
楽観主義を意図的に作りだす
こんにちは。人事グループ・組織開発室に所属し、組織開発を担当しているてぃーびーです。
仕事をしていて、なにか大変そうな出来事があったとき、人によって反応は様々です。
- 「もう終わりだ・・」
- 「大変そうだけど、なんとかなるかな」
- 「ワクワクしてきた」
これらは、出来事に対する考え方が楽観的なのか悲観的なのかに影響を受けます。楽観思考も悲観思考もそれぞれにメリット・デメリットがありますが、乗り越える必要がある出来事に対しては楽観思考が必要になります。
この記事では、楽観主義を意図的に作り出す方法についてまとめます。
学習性無力感と学習性楽観主義
学習性無力感 ( Learned Helplessness )とは、繰り返し自分ではコントロールできないストレスや失敗を経験した結果、「何をしても状況は変わらない」という認知を形成し、意欲や行動を起こす気力を失ってしまう状態を指します。そのため本来は改善の可能性があっても、自ら行動を起こさなくなり、挫折感や無力感を深めてしまうのが特徴です。
逆に、学習性楽観主義 ( Learned Optimism )は、「物事をどのように解釈するか」によって楽観的な思考や態度を獲得できるという考え方です。具体的には、困難や失敗を「一時的・限定的・外的な要因」によるものととらえることで、前向きな感情や行動を促進し、ストレス対処力の向上や自己効力感の強化につなげます。
これらはどちらも米国の心理学者マーティン・セリグマンが提唱した概念です。
楽観主義を身につける
楽観主義を身につけるプロセスとして、ABCDE理論があります。もともとは認知行動療法(CBT)の基盤となった「ABC理論」を発展させたものです。
ABC理論は、出来事と結果に対して以下のように整理する方法です。
- A( Adversity ) : きっかけとなる苦難
- B( Beliefs about adversity ) : 苦難に対する信念および、その結果としての認知
- C( emotional Consequences ) : その結果として生じる心理的な感情や、そこから生まれる行動
悲観的な解釈をしている場合、 B の部分で非合理的な信念の影響で、悲観的な解釈に陥っているため、この信念を合理的なものに変えていくことで解釈を楽観的なものに変え、 C の結果にポジティブな影響を与えるのがABC理論の進め方です。
ABCDE理論は上記のABCにDとEが加わります。
- D( Disputations to challenge beliefs about adversity ) : B に対する反論
- E( Effective new rational beliefs ) : D の結果生み出した効果的な新しい信念
ABCDE理論の例
A( Adversity : 苦難)
大事なプレゼンで緊張してしまい、十分にアピールできずに終わってしまった。
B( Belief : 信念)
「自分はプレゼンが下手だから、どんなに準備しても結果は同じに違いない。もう成功なんて望めない。」
C( Consequence : 結果)
強い落ち込みとモチベーション低下が生じ、次の仕事への意欲がわかなくなる。
D( Disputation : 反論)
- 「本当にどんなに準備しても失敗するのか?今回は緊張しすぎたから失敗したが、準備不足や緊張対策の不足など具体的な原因があるのでは?」
- 「実際に、以前の別のプロジェクトでは、資料作りやリハーサルが十分であったときにうまくいった経験もあった。」
E( Effective new rational beliefs : 新しい信念)
「準備方法や緊張対策を工夫すれば、次回はもっとプレゼンをうまくこなせるかもしれない。」という前向きな気持ちが生まれ、自分にできる改善策や行動を取ろうという意欲が高まる。
楽観主義を身につけるための支援をする
学習姓無力感に陥り、悲観的な認知になっている本人が自発的に楽観主義の習得に踏み出すのはとても難しいことです。
そのため、周囲がそのきっかけづくりや、認知の改善に向けて支援をすることが大切です。
そして、そのきっかけを掴む意味でもABCDE理論の理屈だけではなく、悲観的な現場を少しでも変えることができるということを自ら体現し、結果を踏まえて伝えるのが理想的でしょう。すぐに結果を出せない状況の場合は、過去の体験を添えて伝える方法もあります。
クラスメソッドのCLPと楽観的思考
クラスメソッドの行動指針であるCLPには「楽しむ」という項目があります。
この項目は、見出しとしては「楽しむ」ですが、中身は以下のような内容です。
とても難易度の高い仕事、人の嫌がる仕事、大きな環境の変化を好み、成長の機会として楽しみます。これらを楽しめるように心身共に健康な状態を保ちます。皆が楽しく仕事ができるように、発言し行動します。
難易度の高い仕事や人の嫌がる仕事は、ABCDE理論におけるA=苦難にあたることもあるでしょう。この苦難を楽観的に解釈し、お客様・同僚・自身のために飛び込んでいけるのがカルチャーを体現している状態になります。仮に、今うまく振る舞えなくても楽観主義は習得可能です。ABCDE理論を用いて、自分の中の楽観主義を少しずつ育てることができます。
悲観的思考と楽観的思考を使い分ける
今回はあくまで学習性無力感に陥ってしまいそうな場面において楽観主義を身に着け、より良い結果を生み出すという文脈の話しです。
楽観的思考が常に万能で、悲観的思考は常に避けるほうがいいというわけではありません。リスクの精査や、影響の把握などにおいて悲観的思考は強みを発揮します。仮に、根が悲観的思考の人だったとしても問題はなく、要所で楽観的思考と使い分けることができれば鬼に金棒です。
私も根っこは悲観的思考でリスクに敏感ですが、20代の後半の頃に仕事でメンタルが落ち込んだ時期にカウンセリングを通して認知行動療法を知り、実践し、場面に応じて考え方を使い分けることができるようになってきました。最近では、おそらく楽観的でポジティブな考え方と認識されていると思いますが、もともとは強めの悲観的思考を持っていました。学生時代にはつい「自分なんか」と口にするようなタイプでした。
そういった背景から、私自身も体験を通して楽観的思考は訓練によって習得可能だと感じています。