Jensen Huang CEO もサプライズ登場した Build a Claw Tokyo に参加してきました

Jensen Huang CEO もサプライズ登場した Build a Claw Tokyo に参加してきました

NVIDIA主催の「Build a Claw Tokyo」に参加してきました。AI エージェント、フィジカル AI、そしてエンタープライズ設計の最新動向をテックトーク3本で学び、Jensen Huang CEO のサプライズ登壇に加え、製造現場で使える SOP Monitoring Blueprint など、実践的な展示も多数見学。イベント全体の参加レポートをお届けします。
2026.07.16

はじめに

こんにちは、クラスメソッド製造ビジネステクノロジー部の森茂です。

2026 年 7 月 15 日、NVIDIA 主催のコミュニティイベント「Build a Claw Tokyo」に参加してきました。イベント名の Claw は、話題の自律型 AI エージェント OSS である OpenClaw と、それを NVIDIA がセキュアランタイムごとパッケージしたエンタープライズ版の NemoClaw に由来します。こうしたエージェントを「実際に試して、学んで、作っている人たちと出会う」ことをテーマにしたイベントで、テックトーク 3 本とライブデモ、ネットワーキングという構成でした。

https://luma.com/bac-tokyo

会場となった八芳園の門

会場は白金台の八芳園。着いてまず驚いたのが人の多さです。入場列が 45 分待ちという声も聞こえてくるほどで、当初は各デモに 5 名程度の人数制限がかかっていたものの、行列が伸びる一方で途中からは制限を外して回す運用に切り替わるほどの熱気でした。そして後半には、スペシャルゲストとして Jensen Huang CEO がサプライズ登壇するという、平日夕方のコミュニティイベントとは思えない展開が待っていました。

Build-a-Claw のバナーが掲げられた会場を埋め尽くす参加者

この記事では、テックトーク 3 本の要点と Jensen Huang CEO 登壇の様子、そして展示の中でとくに気になった SOP Monitoring Blueprint を参加レポートとしてまとめます。

イベント概要

イベントの基本情報は以下のとおりです。

  • 開催日: 2026 年 7 月 15 日午後
  • 会場: 八芳園(東京・白金台)
  • 主催: NVIDIA
  • 構成: テックトーク 3 本(15:00〜16:00)+ ライブデモ(14:00〜18:00)+ ネットワーキング

テックトークは 1 本 20 分の 3 本立てです。

セッション 登壇者 主なトピック
AI エージェント時代、始動 エヌビディア 田仲顕至氏 Nemotron 3、NVIDIA Agent Toolkit、OpenShell、NeMo Switchyard
フィジカル AI 時代の開発最前線 エヌビディア 荒井謙氏 データファクトリー、Cosmos 3、OSMO、Isaac、FOX
デモから業務システムへ フィックスターズ 佐藤瑶氏 エージェントの業務導入、自律性と確実性の設計、NemoClaw 活用

セッション後はデモ展示とネットワーキングの時間で、17 時頃にサプライズゲストの登壇と抽選会という流れでした。順番に見ていきましょう。

Nemotron と Agent Toolkit を総覧する「AI エージェント時代、始動」

1 本目はエヌビディア合同会社の生成 AI シニアデベロッパーリレーションズマネージャー、田仲顕至氏によるセッションです。2022 年の ChatGPT、2025 年の DeepSeek によるリーズニングのオープン化、そして 2026 年の OpenClaw に代表される長時間駆動する自己進化型エージェントの登場という流れを振り返り、「LLM とハーネスが両輪で回り始めたのが今このタイミング」という現在地の整理から始まりました。ハーネスは LLM の入出力を繰り返し、途中にツールを挟んで結果を観測しながら、目標に向かって長時間試行錯誤させるレイヤーです。手元でオープンなエージェントを作れる時代になった、という位置づけですね。

その上で紹介されたのが、業務特化エージェントを作るためのリファレンスアーキテクチャである NVIDIA Agent Toolkit for Enterprise です。エージェント実行環境の NemoClaw、その土台となるセキュアランタイムの OpenShell、AI-Q や cuOpt などのスキル群、そして頭脳となるオープンモデルの Nemotron までがオープンに揃う構成になっています。デモではワンコマンドのインストールから、エージェントが Claude Code のような CLI 対話形式で立ち上がって、背後でオープンモデルの Nemotron 3 Ultra が動くまでの流れが映されました。/goal コマンドで目標を与えると長時間自律的に動き続けるデモとして、Andrej Karpathy 氏の nanochat の実装やモデル最適化の自動リサーチが例に挙がっていたのが印象的です。

エージェントの頭脳となるオープンモデル Nemotron 3 は、Ultra(550B-A55B)、Super(120B-A12B)、Nano(30B-A3B)の 3 サイズにビジョン系の Omni、スピーチ系、セーフティ系を加えたラインナップで、旗艦は 6 月発表の Nemotron 3 Ultra です。エージェントの生産性や指示追従性、深い思考が必要なタスクで強みがあり、コーディングでは一部劣る部分もあると正直に語られていました。GPU を知り尽くしている立場からの効率化で、Kimi K2.6(1T)や GLM-5.1(744B)、Qwen3.5(397B)といったオープンなフロンティア級モデルとの比較で推論速度は 5 倍、タスク完了あたりのコストは最大 30% 削減という説明です。

セキュリティ面では、エージェントをサンドボックスで囲い、出入りをゲートウェイのホワイトリストで制御するランタイム OpenShell が紹介されました。どんなに賢いモデルでもプロンプトインジェクションやジェイルブレイクは仕掛けられるので、企業でエージェントを使うならガバナンスを効かせる仕組みが必要という文脈です。NVIDIA 製エージェント専用ではなく、Codex など他のエージェントとも併用できる点は覚えておきたいところですね。

もう 1 つ、コスト最適化の文脈で NeMo Switchyard にも触れられました。高価なフロンティアモデルにプランだけ作らせて、実行はローカルの Nemotron に任せるという分業の提案です。「Claude Code、最近高くなりましたよね」という語りかけを交えた紹介でした。Switchyard は自分も以前 first-touch 記事を書いているので、興味のある方はこちらもどうぞ(2026-07-03 時点の記事です)。

https://dev.classmethod.jp/articles/nvidia-nemo-switchyard-first-touch/

NVIDIA Agent Toolkit for Enterprise AI の全体像スライド
NVIDIA Agent Toolkit の全体像。NemoClaw の枠内に LangChain や OpenClaw などのハーネスが差し替え可能な形で並び、土台に OpenShell、右側にスキル群と Nemotron などのモデルが揃う。

Cosmos と Isaac が主役の「フィジカル AI 時代の開発最前線」

2 本目はエヌビディア合同会社のロボティクス デベロッパーリレーションズ シニアマネージャー、荒井謙氏によるフィジカル AI のセッションです。ビジョンとランゲージを入力にアクションを生成する VLA(Vision Language Action)を軸に、自動運転、インフラ、ロボット、ヘルスケアへ展開していくというコンセプトの整理から入り、「日本が得意としてきたスペシャリスト型の自動化と、VLA によるジェネラリスト型の柔軟性のいいとこ取りを目指す」という方向性が示されました。

課題として真っ先に挙がったのがデータです。実世界データは少量でコストが高く、シミュレーションで補完しても、LLM が享受したウェブ規模の大量データに相当するものがフィジカル AI にはありません。これに対する NVIDIA の回答が、「Compute is Data」を合言葉に計算によってデータを生成・増強していくアプローチであり、その工場にあたるフィジカル AI データファクトリーです。ワークフローオーケストレーションの OSMO と、世界基盤モデルの Cosmos がその中核として紹介されました。

OSMO は、シミュレーション、学習、エッジといった異なる計算環境にまたがるワークフローを 1 つの YAML で記述して実行できる、フィジカル AI の構築・テスト・検証のためのオープンソースフレームワークです。Claude Code や Codex のようなコーディングエージェントに構築や運用を任せる使い方にも言及があり、エージェント AI とフィジカル AI が地続きであることを感じさせます。Cosmos は 6 月の GTC Taipei で発表された Cosmos 3 が取り上げられ、自己回帰モデルとディフュージョンモデルを組み合わせた Mixture-of-Transformers 構成に、テキスト、画像、ビデオ、オーディオ、アクションを自由な組み合わせで入出力できるオムニモデルという説明でした。映像のリーズニング、背景の差し替え、未来フレームの予測、ロボットポリシー学習まで、1 つのモデルファミリーでカバーする構想です。自動運転で子どもの飛び出しのような希少な危険事象を学習データとして生成する例は、ワールドモデルの使いどころとして分かりやすいものでした。

製造業向けには、NVIDIA Factory Operations Blueprint(FOX)が紹介されました。工場に AI のブレーンを与えるという触れ込みの reference blueprint です。セルごとに正確なルール設計と部分最適化を積み上げてきた現場に対して、エージェントが工場内のシステムを発見・統合し、セルのマネジメントまで担うアプローチで、動画分析や不良品画像の生成、CAD データからのデジタルツイン構築(CAD-to-SimReady)などのスキルが用意されているそうです。計算リソースは小規模工場なら DGX Spark、中核が DGX Station、マルチプラントの大規模展開は GB300 NVL72 という 3 段のスケールで示されつつ、「最初は手持ちの環境からのスタートでいい」と付け加えられていたのは誠実だなと感じました。

ロボット開発系は駆け足の紹介でした。シミュレータの Isaac Sim 6.0 が GA になり、MCP サーバー連携と物理エンジンの刷新が入っています。個人的に気になったのはロボット学習向けの Isaac Lab 3.0(まだベータ版)で使える物理エンジン Newton で、Google DeepMind と Disney Research との共同開発により、粒子や柔軟物の挙動までシミュレーションできるそうです。ほかにも、実空間への展開前にソフトウェア内でテストする Isaac SIL や、合理的判断の部分に Cosmos Reason を使うヒューマノイド基盤の Isaac GR00T が挙げられ、ここでも Cosmos が顔を出します。フィジカル AI 向けのエージェントスキルが build.nvidia.com の Agent Skills に増えているという案内もあったので、後で漁ってみようと思います。

フィジカル AI におけるデータギャップを示すデータピラミッドのスライド
ータピラミッドのスライド。頂点の実世界データは少量でコスト高(24 Hrs / Robot / Day)、中段のシミュレーションには Sim2Real 問題が残り、底辺のウェブデータはそのまま使えるかが課題と整理されている。

フィックスターズが語る「デモから業務システムへ」

3 本目は NVIDIA パートナーである株式会社フィックスターズの佐藤瑶氏による「デモから業務システムへ ― NVIDIA NemoClaw 時代のエンタープライズ AI エージェント設計」です。キーメッセージは冒頭で言い切られました。AI エージェントをデモから業務システムに進化させる鍵は、エージェントそのものではなく、その自律を支えるシステム設計にあるというものです。エージェントの課題の中心は賢さから信頼性に移っており、1 を聞いて 10 を答える賢さは業務システムではそのままリスクに転化する。デモは 1 回動けばよいですが、業務システムは動き続ける必要があり、権限、ポリシー、障害対応、監査可能性が求められる、という整理でした。

実践面では、共同開発中の ERM(エンタープライズリスクマネジメント)プラットフォームを題材に、抽象的なリクエストの解釈はエージェント、定型処理はワークフロー、重要操作の承認は人間、という 3 者の組み合わせが紹介されました。その上で、承認だけでは API キーの流出のような事故は防げないとして、NemoClaw を採用し、OpenShell のサンドボックスによる隔離と認証情報の遮蔽を実際に使っているそうです。NemoClaw はエージェントそのものではなく、エージェントに安全に自律性を発揮させるための基盤である、という捉え方は自分の中でもしっくりきました。ガードレールが守れるのは想定内の事象までで想定外を減らすのは設計者の仕事、プロンプトに入った情報の流出リスクはゼロにできない前提でテイクできるリスクかを判断する、といった設計の勘所も持ち帰りの多い内容でした。

エンタープライズに必要な設計原則のスライド
エンタープライズに必要な設計原則のスライド。最小権限、重要操作の制御、実行の追跡、異常時の復旧の 4 原則を、実現する仕組みと目的つきで整理している。

Jensen Huang CEO のサプライズ登壇

セッション後のデモタイムの途中、「スペシャルゲストが秋葉原から移動中」というアナウンスが入ります。誰が来るのかは最後まで明かされないまま、17 時頃に現れたのは本物の Jensen Huang CEO でした。

Finally useful. After working on AI for 15 years, AI is now useful.

15 年 AI に取り組んできて、AI はついに使いものになった、というひとことから始まったスピーチの核は「パーソナル AI」でした。40 年前にパーソナルコンピュータの革命が始まり、40 年後の今、誰もがパーソナルコンピュータの代わりに自分だけのパーソナル AI を持てるようになる。だから自分のエージェントを作りに来ているみんなに会えて嬉しい、という趣旨です。

そして手に取ったのが DGX Spark です。2016 年の初代 DGX-1 の系譜を継ぐパーソナル AI スーパーコンピュータとして、「ベビー版だがほぼ同等の性能。128GB、1 ペタフロップス、NVFP4」と紹介されました。初代 DGX-1 の誕生秘話も披露されます。作った当時は AI の需要がなく顧客はゼロ。唯一の「顧客」が友人の Elon Musk 氏で、彼はお金持ちなのに「最初の 1 台を寄贈してほしい」と頼んできた。その寄贈先が、当時非営利だった OpenAI だった、という話です。手元の DGX Spark で日々検証している身としては、この由来を本人の口から聞けたのはなかなか感慨深いものがありました。

DGX Spark を手にスピーチする Jensen Huang CEO
DGX Spark の実機を手に「パーソナル AI」を語る Jensen Huang CEO。トレードマークのレザージャケット姿で、この距離感で見られるのはコミュニティイベントならではだった。

スピーチの締めはサイン入り DGX Spark の抽選会です。2 名の当選者が読み上げられ、Jensen 氏から直接ボックスが手渡されました。自分はというと、残念ながら当たらず。目の前で動画だけは撮ったので、よしとします。

展示で一番気になった SOP Monitoring Blueprint

デモ展示は 9 本立てで、入門向けの「Getting Started with Claw Agents」から、DGX Spark 上での OpenClaw によるブラウザ操作、Claw エージェントによる Isaac Sim のライブ制御、Cosmos 3 と組み合わせた Unitree G1 ヒューマノイド、SB Intuitions さんによる音声マルチモーダルなモデルパーソナライズまで幅広い並びでした。その中で製造業の案件を担当する自分が一番長く張り付いていたのが、SOP Monitoring Blueprint の展示です。

https://github.com/NVIDIA/sop-monitoring-blueprints

SOP(Standard Operating Procedure)は製造現場などの標準作業手順のことです。デモでは、作業を撮影した動画を読み込ませると VLM が解析し、UI 上の動画タイムラインに作業手順がタイムスタンプ付きで並びます。あらかじめ blueprint 側に定義しておいた正規の手順(デモでは 9 手順)と照合して、部品の付け忘れや順番間違いを OK/NG として構造的に判定してくれるという流れです。ブースで聞いたところ、別の作業者が実施した動画を渡しても、正しい手順でやっていればきちんと手順 1、2、3 と認識されるとのこと。今回のデモは収録済み動画の解析で、ストリーミングでの逐次解析はマシンパワー次第だそうです。UI もワークフロー定義も含めてオープンソースで公開されているという点は驚きです。

帰宅後にリポジトリを覗いてみると、単発のデモアプリではなく、学習から推論までを一気通貫でカバーする構成になっています。SOP 特化の VLM と時系列セグメンテーションモデルを準備する training マイクロサービスと、DeepStream ベースで低遅延推論を行う inference マイクロサービスの 2 本柱に、データ拡張から Cosmos Reason 系 VLM のファインチューニング、評価までを担う agentic skills 群が付属する形です。ワークフローの全体像を図にすると以下のようになります。

自前の作業動画にアクションの開始・終了タイムスタンプを付けてアノテーションし、そこから QA ペアを生成して VLM をファインチューニングするという流れなので、汎用 VLM のプロンプト頼みではなく現場の手順に特化したモデルを作れるのがポイントです。NVIDIA のモデル・コンテナ配布カタログである NGC には、サーバーのファンと電源の取り付け作業を題材にしたサンプルデータセットが公開されていて、手持ちの動画がなくても試せるようになっています。ライセンスはコードが Apache 2.0 です。工場のカメラ映像で「決められた手順どおりに作業されているか」を確認したいという相談は実際に多く、このワークフローがオープンで手に入るのはかなり実用的だなと感じています。

SOP UI のデモ画面
デモの SOP UI。サーバーへのファン取り付け動画がタイムライン上で手順ごとに色分けセグメント化され、右上に SOP OK の判定が出ている。

DGX Station の実機も展示されていた

もう 1 つ、個人的に見ておきたかったのが DGX Station の実機です。DGX Spark は手元にありますが、Station の実物を見るのは初めてでした。セッション 2 で FOX の実行環境として名前が挙がっていたクラスのマシンが、そのまま会場に置いてあるのは説得力がありますね。(写真を撮り忘れていました。。。)

まとめ

テックトーク 3 本で「エージェントの今」から「フィジカル AI」、そして「業務システム化の設計」までを一気に俯瞰でき、展示とネットワーキングも含めて密度の高いイベントでした。テックトークのクロージングで田仲氏から、NVIDIA Japan の YouTube で自分が出演させていただいた OpenShell のトークセッションが公開されているという紹介があったのも、個人的には嬉しい一幕でした。何より、コミュニティイベントに Jensen Huang CEO 本人が現れてパーソナル AI を語る場面に立ち会えたのは、参加した甲斐がありました。

https://www.youtube.com/watch?v=XkDAY80zD5I

参考リンク


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