、DMTのチームビルディングで合宿を実施しました。

合宿のメインアクティビティがOSTで、合宿の中でOSTに慣れてもらい、合宿後の日常でOST実施を継続させることを意図していました。OSTをチームで実施すると、チーム全員参加で場づくりを進めることができます。

最後に決め手になったのが、OSTは全員参加でみんなで場づくりをすることができるところ。OSTを通して「DMTをみんなでつくる」を表現することで、合宿後の日常でも「DMTをみんなでつくる」を継続させることができるのではないか。そんなことを考えてOSTを選んでいました。(DMT合宿のブログより)

参考:立ち上がったばかりのチーム、高尾山の麓で合宿をやってみた!

週次定例でのOST、どのようなことをやってきたのか?

週次のDMT定例は60分、その中で毎回20分程度OSTの時間をとっていました。

ツールは、ビデオ通話にMeet、定例アジェンダ&記録をNotion、OSTの記録にMiroを使っています。

OSTハンガーフライトの狙い(Why)

  • 定例OSTでDMTのチーミングを進める。
    • 合宿の時はわりとチームビルディング要素だった。但しチームビルディングはわりと出来てきているし、他にハンガーフライトなどもあるため、定例OSTをチームビルディングとしてやる必要はない。
  • 成功体験を積み上げて、モチベーションを上げる。チーミングにつなげる。
    • 中長期のDMTロードマップに関連づく議題をセッションテーマにするより、メンバーが話したいと思うこと(関心事、困り事など)を会話して、タスク化し、成功体験を積み上げる方がモチベーションを高く保ちながらチーミングを行っていける。

※「OSTハンガーフライト」という名前:定例内OSTのことを「OSTハンガーフライト」と呼んでいます。空を飛ぶのが当たり前ではなかった時代、飛行機乗りの世界に「ハンガーフライト」という言葉があった。天候が悪い時は、ハンガー(格納庫)で天候回復を待ち、パイロット同士で雑談を通して知見共有をしていた。OSTで知見共有をして、それぞれのプロジェクトを進めやすくする意図を込めて。

※「チーミング」:チームが継続的に協力し、学習し、適応するプロセスを指し、変化に対応する能力を重視する。(ジピってます)

OSTハンガーフライトの進め方(How)

  • マーケットプレイス (5分)
    • 「緊急度アゲBOX」にテーマがある場合は、それを優先しましょう。
      • 4つ以上ある場合は投票により決定しましょう。
    • それ以外は今までと同様、投票にてテーマを決定しましょう。
  • セッション(15分)
    • 収束(タスク化)が必要そうな場合、収束を目標に議論を進めましょう。
    • グループのメンバーで「おかわり」が必要か多数決で決定してください。
  • 共有(5分)
    • 議論した内容をみなさんに共有しましょう。
    • タスク化した場合は、そのタスクもみなさんに共有しましょう。
      • タスクは「みんなのタスクボード」に入れてください。
    • 「おかわり」が必要かを共有しましょう。

OSTハンガーフライトのWhy&Howは、OSTで「OSTをなぜやるのか?」というテーマが出た時に、セッション結果を参考にDMTのマネージャー陣が取りまとめたもの。

OSTハンガーフライトで使っているMiroのイメージ

OSTハンガーフライトで使っているMiroのイメージ

対話型組織開発の観点でふりかえる

「対話型組織開発」は、組織開発のアプローチの一つで、対話とコミュニケーションを活用して組織の改革や改善を進める手法を指します。(ジピッてます)

DMT定例でOSTを検討していた時に、DMT内でどう対話型組織開発を進めていくか?ということを考えていました。チーム内での対話を通じて、メンバー一人ひとりの認識を通じて意味を見出し、どうチームをより良くするアクションを進めていくか。

対話型組織開発には、OST、AI、ワールドカフェなどのホールシステムアプローチが取り入れられることが多いです。

これまで扱われてきたOSTテーマの一部(3月〜6月)

  • プロジェクトを理想的な方向に持っていくには?
  • お客さんとの雑談がうまくなる方法
  • 新規顧客との付き合い方
  • プロジェクト進行で「これやっておいて良かった」こと
  • デリバリーマネージャーのスキルは標準化できるのか? →DMTに求められるスキルマトリクスづくりにつながる
  • PdM依存を解消して、チームの自律を促すのに必要なこと
  • PdMに必要なスキル →DMTに求められるスキルマトリクスづくりにつながる
  • おかわり:デリバリーマネージャーのスキルは標準化できるのか? →DMTに求められるスキルマトリクスづくりにつながる
  • 定例OSTをどこにつなげていくか? →OSTハンガーフライトのWhy&How整理につながる
  • おかわり:定例OSTをどこにつなげていくか?(3グループに分かれて、全員で実施) →OSTハンガーフライトのWhy&How整理につながる
  • ノウハウ共有、競合にどのような配慮をするか?(インナーソースなど)
  • ベンダー間のやり取りを上手くやっていく為には?
  • チームビルディングの状態をどうチェックするか?
  • PMの技術インプットの時間確保どうしてますか?
  • プロパゲートと何が協力できそうか
  • DMTチームとしてのDM育成の方法について →デリバリーマネージャー育成検討につながる
  • DMT定例の中で案件状況共有があるものの、人数が多く言いにくい →DMT定例の見直しにつながる
  • PMの新卒採用について
  • OST改善案 →OSTの進め方改善につながる
  • 競合他社に対するうちの強みってなんだろう?
  • 新しい案件に入る前の準備

「OSTの場で、発散によるアイデア出しや認識合わせは進むが、収束して具体的なアクションにつながることが少ない」という課題の声は出ているもののふりかえると、DMTのスキルマトリクスや、デリバリーマネージャー育成のアクションにつながる場はできていました。またDMT定例やOST自体の改善にもこの場が使われていました。

OSTテーマをDMTの価値観にマッピング

OSTテーマをDMTの価値観にマッピング

日常と非日常の働きかけという観点でふりかえる

組織開発の働きかけを進める際には、定例のような日常の場に働きかけるのか?合宿やワークショップのような非日常の場をつくり働きかけるのか?ということが考えられます。

日常の場の場合、定例など限られた時間の中という限定的な働きかけとなります。また日常の習慣化している場では、プロジェクトマネージャーなどロールとしての考え方や、チーム内の関係性が強く働き、思考に制限がかかることが多いです。

非日常の場の場合は、ワークショップや合宿のような非日常の場をつくり働きかけます。日常の場と離れることにより、習慣化しているもの、ロール、関係性などを手放し、学びほぐしやすくなります。

今回の取り組みのおもしろいところは、DMT定例という日常の場に、OSTという非日常を融け込ませているところです。日常に非日常を融け込ませることで何が起きるのか?日常を捉え直す機会が増えると何が起きるのか?

日常の中ということで、OSTを進める上で多少思考の制限がかかりやすくなる、というデメリットはあると思いますが、メリットもあるのではないかと思います。

ダブルループ学習の観点でふりかえる

青学WSD修了生には懐かしのダブルループ学習。

シングル・ループ学習とダブル・ループ学習

シングル・ループ学習とダブル・ループ学習のイメージ

シングルループ学習(低次学習)では、既存の考え方のフレーム(事実前提)で、行動のふりかえりから学ぶ。例:OST実施を通して、OSTの進め方をふりかえる。

DMT定例の中では、定例のふりかえりとして毎回OSTについてふりかえる機会をつくっていました。

ダブルループ学習(高次学習)では、既存の考え方を手放し、どうあるべきか?(価値前提)を見直すことを通して学ぶ。例:OSTをなぜやるか?という前提を見直す。

OSTテーマ「定例OSTをどこにつなげていくか?」のセッションを通じて、チームメンバー全員でOSTをなぜやるのか?とあらためて向き合う機会つくっていました。そしてOSTのWhy&Howの整理へ。

またOSTテーマ「OST改善」のセッションをした時に、グラウンドルールが必要ではないか?というところから、みんなでDPA(Design the Partnership Alliance)をつくりました。DPAでは、望ましい場の雰囲気に関する問いに答えることを通じて、チームで場の行動指針をつくっていきます。

DPA(Design the Partnership Alliance)

MiroでつくったDPA(Design the Partnership Alliance)

参考:ふりかえりにDPAを取り入れてみませんか?

ふりかえりを通して見えてきたこと

OSTを継続実施する中で起きていたことを、対話型組織開発/日常と非日常/ダブルループ学習などの観点でふりかえってきました。

 

対話型組織開発/日常と非日常/ダブルループ学習というふりかえりの切り口は、

CULTIBASEの 組織開発の“ハレ”と“ケ”のアプローチ を視聴している時にこれらの切り口が紹介されていて、

身近な組織開発と重ねて考えている時に、DMT定例やOSTハンガーフライトと自然と重なっていきました。

 

DMT定例/OSTハンガーフライトで、対話型組織開発が機能しているのか?

機能しているかどうか?を評価判断するには、行動をふりかえる必要があることを実感しました。

OSTセッションによりつくられたもの。共通認識、DMTの成長につながるアクション。

 

日常と非日常の場が機能しているか?

DMT合宿という非日常のあとは、DMT定例という日常の場が中心となっていました。

視野を広げてブレイクスルーを進めるためにも、たまにはDMT合宿のような非日常の場が必要か。

 

DMT定例/OSTハンガーフライトで、ダブル・ループ学習が機能しているか?

行動をふりかえるシングル・ループ学習は、DMT定例のふりかえりということで意識できていましたが、価値前提をふりかえるダブル・ループ学習が、「OSTをなぜやるか?」や「DPAづくり」を通して機能していることは、ふりかえりを通しての発見でした。

 

ふりかえりをしないと見えないものが沢山ある。

ふりかえりをしないと価値は感じられない。

 

アイキャッチ画像の写真は、Delivery部 部長のくまぜんさんに黒部ダムに連れて行ってもらった時、ロープウェイから撮った景色。