OS X Lion以降のナチュラルスクロールについて考察する
OS X Lionからマウスホイールでの標準のスクロール方向が逆になったことにより、 戸惑いを感じているユーザーも多いかと思われます。
どうしてApple社は今までのオペレーションを逆にしてそれを「ナチュラル」としているのかを考察したいと思います。
ナチュラルの意味
辞典には下記のように表記されています。
ナチュラル【natural】 自然の,自然界の. 自然のままの,加工しない 自然の過程による
トラックパッドでの使用は問題ない。問題はマウスのスクロールホイールを使用したとき。
トラックパッドを使用した際にはナチュラルの設定でも違和感なくスクロールができると感じられます。 これらはiPhoneやiPadのタッチパネルでの使用感と同様になっています。 ところが、マウスのスクロールホイールを使用した際のスクロールでは動作が今までと逆になっているので違和感が感じられます。 どうしてこの違いが生まれるのかを、ナチュラルの意味をもとに検証したいと思います。
自然な動きを分析する
トラックパッド
上方向にスワイプすることで画面上のオブジェクトは上方向に移動し、新たに下から非表示だったオブジェクトが表示されます。 試しに机の上に紙をおいて向こう側に送ると同様の動きをします。 (図1) ナチュラルが持つ「自然界の」動きをしていることがわかります。
マウスのスクロールホイール
ディスプレイの前でマウスホイールを回す前に、紙とペットボトルの蓋などを用意して、紙の上に蓋を縦に置いて蓋を向こう側に回してみましょう。 指から蓋に伝わった摩擦は蓋の回転を生み、蓋から紙への摩擦は紙を手前方向に送っていきます。 つまり、蓋の回転により紙が送られる方向が逆転したことになります。(図2、図3)
OS X Lion以前のマウスのスクロールホイールでの動作は「ナチュラル」だったことがわかります。
トラックパッドとスクロールホイールで方向イベントを同じように取得していることが違和感を生む
違和感の原因はトラックパッドの方向とマウスホイールの方向を同一のイベントとして取得していることに起因しているようです。 現在のApple社の製品ラインナップを見るとマウスホイールの付いたデバイスが標準で付属している製品がないので、「他は知らないよ」ということでしょうか。 とはいえ、まだストアではスクロールホイール搭載のマウスを購入できることを考えると、 スクロールホイール搭載のマウスをOSが認識した際にはスクロール方向を現状の仕様と逆にすることを「ナチュラル」とする仕様に変更して頂きたいものです。
まとめ・感想
変動する余地のある「一般常識」をナチュラルと置き換えているというよりは、本来の持つ意味での変えることのできない普遍的な法則という意味でナチュラルとしているようです。 また、ナチュラルスクロールにすることで既存ユーザーの反感を買う可能性は十分にあることは想定されたと思われますが、 既存のユーザーよりも初めてデバイスを触る年齢の若い客層のような、これからの顧客をターゲットとして優先したい、というトレードオフが企業の方向性として行われたとも感じられました。