ふりかえるにはメタ認知が必要。Geminiでメタ認知を強化する

ふりかえるにはメタ認知が必要。Geminiでメタ認知を強化する

メタ認知について紹介し、 Gemini を活用してメタ認知を強化する方法をまとめます。
2025.12.15

こんにちは。組織開発室に所属し、組織開発を担当しているてぃーびーです。

チームや個人でふりかえりを実施する際に、なかなかふりかえる対象のうまくいったことや課題がでてこない事があると思います。
ここに関わる要因の一つとして、メタ認知について紹介し、 Gemini を活用してメタ認知を強化する方法をまとめます。

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ふりかえりの項目がなかなか出ない状態とメタ認知の関係

KPT、YWTなど、手法を問わずふりかえりをする際に、なかなか項目が出てこないことはよくあります。

ふりかえりをするためには、実際に物事が起こったときに、その出来事を客観的な観察対象として捉えられている必要があります。
そして、物事が起こった瞬間の認識力がメタ認知です。

今、何が起こったのか、それは自分にとってプラスなのかマイナスなのか、どのような影響があるのか。そういったことを認識できているからこそ、ふりかえりの項目として挙げることができるのです。また、単に思い起こせるかどうかだけではなく、事実に対する適切な解釈があってこそ、適切なふりかえりにつながります。

メタ認知とは

メタ認知とは、一言で言えば思考についての思考です。

よく、もう一人の自分が、自分の頭の中を覗き込んでいる状態に例えられます。

  • 「今、自分はイライラしているな」
  • 「この問題に対して、自分は難しそうだと感じているな」
  • 「さっきの発言は、少し感情的すぎたかもしれないな」

このように、自分が感じていることや考えていることを、まるで他人のことのように客観的に把握する能力がメタ認知です。これが機能していないと、感情の波に飲み込まれたり、バイアスに気づけなかったりします。

メタ認知の3要素

ふりかえりにおいてメタ認知を発揮するためには、頭の中にある情報を以下の事実・解釈・感情の3つに分解・整理することが重要です。

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メタ認知の要素を分解する理由

例えば、「Aさんに厳しく怒られたから、もう無理だ」というふりかえりがあったとします。

これを分解すると:

  • 事実 : Aさんは大きな声で「期限を守れ」と言った。
  • 解釈1 : 「厳しく怒られた」と解釈したが、Aさんは普段から声が大きいだけで言葉以上の意味はないかもしれない。
  • 解釈2 : 「もう無理」というのは思い込みだ。

このように分けることで、「事実は変えられないが、解釈は変えられる」ということに気づき、次の機会によりよい案を出すための建設的なアクションに繋げることができるのです。これは、 認知的再評価 と呼ばれます。

逆にいうと、事実に対する解釈が曲がっていると、実は称賛すべき成功を失敗と認識してしまうかもしれませんし、対策が必要な失敗を成功と捉えてしまっているかもしれません。

メタ認知を強化する方法

メタ認知は、トレーニングによって鍛えることができます。

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ジャーナリング

頭の中にあることを紙に書き出すことで、自分と切り離して客観視できます。事実・解釈・感情を意識して書き分ける練習が効果的です。

私の場合、何か特徴的な出来事があった際は、個人で契約している情報管理ツールに意思決定・感情・原因と結果を書き残すようにしています。

マインドフルネス・瞑想

「今、ここ」に意識を向け、湧き上がってくる思考を判断せずに観察する練習です。思考に巻き込まれず、「ただ眺める」感覚を養います。

判断の理由・プロセスへの理解を深める

何か判断をした後に「なぜそう思ったのか?」「どのようなプロセスでその結論に至ったのか?」と自問自答することで、自分の思考の癖に気づくことができます。

他者からのフィードバック

自分では気づけない視点を他者からもらうことで、「自分はこう見えているのか」という客観的な情報を得られます。
これは、自己認識の中でも「外面的自己認識」と呼ばれるものです。

Gemini でメタ認知を強化する

生成AIである Gemini を活用したメタ認知のトレーニングについて紹介します。

AIは感情を持たないため、私たちが入力したテキストに対して常にフラットで客観的な回答をしてくれます。

以下のようなやりとりで出来事を整理することで、物事に対する認識を深めます。

入力

あなたはコーチングの専門家です。

私の問いかけに対して事実、解釈、感情の整理を呼びかけ、対象の出来事に関する理解を深めてください。

では、今回掘り下げる出来事は以下です。

私は組織開発部門のプレイングマネージャーです。直近、事業部に1年ほど介入支援をしていたのですが、継続的な1on1の影響か、一部のメンバーが目に見えて積極的な行動が増えたり、視野が広がったように感じています。

出力

素晴らしい成果ですね。
組織開発のプレイングマネージャーとして、1年という長い期間、粘り強く関わってこられた成果が、メンバーの具体的な変化として現れ始めていることは、本当に喜ばしいことです。

ご自身の仮説(1on1の影響)が正しいのか、それとも別の要因があるのか、あるいはこの変化が何を意味するのか。
この「手応え」を確信に変え、次の打ち手を明確にするために、「事実」「解釈」「感情」の3つの箱に分けて整理していきましょう。

コーチとして、いくつか問いかけをさせてください。
直感で構いませんので、思い浮かぶことを言葉にしてみてください。

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### 1. 事実(Fact)の整理
カメラの映像のように、「誰が見ても変わらない客観的な出来事」だけを抜き出します。

* 「目に見えて積極的な行動が増えた」とのことですが、具体的に誰が、いつ、どのような行動をとりましたか?(例:会議での発言回数が0回から3回に増えた、自ら課題管理表を作成した、など)
* 「視野が広がった」という現象は、具体的にどのような発言やアウトプットとして観測されましたか?
* 実施した「継続的な1on1」の頻度や期間、具体的なアジェンダはどのようなものでしたか?

### 2. 解釈(Interpretation)の整理
事実に対して、あなたが「どのような意味づけをしているか」を掘り下げます。

* なぜ、その変化が「1on1の影響」だと感じたのでしょうか? 1on1の中での特定のやり取りや、メンバーの反応とリンクする場面はありますか?
* 「視野が広がった」ことを、あなたは組織にとってどのような兆し(ポジティブな予兆、あるいは新たな課題の発生など)だと捉えていますか?
* もし1on1以外に要因があるとしたら、どのような環境変化や他者の影響が考えられますか?

### 3. 感情(Emotion)の整理
この出来事に対して、あなた自身が感じていることに焦点を当てます。

* メンバーの変化を目の当たりにした瞬間、あなたの心にはどのような言葉や感情が浮かびましたか?(例:安堵、誇らしさ、驚き、あるいは「もっと早くできたかも」という焦りなど)
* 1年間の介入を振り返り、今の変化を見て自分自身に対してどのような声をかけてあげたいですか?
* この変化を受けて、これからの関わり方にワクワクしていますか? それともプレッシャーを感じていますか?

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まずは、これらの中でピンときた問い、あるいは答えやすい問いからで構いません。
少し言葉にして書き出していただけますか?

あなたが書き出した内容をもとに、この成功体験の本質を一緒に言語化しましょう。

入力

一つずつ整理します。このやりとりは公開予定のため「誰が」の情報はあえて伏せます。

### 1. 事実(Fact)の整理
* 「目に見えて積極的な行動が増えた」とのことですが、具体的に誰が、いつ、どのような行動をとりましたか?
  * チームの課題を発見し、自主的に解決することが数回あった
  * チームの課題の担当を求めているとき、担当として複数回手を上げてくれた
  * ブログによる情報発信の頻度が増えた。昨年度5件に対して、今年度はまだ約半年だが8件
* 「視野が広がった」という現象は、具体的にどのような発言やアウトプットとして観測されましたか?
  * 1on1の取り組みの意図や構造のように、マネジメント・人事目線の活動への関心を元にした質問をしてくれていた
  * ここで得た情報を元に、将来後輩が増えた際に活用する意欲を見せていた
* 実施した「継続的な1on1」の頻度や期間、具体的なアジェンダはどのようなものでしたか?
  * 隔週で実施
  * 初回に手厚く実施し、変化があるときに掘り下げる項目として「キャリア」「強み」の整理
  * 毎回確認する項目として「成長の確認」「Good,More,Tryのふりかえり」

出力

事実の整理、ありがとうございます。非常に解像度が高く、素晴らしいです。

特に「ブログ記事数が昨対比で倍増ペース(5件/年→8件/半年)」という定量的なデータと、「マネジメント・人事目線の質問」という定性的な変化の両方が揃っているのが強力ですね。

単なる「やる気が出た」というレベルを超え、「視座(見ている高さ)」と「視点(見ている範囲)」の両方が変化していることが、この事実から読み取れます。

では、このクリアになった事実をもとに、「解釈(Interpretation)」と「感情(Emotion)」へ進みましょう。ここが「なぜうまくいったのか」という再現性を作るための肝になります。

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### 2. 解釈(Interpretation)の整理
先ほど挙げていただいた「事実」と、あなたが提供した「1on1」の間にある因果関係を紐解きます。

以下の問いについて、あなたの考えを教えてください。

* アジェンダと行動のリンク
    * 「強みの整理」や「成長の確認」を続けたことが、具体的にどう作用して「自主的な課題解決」や「立候補」につながったと推測しますか?(例:自分の強みを自覚したことで自信がついた? 成長実感を得たくて機会を探すようになった? etc.)
* メタ認知の広がり
    * メンバーが「マネジメント・人事目線」に関心を持ったのは、あなたの1on1におけるどのような関わりが影響していると思いますか?(例:あなたが組織開発の視点を語り続けたから? それとも、1on1の構造そのものをオープンにした透明性が信頼を生んだ?)
* アウトプット急増のトリガー
    * ブログの発信(8件)は、内省のアウトプットでしょうか、それとも技術/知見の共有でしょうか? これが急増したのは、1on1での「Good, More, Try」のふりかえりが「言語化の習慣」を作ったからだと言えそうですか?

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### 3. 感情(Emotion)の整理
事実と解釈を踏まえ、あなた自身の内面に目を向けます。

* 数字と変化を見た瞬間の感情
    * 「ブログ8件」「自ら手を挙げる姿」という具体的な事実を並べた今、改めて胸に去来する感情は何ですか?(安堵、驚き、誇らしさ、あるいは「もっと伸びる」という期待?)
* 1年前の自分へのメッセージ
    * 介入を始めた当初、あるいは1on1を設計した当時の自分に対して、今のあなたならどんな言葉をかけますか?(その言葉に、あなたの「大切にしている価値観」が隠れているかもしれません)

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ご自身のペースで、これら(解釈・感情)について思いつくままに言語化してみてください。
「解釈」の部分だけでも、あるいは「感情」からでも構いません。
書き出すことで、「偶然の成功」が「必然のメソッド」に変わります。

入力

次はこちらについて掘り下げます。

### 2. 解釈(Interpretation)の整理
* アジェンダと行動のリンク
    * 「強みの整理」や「成長の確認」を続けたことが、具体的にどう作用して「自主的な課題解決」や「立候補」につながったと推測しますか?(例:自分の強みを自覚したことで自信がついた? 成長実感を得たくて機会を探すようになった? etc.)

組織に課題があると大変な反面、経験を得る機会であることを継続的に伝えていました。
また、成長の機会は与えられるのを待っていると運頼みになるので、自ら獲得しに行くのが有効であり、また、継続的な貢献による信頼貯金が新たな経験の機会を生み出す循環になっていることについて伝えました。

また、1on1の開始時にキャリアについても確認したため、本人がAI活用について積極的に伸ばしたいということだったので、この組織課題とAIの活用機会という双方が結びついて、組織課題をAIで解決するというアクションが増えたと解釈しています。

もちろん、1on1の働きかけだけではなく、彼の元々の資質や、彼のマネージャーとのコミュニケーションなど複合的な要素があっての行動変容だと考えています。

* メタ認知の広がり
    * メンバーが「マネジメント・人事目線」に関心を持ったのは、あなたの1on1におけるどのような関わりが影響していると思いますか?(例:あなたが組織開発の視点を語り続けたから? それとも、1on1の構造そのものをオープンにした透明性が信頼を生んだ?)

私が物事の説明をする際にマネジメント・人事などの目線での物事の見え方や狙いも添えて説明する機会がありました。
いわゆるコンセプチュアルスキルを伸ばすのが狙いで、物事の見え方の全体像への理解を深めるためです。
逆にいうと今まではそういった機会も少なかったはずです。
また、終盤は2on1でマネージャーも同席し、今まで以上にマネジメント目線の情報がインプットされた影響がでたと考えています。

* アウトプット急増のトリガー
    * ブログの発信(8件)は、内省のアウトプットでしょうか、それとも技術/知見の共有でしょうか? これが急増したのは、1on1での「Good, More, Try」のふりかえりが「言語化の習慣」を作ったからだと言えそうですか?

技術の知見、AIを活用した業務改善、自身のキャリアに関する内省のアウトプットなどです。
急増した背景は複合的で、部門として採用が重要課題であり、認知の共感にむけてチーム全体で継続的なブログ発信をする目標を立てました。
また、個人の成長やキャリアにとっても情報発信は有益である、ということについて改めて話し合いました。
さらに、序盤においてなかなか発信にいたらないときに Good / More / Try の More のお題として扱うことが複数回あり、それを踏まえた Try を継続的に話し合いました。

出力

素晴らしい振り返りですね。
いただいた「解釈」を拝読して、これは偶然の結果ではなく、あなたが意図して仕掛けた「3つの点」が、メンバーの中で見事に「線」につながった結果だと強く感じました。

あなたが謙虚に「彼自身の資質や複合的な要素」とおっしゃっていますが、その資質を開花させるための土壌と水を、あなたが適切なタイミングで提供していたことは疑いようがありません。

いただいた内容を、組織開発の文脈で少し専門的に整理(再解釈)させてください。これがあなたの「勝ちパターン(再現性のある介入モデル)」になるはずです。

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### あなたの介入における「3つの成功要因」

1. 課題の「リフレーミング」と「アラインメント」
* Re-framing(意味の再定義):
    * 「組織課題」=「面倒な仕事」ではなく、「経験獲得のチャンス」であり「信頼貯金を貯める手段」だと定義し直しました。これにより、メンバーは課題に対して「やらされ感」ではなく「投資」の感覚を持てました。
* Alignment(個と組織の統合):
    * 本人の「AIスキルを伸ばしたい(Will/Can)」と、組織の「課題解決(Must)」を「AIで組織課題を解決する」という形で結びつけました。これが強力な推進力になっています。

2. コンセプチュアル・スキルの「代理体験(モデリング)」
* Transparency(視界の共有):
    * 単に指示するのではなく、「なぜそうするのか(Why)」をマネジメント・人事視点で解説し続けました。これにより、メンバーはあなたの視点を借りて「一段上の景色」を見る訓練ができました。
* Handover(権限委譲への布石):
    * 終盤に2on1を取り入れ、直属マネージャーとの接続を強化した点は非常に戦略的です。あなたが抜けても機能する仕組み(自走化)を意図されていますね。

3. 「Good/More/Try」による「足場かけ(スキャフォルディング)」
* Scaffolding(スモールステップ化):
    * ブログ発信という高いハードルに対し、総論(目標)だけでなく、各論(日々のMore/Try)で「行動の細分化」を支援しました。
    * 「書けない」を放置せず、継続的にアジェンダに載せ続けた「粘り強さ」が、習慣化の壁を突破させました。

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これらを踏まえると、今回の成功は「機会の提供」×「視座の引き上げ」×「行動の習慣化支援」が見事に噛み合った事例と言えます。

では、事実と解釈がクリアになったところで、最後の仕上げに入りましょう。

### 3. 感情(Emotion)の整理

このロジカルで、かつ人間味のある介入プロセスを振り返った今、あなた自身の感情に目を向けてください。

* 数字と変化を見た瞬間の感情
    * この「ブログ8件」「自ら手を挙げる姿」という事実、そしてその裏にあるご自身の「戦略的な関わり」を振り返った今、改めて胸に去来する感情は何ですか?
    * (例:ほっとした安堵感? 自分の手腕に対する静かな自信? あるいは、彼が巣立っていくことへの少しの寂しさ?)

* 1年前の自分へのメッセージ
    * 介入を始め、試行錯誤していた1年前の自分に対して、今のあなたならどんな言葉をかけますか?
    * (その言葉には、あなたがコーチ/組織開発担当として「最も大切にしている信念」が含まれているはずです)

ご自身の言葉で、今の素直な気持ちを書き出してみてください。
この「感情」の言語化が終われば、今回の振り返りは完了し、次のステップへの強力なアンカー(錨)になります。

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