コミュニティ運営に関する私見〜Grafana Meetup Japanの紹介と共に〜
「最近、日本のGrafana界隈、にわかにもりあがってるらしいで!?」
先日、こんなプレスリリースが発表されました。
日本でGrafana Labs公式のコミュニティが発足されてからほぼ1年。こんなに早くGrafana Labsの公式イベント、ObservabilityConの東京開催が実現するとは思いませんでした。
このブログでは、これまでのGrafana Meetup Japan開催の経緯と、運営メンバーとしてコミュニティを運営していくにあたって考えてきた点などを、コミュニティを運営している方向けにお話できればと思っています。
自分の経験依存の内容がほとんどなのですが、この話がいくらかでもコミュニティ運営の参考になれば幸いです。
ほな、いってみよ!!
この記事は、クラスメソッドグループのコミュニティ活動 Advent Calendar 2024 - Adventarの12日目の記事です。
Grafana Meetup Japanとは?
公式サイトはこちら。主にConnpassのグループをメインに活動しています。発足時期は2024年2月ぐらいだった記憶。まだ発足から1年経っていないですね。
かわいいアイコンの、公式Xアカウントもあります。
Grafana Meetup Japan(@grafanaJP)
運営指針はこちら。
Grafanaのコアミッション “To empower individuals and organizations to make informed decisions by unlocking the full potential of their data. (個人と組織が保有するデータの全ての可能性を引き出し、意思決定を行えるよう支援すること。)”をコミュニティ活動を通じて実現に近づけることです。
運営メンバーは4名
以下の4名で活動しています。ぴっちぴちの岡本さん以外は、だいぶオッサンです!
Yoshiyuki Ueda
- 上田善行
- Yoshi Ueda(@Y0shiU3da)
- スペクト株式会社 マネージング・ディレクター
Taisuke Okamoto
- 岡本 泰典
- Taisuke Okamoto a.k.a BigBaBy(@taisuke_bigbaby)
- 株式会社IDCフロンティア ソフトウェアエンジニア
Koji Hamada
- 濱田孝治(ハマコー)
- 濱田孝治(ハマコー)(@hamako9999)
- クラスメソッド株式会社 マネージャー
Hiroshi Hori
- 堀 浩史
- Hiroshi Hori @AMBL株式会社 取締役CTO(@hiroshihori)さん / X
- AMBL株式会社 取締役CTO
Grafanaとは?
皆さん、おそらくGrafanaというプロダクト自体は、聞いたことがある方多いと思うのですが、その使い方として「IT系のシステム管理者が、システムの状態を監視する」というイメージを持っている方も多いんじゃないでしょうか。
もちろんその側面もありますが、Grafanaはオブザーバビリティという観点から、システム管理者だけではなく、ITに関係ないエンドユーザーが日々の困りごとを解決するためのダッシュボードを構築するユースケースにも使えます。
そういう意味で、あらゆる人にオブザーバビリティを届ける非常に懐が深く幅が広いプロダクトといえます。このあたりの振り幅の広さも、Grafanaの魅力ですね。
Grafana Meetup Japanの発足とメンバーに入ろうと思ったきっかけ
直接的には、10年ぐらい前から知り合いだった、上田さんのFacebookの募集書き込みに応募したってのがきっかけです。
2年ぐらい前までは、自分のGrafanaに対する印象も「Kubernetesの監視プラットフォームとしての代表格」で止まっていたのですが、弊社の製造ビジネス・テクノロジー部で工場設備データの可視化ソリューションサービスClassmethod PLC Data To Cloudを展開しており、その可視化プラットフォームがGrafanaということ、さらにそこに自分が関わり始める中で、Grafanaのポテンシャルに徐々に惹かれ始めていたってのが参加を決めた大きな要因です。
これまでの開催結果
今まで3回、全てハイブリッド形式(オフライン開催と同時に、Youtube配信)で実施しています。本当に多くの企業様に登壇してもらい、多くの方に参加してもらっています。どの回も非常に面白いですし、アーカイブ動画も登壇資料も一通り揃っているので、気になる方は、いまからでも是非過去の開催内容を見返してもらえればと思います。
ハマコーが考えるコミュニティ運営上の工夫や苦労ポイント
ここまで、ざーっとGrafana Meetup Japanの話ばかりしてきたのですが、ここからは、主にコミュニティ運営する方に向けて、コミュニティ運営の中で感じた工夫ポイントや苦労ポイントを、主観バリバリで書きます。
ポイント1. リーチ先の最大化にハイブリッド(オンライン、オフライン同時)開催は、やはり正義
Grafana Meetup Japanは、第1回目から、最強のライブ配信チームEMTECに、オンライン同時配信をお願いしています。本当にありがたいです。めちゃくちゃ助かってます。
これからのIT勉強会は、大都市圏のみならずさまざまな地域のエンジニアが、地理的・時間的制約に縛られず参加出来るものであるべきです。EMTECが届けたいライブ配信は、単なる視聴ではなく、学び、成長し、つながるための体験です。
TOPページにある上の文章が全てです。なぜコミュニティをやっているのかにもつながるのですが、地理的制約がある方に向けても単なる情報の拡散だけではなく、学習してつながる機会を提供する、という想いはそれこそコミュニティ運営の根幹につながる部分です。
自分一時期考えたことがあります。「配信を入れることで逆に現地参加者少なくなってしまわないかなぁ」と。 ただ、そこで運営側がやるべきなのは、配信をやめることではなく、現地参加しようかどうか迷っている人がより現地で参加したくなるようなコンテンツを用意したり交流する機会を設けたりすることなんですね。
どうしても現地参加できない人に対しては、高品質な配信でより臨場感をもって現地の様子をお届けして興味をもってもらう。そこからさきに口コミが広がりさらなるコミュニティの発展につなげていく、という当たり前のことに気づきました。
やったことある人はわかると思うんですが、ハイブリッド開催の運営側の負担はめちゃくちゃ大きいです。現地開催のみ、オンライン配信のみ、のときに比べて負荷は2倍以上と言えるでしょう。もちろん無理をしては運営は続かなくなりますし、ちゃんとやらないと、現地参加の人の体験が悪くなります。EMTECという最強のチームもいるので、そういったチームの活用も視野に入れながらハイブリッド開催を検討してみるのも良いのではと思います。
ポイント2. 継続的に登壇者を募集し発表してもらい、それが次につながっていく流れを意識的に作る
同僚のmorimorikochanに聞いて、「やっぱ必要やんなぁ〜それ!」と思った話です。
これもいろんなコミュニティ運営をしている人たちと話している中ででてくる話題ですが、コミュニティの魅力に直結するのが、そのコンテンツ。経験上、運営側だけがコンテンツを用意してお届けする → それを参加者が聞く、という流れだけではコミュニティに広がりが出ないです。
おそらくコミュニティの初期段階においては、運営側自身でコンテンツを用意したりそのつながりや知人などにお願いしながらコンテンツの作成を進めていく場合が多いと思うのですが、運営側だけが頑張りすぎると「私喋る人」「私聞く人」という形になりがちです。
継続的に盛り上がっているコミュニティの特徴は、「発表者がバリエーションに富んでいること」かなと感じます。 だいたい軸になる人が中心にいながらも、濃ゆいネタを投下する人がいたり、ちょっと外れているけれど変化球的に刺さる人には刺さるようなマニアックなネタを持ってくる人がいたり、バリエーションに富んでいるほうが、参加者の満足度も高い傾向にある感じがします。
このあたり、よくConnpassのLT枠を抽選や先着順で公募するという手法がありそれも有用だとは思うんですが、もっとコミュニティの運営側から積極的に勧誘したり、オープニングやクロージングで登壇者募集を積極的にやるのは、コミュニティ自体の活性化には不可欠かなと思います。
特に、現地で懇親会などがあるときが狙い目ですね。懇親会まで残ってくれている人はだいたい熱量が高い人が多いので、「今日はどうでしたか?なんか、このあたりで喋りたいことあったら、是非今度登壇してくださいよ!」的な会話を継続してやりつつ巻き込まれる人を地道に増やしていくってのが、本当に大事なんだろうなと日々思ってます。
まだ登壇したことがないという人でも、すごいノウハウを持っている人って一杯いると思うんですよね。そういう人たちのノウハウをコミュニティに還元させつつ盛り上げていくっていうのも、立派なコミュニティ運営側の仕事だと思います。
ポイント3. コミュニティの熱量は運営から自然に湧き出てくるオーラに比例する
完全私見です。
コミュニティ運営、無理をすると続かないです。開催自体はできますが、運営メンバーに頑張っている感とかやらされている感がでるとコミュニティ全体の熱量が下がります。
「2ヶ月に1回と決めたもんなぁ。お、また次の開催準備しないと…」
「最近、参加者減ってるんだけれど!どうしよう!もっと開催頻度ふやしてテコ入れしないと!焦る!!」
「そもそも、あの人、運営参加してるけれどなにもやってくれない…」
もしあなたが、こんな気持ちになっているとしたら、それは黄色信号です。
コミュニティ運営、苦労が絶えません。一番運営側の心労ポイントとして上がりがちなのが集客じゃないでしょうか。「ここ最近、参加者が漸減だなぁ。どうしよう、なんか変えたほうが良いのかなぁ」という悩み、コミュニティ運営してて感じたことがない人はいないでしょう。また、どこかで誰かが(もしかしたら自分が?)決めた開催頻度に縛られているかもしれません。
そうなってきた時に最終的にコミュニティ運営メンバーとして何が心の支えになるのか?結局は「コミュニティで扱っているテーマに対する愛」じゃないでしょうか。 普段のXのツイートや興味・関心の先としてこれがそもそも少なくなっているとしたら、まぁどうしようも無いですよね。
なんでこのコミュニティ始めたか思い出しましょう。「うおおお、すげぇ!こんな技術があったんや。これはアウトプットしてみんなと喋ってみたいぜ!」「これは、もっといろんな使い方やノウハウをシェアして、この界隈盛り上げていきたい」という想いで大抵のコミュニティは始まると思うんですが、ある程度長くなってくると運営側メンバーの熱量の低下やマンネリにより、そのままコミュニティが自然に収束していく…というのは非常にありがちかなと思います。
ここで自分が言いたいのは、運営だからとて「無理をしない」という事ですね。誰に強制されて始めたわけではないはずのコミュニティ運営、もし自分がそもそもその技術に対して熱量が下がっていることを自覚したら、コミュニティを閉じるか別の人に運営を譲るかを考え始めるべきときなのかもしれません。
そうは言っても、熱量って「手を動かした頻度に比例する」部分があるのもまた事実。そういう意味で自分が凄く昔から理想なコミュニティだと思っているのが、JAWS-UG横浜支部。
開催頻度が異常に多いのが特徴です。運営の新居田さんは、以前「運営側の負荷を可能な限り減らすことを主眼においている」と言ってました。その上で良い意味でゆるく頻度高くやることを心がけていると。JAWS-UG 横浜支部は、AWSの特定の技術を扱っているわけではない地方支部なのに何故か独特の色があるのは、このあたりの一貫した運営ポリシーがあるからなのかなと思ってます。
コミュニティは十人十色。強制されないもののはずなので、自由な発想で好きに運営しようぜ!
ここまで書いて改めて思いました。自分が言いたかったこと、これなんだなぁと。
「コミュニティは十人十色。強制されないもののはずなので、自由な発想で好きに運営しようぜ!」
技術記事ではあんまり考えないような、普段の自分の頭の中をダンプする感覚は凄く気持ちよかったです。この私見が皆さんのコミュニティ運営に少しでも参考になれば幸いです。
最後に改めて。この場を提供してくれた、クラスメソッドのしんやさんに、この場を借りてお礼をさせてください。ありがとうございました!
それでは、今日はこのへんで。濱田孝治(ハマコー)(@hamako9999)でした。