組織を救い、キャリアを切り拓く『なんとかする力』

組織を救い、キャリアを切り拓く『なんとかする力』

この記事では、抽象的な『なんとかする』という行為を分解し、その対象やプロセス、そして自分自身のキャリアに与える影響について深掘りします。
2026.02.13

こんにちは。組織開発室に所属し、組織開発を担当しているてぃーびーです。

「このプロジェクト、誰がリードしてるんだっけ?」「この課題、ずっと放置されてない?」 現場で働いていると、そんな宙に浮いたボールを見かけることがありませんか?

マネージャーやリーダーの役割は、一言で言えばこのボールを拾ってなんとかすることだと言われがちです。しかし、このなんとかする力をメンバー一人ひとりが備えたチームは、強く、しなやかです。

この記事では、抽象的ななんとかするという行為を分解し、その対象やプロセス、そして自分自身のキャリアに与える影響について深掘りします。

managing-difficulties

なんとかする対象 : なぜそれは放置されるのか?

なんとかしなきゃいけないことの多くは、正解がなく、面倒で、下手をすると周囲との摩擦やリスクを伴うような、人に関わる困難を含んでいます。

  • 境界線に落ちている課題 : 各部署や担当の責任範囲の間にあり、推進者が不在。
  • 実力不足による停滞 : 主担当がキャパオーバー、あるいはスキル不足でスタックしている。
  • 開かずの間的な難題:あまりに複雑、あるいは過去のしがらみが強すぎて、誰も近寄りたがらない。

type-of-difficulties

なんとかするための具体的なプロセス : 魔法ではなく覚悟と調整

なんとかするとは、超人的な力で一気に解決することではありません。泥臭いステップの積み重ねです。

step-of-managing-difficulties

1. 決意 : 自分がなんとかすると決める

スキル以上に重要なのが当事者意識です。「誰かがやるだろう」「自分の担当ではない」という考えを捨て、自分が最後の一人として踏みとどまる決意からすべてが始まります。

2. 調整 : 周囲を巻き込み解決に向けて調整する

一人の力でできることには限界があります。解決には仲間の協力が不可欠です。

  • 味方を増やす : 「これ、なんとかしたいんだよね」という本音の共有から始め、共感者を一人ずつ増やしていきます。
  • 相手の事情を汲み取る : 問題の当事者を糾弾しても事態は好転しません。相手には相手の守りたいものがあります。正論で論破するのではなく、相手のメリットや懸念を解消しながら、共通のゴールへ誘導する柔軟性が求められます。

なんとかする力を支える3つの土台

いざ動こうとしたときに、武器が何もないと周囲は動いてくれません。日頃からの仕込みが物を言います。
プロセスで紹介した決意も、土台があるからこそ踏み出しやすくなります。

要素 内容
信頼貯金 期限を守る、嘘をつかない、期待値を超えるといった日々の誠実な仕事の積み重ね。
関係性の拡大・深化 業務外の雑談や他部署への協力。いざという時に「〇〇さんの頼みなら」と言ってもらえる関係。
問題解決の経験値 目の前の小さな不便をなんとかする経験の反復。修羅場への耐性はここで作られる。

preparing-managing-difficulties

なんとかした先にある景色

この泥臭いプロセスを完遂すると、仕事のステージが一段上がります。

  • 自己効力感の向上 : 「自分はこの環境を変えられる」という確信は、何物にも代えがたい自信になります。
  • 影響力の拡大 : 信頼と実績が積み上がり、より大きな責任範囲を動かせるようになります。
  • キャリアの希少性: 専門技術に加え状況を打開できる力を持つ人は、市場価値が極めて高くなります。たとえばITエンジニアの場合、シニアからスタッフ(あるいはそれ以上)へ上がるための必須要件と言っても過言ではありません。

positive-impact-of-managing-difficulties

もしもなんとかしなかったら

放置された問題は、決して自然消滅しません。

  • 組織の硬直化: 「言っても無駄」という空気が蔓延し、活気が失われていきます。
  • 事態の巨大化: 今日なら絆創膏で済んだ傷口が、明日には手術が必要な重傷になります。
  • キャリアの硬直: 自分の周囲を1ミリも変えられない場所で、ただ消耗するだけの日々が続きます。

自分たちが乗った船の底に穴が空いているのを見つけたとき、「それは船大工の仕事だ」と放置して沈むのを待つのか。それとも、周囲と協力して手近なもので穴を塞ぐのか。 後者を選び、自らの手で状況を切り拓く姿勢こそが、不確実な時代における生存戦略になります。

なんとかする経験の歴史

なんとかする対象に関わった経験をふりかえってみます。

小さな関与と失敗

人事になる前の経験として、なんとかする対象についてフォロワーとして解決に協力する機会が複数ありました。

色々経験した今になってふりかえると、フォロワーに徹しすぎた結果、膠着した状態に対して自ら踏み込んだ提案や行動ができずにいたのだと思います。あくまでリーダーが物事を進める協力をすることに留まっていました。

結果として、思うように解決まで導けなかった試行錯誤の経験が多くありました。しかし、なんとかする活動に関わり、なぜ変えることができなかったのか、変えることができなかった結果としてどのような影響があったのか、という経験値を得ることができました。そもそも、何かを変えに行くための活動をすること自体が希少な経験で、表面上の不満だけではなく、実際に動いたからこそ見えてくる物事があるということです。また、このような活動の中で全てが全く変化につながらなかったというと、そういうわけではなく、小さな変化を生み出せる場面もありました。この経験は「自分の影響で変化可能な範囲は思ったよりも広い」と認識できるきっかけでもありました。

まずは推進者でなくてもいいので、変化に立ち向かう人のフォロワーとしてともに行動するのもいい経験です。

なんとかする成功体験

一方、人事になってから2社を経験するなかで、公式にも非公式にも責任者の立場で仕事をする機会が増えました。結果として、なんとかする役回りを持ちつつ仕事をする機会が増え、なんとかする活動を最後まで着地させる経験が増えました。

結果的に自分が責任者ではない領域についても、率先して動き、なんとかすることもできるようになってきました。たとえば、私は前職・現職の双方で評価制度の責任者を担当していますが、どちらも最初から責任者だったわけではなく、『誰かが制度改定を推進する必要がある』という状況に対して前職では当時の上司からの打診を受け、それを引き受けました。現職では、特に打診があったわけではないですが、対応が必要な状況だったので上司と話し合いつつ自ら巻取りに動きました。

どちらも元々の自分の役割、責務だったわけではなく、会社として解決が必要な課題だったので対応しただけです。現職で評価制度を引き継いだときは、前職における評価制度責任者の経験がありましたが、前職についてはそもそも評価制度の責任者どころか、運用自体も未経験の状態でした。それどころか人事としてのキャリアを歩み始めて間もない時期でしたが、状況的に誰かがやる必要があるし、やるなら自分がやったほうが良いとも思ったので、その日に帰る足で本屋に寄って、即座に人事評価制度の本を3冊購入し、週末のうちに読破し、対応にあたりました。結果的に現職で評価制度を担当するきっかけにもなり、直近でいうと目標設定をAIで支援するツールを作るという新たな経験をする前提になっています。

なんとかする業務は難易度が高く、失敗することもあり、苦しい道のりを伴うこともあります。一方で、周囲が諦めたり、尻込みする業務を巻き取り、なんとかする経験があると仕事において解決できることの幅を大きく捉えることができます。自己効力感が高まるわけです。また、こういった取り組みを繰り返していると自然と裁量が広がります。結果的に自分の力で影響を与える事ができる範囲が広がり、よりよい環境を自分自身で作り出せるようになります。それは、自分の周囲の仲間を守る力にもつながります。
マネージャーという役割に興味がない人にとっても、なんとかする力は、自分の周囲の環境を快適にするための生存戦略になります。

補足

なんとかする経験は生々しい背景とともに存在することが多く、ブログや公の場で詳細が語られることはあまりありません。その意味で、修羅場をくぐり抜けてきた経験を持つ人と対話する機会があると、詳細を聞くことができるためおすすめです。誰かが何か難題を解決したことを知ったら、その物語を詳細に聞いてみましょう。

関連情報

この記事をシェアする

FacebookHatena blogX

関連記事