自走できる即戦力という夢物語。従業員の活躍には組織の支援が必要。組織社会化について
こんにちわ。てぃーびーです。
従業員体験( EX )に大きな影響を与える要素としてオンボーディングがあります。人はいつ、どんな場所でも同じ成果を出せるわけではありません。コンテキスト次第で成果は上下します。そして、組織はそれぞれ異なるコンテキストを持ちます。規模、文化、事業、人、技術など。
「自走できる即戦力の従業員を採用したい」「手間を掛けずに最初から自力で活躍してほしい」そんな声を見かけることがあります。しかし、実際に自力のみで活躍に至るケースはまれで、どんなにレベルの高い人にでも組織に適応するための時間が必要です。オンボーディングはその適応のもれを減らし、適応速度をはやめていく上で重要になります。逆に、オンボーディングの手間を惜しんで省略すると、一見短いオンボーディングで済み、即座に現場に入ることができたように見えるかもしれませんが、結果として思ったような活躍につながらずデモチしかねません。
従業員が入社し、組織に適応していくことを組織社会化( Organizational Socialization )とよび、その手段としてオンボーディングプロセスの整備があります。この記事では組織社会化に関してまとめます。
組織社会化とは?
組織社会化は新しい従業員が組織に適応してくプロセスです。これは組織と従業員相互の働きかけによる結果であり、従業員からみると入社してからどのように振る舞っていくかで、組織から見ると従業員が活躍していくための土台を整備し、適応を支援していくことになります。
従業員の適応に必要なこと
従業員の適応に必要なことには以下のような対象があります。
役割の明確化
役割の明確化は、従業員が組織や仕事において求められる役割を理解できるようにすることです。オンボーディングの一つのゴールは従業員が求められる業務を正しく、効率よくやり遂げることです。その前提として、自身の役割・責務を明確に理解している必要があります。
オンボーディングのタイミングとことなりますが、クラスメソッドでは従業員が上司との面談を通して自身の Job Description = JD を作成します。これは役割の明確化に一役買っている仕組みといえるでしょう。
逆に、即戦力の中途たるもの「みなまで言わなくても仕事というのは自分でよしなになんとかするもの」と考えて役割と責務に関して大雑把な説明しなければ、当然思うような活躍はできないでしょう。残念ながら人間はエスパーではないので、脳内にしかない暗黙の期待に沿うことは不可能です。
自己効力感
ここでの自己効力感は組織で求められる責務を正しく完遂していける、という気持ちがあるかどうかです。
では、どのようにこれを得てもらうかというと
- うまく職務を遂行できるように必要となる前提スキル、知識の習得支援をする
- 職務に対する期待を明確に伝える
- 従業員が想定通りの成果を出してくれたら、それをきちんと伝える
などになります。一方で
- 業務に必要となる前提知識やスキルの習得支援をせず、自力ですべてなんとかさせる
- 職務に対する期待を明示せず、後出しで暗黙の期待に基づいたダメ出しをする
- 従業員が想定通りの成果を出しても無反応で、想定外だったときのダメ出しのみする
などをすると自己効力感を下げることにつながるでしょう。
クラスメソッドのカルチャーでいうと、 感謝 – Appreciation –, フィードバック – Feedback – に関わる部分です。
私は入社1ヶ月ちょっとですが、毎日のように同僚からポジティブなフィードバックや感謝の言葉をもらい、クラスメソッドで働くことに対する自己効力感が最初から上がりっぱなしでした。
社会的受容
自分が属する社会に受け入れられていると感じることができる状態が社会的受容です。人は社会的動物です。組織に属するということは、その社会に馴染んでこそ快適に過ごすことができます。
どのように社会的受容に導くかというと
- オンボーディング課程で上司、同僚、同期、ステークホルダーなどとの交流を通して関係構築をする
- 関係者とペア, モブワークをする
- 近い関心の既存社員とのつながり
- 専門領域別の実践コミュニティへの参加
- 趣味コミュニティへの参加
などがあります。
逆に
- 入社課程で同期との関わりはなく、上司・同僚はドライで業務に必要最低限のコミュニケーションのみ
- 業務は基本一人で実施
- 近い関心を持つ社員との交流が一切ない
という状態だと社会的受容は低下するでしょうし、さらに
- 陰口文化
- ダメ出し。他部門、他の従業員への非難が蔓延
などの状況であればマイナス方向にまっしぐらでしょう。
組織文化の知識
組織に適応するには文化マッチしたふるまいが必要になります。そこで、組織の文化を知り、理解し、体現していく必要があります。例えばクラスメソッドの場合、経営理念・カルチャーが言語化され、オンボーディング過程で周知されます。
また、特徴的な文化である「情報発信」については新入社員がまずはジョイン・ブログをかく、という施策がオンボーディングに組み込まれています。
また、ジョインブログの執筆にあたってのオンボーディングも整備されています。
クラスメソッド株式会社のブログ『DevelopersIO 』で”ジョインブログ”を書く人が最初に読むエントリ
他の文化についてもオンボーディングにおける理解・体現面での改善余地はまだまだありそうです。
一方、
- カルチャーは掲げているが浸透施策が一切ない
ということも珍しくないと思います。浸透施策をしていなければ当然 Value は浸透していないでしょうから、「Value に惚れ込んで入社してみたら、誰も Value の内容を口にしていない」というようなケースが起こりうるでしょう。
さらに、
- カルチャーを体現する従業員とカルチャーに反発する従業員で衝突している
ということすら珍しくないかと思います。後者の場合は、あるべきカルチャーへの変革期としてやむを得ないケースも有るかと思います。入社した人には選考過程やオンボーディングでその実態をしっかり知らせておかないと、外に見せている文化が当然浸透しているものとして考えてしまいまい、いざ入社してからギャップを理解した瞬間にデモチしてしまいます。
まとめ
組織社会化の側面から、オンボーディングについてまとめました。現在の状況として、多くの企業で「リモートで」という前提が更に加わり、今までオフラインで偶発的に気配りによってサポートされていたオンボーディング支援の要素が得られません。そのため、更に念入りなオンボーディング整備が必要でしょう。