GTC Berlin 2026 の Jensen Huang 基調講演をまとめてみた

GTC Berlin 2026 の Jensen Huang 基調講演をまとめてみた

GTC Berlin 2026 の基調講演を同日の公式発表をもとに整理しました。6 月の Taipei から組み直されたエージェントの 5 要素、DSX POD、OpenShell Reference Architecture、最後の Microduck のデモを紹介します。
2026.10.21

はじめに

こんにちは、クラスメソッド製造ビジネステクノロジー部の森茂です。

2026 年 10 月 21 日、ドイツのベルリンで開催中の NVIDIA GTC Berlin で、Jensen Huang CEO の基調講演がありました。

https://www.youtube.com/live/PvFjbPYEOZI

講演の最中から NVIDIA のブログとニュースルームには発表が次々と公開され、プレスキットにはプレスリリース 8 本とブログ 9 本が並びました。DGX Spark や OpenShell を触ってきた身としては気になる話が多く、6 月の GTC Taipei からの変化も含めて一通り整理してみました。

この記事では、基調講演の流れに沿って主な発表を紹介します。

基調講演の流れと 6 月の Taipei からの変化

講演はトークンを「知能を生む新しい工場の産物」として描くオープニング映像から始まりました。

https://youtu.be/VsZpy3aFLeY

全体の流れは次のとおりです。

話題 主な発表
欧州との 33 年と AI の 5 層ケーキ 欧州に約 100 億ドルをコミット
フルスタックと Vera Rubin の実機 全面液冷の Vera Rubin
DSX と DSX POD 工場で組んで運ぶ AI 工場
エージェントの 5 要素と OpenShell OpenShell Reference Architecture
オープンモデルと Agent Knowledge Foundation Nemotron 3.5、Kumo
フィジカル AI Hyperion、Agile ONE SN
RTX Spark と DGX Station 手元でエージェントを開発する PC
Microduck のデモ RTX Spark でロボットの学習を段取り
クロージング映像 講演の中身を歌で振り返る

6 月の GTC Taipei の基調講演と並べると、次のような違いがあります。

テーマ Taipei(6 月) Berlin(10 月)
エージェントの要素 Model、Harness、Tools、Skills、Runtime model、harness、sandbox、knowledge、tools
OpenShell エージェントの runtime 5 要素の sandbox。Reference Architecture を公開
知識 要素名にはない Agent Knowledge Foundation
AI 工場 RTX、DGX、DSX の三層 工場で組んで運ぶ DSX POD
RTX Spark 発表 10 月 16 日に発売済み
地域の語り方 台湾のサプライチェーン 欧州は AI を生産する側に回れる

いちばん大きな変化は、エージェントを説明する要素名の組み替えです。sandbox と knowledge が名前を持った要素になり、OpenShell は sandbox の要素として位置づけ直されました。

Vera Rubin のフル量産や、CUDA-X をエージェントの道具と位置づける話は Taipei から据え置きです。

AI を消費する側から生産する側へという欧州への呼びかけ

講演の前半は、NVIDIA と欧州の 33 年の関係から始まりました。最初期のチップを欧州の SGS-Thomson と作り、ドイツの ELSA がワークステーション市場への入口になった、という歴史です。

そのうえで、AI を「エネルギー、計算機、AI 工場、モデル、アプリケーション」の 5 層ケーキとして整理しました。NVIDIA は欧州の技術エコシステムに約 100 億ドルをコミットしており、パートナーは 12,000 を超えるそうです。

この章でいちばん強く打ち出していたのが次の一文です。

To be part of this AI economy, you don't want to just be consuming the AI; you want to be producing the AI. We could do all of that here in Europe, and in fact, we've already started.

AI を使うだけでなく作る側に回るべきで、欧州ではそれがすでに始まっている、という呼びかけです。Taipei が台湾のサプライチェーンを前面に出していたのに対して、Berlin は 5 層のどこを自前で持つかを問う講演だったように思います。

Vera Rubin の実機と、工場で組んで運ぶ DSX POD

ハードウェアでは、フル量産に入った Vera Rubin の実機が壇上で紹介されました。ケーブルも配線もない 100% 液冷のトレイで、組み立ての手間が大きく減ったそうです。Huang CEO は、チップからアルゴリズムまでを同時に設計し直す extreme co-design で、この 10 年で AI の性能を 100 万倍にしたと強調していました。

新発表の 1 つ目は NVIDIA DSX POD です。Vera Rubin の AI 工場一式をパートナーがモジュール型のコンテナの中で組み、動作確認まで済ませてから現地に届けるリファレンスデザインです。

プレスリリースによると、準備の整った敷地なら導入期間を 6 か月から最短 14 日に縮められます。提供は 2027 年初頭の予定です。届いた計算機が動き出すまでの時間をどう縮めるかに、講演でもかなりの時間を割いていました。

あわせて、冷却水を最大 100% 削減し、同じ出力を最大 30% 少ない電力で出せる DSX の AI 工場プラットフォームを、欧州のパートナーが採用することも発表されています。

エージェントを 5 つの要素で組み立て直した

講演の中盤で、Huang CEO はエージェントを 5 つの要素で説明しました。

There are five things. There's the model. There's the harness, the sandbox that the harness sits in, and two other things: knowledge and tools.

5 要素と、それぞれに対応するものを表にすると次のようになります。

要素 講演での説明 対応するもの
model 知覚、推論、計画を担う Nemotron などのオープンモデルと、クローズドモデル
harness エージェントの外骨格 OpenClaw、Hermes、OpenHands など。自作も可
sandbox harness を周りから切り離す OpenShell と NVIDIA Sentry
knowledge 社内の文書やデータにつなぐ Agent Knowledge Foundation
tools 専門の計算をこなす CUDA-X ライブラリ

harness は「デジタルエージェントの外骨格」と呼ばれ、OpenClaw、Hermes、OpenHands などの名前が挙がりました。自分が DGX Spark で動かしてきた Hermes Agent も、その 1 つです。

OpenShell Reference Architecture のプレスリリースには、"agents can think on Rubin, act on Vera and be governed on BlueField" という Huang CEO のコメントがあります。推論は Vera Rubin、harness とツールの実行は Vera CPU、統制は BlueField-4 という分担です。

OpenShell と Sentry でエージェントを外側から縛る

sandbox については、OpenShell と Sentry の紹介映像を交えて説明がありました。

Please don't delete anything. (...) Please don't touch my SSH keys. That's the please don't approach. But hope isn't security.

「消さないで」「SSH 鍵に触らないで」とお願いするだけでは安全にならない、という問題提起です。

OpenShell は、エージェントごとに sandbox を作り、システムコール、ファイル、ネットワークの単位でポリシーを強制するランタイムです。鍵は sandbox の外の supervisor が持ち、許可された宛先への通信にだけ付け加えます。

BlueField-4 上で動く NVIDIA Sentry は、エージェントの動きを別の経路から監視します。意図しない動きを見つけると、モデルとの接続を切って隔離する仕組みです。

今回新しく出たのは、この 2 つを AI 工場から RTX Spark や DGX Spark まで通して組むための NVIDIA OpenShell Reference Architecture です。パートナーには Anthropic、AWS、Google Cloud、Microsoft、OpenAI などが並びました。

権限は固定できず、タスクや使う人によって動的に変える必要がある、という指摘もありました。自分が 9 月に OpenShell 0.1.0 系を触ったときは、稼働中に変えられる policy は network の節だけでした。動的な権限をどこまで持てるのかは、Reference Architecture で確かめたいところです。

https://dev.classmethod.jp/articles/openshell-0-1-0-pi-subagent-sandbox/

(2026-09-26 時点の記事です。当時の OpenShell は 0.1.0 系でした)

オープンモデルと Agent Knowledge Foundation で自社データをつなぐ

model の章では、Nemotron、Cosmos、GR00T、Alpamayo、Ising、Earth-2 の 6 系統のオープンモデルが紹介されました。重みだけでなく、学習データと再現用のスクリプトまで公開している点も強調されています。

面白かったのは、Huang CEO が「NVIDIA のモデルは、とくに言語ではフロンティアの最先端というわけではない」と認めたところです。そのうえで、自社データでポストトレーニングすれば、手元のデータを sovereign intelligence に変えられると続けました。

同日のオープンモデルのブログでは、10 月 15 日の Nemotron 3.5 Super VL と Bolt 74B に続き、小型の Bolt E4B 4GB が 10 月 23 日に公開予定と書かれています。Super VL と Bolt 74B は、自分も公開直後に DGX Spark で動かしました。

https://dev.classmethod.jp/articles/dgx-spark-nemotron-3-5-super-vl-first-touch/

https://dev.classmethod.jp/articles/dgx-spark-nemotron-3-5-bolt-74b-a9b-first-touch/

knowledge の要素として新しく出てきたのが NVIDIA Agent Knowledge Foundation です。社内の文書やデータベースをエージェントにつなぐためのモデルとライブラリの集まりで、文書検索の Nemotron Retriever と、表形式や時系列のデータから予測する新しい Kumo ファミリーが入っています。

これらは NVIDIA Agent Toolkit にまとめられ、講演では創薬、工場、車両設計の事例が映像で紹介されました。

Hyperion と Agile ONE SN でフィジカル AI の標準をそろえる

講演の後半はフィジカル AI です。Huang CEO は、学習用、デジタルツイン用、ロボットに載せる用の 3 台のコンピューターが要るという整理を改めて示しました。

例として、通信網を AI の基盤にする取り組み、適応放射線治療、自動運転が紹介されています。自動運転では標準のアーキテクチャとしての Hyperion を推し、Volvo Cars などの採用が発表されました。

人型ロボットでは、リファレンスの人型ロボット Agile ONE SN が発表されました。Agile Robots が作る 31 自由度の機体で、研究者がゼロから機体とソフトを組まなくて済むようにするのが狙いです。提供は 2027 年初頭の予定です。

RTX Spark と DGX Spark で手元の開発環境が広がる

Huang CEO は、これからの PC は道具ではなく相棒のエージェントになり、5 要素をすべて持つ必要があると話していました。10 月 16 日に発売された RTX Spark を手に持ち、1 PFLOPS の性能を 2016 年の DGX-1 と比べて、手で持てるサイズになったと見せていました。

同日のローカル AI のブログには、手元の 3 機種の話がまとまっています。

機種 主な内容
RTX Spark 10 月 16 日に発売。最大 128GB の統合メモリ
DGX Spark 64GB 版が 10 月 23 日に発売。最大 8 台のクラスターに対応
DGX Station 748GB のメモリ。Windows 版は 12 月の見込み

DGX Spark の利用者として気になるのはソフトウェアの更新です。NVIDIA Sync の Model Launcher で、モデルとコンテナをダウンロードして OpenCode につなげるようになります。Hugging Face には、ローカル向けに量子化したチェックポイントの集まりも公開されました。

最後に登場した Microduck は「RTX Spark で生まれた」と紹介された

講演の締めくくりは、RTX Spark の上のエージェントがロボットの学習を段取りするデモでした。主役は、Hugging Face 傘下の Pollen Robotics が作る小さな二足歩行ロボット Microduck です。高さ 25 cm ほどの機体で、価格は 399 ドルです。

Pollen Robotics は昨年、卓上ロボットの Reachy Mini も出していて、自分はどちらも購入済みです。Microduck は発表のタイミングで注文しました。

https://pollen-robotics.com/microduck/

デモ映像では、Hermes Agent と Nemotron が RTX Spark 上でコースを計画し、シミュレーション環境を組み立てます。学習はクラウドで数千体を並列に回し、できあがった policy を RTX Spark で評価してから実機に配る流れです。

映像のあと、壇上には 4 体の Microduck が登場しました。Huang CEO は「君たちは RTX Spark で生まれたんだよ」と話しかけ、親の名前は Pollen だと綴りを読み上げて、配信の向こうにも注文を呼びかけていました。

講演は、Microduck を周りに残したまま、歌で中身を振り返るクロージング映像で締めくくられました。

https://youtu.be/qdUQJArUk30

Pollen の学習リポジトリや Isaac Lab には Microduck の歩行タスクも公開されているので、実機がなくてもシミュレーションで触れます。

まとめ

GTC Berlin 2026 の基調講演は、6 月の Taipei からエージェントの説明を model、harness、sandbox、knowledge、tools の 5 要素に組み替えた講演でした。AI 工場から手元の PC までをその枠で語り、最後は Microduck のデモでエージェントとフィジカル AI をつなげて見せています。

新しく出たのは、DSX POD、OpenShell Reference Architecture、Agent Knowledge Foundation と Kumo、Agile ONE SN です。DGX Spark や RTX Spark で手元からエージェントを組む人にとっても、Model Launcher や OpenShell の参照構成のように、すぐ関わる話が多い講演でした。

OpenShell、オープンモデル、そして欧州に向けた語りの背景にあったソブリン AI の 3 つは、自分のこれまでの検証とも関わりが深いテーマです。これらについては、自分の実践と並べて考えた記事を別にまとめておきたいところです。

参考リンク

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