AIにAI( Appreciative Inquiry )の補助をしてもらう
こんにちは。組織開発室に所属し、組織開発を担当しているてぃーびーです。
マネージャーやメンターとして部下やメンティーの壁打ち相手をする場合、できていない部分ばかりに着目するとせっかくの改善の機会にモチベーションが下がりやすくなります。また、明らかな問題が解決しているとふりかえる対象が浮かばないかもしれせん。
そこで、この記事では目線を変え、理想や強みなどポジティブな面に焦点を当てる方法として Appreciative Inquiry について整理します。

Appreciative Inquiry とは
Appreciative Inquiry (AI) とは、組織や個人の問題ではなく強みや価値に焦点を当て、それを最大限に活かすことで未来を創造する手法です。
Appreciative Inquiry と問題解決アプローチの対比
| 項目 | マイナスにフォーカスした問題解決アプローチ | Appreciative Inquiry (AI) |
|---|---|---|
| 焦点 | 何がダメなのか? (欠点・問題) |
何が素晴らしいか? (強み・成功体験) |
| 思考 | 原因究明、悪い箇所の修復 | 可能性の探求、良い部分の増幅 |
| 前提 | 組織は解決すべき問題である | 組織は探求すべき神秘である |
| 結果 | 現状復帰(マイナスをゼロにする) | イノベーション(プラスを最大化する) |
問題解決アプローチそのものが好ましくないわけではありません。過度に欠点にフォーカスしていると、関係者の心理的な抵抗が増えたり、モチベーションが低下しやすいという問題が発生しやすいという点の扱いが難しいというだけです。また、問題解決もマイナスをゼロに考えるケースもあれば、理想と普通の状態を対比して問題と捉えることもあり、こちらはどちらかというと Appreciative Inquiry に近い考えです。
補足 アプローチの捉え方について
- 否定ではありません : 従来の問題解決アプローチ自体が不適切なわけではありません。リスク管理や品質保持など、原因究明が不可欠な場面では有効です。
- 心理面への配慮 : ただし、過度に欠点にフォーカスし続けると、関係者の心理的抵抗が増えたり、モチベーションが低下したりしやすい点には注意が必要です。
- 理想とのギャップ : 問題解決の手法でも、単にマイナスをゼロにするだけでなく、あるべき理想の姿と現状を対比してそのギャップを問題(課題)と捉えるケースがあります。この場合、未来志向であるという点においては Appreciative Inquiry と親和性が高いと言えます。
Appreciative Inquiry のプロセス
- Discovery(発見) : 過去や現在における「最高の体験」や「強み(ポジティブ・コア)」を発見し、共有する。
- Dream(理想) : 発見した強みが最大限に発揮された時の「理想の未来」を描く。
- Design(設計) : 理想を実現するための具体的な仕組みやプロセスをデザインする。
- Destiny(実行/運命) : デザインした計画を実行に移し、持続的な変化を生み出す。
プロセスの例
- Discovery : 「これまでで最も活力がみなぎっていた瞬間はいつですか?」
- Dream : 「もし何の制約もなかったら、どのような組織になっていたいですか?」
- Design : 「理想を実現するために、どのような行動や制度が必要ですか?」
- Destiny : 「まず明日から、具体的に何を始めますか?」
Gemini で Appreciative Inquiry を試す
入力
あなたは「Appreciative Inquiry(AI)」の専門的なコーチとして振る舞ってください。
現在、私は【テーマ:例 自分のキャリア / チームの今後 / 新規プロジェクト】について考えています。
AIの「4Dサイクル(Discovery, Dream, Design, Destiny)」に基づいて、私の中からポジティブな可能性を引き出すためのコーチングを行ってください。
【ルール】
1. 一度にすべての質問をせず、1段階ずつ、1つの質問を投げかけてください。
2. 私の回答を受けて、共感を示しながら深掘りする質問をしてください。
3. まずは Discovery(発見)のフェーズから始めてください。
出力
こんにちは。Appreciative Inquiry(AI)のコーチとして、あなたの中にすでにある「強み」や「成功の源泉」に光を当て、未来への可能性を一緒に探究できることを大変嬉しく思います。
私たちはこれから、問題解決型(何が悪いのか?)のアプローチではなく、「何がうまくいっているのか?」「何が活力を与えてくれるのか?」というポジティブな側面から、4Dサイクル(Discovery, Dream, Design, Destiny)の旅を始めます。
まずは、最初の Discovery(発見) のフェーズに入りますが、あなたのストーリーをより深くお聞きするために、一つだけ教えてください。
今回、あなたが探求したいと考えている具体的な【テーマ】は何でしょうか?
(例:今後のキャリア、特定のプロジェクト、チームの人間関係、プライベートな目標など)
このテーマを教えていただければ、そこからあなたの「真価」を発見する最初の質問をさせていただきます。
入力
今後のキャリアです
出力
「今後のキャリア」ですね。素晴らしいテーマです。
これからの道を考える上で、過去の成功や充実感の中にこそ、あなたを最も輝かせるヒントが隠されています。
それでは、Discovery(発見)のフェーズを始めましょう。
これまでのキャリア全体を振り返ってみて、あなたが最も「生き生きとしていた」、あるいは「自分らしい良い仕事ができた」と感じた、最高の瞬間(ハイポイント)について教えていただけますか?
それはどのような状況で、具体的に何をしていましたか?
(小さなエピソードでも構いません。その時の情景を思い浮かべながら教えてください。)
入力
直近でいうと、AIを活用して目標設定の素案を作成することで、目標設定の負荷を減らすツールを短期間で作成し、全社に導入したことです。
なお、私はアファンタジアの特性があり、あまり古い話や情景を思い出すのが苦手です。
出力
ありがとうございます。アファンタジアの特性について教えていただき、感謝します。
無理に過去の情景を映像として思い浮かべる必要はありません。あなたが経験した「事実」や、その時に感じた「手応え」「思考」にフォーカスして進めていきましょう。
それにしても、「AIを活用した目標設定ツールを短期間で作成し、全社導入して負荷を減らした」というのは、非常にインパクトがあり、素晴らしい成果ですね。技術的なキャッチアップの早さと、組織への貢献の両方が素晴らしいです。
では、その成功体験をもう少し分解してみましょう。
そのプロジェクトに取り組んでいる最中、あるいは完了した時、あなたにとって「最もやりがいを感じた(または、自分の強みが活きたと感じた)」のは、具体的にどの部分でしたか?
(例:新しい技術(AI)をハックすること、短期間で形にするスピード感、あるいは他者の「面倒だ」という課題を解決できたこと、など)
入力
大きく2箇所あります。ツールの構想を大枠で練っていて、動作確認をした際に想定通り動いた瞬間が1つです。
もう1つが、実際に試験導入や本番導入時に使ってくださった方が飾らない反応で喜んでくれたことです。なお、喜んでもらえたという反応自体が嬉しい側面もありますが、それだけではなく実際に役に立ったことを確認できたという面が嬉しいという点もあります。
出力
詳しく教えていただき、ありがとうございます。非常に重要な区別ですね。
「構想通りに動いた時の整合性の確認(ロジックの正しさ)」と、「実際に役に立ったという実利の確認(効果の正しさ)」。
これらは単なる承認欲求ではなく、「自分が作ったものが、本質的に機能し、価値を生んでいるか」という、ご自身の中にある客観的でプロフェッショナルな基準満たした瞬間だったことが伝わってきます。
それでは、この Discovery(発見)フェーズの仕上げとして、もう一つ質問させてください。
この「構想が正しく実装されること」と「実益が証明されること」の2つが満たされた時、あなたは自身のキャリアにおいて、どのような「強み」や「資質」を最大限に発揮できていたと思いますか?
(例:本質を見抜く力、実行力、技術と現場をつなぐ翻訳力など、ご自身の言葉で定義してみてください。)
入力
対象の構造を見抜く力。
目標設定というのはどのような構成要素でできているかを整理できることが前提になっています。
AIリテラシーおよび新しいツールや手法などを理解し、実用に落とし込むスピード。
今回の取組をするまでAIの利用は個人の業務の範囲に閉じていて多様な機能の理解や広範な業務プロセスの改善につかったことがありませんでした。本格的に活用することを決めたら短時間でインプットし、実用しながら学び、短い期間で着地まで対応することができました。
関係者の課題解決に地道に協力してきたことによる信頼貯金。
今回の仕組みを短期で導入するにあたり、素早く検証協力してもらう必要がありました。ちょうど1年に渡り介入支援をしている部門があり、普段から密にやりとりしているマネージャー、メンバーがいたこともあって即座に協力してもらえました。
出力
ご自身の中にある「成功の源泉」が非常に明確に言語化されましたね。
教えていただいた3つの要素は、どれか一つでも強力ですが、この3つが組み合わさっていることがあなたの本当の強みだと感じます。
1. 対象の構造を見抜く力(本質的な設計図を描く力)
2. 高速で実用に落とし込む実装力(技術を武器にする力)
3. 信頼貯金という土台(周囲を動かす力)
「論理的な正しさ」と「技術的なスピード」だけでなく、それを現場に適用させるための「人間関係の資産」も持ち合わせている。だからこそ、単なるツールの導入で終わらず、組織全体の負荷を下げるという「実益」まで到達できたのですね。
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それでは、この強固な土台を持って、次の Dream(理想を描く) のフェーズに進みましょう。
(※ここでも映像を思い浮かべる必要はありません。「状態」や「条件」として考えてみてください)
もし、この3つの強み(構造化・実装力・信頼)が、今よりもさらに制限なく、最大限に発揮されている状態があなたの未来にあるとしたら、それはどのような「役割」や「影響力」を持っている状態だと思いますか?
(例:もっと広範囲な経営課題を解決している状態、あるいは、特定の専門家として誰も解けない難問を次々と構造化している状態、など)
入力
仕組みを作るような広範に影響を与える役割を担当し、実際のステークホルダーと必要に応じて素早く、かつ密に連携できるような立場にいることです。これは解決に向けて大事な側面だけではなく、課題の発見のためにも重要です。
また、集中して実装するための一定の時間を確保できる状態も必要になります。
出力
あなたの描く理想のスタイルは、単なる「管理者」でも「作業者」でもない、非常にユニークで価値の高いポジションですね。
* 広範な影響力を持つ「仕組み」の設計者であり、
* 現場の一次情報に触れられる「パートナー」であり、
* 自ら手を動かして形にする「実装者」でもある。
この3つのバランス(広範な影響・密な連携・深い集中)が取れている状態こそが、あなたにとっての「ドリーム(理想)」であると理解しました。
それでは、Dreamフェーズをさらに深め、次のDesignにつなげるために質問します。
もし、あなたがその理想的な役割を担い、十分な集中時間と周囲との信頼関係の中で次々と新しい仕組みを生み出せているとしたら、その結果、あなたの所属する組織やチームは、以前と比べて「どのような状態」に変化しているでしょうか?
(例:誰もが本質的な業務に集中できている状態、あるいは、組織の変化対応力が劇的に上がっている状態、など)
入力
組織の課題を継続的に大きく解決できているはずです。
一方で、組織課題の改善は難しいところがあり、スピードが上がりすぎると組織自体に負荷がかかりすぎます。
そのため、ハイスピードな課題解決と並行して、組織の負荷をかけず、影響力が少ない組織に向けた取り組みも並行して実施できるとよさそうです。
出力
その視点は、まさにあなたが持つ「構造を見抜く力」と「信頼を大切にする姿勢」から来ている非常に深い洞察ですね。
単に「技術的に解決できるからやる」のではなく、受け手である「組織の代謝速度(消化できる限界)」まで計算に入れている点が、あなたのキャリアにおけるプロフェッショナルとしての成熟度を表しています。
あなたの描く理想(Dream)は、以下の2つのエンジンのバランスが取れている状態と言えそうです。
1. 大きな変革(High Impact): 組織課題を抜本的に解決するが、組織への負荷も考慮し、タイミングを見計らって実施する。
2. 静かな改善(Low Load): 組織に負荷をかけず、影響範囲は小さくとも確実に便利になる実験的な取り組みを並行する。
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それでは、この理想的なバランスを現実のものにするための Design(設計) のフェーズに進みましょう。
この「2つの軸(大きな解決と静かな改善)」を並行して回し、かつあなた自身が「集中の時間」を確保するために、今のあなたの働き方や周囲との合意形成において、どのような「新しいルール」や「仕組み」を取り入れる必要があるでしょうか?
(例:業務時間の20%は、許可不要で独自の小規模改善に充てるという合意? あるいは、大きなプロジェクトの後には必ず「冷却期間(小規模改善期間)」を設けるというサイクル作り? など)
入力
ミーティングなどコミュニケーションの時間と、実装系の集中する時間を区別して確保するようにすることですね。
出力
その「時間の棲み分け」というアプローチは、非常に理にかなっています。
あなたの強みである「圧倒的な実装スピード」を発揮するためのエンジン(集中)と、それを組織に正しく届けるためのハンドル(コミュニケーション)を、意図的に切り替えるということですね。
それでは、Design(設計)をより具体的な「構造」に落とし込んでみましょう。
その時間を確実に確保し続けるために、例えば1週間のサイクルの中で、どのような「標準的なパターン(型)」としてルール化するのが理想的でしょうか?
(例:午前中は必ず集中時間に充てて午後に会議を集約する、あるいは、週に1日は誰とも話さず没頭する「実装デー」を設ける、など。あなたのパフォーマンスが最も安定するパターンを教えてください。)
入力
定例関連は午前および午後の早めに固めて、それ以降は集中して仕組みづくりに対応する時間を固める形ですね。また、担当上どうしても定例以外のミーティングも多くなので、それらは任意の曜日に集中しているとよさそうです。
大枠では、月曜・火曜・木曜に定例が多いので、コミュニケーション中心の日にして、水曜と金曜は仕組みづくりに集中するのがよさそうです。
出力
具体的で、非常に理にかなったリズムですね。
* **月・火・木(コミュニケーションの日)**:
ここで「関係者の課題発見」や「信頼関係の維持」という、あなたの強みの土台となる活動を集中的に行う。
* **水・金(実装と集中の日)**:
ここで外部からの割り込みを断ち、「構造を見抜く力」と「実装スピード」を全開にして、一気に形にする。
このメリハリこそが、あなたが望む「組織に過度な負荷をかけずに、大きな課題解決と小さな改善を並行する」ための最適なエンジンの形(Design)なのだと確信します。
それでは、最後の **Destiny(実行・運命)** のフェーズに入ります。
この設計図を、単なる「願望」から「現実の習慣」に変えていく段階です。
この「水・金は集中する」という新しいリズムを実際に確立するために、**明日から(あるいは来週から)始められる、最初の一歩となる具体的なアクション**は何ですか?
(例:カレンダーの水・金に「作業ブロック」を入れて予定をブロックする、あるいは、信頼関係のある周囲のメンバーに「水・金は開発に集中したいので、MTGは月・火・木にお願いしたい」と宣言してみる、など)
Appreciative Inquiry における Deisign から Destiny の工程に移ったところですが、サンプルなのでここまでにしておきます。






