HCD認定資格受験備忘録 〜実務経験の棚卸しと書類作成のリアル〜

HCD認定資格受験備忘録 〜実務経験の棚卸しと書類作成のリアル〜

HCDスペシャリストを受験した備忘録です。この資格は知識を問うテストではなく、実務でのHCD実践を証明する書類審査型。書類作成のルールやコンピテンシー記述のコツなど、これから受験を検討されている方の参考になれば幸いです。
2026.04.24

デザイナーの仕事は、定量的な成果を示しにくいものです。そしてこれは多くのデザイナーを悩ませています。

たとえば、そのウェブサイトでの売上が上がっても、それがデザインの成果なのか、商材の良質さなのか、マーケティングのタイミングなのか、システムの安定性なのか、切り分けは難しいものです。

「あなたは何ができるんですか」と聞かれたとき、ポートフォリオを見てもらえる場ならまだ良い。でもそうじゃない場面の方が多い。そう問われたときに「自分が何をできるか」を説明しやすくしたかった。それがこの資格を受けようと思った理由です。

数年前からこの受験を意識しながら案件を進め、書けそうなプロジェクトが揃ったタイミングで申し込みました。合格通知が届いたので、備忘録として書いておきます。

1. HCD認定資格(専門家/スペシャリスト)とは

HCD認定資格には、以下の2つのレベルが存在します。

参考:https://www.hcdnet.org/certified

人間中心設計専門家

HCDプロジェクト実務経験5年以上 + マネジメントや組織導入経験(より上位の資格)

人間中心設計スペシャリスト

HCDプロジェクト実務経験2年以上

今回受験したのは後者の「スペシャリスト」です。試験勉強をして臨むものではありません。過去の「HCDを前提とした実務UX活動」をどの程度行えたか、その実績を証明するものです。

2. 審査の仕組みと「絶対に守るべき」ルール

エントリー後、指定のスプレッドシートが送られてきます。提出物は実質「プロジェクト記述書」と「コンピタンス記述書」の2つのみです。

書類作成にかかった期間は約1ヶ月。自分が実際に何をやったかを書き出し、当時作ったものを掘り返す作業から始めました。一番しんどかったのは、コンピテンシーの定義と自分の記述がセルごとにきちんと対応しているかの確認作業です。「自分ではやったつもり」でも、定義に照らすと記述がずれていることが何度もありました。

書類作成にあたっては、以下のルールに注意が必要です。

① 文字数制限は「絶対」厳守

各セルには500文字などの文字数制限があります。1文字でもオーバーすると、内容に関わらず即不合格になるという厳しいルールがあります。提出前の文字数カウントは必須です。

② 証明できる実績しか書けない

記述したプロジェクトについて、一緒に働いた同僚や上司の名前・連絡先を記載し、事実証明できる状態にする必要があります。すでに退職して連絡が取れない方の案件は書けないため、どのプロジェクトを選択するかの見極めが重要です。

③ 提出前に必ずローカルにダウンロードしておく

スプレッドシートは提出すると自分からはアクセスできなくなり、返却もされません。万が一不合格だった場合に備えて、必ず手元にコピーを残しておくことをおすすめします。

細かい試験内容や注意事項に関して事前に「受験者説明会」というものが催されました。上記の注意点はその会においても説明があった点です。質疑応答も丁寧に対応いただけますため、まずは事前説明会へのご参加をおすすめします。

参考:https://www.hcdnet.org/certified/info-session

3. コンピタンス記述書を書くときのコツ

スペシャリストの場合は「基本コンピタンス(A群)」の13項目中、6項目以上の要件を満たす実績を書く必要があります。全項目を埋める必要はありませんが、書けるものは可能な限り埋めて提出しました。

コンピタンスに求められる構文で書く

公式サイトには

それぞれのプロジェクトで申請者ご自身がどのようなコンピタンスを発揮したかを簡潔に記入してください。

とあります。

たとえば、とあるコンピタンスマップの定義には「〜が期待される」という文言が並んでいます。これに対し、「〜を実施し、期待に応えた」という構造で記述すると、要件を満たしていることがロジカルに伝わりやすくなります。

参考:2025年度 審査書類コンピタンス記述例(悪い記述例、良い記述例)

HCDサイクルが回っていることを示す

単発の「画面を作りました」という実績ではなく、「調査し、分析し、設計し、検証した」というサイクルがプロジェクトの中でどう回っていたかを、客観的な事実と結果ベースで記述しました。完全に回し切れていなくても、再現性を前提とし、その意図があったことを示すように記載しました。

AIによる文章の「整形」は活用する

公式の説明会でも言及されていましたが、自分がやった事実を読みやすい日本語に整形する目的でのAI活用は許可されています。棚卸しした内容を規定文字数内にまとめる作業において、AIは強力なサポートツールになりました。

事前に体系的な知識を持っておく

コンピテンシーの記述には専門性が求められる箇所があります。自分がやったことを「なぜそうしたのか」の根拠として説明できる状態にするために、HCDやUXの基礎知識を体系的に持っておくと書きやすいです。普段の業務で無意識にやっていることでも、フレームワークの言葉で説明できると、審査書類の記述として成立しやすくなります。HCD基礎検定などを先に受けておくのはおすすめです。

HCD基礎を受験した時の備忘録はこちら https://dev.classmethod.jp/articles/hcdbasicex/
UX基礎を受験した時の備忘録はこちら https://dev.classmethod.jp/articles/chatgptuxbasicex/

4. 合格後の手続きについて

合格通知が届いても、それで終わりではありません。システム(SMOOSY)への登録や、登録費用の支払いといった手続きが段階的に発生します。また、この資格には3年間の有効期限があり、更新するためには学会参加や登壇、執筆などでポイントを取得し続ける必要があります。資格を取って終わりではなく、継続的な自己研鑽が求められる仕組みになっています。

5. おわりに

日々の業務に追われていると、自分が過去にどのような意図でデザインプロセスを回してきたのかを忘れてしまいがちです。HCD認定のフォーマットに沿って過去のプロジェクトを強制的に言語化し、客観的に棚卸しできたことは、デザイナーとしての自分を見つめ直す良い機会になりました。

以上、受験を検討されている方の参考になれば幸いです。

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