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情報の非対称性と疑心暗鬼
こんにちは。人事グループ・組織開発室に所属し、組織開発を担当しているてぃーびーです。
仕事において、各社員が持っている情報にはギャップがあります。例えば、マネージャーは経営・部門のマネジメント関係者とのやりとりを通じて方針・戦略・組織課題などについて、多くの情報を持っていますが、メンバーはマネージャーから伝えられるまでは十分な情報が得られません。逆に、マネージャーはメンバーの業務の詳細や課題についてメンバーから伝えられるまでは十分な情報が得られません。
この記事では、このような情報の非対称性と、そこで発生する疑心暗鬼について解説します。
情報の非対称性とは
情報の非対称性( Information Asymmetry )とは、経済学や組織論で使われる概念で、ある取引や関係において、一方が他方よりも多くの情報を持っている状態を指します。情報を持たない側は、どの程度情報が開示されているのか分からず、不安や疑念を抱くことがあります。
情報の非対称性と上司と部下
情報の非対称性の典型例として上司と部下について整理します。
上司が多く持つ情報
上司の方が部下より多く持つ情報には以下のようなものがあります。
項目 | 例 |
---|---|
組織の戦略や経営方針 | ・会社の成長戦略や事業の方向性 ・事業の縮小・拡大、新規プロジェクトの立ち上げ ・競争環境の変化や他部署との協力関係 |
人事評価関連の情報 | ・メンバー全員のグレード ・メンバー全員の給与 ・メンバー間の評価の差 |
他部署や経営層との調整内容 | ・上層部からのプレッシャーや期待値 ・他部署との関係や調整の状況 ・組織の方針変更による業務の影響 |
チーム内外の人事動向 | ・まだ全社に開示されていない人事情報 ・まだ全社に開示されていない新体制の情報 |
※実際には環境によって上記のような情報も非対称性が小さい場合もあります。あくまで例です
現場が多く持つ情報
部下の方が上司より多く持つ情報には以下のようなものがあります。
項目 | 例 |
---|---|
現場レベルの業務課題 | ・日々の業務で発生する細かいトラブルやボトルネック ・業務フローの無駄 ・上層部の決定と現場の実態との乖離 |
チームメンバー同士の関係性や空気感 | ・「AさんとBさんの意見が対立しやすい」などの対人関係の摩擦 ・特定のメンバーのモチベーションの低下や不満 ・マネージャーがいない場での本音の会話 |
メンバー個人の事情や感情 | ・「Cさんは今の仕事にやりがいを感じていないが、マネージャーには伝えていない」 ・「Dさんは転職を考えているが、まだ相談していない」 ・仕事への満足度や不満 |
業務上の細かいノウハウ | ・このツールには公式には説明されていないが、便利なショートカットがある ・業務フロー上、Aという手順を省略すると作業時間が短縮できる |
マネージャー自身に関するフィードバック | ・マネージャーの指示が曖昧で、チーム内で混乱が生じているが、直接言いづらい ・会議の進め方が改善できれば、もっとスムーズに進むと思うが、言えない |
※実際には環境によって上記のような情報も非対称性が小さい場合もあります。あくまで例です
情報の非対称性と疑心暗鬼
情報の非対称があると、「 自分が把握している情報が十分なのか、また隠れた重要な情報があるのではないか 」と疑心暗鬼になる場合があります。
疑心暗鬼の影響
- 意思決定の不確実性 : 重要な情報が不足している可能性があり、判断に自信を持てない
- コミュニケーションへの不信感 : 相手が本当に必要な情報を伝えているのか、意図的に隠しているのかが分からない
- 過剰な疑念や警戒心 : 情報を把握できていないことへの不安が、誤解や対人関係の悪化につながる
疑心暗鬼への対策 / 情報を伝える側
- 透明性を高める : 意図的に情報を隠さず、可能な限りオープンに共有する
- 情報共有の仕組みを作る : 一貫性のある情報共有方法を確立し、属人的な情報管理を減らす
- 受け取る側が発信しやすい環境を作る : 質問しやすく、意見を言いやすい雰囲気を作り、双方向のコミュニケーションを促進
疑心暗鬼への対策 / 情報を受け取る側
- 能動的質問 : 不明点があれば積極的に確認する
- 情報源を増やす : 一つの情報源に依存せず、複数の視点から情報を得る
- 受け入れる : 完全な情報を得るのは難しいため、ある程度の不確実性を受け入れ、柔軟に対応する