【ブースレポート】日産の AI Defined Vehicle を支える次世代ソフトウェア開発基盤のデモを見学してきた #AWSSummit

【ブースレポート】日産の AI Defined Vehicle を支える次世代ソフトウェア開発基盤のデモを見学してきた #AWSSummit

re:Invent 2025 からの進化や、自然言語で機能を実装して実車へ OTA 配信するデモの様子を見られました。
2026.07.06

こんにちは、製造ビジネステクノロジー部の若槻です。

AWS Summit Japan 2026 の AWS for Automotive ゾーンで、日産自動車株式会社(以降、日産)による「AI ディファインドビークルの実現を加速する次世代ソフトウェア開発基盤」の展示を見学しました。ミニセッションでは実車(LEAF 試作車)へ新しいソフトウェアを OTA(Over-The-Air)配信して動かすデモを見ることもできました。


日産ブースの全景(画像加工で通行人を消去済み)

日産自身による本展示の紹介記事はこちらです。

https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/260624-01-j

ブース担当の方からはブログ化の許可を頂けました。ありがとうございました。

本記事では、実際に見学して特に印象に残った以下の 3 点に絞ってレポートします。

  • re:Invent 2025 からの進化
  • 車両デモ(自然言語からのライブ実装 → 実車への OTA 配信)
  • サードパーティーへの公開方針について質問してみた

re:Invent 2025 からの進化

本デモで紹介されていた SDV(Software-Defined Vehicle)プラットフォーム「Nissan Scalable Open Software Platform」は、AWS re:Invent 2025 のセッションでも紹介されていた構想です。以前執筆したセッションレポートではアーキテクチャや背景を中心にまとめていました。

https://dev.classmethod.jp/articles/reinvent-2025-ind382-nissan-software-defined-vehicle/

re:Invent 2025 では、このプラットフォームが以下の 3 レイヤー(Open SDK / Open Data / Open OS)で構成されるという 構想・アーキテクチャの紹介 が中心でした。今回の AWS Summit Japan 2026 では、その構想が実車デモとしてどのように具現化されていたのか を見ることができました。構想から実演へと大きく進化していたのが最大のポイントです。

また、今回のブースで初めて「AI Defined Vehicle」という概念を耳にしました。これは、これまでの SDV(Software-Defined Vehicle、ソフトウェアで定義されるクルマ)をさらに一歩進め、AI を前提(デフォルト)とした次世代のクルマ を指す考え方のようです。SDV がソフトウェアによって進化し続けるクルマであるのに対し、AI Defined Vehicle は AI が開発から運転・車内体験までを支える姿を目指しているものと理解しました。

https://www.nissan-global.com/JP/COMPANY/PLAN/VISION/INTELLIGENCE/

具体的に、今回新たに得られた情報は次のとおりです。

  • AI Defined Vehicle という枠組みの提示:AI ドライブ(AI による自動運転)、AI パートナー(車内 AI エージェント)、AI ソフトウェア開発(AI による開発効率化)の 3 つの技術領域が示され、今回のデモは 3 つ目の「AI ソフトウェア開発」が中心テーマでした。
  • Applied Intuition との共同開発の明示:次世代 AI Defined Vehicle の実現に向け、展示車両・開発ツール・Vehicle Software を両社で共同構築していることが紹介されました。
  • 実車への OTA ライブデモ:構想レベルだった開発フローが、実車(LEAF 試作車)への OTA 配信まで含めて実演されました。


AI Defined Vehicle を構成する 3 つの技術領域(AI ドライブ / AI パートナー / AI ソフトウェア開発)


AI Defined Vehicle 全体アーキテクチャ。AI ドライブと AI パートナーは SDV プラットフォーム「Nissan Scalable Open OS」の上で動作する


SDV 基盤を構成する 3 要素。①Vehicle OS(Vehicle API で車両制御)、②Open Data(車両データ収集・管理)、③Open SDK(開発環境)。Vehicle API は将来的に他社との共通化も検討


Applied Intuition との共同開発。展示車両も両社で構築した試作車とのこと

Applied Intuition はシリコンバレー発の Physical AI 企業で、自動車以外にもトラック・建機・農業など幅広いモビリティ分野を支援しているそうです。日産とは 2022 年から先進運転技術領域で業務提携しています。Applied Intuition 自身による本展示のレポート記事も公開されています。

https://www.appliedintuition.com/ja/blog/nissan-applied-intuition-aws-summit-japan

車両デモ:自然言語で「ドアを開けるとハザードが点灯する機能」をライブ実装

ここからが今回の目玉である車両デモです。デモのお題は 「ドアを開けるとハザードが自動点灯する機能」を AI を使ってライブ実装する というもの。まずは機能が未搭載の初期状態を確認します。


デモ内容の説明。まずは機能未搭載の初期状態を確認する

そしてこのデモは会場参加型で、「ハザードを何回点灯させるか」を観客が決める という趣向でした。今回は「4 回」に決まり、それを自然言語のプロンプトとして AI へ入力します。


会場参加型デモ。観客に点灯回数(今回は 4 回)を決めてもらい、自然言語プロンプトとして AI へ入力する

デモに入る前に、車載ソフトウェア開発の課題として、①インターフェース設計の複雑化、②テストシナリオ作成工数の増大、③多くのステークホルダーによる QA でフィードバックループが長くなること、が挙げられていました。これらに対し、人中心の V 字開発から、AI を各工程に組み込む「AI 中心型開発プロセス」へ移行することで、開発生産性の向上とコスト削減を目指すとのことです。


AI ネイティブ開発フロー。自然言語による要件定義 → アーキテクチャ設計 → コード生成 → SIL 環境でのテスト → OTA 配信・車両テストを一気通貫で実施する。各工程では人がレビューして安全性を担保する

実際のデモでは時間の都合上、要件定義・設計は省略し、実装 → SIL テスト → OTA の 3 工程がライブで実演されました。これらは Applied Intuition と共同開発したクラウド開発環境上で行われ、AI によるコーディング・SIL テスト・トレーサビリティが統合されています。開発期間を数か月から数時間・数分へ短縮することを目指しているそうです。


Applied Intuition と共同開発したクラウド開発環境。コーディング・SIL テスト・トレーサビリティを統合

このクラウド開発環境は AWS 上に構築されており、Amazon EKS を中心に開発環境・テスト環境・CI/CD をコンテナ化し、ブラウザから利用できる開発基盤となっています。これは Applied Intuition の Development Tooling Sandbox 上で動作しているとのことでした。


AWS 上の構成。Amazon EKS を中心に開発・テスト・CI/CD をコンテナ化している

そして OTA 配信後、実車でハザード自動点灯機能が正常に動作することを確認できました。会場で指定した「4 回点灯」が期待どおりに実装されており、まさに自然言語からのライブ実装が実車まで到達した瞬間でした。


OTA 配信後、実車でハザード自動点灯機能が正常に動作することを確認


会場で指定した「4 回点灯」が期待どおり実装されたことを実演(乗車しているのは後述のヌヌさん)

私からの質問:サードパーティーへの公開方針

re:Invent 2025 のレポートでも触れましたが、私が特に注目しているのは このプラットフォームがサードパーティに開放される という点です。そこで、サードパーティーへの公開方針についてブース担当者の方に質問してみました。

すると、このスライドに戻って補足説明をしてくださいました。


質問への回答として、SDV 基盤の 3 要素のスライドに戻って補足説明が行われた

担当者の方からは、SDK は Vehicle API の上で動作するアプリケーション開発環境であり、サードパーティーへの公開については、安全性を担保するためのガードレールを整備した上で段階的に進めていく構想である との説明がありました。

車両制御という安全性が最重要となる領域だけに、いきなり全面開放するのではなく、ガードレールを整えながら段階的に広げていくというアプローチは非常に納得感がありました。オープンなエコシステムの広がりに引き続き注目していきたいと思います。そして、そうしたエコシステムが広がっていく中で、あわよくば弊社クラスメソッドも開発に参加できる余地があるのかな、とも考えています。

おわりに

AWS Summit Japan 2026 の日産ブースで見学した、AI Defined Vehicle を支える次世代ソフトウェア開発基盤の車両デモをレポートしました。

re:Invent 2025 では構想として語られていたプラットフォームが、自然言語からの実装 → SIL テスト → 実車への OTA 配信という形で実際に動くところを見られたのは、非常に刺激的な体験でした。今後のロードマップとしては、FY26 に SDV プラットフォームの導入を開始し、その後 AI ドライブ・AI パートナー技術へ段階的に展開して AI Defined Vehicle を実現していく計画とのことです。引き続き動向に注目していきたいと思います。

なお余談ですが、実車デモでクルマに乗っていたのは元クラスメソッド所属で現・日産所属の NuNu(ヌヌ)さんでした。かつての同僚が最先端の SDV 開発の現場で活躍している姿を見られて、思いがけずうれしい邂逅となりました。

以上

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