不定型な適応課題への対応

不定型な適応課題への対応

この記事では、不定型な適応課題に対する対応を解説します。
Clock Icon2025.02.11

こんにちは。人事グループ・組織開発室に所属し、組織開発を担当しているてぃーびーです。

仕事をしていると、専門領域に関する課題だけでなく、それ以外の人に関わる課題も発生することがあります。
また、このような課題の多くは、それぞれ異なる原因に基づく個別の問題になりがちです。

部門のマネージャーやプロジェクトマネージャーがこのような問題の対処が得意な場合は、解決を主導してくれるかもしれませんが、仮に部門のマネージャーやプロジェクトマネージャーがこの種の問題の解決が苦手な場合、誰かが動かなければ問題は残り続けます。

この記事では、不定型な適応課題に対する対応を解説します。

不定型な適応課題とは

適応課題 ( Adaptive Challenges )とは、組織全体や個人の行動・態度・文化などの変化を必要とするような複雑で難易度の高い課題です。適応課題の中には、ある程度繰り返し発生する定型的な適応課題と、状況により滅多に発生しない単発の不定型な適応課題があります。

項目 定型的な適応課題 不定型な適応課題
特徴 ある程度予測でき、対応の型がある 予測が難しく、毎回異なる対応が求められる
対応方法 過去の事例やプロセスを参考にしやすい その都度、状況を分析し柔軟な判断が必要
課題の性質 同じ種類の課題が繰り返し発生する 前例が少なく、影響範囲が不確定
解決に必要なスキル 一定の経験やプロセスを学べば対処可能 高い判断力や対話力、柔軟な適応力が必要

定型の適応課題の例

ケース 内容 対応方法
新入社員のオンボーディング 新入社員が組織の文化や業務に適応するためのプロセス ・業務マニュアルや研修プログラムを用意する
・メンターが定期的にサポートする
業務プロセスの変更対応 新しい業務フローやシステムの導入 ・事前のトレーニングやマニュアルの整備
・段階的な導入とフィードバックの収集

不定型の適応課題の例

ケース 内容 対応方法
突然の組織再編 組織の合併、部署の統廃合、リーダーの交代など、突発的な組織変更 ・変化の背景や意図を明確に伝え、混乱を最小限にする。
・メンバーの不安をケアしながら、新しい体制への適応を促す
部署間の対立や調整 部門間で優先事項が異なり、意見が対立する状況 ・各部署の立場や意見を整理し、合意形成を図る
・必要に応じて第三者を介入させる

不定型な適応課題を放置するリスク

不定型な適応課題を放置するリスクとして、典型的なものを3例紹介します。

ケース 内容
組織やチームの停滞・成長の鈍化 変化に適応できず、競争力が低下する
組織・チームの信頼関係の悪化 課題を放置することで、メンバーの不満や不信感が高まる
問題の拡大と深刻化 小さな問題が放置されることで、手遅れになる

不定型な適応課題を解決する方法

不定型な適応課題を解決する方法は、課題によってバラバラですが、どの課題であっても共通の粒度で解決への流れを整理すると以下のようなプロセスになります。

  1. 情報収集
  2. 根本原因の特定
  3. 適切な選択肢の提示
  4. 合意形成
  5. 実行

1. 情報収集

状況を正確に把握し、問題の本質を明らかにします。事実と解釈を区別し、影響を受ける関係者や利害を整理し、影響範囲を明確にします。

2. 根本原因の特定

問題の表面的な現象ではなく、根本原因を特定します。問題の発生原因を掘り下げ、事象の背景にある判断時の考えや、更にその背景にある価値観を把握します。

3. 適切な選択肢の提示

誤った選択から抜け出すために、問題解決に向かう具体的な道筋を作ります。単に正論を並べるだけではなく、実現可能で、関係者にとって受け入れやすい選択肢を考えます。

4. 合意形成

解決に向けた合意形成を促し、関係者が適切な行動を取れるようにします。強制的に決めるのではなく、関係者の納得感を得るプロセスを重視し、課題に関わる人たちの心理的障壁を下げるようにします。

5. 実行

解決策を実行し、確実に完遂することで課題を解決します。

不定型な適応課題を解決する価値

適応課題の被害を食い止めることができる

解決しない場合、チーム内に残り続ける問題を取り除くことができます。誰か一人でもチーム内の適応課題に向き合い、解決に向けて取り組む人がいるかどうかで、長い目で見たときのそのチームの環境の良し悪しが大きく変わります。一人ですべてを解決する必要はなく、まずは声を上げ、周囲の助けを得ながら進めることができれば問題ありません。

  • 例1 - 長年見直されなかった非効率な業務フローが適応課題である場合、改善しない限り業務負荷が増え続ける
  • 例2 - チーム内の意見対立が放置されていると、長期的な対立関係が生まれ、協力しにくくなる

シニア人材としての幅が広がる

マネジメントキャリアに限らず、専門家としてのキャリアを選ぶとしてもある程度シニアな人材として周囲と協力し、広範な影響を及ぼす業務を担当するようになると、不定型な適応課題を無視しては通れません。そのため、不定型な適応課題への対応を経験することは、今マネージャーやリーダーではなかったとしても、将来確実に役立ちます。

  • 例1 - シニアエンジニアになると、技術力だけでなく、チームの生産性向上や他部門との調整が求められる
  • 例2 - 専門家としての立場でも、組織の課題や方向性を考慮しながら活動できる人が、より影響力を持つ

解決できると思える範囲が広がる

仕事において、解決が難しく残りがちな課題の多くは適応課題です。つまり、解決を諦めがちな多くの課題は適応課題であり、適応課題を経験し、全てではないものの解決できることもあるという認識ができると、仕事において解決可能と感じることができる範囲が広がります。そのため、最初から解決を諦めることが減り、より広範な課題に取り組むことができるようになります。

  • 例1 - 以前なら諦めていた組織のコミュニケーション課題が、適応課題をいくつか解決した経験を通じて「試行錯誤すれば変えられる」と思えるようになる
  • 例2 - 「変えられない」と思っていた業務プロセスでも、適応課題に向き合うスキルを持つと改善できる可能性があると認識できる

補足

適応課題を解決していくための考え方を、大まかにまとめると『現実的な方法で、よりよい未来の結果を得られるように予想し、柔軟な姿勢でうまくやる』ということになります。

逆にいうと、『非現実的な方法で、自分の言動の影響を考えず、固定的な考えに固執し、うまくいかなくても方法を変えない』というのが、解決につながらない動き方になります。

これを踏まえて適応課題の解決につながる考え方について、以下の ZennBook にまとめたので、詳細が気になる方は読んでみてください。

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