ダイナミックスキル理論 – スキルは動的に成長する
こんにちわ。従業員体験( EX )の向上がミッションのエンジニアリング統括室に所属しているてぃーびーです。
私達はスキルを成長させつつ仕事をしています。
では、スキルはどのように成長しているのか?
ここで一つ興味深い理論があります。ダイナミックスキル理論です。
ダイナミックスキル理論とは?
ダイナミックスキル理論は、カート・フィッシャーが提唱した成長に関する理論です。
ダイナミックスキル理論では、「人の能力は多様な要因の影響を受けて動的に成長するものである」と考えます。
私達の能力は直線的に成長するのではなく、紆余曲折をしながら成長します。
発達の網の目
ダイナミックスキル理論では、能力は階段のように1ステップずつ成長するのではなく、網の目のように複雑に絡み合いつつ成長するものと考えます。能力はそれぞれが影響を与えつつ、成長し、相互作用として実際に価値を生み出すことのできる能力になります。
例 - 正しく伝えるコミュニケーション
「正しく伝えるコミュニケーション」の習熟について考えてみます。
ここでの「正しく伝えるコミュニケーション」は自分が伝えたいことが相手に意図通りに伝わるためのコミュニケーションのことです。
「正しく伝えるコミュニケーション」には以下のような要素が影響します。
以下の各要素が絡みあい、全体として「正しく伝えるコミュニケーションスキル」になります。
例えば、
- 平常心の相手と、怒っている相手に対する適切な伝え方は異なります
- 自分に知識があるが、相手に知識がない領域の場合、比喩力が重要になります
- 自分に知識がなく、相手に知識がある領域の場合、わからないなりに他の単語や比喩で伝える必要があります
などのように絡み合っています。
能力の環境依存性
私達の能力は環境に依存します。これが能力の環境依存性です。
例 - 業務改善スキル
例えば、会社Aで新しい取り組みをどんどん取り入れて業務改善で活躍した田中さんがいたとします。
田中さんは転職し、会社Bに入りました。前職での実績を元に新しい取り組みへの期待をされていました。
しかし、田中さんは会社Bで新しい取り組みによる業務改善で成果を出すことはできませんでした。
会社Aは、新しい取り組みが歓迎される職場で、単に新しい手法を調べ、実施すればよかったのですが、会社Bは新しい取り組みに対して非歓迎的な既存社員がいるため、関係者が新しい取り組みを歓迎してくれるような前提が必要だったのです。
能力の課題依存性
私達の能力は課題に依存します。これが能力の課題依存性です。
例 - 英語力
例えば、一言で英語力を高めたいといっても、英語を用いて解決したい課題次第です。
- 英語圏に旅行したい
- 英語でカンファレンス登壇をしたい
- 英語でビジネスの取引をしたい
- 英語の記事を読みたい
などです。それぞれ必要となる英語力の要素が異なります。
能力の変動性
能力は、環境や課題や自身のコンディションなどによって変動します。
例 - 疲労
十分睡眠をとって業務を行った場合と、徹夜明けの場合とでは発揮可能な能力が異なります。
サブ能力
能力はより詳細なサブ能力に分かれます。
ある能力に対するサブ能力を特定することで、個別のサブ能力の習得を通して全体の能力を習得しやすくなります。
例 - 正しく伝えるコミュニケーション
発達の網の目で例示した「正しく伝えるコミュニケーション」の言語の部分ははまさにサブ能力の例です。
- 言語
- 単語選び
- 文法
- 語彙
- 比喩
最適レベル・機能レベル・発達範囲
私達は、一人で物事に取り組むよりも、より習熟した相手と取り組むほうが大きな能力を発揮できます。
この際に
- A. 最適レベル : 他者のサポートを受けて発揮できるレベル
- B. 機能レベル : 単独で発揮できるレベル
- 発達範囲 : A - B
例 - ペアプログラミング
一人で開発していたときには気づけない観点についてナビゲーターからの問いかけを得つつ、開発している状態
まとめ
ダイナミックスキル理論についてまとめました。
全体として鍵になるのは、「個別のスキルをどれだけ細分化して捉えることができるのか?」という点です。
スキルの環境依存も課題依存もスキルを詳細化せずにざっくり捉えているからこそ発生するものです。
その意味で、「該当ドメインに詳しい人が集まって、対象領域に必要となるスキルの解像度を上げる」のがよいのでは、と感じました。