[2026年7月8日号]個人的に気になったModern Data Stack情報まとめ
さがらです。
Modern Data Stack関連のコンサルタントをしている私ですが、Modern Data Stack界隈は日々多くの情報が発信されております。
そんな多くの情報が発信されている中、この2週間ほどの間で私が気になったModern Data Stack関連の情報を本記事でまとめてみます。
※注意事項:記述している製品のすべての最新情報を網羅しているわけではありません。私の独断と偏見で気になった情報のみ記載しております。
Modern Data Stack全般
"コンテキスト・エンジニア"という新職種の必要性
The Analytics Engineering Roundupにて、nao Labs共同創業者兼CEOのClaire Gouze氏へのインタビュー記事が公開されました。
プロファイリングやクエリ履歴だけに頼るAIエージェントの精度は約40%にとどまるものの、データモデルの改善とドキュメント整備を行うことで精度を約90%まで引き上げられたという実験結果が紹介されています。
将来的には、コンテキストの取り込み・統合を専門に担う「コンテキスト・エンジニアリング」スタックが必要になる、という問題提起もされています。
Data Extract/Load
Airbyte
顧客ごとに専用AIエージェントを構築する事例
Airbyte Agentsを使い、顧客ごとに専用のAIエージェントを構築した事例が公開されました。
記事では、AirbyteのSolutions Architectが担当する20〜30アカウントについて、Salesforce、email、Slack、Zendesk、GitHub、Gongなどに散在する顧客情報をもとに、顧客単位でスコープされたエージェントを構築した流れが紹介されています。
Context Storeにより、各ソースAPIを毎回直接クロールするのではなく、検索可能なレプリカを使って安価かつ高速にコンテキストを取得する構成です。また、Skillsによる決定論的な手順、Loopsによるスケジュール実行、Watchersによるイベント待機、オーケストレーターによる複数顧客への並列実行なども紹介されています。
dlt (dltHub)
AIエージェント向けメモリソリューション「cognee 1.0」がリリース
dltHubのパートナー製品である、AIエージェント向けオープンソースメモリソリューション「cognee 1.0」がリリースされました。
単一のPostgresで動作し別途ベクトルストアやグラフストアが不要な点、Rustコアによる高速起動、自己改善型メモリループ、TypeScript SDK、マネージドクラウド(Cognee Cloud)が提供されている点が特徴です。
Data Warehouse/Data Lakehouse
Snowflake
Cortex Sense を発表
セマンティックビューでカバーされていない未モデル化データに対しても、エンタープライズAIエージェントがグラウンディングされたコンテキストを得られるようにする新機能「Cortex Sense」が発表されました。
Cortex Senseは、既存のsemantic viewsを置き換えるものではなく、semantic viewsがカバーしていないデータ領域に対して、クエリ履歴、変換ツール上のモデル、BI上のメトリクスなどのシグナルから自動的に理解を構築するものと説明されています。
内部ベンチマークでは、Cortex Senseにより精度が24.1%から86.3%へ改善し、クエリあたりのコストも$1.76から$0.59へ低下したとされています。ただし、これは2026年6月時点のSnowflake内部テスト結果・コスト計算に基づく数値です。また、記事公開時点ではまだプレビュー前で、7月中旬にプライベートプレビュー開始予定とされています。
Analytical search — 大規模ドキュメント集合に対する分析的なクエリが可能に
Cortex Agentsの新機能として「Analytical search」がパブリックプレビューになりました。従来のRAG(検索拡張生成)が抱えていた、大量のドキュメント全体を横断する集計・トレンド分析が苦手という制約を克服することを狙った機能です。
仕組みとしては2層構造になっており、まずCortex Searchが関連文書の候補セットを絞り込み(Adaptive depthにより検索深度を動的に調整)、続いてAI_FILTER、AI_EXTRACT、AI_AGGなどのAI関数とSQLを組み合わせて、非構造化テキストからの情報抽出や集計・カウント・ランク付けを行います。「昨年喘息でアルブテロールを処方された患者の一覧」「地域別の製品言及率の比較」といった、これまでRAGでは難しかった分析的な質問に答えられる点が特徴です。
応答時間は通常2〜6分、複雑な分析では最大15分かかるとされ、AI関数の利用に伴うコストも発生することに注意が必要です。
Databricks
Vibe Data Modeling — 自然言語からLakehouseのデータモデルを自動生成
LLMエージェントが平易な英語のビジネス説明からSilver層のデータモデルを自動生成する「Vibe Data Modeling」が発表されました。
従来6〜36ヶ月かかっていたSilver層のデータモデリングを、数時間単位に短縮することを目指す取り組みです。単一ノートブックで実行でき、Unity Catalogへスキーマ、テーブル、外部キー、分類タグ、Metric Views、RDFS ontology、DBML、サンプルデータなどをデプロイします。
自然言語で反復修正でき、各「vibe」は新しいバージョンとして保存されます。単なるLLMを用いた生成ではなく検証・修復プロセスを含めている点が実務的です。
以下のリンク先が、この手法を用いたサンプルリポジトリとのことです。
Semantic Layer
Cube
本番稼働中のAIエージェントの回答精度を検証する「Cube Evals」
本番稼働中のAIエージェント(Analytics Chat、埋め込みcopilot、リモートMCPサーバー経由のエージェントを含む)の回答精度を客観的に検証するための評価ツール「Cube Evals」が発表されました。
自然言語の質問と正解ペアをYAML(agents/eval_questions.yml)で定義し、正解はインラインSQLまたは認定済みクエリへの参照として管理します。Cubeはエージェントが生成したクエリと正解クエリを同じCube API経由で実行し、結果セットを比較します。
評価はデフォルトでモデルベースではなく決定論的に行われ、ソート順に依存せず、列名のエイリアス差異にも寛容で、数値は有効数字4桁まで許容されると説明されています。ブランチ単位で実行・比較でき、AI Studio内のエージェント改善ループに組み込まれる点も実務的です。
Business Intelligence
Sigma
表の各行にAIプロンプトを実行できる「AI Columns」
表の各行に対して自然言語プロンプトを実行し、AI生成結果を列として返す「AI Columns」が追加されました。Snowflake・Databricks接続顧客向けのBeta提供です。
AI Columnsは、テーブル内の1つ以上の列を参照してプロンプトを実行し、結果をテキストまたは構造化JSONとして返します。最初の100行でプレビューし、プロンプトを調整した上で全体に適用できる設計です。
ユースケースとして、欠損フィールドの補完、業種分類、サポートチケットの分類、通話記録や自由記述の要約などが紹介されています。実行はSnowflakeやDatabricks側のAI関数を通じて行われ、結果はデータプラットフォーム側に書き戻されます。また、Sigma側でキャッシュし、入力が変わった行だけ再実行することでコスト制御にも配慮されています。
ThoughtSpot
AIアナリストがビジネスコンテキストを記憶する「Spotter Memory」
AIエージェント「Spotter」がビジネスコンテキストを記憶する「Spotter Memory」が発表されました。
Liveboard、会話中の修正、ConfluenceやSharePointなどの接続ソース、CSVアップロードなどから知識を取得し、「Rules(ビジネス定義)」「Recipes(正解に至るクエリパスやフィルタ、ロジック)」の2形態で保持します。
また、データモデル単位のメモリと個人単位のメモリを分けて扱う設計になっています。CRMデータに対する質問ではCRMモデルに紐づくメモリを取得し、個人の作業スタイルや補正は個人レイヤーに留めることで、組織の定義を上書きしないようにしています。
さらに、Spotterが学習した内容は可視化・編集可能であり、行レベル・列レベルのアクセス制御も維持されると説明されています。
Power BI
AIエージェントがDesktopセッションに直接接続する「Power BI Desktop Bridge」がプレビュー
外部アプリやAIエージェントが起動中のPower BI Desktopセッションに直接接続できる軽量ローカルサーバー機能がプレビューとして追加されました。
Bridgeにより、外部アプリやエージェントは、現在開いているレポートの状態確認、ファイル編集後のリロード、スクリーンショット取得、変更のリアルタイム検証などが可能になります。
これまでAIエージェントはPower BI Desktop上の状態を直接確認できず、生成した変更を検証しづらい課題がありました。Desktop Bridgeにより、「編集 → Desktopに反映 → スクリーンショットで検証」というループを組めるようになる点が大きいです。
Omni
Databricks ISV Emerging Partner of the Yearを受賞
Omniが2026年のDatabricks Partner Awardで「ISV Emerging Partner of the Year」を受賞したと発表しました。
Databricks Venturesが出資する初めてのBI企業として位置づけられており、Unity CatalogのMetric Viewsとの双方向接続や、スキーマ更新時のメトリクス自動同期、Metric View Generatorスキルを通じたOmni側の更新のUnity Catalogへの反映など、Databricksとの統合を積み重ねてきたことが評価の背景にあるようです。
Data Activation (Reverse ETL)
Hightouch
アイデアから施策実行まで数分の「Lifecycle Studio」
Hightouchが「Lifecycle Studio」を発表しました。ブランド・顧客・過去キャンペーン実績のコンテキストを持つAIエージェントが、企画からコンテンツ生成、配信オーケストレーション、効果測定までを数分で実行します。
従来4〜6週間・50ステップかかっていたライフサイクルマーケティングのワークフローを大幅短縮する狙いで、早期顧客のThumbtackはキャンペーンサイクルを6週間から数日に短縮、クロスチーム工数を75%削減と報告しています。
Reverse ETLベンダーからAIネイティブなマーケティングプラットフォームへの転換が、さらに一段進んだという印象です。
Data Quality・Data Observability
Monte Carlo
AIエージェントの「サイレント障害」を診断する「Agent Health」
登録済みの全AIエージェントに対し自動で洞察レイヤーを提供し、修正すべき最優先課題を証拠付きで提示する新機能「Agent Health」がPreviewとして発表されました。トラブルシューティング用エージェントが古いモデルバージョンを使い続けていたことによるパフォーマンス低下を自動検出する例が紹介されています。
同日、単一レスポンスではなく複数ターンの会話全体を評価する「entire-conversation evaluation」機能も発表されており、満足度スコア(1〜5段階)の自動算出や、低評価会話をアラートページで直接確認できるようになりました。
Orchestra
「AIエージェントのためのコントロールプレーン」Orchestra Runtimeを発表
OrchestraがAIエージェント向け新製品「Orchestra Runtime」を発表しました。
Infrastructure、Agent Builder、Agent Orchestrator、Agent Contextの4要素で構成され、データパイプラインの問題を自動検出・修正する自己修復システムの構築を可能にするとしています。Snowflake、Databricks、dbt、Fivetranなど既存の主要ツールと統合できます。





